SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)草の根の挑戦が必ず変化を(国際安全保障政策センターアリムジャン・アフメトフ代表インタビュー)

草の根の挑戦が必ず変化を(国際安全保障政策センターアリムジャン・アフメトフ代表インタビュー)

この記事は、聖教新聞電子版が配信したもので、同社の許可を得て転載しています。

核兵器禁止条約の第2回締約国会議が11月27日から12月1日までアメリカ・米国ニューヨークの国連本部で開催された。創価学会インタナショナル(SGI)はカザフスタン共和国国連代表部等と関連行事を開催(11月28日、国連本部で)。同国の核実験被害者の証言をまとめたドキュメンタリー映画を上映した。聖教新聞では、同映画をSGIと共に制作したCISP(国際安全保障政策センター)のアリムジャン・アフメトフ代表にインタビューした。(聞き手=同新聞社記者)

――核兵器廃絶への取り組みを始めた理由を教えてください。

私は長年、カザフスタン共和国の外務省に勤めていました。転機となったのは、2015年にアメリカ・ニューヨークの国連本部で開催されたNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議に参加した時のことです。多くのNGOが参加しており、声を上げていました。

しかし、カザフスタンからは、一つのNGOも参加していなかったのです。わが国には核実験場がかつて存在し、多くの方が今も苦しんでいます。だからこそ、核兵器廃絶に向けて、カザフスタンが国際社会でリーダーシップを発揮すべきであり、わが国からも多くの市民が声を上げるべきだと感じました。

そこでCISP(国際安全保障政策センター)を創設しました。以来、CISPは、SGIと様々な関連行事を開催するなど、あらゆる取り組みを推進しています。

ーー映像制作の経緯をお聞かせください。

カザフスタンでは、約150万人が核実験の影響を受けて苦しんできましたが、記録された証言は多くはありません。より大勢の人に、核被害者の真実を伝えるための、映像制作を始めました。

CISP(国際安全保障政策センター)がSGIの支援を得て制作したドキュメンタリー「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」。12/28のサイドイベントで先行公開され、参加者から大きな反響があった。映像:CISP

私自身、核被害者が住む地域を訪れ、直接、映像に出演してくださる方々を探しました。整備されていない道を通り、車で6,7時間をかけて街に向かったこともあります。

長時間かけて訪問したとしても、映像制作の趣旨に賛同いただけず、出演を断る人もいました。「これまで、何度も核実験被害の証言をしてきたが、結局、現実は何も変わらなかった。もう、話したくない」と言われたこともありました。そこには、被害者への支援が足りていない現実があるのです。

一方で、当初は出演に対して消極的だったものの、私が首都のアスタナから来たことを伝えると、出演を承諾してくださった人もいます。首都から来た人のプロジェクトであるならば、政府などの必要なところに声を届けてくれるはずだと信じてくださったのかもしれません。「この証言映像が希望です」と語られ、核被害者への支援などが改善されることを願われていました。

ーー今回の第2回締約国会議には、カザフスタンの若者も参加しました。

第2回締約国会議のサイドイベントには、カザフスタンから被爆3世のアイゲリム・イェルゲルディが参加して証言を行った。映像:INPS Japan浅霧勝浩

カザフスタンの青年の代表が、今回の会議に参加できたことは画期的なことだを感じています。核兵器廃絶に向けて、青年の参画は非常に重要です。

私は以前、研修プログラムの一環で、ある国の若い外交官を核実験場の跡地へ案内したことがあります。彼らは核軍縮の必要性は感じつつも、核兵器廃絶については考えていないようでした。しかし、核実験被害者の実相について学んだ後に意見を交わすと、核兵器廃絶を本気で考えるようになっていました。

今の青年が将来、各団体や各国の重要な役割を担っていきます。だからこそ若い世代への軍縮教育が大事になってくるのです。

ーー日本の読者へのメッセージをお聞かせください。

セミパラチンスク核実験場における核実験 資料:国立原子力センター
セミパラチンスク核実験場における核実験。1949年から89年まで、ソ連軍により456回の核実験が実施された。 資料:国立原子力センター

日本とカザフスタンは、核被害に苦しんだ過去があるからこそ、核兵器廃絶を実現するための、世界をリードする使命と責任があります。

市民社会の役割は非常に重要です。NGOの草の根の取り組みは、小さいことのように思えるかもしれませんが、川の流れが少しづつ岩を削るように、取り組みを長く続けていくことで必ず変化を起こすと確信します。

現在、世界は核兵器廃絶から逆の方向に向かっているように見えます。しかし、世界を良い方向へと転換するまで、私たちは諦めてはいけません。核兵器をゼロにするその日まで、共に平和への行動を続けましょう。

INPS Japan/『聖教新聞12月8日付を転載」

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