SDGsGoal15(陸の豊かさも守ろう)メキシコの土地紛争のさなか、姪が殺された。世界は企業に責任を問わねばならない

メキシコの土地紛争のさなか、姪が殺された。世界は企業に責任を問わねばならない

【メキシコ・ミチョアカン州IPS=クラウディア・イグナシオ・アルバレス】

私の姪、ロクサナ・バレンティン・カルデナスは、殺されたとき21歳だった。彼女は、メキシコ西部ミチョアカン州のパツクアロ湖畔にあるサン・アンドレス・ツィロンダロ出身のプルペチャ(Purépecha)先住民女性である。

ロクサナは、別の先住民共同体が、土地を取り戻した出来事を記念して企画した平和的な行進の最中に命を奪われた。その土地闘争では46年前にも3人が殺されている。今回も、追悼と記念の場は再び銃撃にさらされた。

Location of Mexico
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ロクサナは武器を持っておらず、行進にも参加していなかった。彼女はたまたまデモ行進に遭遇し、銃弾を受けたのだ。彼女の死は私にとって深く個人的な出来事だが、それは土地と領域をめぐる長年の暴力という、より大きな文脈の中で起きた。

その暴力は近年ミチョアカン州で激化している。今年11月に市長が暗殺されたことは、不安が公的生活の深部にまで浸透し、民間人、地域リーダー、地方当局者のいずれに対しても十分な保護が存在しない現実を浮き彫りにした。

メキシコ全土で、先住民は土地、水、森林を守ろうとして殺されている。政府や企業が「開発」と呼ぶものは、私たちの共同体にとって、暴力によって強いられる収奪である。土地の奪取、水の盗奪、抵抗する者を黙らせること——それらを通じて進められる。

脅かされる暮らし

私はサン・アンドレス・ツィロンダロの出身だ。そこは農業、漁業、音楽の共同体であり、私たちは世代を超えて、湖と周囲の森林を、生命に不可欠な共同の責任として守ってきた。その暮らし方が、いま脅かされている。

ミチョアカン州では、収奪の圧力は地域により姿を変える。先住民領域の一部では鉱山開発であり、私たちの地域では、農産物の輸出を目的とするアグロインダストリー——とりわけアボカドやベリー類の生産である。自給のための共同土地が商業農業のために貸し出され、パツクアロ湖の水は、無許可で設置された配管によって引き抜かれ、農地の灌漑に回される。その結果、地元の農民は水へのアクセスを奪われる。

農薬や化学肥料が土壌と水を汚染し、土地利用転換を可能にするために森林が意図的に焼かれ、生態系は大量の水を消費する単一栽培へと変えられていく。これは開発ではない。収奪である。

強制の手段としての暴力

先住民共同体がこうした過程に抵抗すれば、暴力が続く。

現実を示す2つの事例がある。いずれも未解決のままだ。

私たちの組織の一員で人権擁護者であるホセ・ガブリエル・ペラヨは、1年以上にわたり強制失踪させられている。国連の強制失踪委員会が緊急措置を出したにもかかわらず、進展は阻まれてきた。当局は捜査資料へのアクセスを引き延ばし、本格的な捜索はなお始まっていない。家族はいまも答えを待ち続けている。

ナワ(Nahua)共同体サン・フアン・ウイツォントラの擁護者エウスタシオ・アルカラ・ディアスは、事前の説明と同意のないまま領域に押しつけられた鉱山事業に反対した後、殺害された。彼の死後、共同体は恐怖で動けなくなり、安全に人権活動を続けることが不可能になった。

この2つの事件は、暴力と不処罰が、共同体の抵抗を抑え込むために用いられていることを示している。

軍事化は保護ではない

暴力と不処罰が拡大するなかで、メキシコ政府は再び軍事化に頼っている。数千人規模の兵士がミチョアカン州に投入され、当局は逮捕や治安作戦を「安定の根拠」として掲げる。

しかし実際には、軍事化はしばしば収奪的な開発利害が集中する地域と重なる。鉱山開発、アグロインダストリーの拡大、大規模インフラ計画の対象地域に治安部隊が配置され、共同体の抵抗が封じ込められる一方で、そうした事業が推進されやすい条件が整えられる。

先住民がそれを「保護」と感じることは少ない。むしろ監視、威嚇、犯罪化として経験される。企業は中立を装うかもしれないが、こうした治安体制から利益を得ており、暴力や立ち退きに異議を唱えることも稀である。そこには、企業の共謀という深刻な問題が浮かび上がる。

破綻するグローバル・ガバナンス

先住民の領域は、国境を越えて展開する収奪産業にさらされている一方で、説明責任を問う枠組みは断片化したままである。企業は事業を複数の法域にまたがらせ、環境破壊や人権侵害の責任が特定されにくい構造をつくり出している。

企業の自主的な誓約では、暴力も環境悪化も止められなかった。国内規制は国によってばらつきが大きく、腐敗や組織犯罪の影響を受ける地域では執行も脆弱である。これは国内だけの失敗ではない。グローバル・ガバナンスの失敗である。

いま求められる国際的責任

私は最近、ピース・ブリゲーズ・インターナショナル(Peace Brigades International=PBI)の支援を得て、英国を10日間訪問し、議員や外務・英連邦・開発省(FCDO)の当局者、市民社会組織と面会した。

こうした対話は、企業活動、金融システム、外交関係を通じて収奪的な事業と結びつく国の政府に対し、被害の防止と危険にさらされる人々の保護に責任を果たすよう求める、より広範な国際的努力の一環である。

英国は一つのアクターにすぎない。だが、企業責任や人権擁護者支援をめぐる英国の政策は、国境を越えて大きな影響を及ぼす。

なぜ拘束力ある国際規則が必要なのか

先住民と市民社会は長年にわたり、ビジネスと人権に関する拘束力ある国連条約を求めてきた。その切迫性は、土地と水を守ろうとして失われた命、そしていまも行方不明のままの人権擁護者の存在によって、痛切に示されている。

拘束力ある条約は、グローバル・サプライチェーン全体にわたる人権・環境デューデリジェンス(相当の注意義務)の義務化、国境を越えた司法救済へのアクセスの保障、人権擁護者の保護を法的義務として位置づけることを可能にする。さらに、自由意思による事前の十分な情報に基づく同意(Free, Prior and Informed Consent=FPIC)を、「任意」ではなく、法的に実効性のあるものにできる。

そうした条約は開発を妨げない。開発が暴力、収奪、不処罰に依存しないようにするための土台となる。

すべての人のために生命を守る

先住民は進歩の障害ではない。私たちは、自らの領域を超えて生命を支える生態系を守っている。先住民の女性はしばしばその最前線に立つ一方、同時に並外れた危険にもさらされている。

人権擁護者が失踪させられ、他の人々が殺され、私の姪のような若い女性が命を落とすとき、苦しむのは私たちの共同体だけではない。生態系が深刻な危機にあるいま、土地と水、そして生物多様性を守る人々を、世界は失うことになる。

生命と土地を守ることが、人命の犠牲を代償としてはならない。(原文へ

クラウディア・イグナシオ・アルバレスは、ミチョアカン州サン・アンドレス・ツィロンダロ出身のプルペチャ先住民フェミニストで、レズビアンの環境人権擁護者。人権連帯ネットワーク「レッド・ソリダリア・デ・デレチョス・ウマノス(Red Solidaria de Derechos Humanos)」を通じ、収奪産業と組織犯罪から領域を守ろうとする先住民・農村共同体を支援している。彼女の活動は、2023年以降、ピース・ブリゲーズ・インターナショナル(PBI)の支援を受けている。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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