ニュース核軍縮ハイレベル会合に熱心でない国連への批判高まる

核軍縮ハイレベル会合に熱心でない国連への批判高まる

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連の潘基文事務総長は「核兵器なき世界」をもっとも熱心に推奨しているひとりだ。

「核軍縮と核不拡散はユートピア的な理想ではありません。それは世界の平和と安全にとって絶対不可欠なものなのです。」と潘事務総長は言う。

しかし、開発途上国132か国からなる最大の国家連合であるG77は、今年9月26日に予定されている「核軍縮に関するハイレベル会合」の周知に、国連が十分に取り組んでいないと批判している。

G77
G77

5月初め、G77議長国であるフィジーのピーター・トムソン大使は、予定されている会合は「核軍縮に関するものとしては国連総会が開催する史上初のハイレベル会合となる」と評したうえで、「この会合は、途上国にとって重要な機会となります。従って、会合に関する時宜にかなった広報を幅広く行っていく必要があります。」と語った。

またG77のある代表は、IPSの取材に対して、おそらくは、米国・英国・ロシアという3つの大国が会合にあまり積極的でないために、本来あるべき会合に関する事前広報があまり徹底されていないのだろう、と語った。

この筋によると、「このハイレベル会合について[の宣伝を]これまでまったく聞いたことがない」という。

こうした周知不足は、核兵器の完全廃絶をこれまで一貫して訴えてきた潘事務総長の強い姿勢とは対照的である。

核政策法律家委員会(本部:ニューヨーク)のジョン・バローズ事務局長は、この会合の重要性について、バラク・オバマ大統領も含めた世界の指導者らが、「この5年間多くの言葉が語られながら今や漂流状態にある」核軍縮の取り組みに方向性を与えるチャンスになるものだ、と語った。

John Burroughs/ LCNP
John Burroughs/ LCNP

またバローズ氏は、「もちろん、各国の指導者は、核兵器の世界的廃絶は国際社会共通の目的であることを改めて訴えるべきです。」と指摘したうえで、「しかし、彼らはそこに留まるのではなく、その目的を達成するための具体的で多国間のプロセスを始動すべきです。」と語った。

さらにバローズ氏は、「核物質の保全に焦点を当てた核安全保障サミットができるのなら、なぜ『核軍縮サミットプロセス』ができないのだろうか?」と問いかけるとともに、「あるいは、ジュネーブ軍縮会議の16年間に及ぶ行き詰まりを打開するために、必要なら別のプロセスを確立するという形で決定的な行動をとることもできるはずだ。」と語った。

インドネシアと非同盟諸国運動(120カ国が加盟)が共同提出した、ハイレベル会合の開催を求める国連総会決議は、昨年12月、賛成179・反対0・棄権4(イスラエルと安保理5大国のうち3つにあたるフランス・英国・米国)で採択された。他の5大国メンバーである中国とロシアはこの決議に賛成した。

5つの国連安保理常任理事国は、同時に5つの公式核兵器国であり、このP-5核クラブの外側に、インド・パキスタン・イスラエル、それに最近では北朝鮮が事実上の核兵器国として位置している。

英国のガイ・ポラード国連代表部次席代表は、昨年12月、各国代表を前に、「核軍縮に関する議論の場がすでに多く存在しているにもかかわらず、さらに国連総会のハイレベル会合を開催することに意味があるとは思えない」と、採決を棄権した理由を説明した。そして、そのような既存の議論の場として、国連総会第一委員会(軍縮問題)、国連軍縮委員会、ジュネーブ軍縮会議を挙げた。

さらにポラード次席代表は、「2010年に全会一致で合意されたNPT(核不拡散条約)行動計画の目標を、国連総会のハイレベル会合でさらに推し進めることができるかどうか、疑わしい。」と指摘したうえで、「英国政府は、この行動計画こそが、関連問題とともに、多国間の核軍縮という課題を前進させる最善の方法だと考えています。」と語った。

またポラード次席代表は、「英国政府は、核不拡散と核軍縮は相互に補強し合う関係にあると引き続き確信しており、従って、このハイレベル会合がその両側面をバランスよく取り扱っていないことを残念に思います。」と語った。

他方、カーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副理事長(兼核政策プログラム責任者)は、先月発表した報告書の中で、オバマ大統領が米国の意図に関する信頼を回復する数少ない手段の一つが、同盟国の防衛も含めて、米国の安全保障政策における核兵器の役割に関する宣言を改めて見直すことだ、と指摘している。

ノーベル賞受賞のスピーチ(2009年12月)でオバマ大統領は、戦争が時として避けがたいこと、戦争を正当に戦うことの必要性に言及した。」

「従ってオバマ大統領は、たとえ一時的なものであったとしても、現存する核戦力を、その使用を防止するという道徳的・戦略的要請とどう折り合わせることができるのかを検討することができるはずだ。」と、パーコビッチ氏は報告書:『(己の欲するところを)他者にも施せ:擁護可能な核ドクトリンに向けて』の中で述べている。

「オバマ大統領は、核兵器が存在し続けるかぎり、他国が真似をしても、米国がなお擁護可能と確信できるような『核兵器の正当な使用に関する限定的な枠組み』(=核兵器の使用を、米国及び同盟国の生存に関わる脅威に対してのみに限定するというもの:IPSJ)を構築できるはずだ。」とパーコビッチ氏は同報告書の中で述べている。

こうした核政策は、米国防総省が今年末に策定予定の『4年毎の国防見直し』に盛り込むことができる、とパーコビッチ氏はいう。

一方、バローズ博士は、非核兵器国は軍縮に関する明確な道筋を作る機会を作り出すために最善を尽くしてきた、とIPSの取材に対して語った。

2012年の国連総会第一委員会では、オーストリア・メキシコ・ノルウェーが主要提案国となり、多国間の核軍縮交渉を前進させるための提案を策定する「オープン(=期限を定めない)参加国作業グループ」を創設した。この夏にジュネーブで3週間の会合を持つことになっている。

そして、インドネシアと非同盟諸国運動は昨年、核軍縮に関するハイレベル会合を今年9月に開くよう求める決議を提案した。

「しかし、安保理五大国の姿勢は頑なままです。これまでのところ、これら諸国は『オープン参加国作業グループ』に参加しないとしています。」とバローズ博士は語った。

また、五大国はオスロ会合への参加招請も拒絶した。そして昨年、英国・米国・フランスは、イスラエルとともに、ハイレベル会合実施に関する決議採択を棄権して、その意義に疑問を投げかけた。

「こうした経緯からも、各国首脳や外務大臣の積極的な関与が、明らかに必要なのです。」「ちなみに下級レベルでは五大国の担当者は苦悶を続けています。」とバローズ博士は語った。

またバローズ博士は、「政府のトップレベルからの政策変更が起こらないかぎり、9月のハイレベル会合は全く実りのないものとなってしまうだろう。」と警告した。

こうしたなか、朝鮮半島危機は、国際社会に警鐘をならす出来事として捉えるべきである。

またノルウェーは、核爆発がもたらす人道的影響に関する国際会議を、3月にオスロで主催した。

Oslo Conference/ MFA
Oslo Conference/ MFA

北朝鮮と米国との間で交わされた核の脅しは、核兵器に依存することからくる容認不可能なリスクという、普段は軽視されがちな事実を、改めて白日の下に晒すこととなった。

安保理五大国と他の核兵器国の指導者らは、この9月に開催されるハイレベル会合の機会をとらえて、自国の市民だけでなく国際社会に対して、核兵器の世界的削減に向けたプロセスに関して非核兵器国と建設的に関与していく意志を明確に示すべきだ、とバローズ博士は語った。

またバローズ博士は、「核兵器なき世界」の実現に取り組む国会議員や市長、市民団体も、驚くことに核軍縮に関して国連総会が初めて開催するハイレベル会合というこのグローバルな議論の場を、積極的に活用すべきである、と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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