SDGsGoal12(作る責任 使う責任)労働搾取に挑み、すべての菓子で環境保護を掲げるベーカリー

労働搾取に挑み、すべての菓子で環境保護を掲げるベーカリー

飲食店での搾取経験を踏まえ、パトリシア・フィゲロアは、適正な労働条件と環境配慮にこだわるプロジェクトを立ち上げた。

【メキシコシティーINPS Japan=ギレルモ・アヤラ

菓子づくりは創造性と情熱がものを言う営みだと語られがちだ。だが、この業界の労働環境が注目されることは多くない。長時間労働や低賃金、権利の侵害が起きることもある。|スペイン語版|英語|インドネシア語|中国語|

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

6年前、フランスとメキシコの高級レストランで10年以上の経験を積んだパティシエ、パトリシア・フィゲロアさんは、社会と環境に配慮したデリバリー型のパティスリー事業を立ち上げた。材料は「メキシコ産100%」にこだわる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、目標8「働きがいも経済成長も」に通じるディーセント・ワーク(適正な労働)と、目標12「つくる責任 つかう責任」に通じる責任ある生産と消費を柱に据えている。

「『Ñam(ニャム)』は新型コロナのパンデミックのさなかに生まれた。私はレストランでパティシエをしていたが、辞職届に署名するよう求められた。これまでの職歴でも、権利を認められないまま長時間働かされ、賃金も低い―そんなことが少なくなかった。そこでなぜ、こんなに好きな仕事が、こんな形でしか成り立たないのか。変えられるなら、変えていこう、と思いました。」

この経験を転機に、彼女は製造のあり方だけでなく、働き方そのものを見直した。注文が増える時期には、スタッフを正式な手続きを踏んで雇用するという。「契約書に署名してもらい、法律に基づき必要なことはすべて説明する。労働搾取の連鎖を自らの事業で再生産しないための「約束」だとしている。

メキシコの風味を、ケーキとペストリーに

このプロジェクトの倫理的な姿勢は、商品づくりにも反映されている。Ñamは受注生産を基本とし、食品ロスを抑えながら鮮度も保つ。メニューには、イチゴとホワイトチョコレート、ハイビスカスを組み合わせたケーキや、赤ワインを効かせたピンクグアバのチーズケーキ、バジルを添えたマンゴームースなど、印象的な組み合わせが並ぶ。

Mango and Basil Tart. Credit: Paulina Figueroa Garduño (@p_fig_)

さらに、メキシコらしさを前面に打ち出した菓子も用意する。米、シナモン、砂糖、牛乳、水で作る伝統飲料「オルチャータ」を取り入れたケーキは、9月の祝祭シーズン向けに考案されたものだ。11月の「死者の日」の時期には、伝統菓子「パン・デ・ムエルト」も提供する。

こうした社会・環境への配慮は、仕入れ先との関係にも及ぶ。フィゲロアは「互いに利益を分かち合う」経済の循環を重視する。

「自分の商品と、その影響に自信を持っている。購入してくれる人が私を支え、私もまた別の人を支える。こうした互恵的な関係はとても良いものだ。人々はおいしいデザートを楽しみ、その購入が誰かの幸せにもつながる」と、彼女はINPS Japanの取材に語った。

現在、使用する食材のおよそ70%は、環境再生型農業(アグロエコロジー)によるもので、国内各地から調達している。ベラクルス州トトナカパン地方からはシナモンやゴマ、ミカンを仕入れ、米とピンクグアバはモレロス州トラヤカパン産を使用する。地域の生産者と直接つながることが、地域経済の活性化にもつながるという。

Range of desserts Ñam desserts.
Credit: Paulina Figueroa Garduño (@p_fig_)
Range of desserts Ñam desserts. Credit: Paulina Figueroa Garduño (@p_fig_)
責任ある生産・消費と、オンデマンド製造のモデル
SDGs Goal No. 12
SDGs Goal No. 12

Ñamは、SDGs目標12に沿う「責任ある生産と消費」にも重点を置く。受注生産モデルは、食品ロスを減らすだけでなく、ガスや水の使用、不要な包装の使用も抑えられる。これは外食産業に構造的に存在する課題の一つである。国連環境計画(UNEP)の「Food Waste Index 2024」によれば、メキシコでは毎年1,340万トンの食品が廃棄されており、同国は米州で主要な廃棄物発生国の一つとされる。

プロジェクト名は、スペイン語で「おいしい」を表す擬音的表現「ñam」に由来し、英語の「yummy」に近い意味合いだという。現在、Ñamは主にウェブサイトとインスタグラムを通じて運営し、菓子の情報とともに、事業に込めた物語も発信している。

フィゲロアはメキシコ市で事業を続ける一方、「社会・環境ビジネス管理」の修士課程で学んでいる。中期的には、店頭でその場で菓子を味わえる物理的な拠点へと事業形態を転換し、ディーセント・ワークと責任ある生産という原則を、より日常的に体現できる場にしたい考えである。(原文へ

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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