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|世界平和度指標|5年前より平和でなくなった世界

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

経済平和研究所(IEP)が6月11日、ワシントンDCで2013年度版の「世界平和度指標(Global Peace Index:GPI)」(101頁)を発表した。これによると、世界-とりわけ中東地域は―2008年の前回調査時よりも、より平和でなくなってしまったという。

この世界的な傾向は昨年においても同様で、調査報告書は、主な原因として、シリアの内戦、メキシコ・中米諸国・サハラ以南のアフリカ数か国における殺人の増加、そして多くの国における対GDP(国内総生産)軍事予算の増加などを挙げている。

欧州は、アイスランド、デンマーク、オーストリアを筆頭に、引き続き世界で最も平和な地域であった。対照的に、調査した162か国中、GPIが最も低かったアフガニスタンやパキスタン(157位)を含む南アジアは、最も平和でない地域であった。

また昨年は、中東地域も全体として急速に平和が遠のいた年であった。内戦が続くシリアが160位、宗派間紛争が悪化しているイラクが159位、内紛が続くスーダンが157位、イエメンが152位であった。また、昨年11月にガザ地区に侵攻し、その後軍事費の増強を図ったイスラエル(150位)も、中東地域の平和指標を引き下げている。

また、今回の調査は、「暴力が世界経済に与える影響をコスト化(=主に各国の防衛費と治安維持関連予算を評価)すると、2012年の実績は少なくとも9兆5000億ドルにのぼる。」と指摘している。これは、世界のGDP総計の11%、言い換えれば、世界の食料総生産量が持つ価値の2倍近くにものぼる。調査報告書は、「国際社会が暴力に費やす予算を半減させれば、その費用でもって、途上国の債務をすべて帳消し(40億7600万ドル)し、欧州安定化メカニズムに必要な資金(9000億ドル)を提供し、ミレニアム開発目標を達成するために必要な年間追加資金(600億ドル)を容易に捻出することができる。」と指摘している。

調査ではまた、2008年の世界金融危機で深刻な影響を受けた国々では、影響がそれほどではなかった国々と比べて、公共サービスの削減、失業の増大などが暴力的なデモや犯罪の増加につながり、GPIの低下を招くという知見も引き出している。

GPI(23項目)は、国内の平和(=内的状況)に関して、殺人件数、人口10万人あたりの治安・警察要員の人数、政治的不安定度、テロ活動の潜在的可能性等、さらに対外的な平和(=外的状況)に関して、軍事予算の規模、人口10万人あたりの軍人数、武器移転、対外的紛争の関与数等を数値化し、平和を評価するうえでの重要度に応じて5段階評価でまとめたものである。データは、国際平和パネル討論会のエキスパート、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)、世界銀行、アムネスティ・インターナショナルをはじめとするシンクタンクや市民社会組織、及び大学機関等が作成し、英国のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が調整にあたっている。

先述のアイスランド、デンマーク、オーストリアに続いて、2012年度に最も平和だった10か国は、4位のニュージーランド以下、スイス、日本、フィンランド、カナダ、スウェーデン、ベルギーであった。対照的にもっとも平和でなかった10か国は、最下位から順に、アフガニスタン、ソマリア、シリア、イラク、スーダン、パキスタン、コンゴ民主共和国(DRC)、ロシア、北朝鮮、中央アフリカ共和国であった。

北米では、上位にランクインしたカナダとは対照的に、米国は中国(100位)のすぐ上にあたる99位、経済協力開発機構(OECDの中でも34か国中31位であった。これは、高い拘禁率、外国の紛争への大規模な関与、高い殺人事件発生率、小火器の蔓延、そして、莫大な軍事費のためである。米国の軍事費は、近年若干削減傾向にあるものの依然として第2位の軍事大国の予算を10倍以上上回っている。

アジア・太平洋地域では、ニュージーランド(3位)と日本(6位)を除けば、オーストラリアとシンガポールがもっとも平和的な国であった。対照的に、最も平和的でない国々は、フィリピン(129位)、タイ(130位)、ミャンマー(140位)、北朝鮮(154位)であった。とりわけ、北朝鮮の拘禁率は世界で最も高く、GDPに占める軍事費の割合も世界一で20%に及んでいた。

ラテンアメリカ・カリブ海地域では、ウルグアイ(24位)、チリ(31位)、コスタリカ(40位)が最も平和的な国だった。一方、最も平和的でない国々は、ホンジュラス(128位)、メキシコ(133位)、コロンビア(147位)であった。麻薬取引が深刻なホンジュラスでは、殺人事件発生率が昨年世界最悪であった。また、メキシコにおける昨年の殺人件数は約20,000件に達している。

アフリカ地域では、モーリシャス(21位)、ボツワナ(32位)、ナミビア(46位)が最も平和的な国であった。アフリカの2大経済大国である南アフリカ共和国とナイジェリアは、それぞれ121位、148位であった。

昨年最も平和指数を改善した(=一昨年に比べて平和になった)国は、リビア(145位)、スーダン(158位)、チャド(138位)、カザフスタン(78位)、インド(141位)、逆に最も悪化した国は、ウクライナ(111位)、ペルー(113位)、ブルキナファソ(87位)、コートジボアール(151位)、シリア(160位)であった。

2008年の前回調査時よりも平和になった国が48か国、平和でなくなった国が110か国あり、全体として平和度は下がっている。地域別に見ると、平和度が最も下がった地域は旧ソ連構成諸国と、3年前に「アラブの春」が始まった中東及び北アフリカ地域である。

過去5年間に最も平和になった国は、チャド、グルジア、ハイチであった。一方、この5年間で平和度が最も下がった国は、シリア、リビア(昨年の改善度を考慮してもなお相対的に悪化)、ルワンダ、マダガスカル、コートジボアール、イエメン、メキシコ、チュニジア、オマーン、バーレーンであった。

今回の調査は、全体的に平和度を引き下げた要因として、①アラブの春に関連して勃発した暴力、アフガニスタンとパキスタンにおける治安の悪化、リビア及びシリアにおける内戦、中米における麻薬戦争、ソマリア及びコンゴ民主共和国における暴力の蔓延、多くの欧州諸国における景気後退に伴う騒乱等を挙げている。

今年の調査報告書には、ポジティブ平和指標(Positive Peace Index:PPI)が収録されている。これは126か国について、相互に関連した8項目に分類された24の指標に基づいて、「平和な社会を築き、維持する構造、制度、姿勢の強さ」を評価したものである。

「平和の支柱」と題されたこれらの項目には、資源の公平な分配、高いレベルの人的資本、高い透明性、低い腐敗度、健全なビジネス環境、よく機能する政府、他者の権利を許容する程度、近隣諸国との良好な関係、が含まれている。

PPIでは、欧州と米国(19位)を含む北米がトップランクを占めた。なお、日本は16位、一方、日本の隣国は韓国が26位、ロシアが80位、中国が81位であった。また途上国では、チリ(25位)、ウルグアイ(32位)、コスタリカ(36位)が最も高いランクを占めた。一方、最低ランクを占めたのはコンゴ民主共和国(126位)を筆頭に、チャド、イエメン、中央アフリカ共和国、ナイジェリア、コートジボアール、ウズベキスタン、パキスタンであった。

今回の調査は、GPIとPPIの双方の指標で高いランキングを占めた国々の間には、強い相関関係があると指摘している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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