ニュース娘が日本に運ぶケネディの平和の灯

娘が日本に運ぶケネディの平和の灯

【東京IDN=浅霧勝浩】

キャロライン・ケネディ氏が1945年8月6日の米軍による史上初の原爆投下で14万人が犠牲になった広島市を叔父の故エドワード・ケネディ上院議員に同行して訪れたのは、若干20才の時であった。彼女は、駐日大使指名承認のための上院外交委員会公聴会で、広島平和記念資料館に立ち寄った1978年の被爆地訪問で深く心を動かされたと述べた。

ケネディ氏は11月12日の駐日大使就任前に日本国民に送ったビデオ・メッセージの中で、広島訪問で「よりよい平和な世界の実現に貢献したいと切に願うようになりました。」と語った。

50年前の11月にダラスで暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の唯一の存命する娘であるキャロライン・ケネディ氏は、駐日大使として東京に着任してからひと月もしないうちに、1945年8月9日に(広島に続いて)米国の原爆投下を受けた長崎市を訪問した。

ケネディ大使は長崎市からの招待でハナミズキの植樹式に出席した。これは日本が友好のシンボルとして米国に3000本の桜を寄贈してから今年が100年目となることを記念して米国が日本に寄贈した3000本のハナミズキ(花言葉「返礼」)の一部で、式典は長崎への原爆投下によって亡くなった7万3000人(当時の人口26万3000人の4分の1以上にあたる)が記念されている平和公園で行われた。平和公園で紹介されている数字によると、原爆投下によって約7万5000人が負傷し、数十万人が放射線被ばくによって様々な健康被害を受けた。

Dogwood/ Public Domain

植樹式でケネディ大使は、「私はここを訪れて非常に心を揺り動かされました。そして、父のケネディ大統領が核軍縮プロセスを開始したことを非常に誇りに思っていたこと、私たち家族も全員同じ責任を共有していることが改めて思い出されます。」と述べ、さらに、「バラク・オバマ大統領もその目的に向かい、一生懸命尽力しています。」と付け加えた。

先の11月27日、ケネディ大使は、在日米国商工会議所と日米協会が東京で開いた歓迎昼食会で行った講演の中で、「父・ケネディ大統領は困難な時期に日米関係の強化に熱心に取り組みました。現職大統領として初の訪日を果たすことが父の望みであったと母から何度も聞かされました。」と語った。

さらにケネディ大使は、「子ども心にも大変印象深かったのは、父の乗組んだPTボート(米国が第二次世界大戦時に配備した哨戒魚雷艇)が日本の駆逐艦によって撃沈されたにもかかわらず、わずか15年後に行われた父の大統領就任式にその艦長を招待したことを父が誇らしく思っており、将来日本を公式訪問するときに、米国の魚雷艇と日本の駆逐艦の当時の乗組員たちが再会できるかもしれないと心を躍らせていたことです。」「この話は、より大きな日米関係を示す素晴らしいエピソードであり、私たちを分裂させる要因ではなく団結させる要因に注目すれば、また過去ではなく未来に目を向ければ、必ずより良い世界を創造できることを改めて思い起こさせてくれます。」と語った。

U.S. National Archives and Records Administration
U.S. National Archives and Records Administration

被爆者と平和活動家らは、原爆が投下された2つの日本の都市を米大統領に訪問してもらいたいと繰り返し訴えてきた。ある平和活動家は「オバマ大統領が私たちの呼びかけに応えてくれるといいのだが。」と語った。

ケネディ大使は、田上富久・長崎市長や市関係者らとともに長崎原爆資料館を訪れ、芳名録に記帳した。また、土山秀夫・長崎大学元学長や、日本赤十字社長崎原爆病院の朝長万佐男院長をはじめとした被爆者にも面会した。その際ケネディ大使は、「核軍縮に向けてさらに努力すべきだと感じた。」と語ったと報じられている。

ケネディ大使の長崎訪問には、原爆で倒壊し第二次大戦後に再建された浦上天主堂も含まれていた。平和公園では、恒久平和への希望を象徴している平和祈念像前で献花し、犠牲者の冥福を祈った。

長崎市によると、ケネディ大使は長崎市を訪問した5人目の駐日米国大使にあたる。前任者のジョン・ルース氏は、米国大使としては初めて、広島・長崎両市で原爆犠牲者慰霊のための式典に出席している。

「長崎アピール」

ケネディ大使を案内した長崎市の田上市長は、今年8月9日の長崎平和宣言でこう述べている。「核兵器保有国には、NPT(核不拡散条約)の中で核軍縮への誠実な努力義務が課されています。これは世界に対する約束です。2009年4月、米国のオバマ大統領はプラハで『核兵器のない世界』を目指す決意を示しました。今年6月にはベルリンで、『核兵器が存在する限り、私たちは真に安全ではない』と述べ、さらなる核軍縮に取り組むことを明らかにしました。長崎市は、オバマ大統領の姿勢を支持します。」

田上市長は「世界には今も1万7千発以上の核弾頭が存在し、その90%以上が米国とロシアのものです」と遺憾の意を示したうえで、「オバマ大統領、プーチン大統領、もっと早く、もっと大胆に核弾頭の削減に取り組んでください。『核兵器のない世界』を遠い夢とするのではなく、人間が早急に解決すべき課題として、核兵器の廃絶に取り組み、世界との約束を果たすべきです。」と語った。

キャロライン・ケネディ氏が駐日大使に着任する1週間ほど前、長崎市では、11月2日から4日にかけて「第5回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」が開催された。長崎市民は、2000年以来数年ごとに、このような地球市民集会を開催しつづけている。

会議の参加者は、国内外の非政府組織(NGO)関係者や科学者らである。参加者は、被爆者の体験談や、生きているうちに核兵器廃絶を実現してほしいという彼らの心からの叫びに耳を傾けた。また、核兵器なき世界を実現し維持する責任を引き受けようとする若い世代による希望に満ちた声にも耳を傾けた。

長崎市からの招請で第1回集会から参加している著名なゲストのひとりに「核時代平和財団」のデイビッド・クリーガー所長がいる。クリーガー所長は、これまで発表された全ての「長崎アピール」の起草プロセスに関わってきた。

クリーガー所長は、長崎アピール2013の注目点は、以下のような具体的な呼びかけをしていることだとIDNの取材に対して語った。①核兵器の全面禁止・廃絶に向かう外交交渉の開始、②米ロによる単独あるいは二国間での核軍縮措置、③全ての国の安全保障政策における核兵器への依存低減、④核廃絶キャンペーンへの市民の一層の参加奨励、⑤新たな非核兵器地帯の創設、⑥福島第一原発事故の被災者への支援、⑦人類が核兵器と同じく核エネルギーにも依存し続けることはできないという教訓を学ぶ。

北東アジア非核兵器地帯

またクリーガー所長は、今回の長崎アピールでは、世界唯一の戦争被爆国として日本が負うべき義務として次のような具体的な勧告をしている。つまり、「①米国の核の傘から脱却すること、②北東アジア非核兵器地帯創設に向けたリーダーシップをとること、③核兵器廃絶に向けたリーダーシップをとること、④福島の放射能危機を制御するにあたって国際支援を求め歓迎すること」である。

アピールはまた、日本の532自治体の首長が北東アジア非核兵器地帯への支持を表明していることを指摘した。日韓の超党派の国会議員83人からは2010年7月22日の共同声明でも支持を得ている。また今年9月には、モンゴル大統領が、北東アジアの非核兵器地帯を積極的に支援する意向を国連総会で表明している。

またアピールは、日本がリーダーシップを発揮するために、2014年4月に広島で開催される軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI外相会合の場を活用すべきだと述べている。また、2016年に日本で開催される主要国首脳会議に参加する政治指導者と政府関係者が被爆地広島・長崎を訪問するよう働きかけるべきだとも述べている。

地球市民集会ナガサキの参加者らはさらに、「核兵器のない世界の実現のための努力を一層強める」ことを誓い、「ナガサキを最後の被爆地に」と訴えた。クリーガー所長は、これは、人類と未来にとって必要な目標だと指摘するとともに、「これは、核時代に地球上に生きる我々すべてが直面している難題です。長崎はその道を切り開く役割を果たしています。成功するために我々の声と努力が必要なのです」と述べている。

ケネディ大使が言うように「変化には努力が必要」で「忍耐が必要」なものであるから、11月の「長崎アピール2013」が指摘するように、地球上に依然として1万7300発の核弾頭が存在し人類と地球上のほとんどの生命の生存そのものを何度でも破壊しかねないなか、ケネディ大使の平和と軍縮への誓約を実現するには、きわめて多くのことがなされねばならないだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事

日米友好の証「ポトマック桜」―100年の時を経て(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

「核なき世界」を引き寄せるヒロシマ・ナガサキ

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN
IDN Logo

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken