ニュース次期国連事務総長は「選ばれる」のではない―「合意される」のだ

次期国連事務総長は「選ばれる」のではない―「合意される」のだ

【国連本部ATN=アハメド・ファティ】

次期国連事務総長選びが始まった。少なくとも公式にはそうである。各国に書簡が送られ、候補者が推薦され、ビジョン・ステートメントも出そろった。今後数カ月のうちに、有力候補たちは加盟国との公開対話に臨み、改革、平和維持、そして多国間主義の将来について質問に答えることになる。

表向き、このプロセスは透明で秩序立ったものに見える。

だが、国連を長く見てきた者なら誰もが知っているように、事務総長選は演説で決まることはほとんどない。

勝敗を決めるのは、政治的な「算術」である。

Michelle Bachelet
Michelle Bachelet

公開された手続きの背後では、地域グループ、政治同盟、そして安全保障理事会の5常任理事国による拒否権が絡む静かな外交交渉が進んでいる。選挙戦の言葉はビジョンや指導力を前面に掲げるが、最終的な決着はもっと単純な一点に収れんする。すなわち、世界で最も力を持つ政府が「受け入れ可能」とみなす人物は誰か、ということである。

今年の候補者の顔触れは、その複雑な計算をよく映し出している。

ミシェル・バチェレ氏は、おそらく最も知名度の高い国際的経歴を携えて選挙戦に入った。チリ元大統領であり、元国連人権高等弁務官でもある同氏は、一国の指導者としての政治的重みと、国連高官としての制度的経験を併せ持つ。チリ、ブラジル、メキシコによる推薦は、中南米の一部諸国が国際的存在感のある候補を早い段階で結集軸にしようとしていることを示唆している。

Rebeca Grynspan
Rebeca Grynspan

バチェレ氏の訴えの中心にあるのは、国際協力が揺らぐ時代において多国間機関への信頼を取り戻すことである。これは国連外交で繰り返し語られてきたテーマでもある。戦争は増え、地政学的対立は鋭さを増し、国際機関への信頼は後退している。彼女の選挙戦は、国連がこの分断された世界に適応しつつ、創設時の原則を守り抜かなければならないと訴えている。

しかし、中南米からは別のタイプの候補も出ている。

現在、国連貿易開発会議(UNCTAD)事務総長を務めるレベッカ・グリンスパン氏である。コスタリカ元副大統領で、開発経済学を専門とする同氏は、貿易、金融安定、開発政策をめぐる取り組みを通じて、国連システム内で幅広い敬意を集めてきた。彼女の選挙戦が掲げるのは、国連をより機能的で、より説明責任のある、そして今日の世界経済の現実に即した組織へと立て直すことで、信頼性を回復するという路線である。

Rafael Grossi
Rafael Grossi

アルゼンチンは、現在国際原子力機関(IAEA)事務局長を務める職業外交官、ラファエル・グロッシ氏を推薦した。

その立候補は、いわば「テクノクラート型」の道筋を示している。グロッシ氏は長年にわたり、安全保障外交、核監視、国際交渉が交差する複雑な領域で活動してきた。彼の主張は明快である。国連は宣言を重ねるだけでなく、実際に成果を出すことに集中しなければならない、というものだ。

さらに、セネガル元大統領で、直近ではアフリカ連合(AU)議長も務めたマッキー・サル氏がいる。その推薦は、近年アフリカの外交官たちの間で繰り返し聞かれる声――今こそアフリカが再び国連を率いる番だ――を反映している。

アフリカから事務総長が出たのは、コフィ・アナン氏が退任してからすでに約20年も前のことである。54の加盟国を擁し、国連平和維持活動でも中核的役割を果たしてきたアフリカの多くの政府は、国連トップにおける新たな代表性がいまこそ必要だと考えている。

Macky Sall
Macky Sall

一見すると、この選挙戦は国連の将来像をめぐる異なるビジョンの競争に見える。

だが現実には、これは何十年にもわたり事務総長選出を左右してきた構造的な力によって形づくられている。

その最も重要な力が存在するのは、安全保障理事会の議場の中である。

国連憲章上、事務総長は安全保障理事会の勧告に基づき、総会によって任命される。実際には、これは候補者がさらに厳しい試練を通過しなければならないことを意味する。すなわち、米国、中国、ロシア、英国、フランスという5常任理事国のいずれからも拒否権を行使されないことである。

あらゆる選挙戦は、この現実を前提に組み立てられる。

ワシントンは通常、多国間機関を支持しつつも、西側同盟国との現実的な関係を維持できる候補を好む。北京とモスクワは、事務局を「政治的に積極介入する主体」にしない人物を選好することが多い。欧州諸国は、制度改革と国際協調を重視する傾向がある。

事務総長選がしばしば予想外の展開をたどるのは、このためである。

序盤の有力候補が、安全保障理事会による非公式のストロー・ポール(予備投票)が始まると、最有力であり続けるとは限らない。こうした非公開の投票では、各国政府がひそかに支持と「受け入れ不能ライン」を示す。常任理事国の一国からでも否定的な票が出れば、それだけで候補者の道が断たれることもある。

この過程の背後には、外交官たちがしばしば口にしながら、めったに制度化しないもう一つの要素がある。

地域持ち回りである。

国連憲章は、事務総長職に地域持ち回り制を定めてはいない。だが、このポストは長年にわたり、欧州、アジア、中南米、アフリカの間を緩やかに移ってきた。この慣行が、いまの選挙戦をめぐる主張の土台になっている。

アフリカ諸国にとって理屈は明快だ。アフリカは国連で最大の地域グループであり、平和維持や開発をめぐる議論でも中心的役割を担っている。それにもかかわらず、国際機関の最上層部における指導的地位は依然として限られている。アフリカ出身の事務総長を選ぶことは、この不均衡を是正する一歩になる。

その一方で、加盟国の間では別の論点も勢いを増している。

国連の約80年の歴史において、事務総長は一貫して男性だけであった。

国際機関全体でジェンダー平等を推進してきた各国政府にとって、次の国連トップは初の女性事務総長となり得る。もしこの論理が優勢になれば、争いはバチェレ氏とグリンスパン氏の2人に一気に絞られることになる。

さらに、地政学的な分断が深すぎる場合、熟練した外交官たちが水面下でしばしば語る第三の可能性もある。

大国間で政治色の強い人物に合意できないとき、彼らは時にテクノクラートに落ち着く。すなわち、イデオロギー上の対立をあまり背負い込まずに職務に就ける、評価の高い外交官である。この選挙戦でその人物像に当てはまるのがグロッシ氏である。

しかし、こうした複数の物語が同時に満たされることはない。

アフリカの候補を選べば、地域持ち回り論に応えることになる。女性を選べば、ジェンダー不均衡の是正につながる。テクノクラート型の外交官を選べば、安全保障理事会にとって無難な妥協案となる。

やがてこの選挙戦は、そうした優先順位の間で選択を迫られることになる。

当面は、公式対話と外交的な働きかけを通じて選挙戦が進んでいく。各国政府は耳を傾け、候補者は各地を回り、同盟関係はゆっくりと形を取っていく。

だが、その表のプロセスの下で、本当の計算はすでに始まっている。

問われているのは、単に誰がその職を望んでいるかではない。

世界で最も力を持つ政府が、今後5年間「この人物なら受け入れられる」と考えるのは誰か、ということである。

国連事務総長選は、常にこの静かな算術によって決まってきた。

今回だけが例外になると考える理由は、ほとんどない。

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/the-next-un-secretary-general-power-diplomacy-and-the-quiet-arithmetic-behind-the-race

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