ニュース核の瀬戸際にある世界:拡散する現代戦とその代償

核の瀬戸際にある世界:拡散する現代戦とその代償

【カトマンズNepali Times=クンダ・ディクシット】

進行中の紛争は、戦争のあり方が変化しており、もはや人間の制御下には収まらないことを示している。ウクライナ、スーダン、ガザ、イラン—いずれも世界大戦とは見なされないかもしれないが、私たちは危険なまでにその瀬戸際に近づいている。

Kunda Dixit
Kunda Dixit

ここネパールでは、そうした出来事から遠く離れているように思えるかもしれない。しかし、イスラエルや湾岸諸国で働くネパール人は約200万人に上り、戦争の激化は私たちの送金依存経済に壊滅的な打撃を与えかねない。

イスラエルによるイランの要衝バンダル・アッバース空爆と、イランがホルムズ海峡の封鎖を示唆したことで、今週カトマンズではガソリンスタンドに買いだめの列ができた。石油関連はネパールの輸入額の4分の1を占めている。

2023年10月7日のハマスによる攻撃では10人のネパール人が命を落とし、いまも1人がガザで拘束されている。ウクライナ戦線ではロシア軍に加わったネパール人兵士が戦い、命を落としている。

また、米軍に志願したネパール出身のグリーンカード保有者もおり、6月14日にワシントンD.C.で行われた「平壌スタイルの軍事パレード」に参加した者もいる。北朝鮮が武力によって敵を威嚇するのと同様に、米国のパレードは自国民に「言うことを聞け」と警告する意図があった。

その背後では、グローバルな超大国(=米国)の指導者が、自らのSNS「トゥルース・ソーシャル」で、イスラエルと共にイランを爆撃することを仄めかす好戦的な投稿を繰り返している。

一方でもう一つの超大国(=ロシア)は、誘導ミサイルでウクライナの首都キーウのアパートを攻撃している。モスクワのテレビ討論番組では、ロンドンへの核攻撃を軽々しく語るゲストが登場している。

ウクライナによるロシアの戦略爆撃機基地への大胆なドローン攻撃は、戦争の性質と規模がすでに様変わりしていることを改めて証明した。

2025年5月には、インドとパキスタンも無人機やミサイルを使って交戦したという。さらにパキスタンのJ-10戦闘機がインドの航空機2機(うち1機はフランス製ラファール)を撃墜したとも報じられた。

仮にこれらの報道が事実でなくても、各国空軍が中国製兵器の性能を見直し始めているのは確かだ。

インド・パキスタン間の空中戦、そして現在進行中のイスラエルによるイラン空爆においては、核関連施設が標的となったケースもある。ドナルド・トランプ大統領がテヘランからの避難を警告したことが実行に移されるかは不明だが、米国が地下核施設に対しバンカーバスター爆弾を使う可能性を専門家は指摘している。

イラン指導部は報復を警告しており、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)にある米軍基地が標的になりうる。もしそうなれば、まさに「地獄の釜の蓋が開く」ことになるだろう。

冷静な声に望みを託しつつも、世界は以下の3つの核戦争の火種に備えねばならない。すなわち、ロシア・ウクライナ、イスラエル・イラン、そして私たちのすぐ近く、インド・パキスタンである。

核抑止によってニューデリーとイスラマバードは互いの都市を焼き払うには至らなかったかもしれないが、それは小さな計算違い一つで破綻しかねない不安定な均衡である。

両国はプロパガンダと大衆メディアによって国民の好戦的感情を煽り、SNSでは市民たちが互いに憎悪をぶつけ合い、指導者に「核ボタンを押せ」と叫んでいた。

この3つの紛争全てに共通する危険性はそこにある。つまり、ソーシャルメディアによって増幅された憎しみに国民が飲み込まれ、核抑止の意味が失われてしまっているということだ。

ウクライナによるロシア本土深部へのドローン攻撃、インドによる徘徊型兵器(ロイタリング・ミュニション)の使用などによって、従来の戦争の概念は崩壊した。高価なステルス爆撃機、主力戦車、防空ミサイル基地といった「旧来の兵器」は、今やアマゾンで購入できるドローンによって無力化されうるのだ。

この3つの紛争に共通して見られる戦争の新たな様相は、米国の核の傘の信頼低下と相まって、世界を再び軍拡の時代へと導きつつある。開発資金や気候変動対策の予算は軍拡に回され、皮肉なことに戦争が原因で飢饉まで引き起こされている。

ネパールでは、インドとパキスタンの間で起こりうる限定的あるいは全面的な核戦争による放射能汚染を懸念している。だが同時に、傷を負ったイランと核兵器を保有するイスラエルとの対決、あるいはロシアがウクライナで戦術核を使う可能性も視野に入れなければならない。そして常に潜在するのが、非国家主体による核テロの脅威である。

それだけではない。さらに深刻なのが、人工知能(AI)によって標的を選ぶ数百万台のドローンが世界中に拡散するという危険だ。

カリフォルニア大学バークレー校のスチュアート・ラッセル教授が短編映画『Slaughterbots(殺戮ロボット)』で警鐘を鳴らしているように、人類は人間の制御を離れた兵器を制限するための新たな軍縮条約を必要としているのかもしれない。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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