SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)カザフスタン、非核化の成功例を国連で示す―なお難題として残る中東

カザフスタン、非核化の成功例を国連で示す―なお難題として残る中東

ニューヨーク国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】

核の危険性に警鐘を鳴らす声が相次いだ国連会議で、カザフスタンは別のメッセージを示した。中央アジアは核に頼らない道を選び、その選択を守り続けてきた、というものだ。

Central Asia Nuclear Free Zones
Central Asia Nuclear Free Zones

このメッセージは4月28日、セミパラチンスク(セメイ)条約によって創設された「中央アジア非核兵器地帯」の20周年を記念するサイドイベントで示された。2026年NPT再検討会議の期間中に開かれたこのイベントでは、核リスクが再び高まるなか、非核兵器地帯がいまなお安全保障上の価値を持ち得るのかが検討された。

Open Nuclear Networkのオラミデ・サミュエル氏が司会を務めたこのサイドイベントは、カザフスタン国連常駐代表部、国連軍縮部、国連軍縮研究所(UNIDIR)、核脅威イニシアティブが共催した。会合でより根本的に問われたのは、安全保障環境が厳しさを増す時代に、地域として核を自制する枠組みが持ちこたえられるのか、ということだった。

カザフスタンにとって、その答えはセミパラチンスクから始まる。

Yerzhan Ashikbayev, Kazakhstan’s First Deputy Minister of Foreign Affairs

カザフスタンのイェルラン・アシクバエフ第一外務副大臣は、この20周年を、中央アジア諸国が核抑止ではなく、透明性、協力、信頼に基づいて安全保障を追求するという「意図的な戦略的選択」を行ったことを改めて示す節目だと位置づけた。同氏は、この非核兵器地帯が、核兵器に頼らない安全保障は「可能であるだけでなく、持続可能でもある」ことを証明してきたと述べた。

Chris King, chief of the Weapons of Mass Destruction Branch at the UNODA

セミパラチンスク条約は、ソ連時代の核実験が冷戦終結後も深い傷跡を残した地の名を冠している。カザフスタンにとって、この非核兵器地帯は、その歴史的な傷に向き合う一つの答えでもある。

国連軍縮部で大量破壊兵器部門を統括するクリス・キング氏は、非核兵器地帯を、地域の安全保障、不拡散、核リスク低減を支える「生きた枠組み」と位置づけた。一方で同氏は、その実効性にはなおばらつきがあり、核兵器国が一部の議定書に署名・批准していない例や、安全の保証に留保を付している例もあると警告した。

Maria Cecilia Barcelos Cavalcante Vieira of Brazil
Maria Cecilia Barcelos Cavalcante Vieira of Brazil

非核兵器地帯に関する新たな研究をまとめる、国連委嘱の有識者グループ議長で、ブラジルのマリア・セシリア・バルセロス・カヴァルカンテ・ヴィエイラ氏は、国連による最初の本格的な研究から50年が過ぎたとして、新たな評価の必要性を指摘した。問われているのは、より危険な世界において、非核兵器地帯がなお有効性を保ち得るのかという点である。

UNIDIR所長のロビン・ガイス氏は、非核兵器地帯は発展していくことを前提とした枠組みだと述べた。また、中央アジア非核兵器地帯について、安全保障を開発、環境保護、公衆衛生と結びつけた点で、独自の貢献を果たしてきたと指摘した。

核脅威イニシアティブ(Nuclear Threat Initiative: NTI)のマーク・メラメド氏は、非核兵器地帯はNPTの成功例の一つであり続けていると評価する一方、その成果が今後も維持されるとは限らないと警告した。

UNIDIRのサラ・オパトフスキー氏は、既存の非核兵器地帯を地図上で可視化し、比較できるデジタル・プラットフォーム「Nuclear-Weapon-Free Zones Hub」を紹介した。

各国代表も討議に加わった。

2026年NPT再検討会議の中国代表団長である孫暁波氏は、中国政府は地域主導と自由意思に基づく非核兵器地帯を支持しており、核兵器国が参加可能なすべての議定書に署名・批准していると述べた。

キルギスのアイダ・カスマリエワ国連常駐代表は、中央アジア非核兵器地帯条約について、大胆な夢を現実に変えたものだと評価した。セミパラチンスク条約の寄託国として発言した同氏は、5つの核兵器国のうち4か国が、中央アジア諸国に安全の保証を与える議定書を批准済みだとし、残る1か国にも手続きを完了するよう求めた。

2026年NPT再検討会議のロシア代表団長、ミハイル・コンドラテンコフ氏は、ロシア政府が非核兵器地帯を支持していると述べるとともに、核兵器その他の大量破壊兵器のない中東地帯の実現に向けた取り組みにロシアも関与していると説明した。

その後、イベントの焦点は20周年の記念から、その経験を他地域にどう生かすかへと移った。

セミパラチンスク条約の20年にわたる経験から、今後の非核兵器地帯交渉、とりわけ停滞する「大量破壊兵器のない中東地帯」構想に、どのような教訓を生かせるのか。この問いに対し、パネリストたちは単純な答えを示さなかった。

The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.
The 2026 NPT Review Conference opens at the United Nations in New York, bringing renewed attention to nuclear disarmament, non-proliferation and the future of global nuclear restraint.

ヴィエイラ氏は、中東は特殊な事例だと指摘した。国連決議と結びついているだけでなく、核兵器に限らず大量破壊兵器全般を対象としているためである。アシクバエフ氏は、カザフスタンの歩みは、セミパラチンスクの悲劇、ネバダ・セミパラチンスク反核運動、1991年の実験場閉鎖、そして不拡散をめぐる地域協力によって形づくられてきたと述べた。

キング氏は、非核兵器地帯はいずれも、それぞれ固有の状況の中から生まれたと指摘した。ラテンアメリカのトラテロルコ条約はキューバ危機後に成立し、南太平洋と中央アジアでは核実験の経験が形成を後押しした。成功した非核兵器地帯は通常、各国が共通の危険や記憶を認識し、それを政策へと転換できるほどの共通理解を持ったときに実現している。

この点は、中東を考えるうえで重要である。同地域には、現在も続く戦争、根深い不信、イスラエルの未申告の核能力、イランの核問題、競合する安全保障ドクトリン、さらに紛争に深く関与する域外大国が存在する。中東で構想されている地帯は、核兵器にとどまらず、すべての大量破壊兵器の廃絶を目指すものであり、その分、複雑さは増している

Ahmed Fathi, Founder and editor of ATN

中央アジアの教訓は重い。しかし、それをそのまま他地域に当てはめることはできない。セミパラチンスクの経験が成果を上げたのは、核被害に対する共通理解を軸に、記憶、政治的意思、地域の主体性が重なり合ったからである。

カザフスタンは、核の自制を築き、維持できることを示した。一方、中東はなお、はるかに難しい試金石であり続けている。人々が同じ危険を共有しながら、互いを信頼していないとき、何が起こるのか―その問いが突きつけられている。(原文へ

Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/kazakhstan-brings-a-nuclear-free-success-story-to-the-un

INPS Japan

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