【ニューヨークIPS=ナウリーン・ホセイン】
「私たちが希望を選択するのは、絶望が、私たちには受け入れられない一種の降伏だからです。」核軍縮をめぐる世界の分断が深まる中、核軍縮をなお追求すべきかが問われる状況を踏まえ、フィリピン国連大使のエンリケ・マナロ氏は、市民社会の代表者や外交関係者にそう語った。|英語版|中国語|

4月30日、2026年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に合わせて開かれたサイドイベントで、マナロ大使をはじめとする登壇者らは、外交対話に希望の視点を取り入れ、核兵器の人道的影響を踏まえて核軍縮の必要性を訴えることで、NPTをめぐる機運を再び高める方策について議論した。
このイベントは、創価学会インタナショナル(SGI)、核時代平和財団、フィリピン、キリバス両国の国連常駐代表部の共催で開かれた。
核兵器の人道的影響に焦点を当てた今回のイベントは、核兵器をめぐる議論の中で、これまで十分に取り上げられてこなかった視点を浮き彫りにした。今週の一般討論では、国連加盟国が、平和と安全保障に向けた共通のビジョンの下で多国間協力が何を成し得るかを示す長年の証左として、NPTを守り維持することの重要性を訴えてきた。

各国は、NPTが国際的な軍縮体制の礎であることを改めて強調している。しかし、現在の地政学的環境に加え、国際制度の構造的な弱体化が、同条約の根幹をなす原則を揺るがしている。だからこそ、加盟国がNPTへのコミットメントを再確認し、国際の平和と安全の維持に向けた決意を示すことが、これまで以上に重要となっている。

しかし現時点では、一部のNPT締約国が自らの義務をどこまで果たしているのかが、議論の焦点となっている。非核兵器国の代表らは、核兵器国が不拡散上の義務を十分に果たしておらず、核戦力の拡大さえ検討していると指摘した。そうした動きはNPT違反にあたる。
核爆発がもたらす影響は、複数の登壇者が指摘したように、爆心地を越えて広範囲に及ぶ。被災した地域社会には、家屋の破壊、負傷、生涯にわたる健康被害など、壊滅的な影響が直後からもたらされる。
放射線被ばくは、世代を超えて影響を及ぼす災厄である。第2世代、第3世代の人々も、その影響による慢性的な健康問題に苦しんでいる。
胎内被爆者であり、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の代表理事を務める松浦秀人氏は、その現実を証言した。松浦氏は1945年、広島に原爆が投下された時、母の胎内にいた。胎内で受けた被ばくは、その後の人生にも深い影響を及ぼした。
日本被団協の代表理事として、松浦氏は「ノーモア・ヒバクシャ」の理念のもと、平和と核軍縮のメッセージ発信に尽力してきた。松浦氏は、原爆投下とその直後を生き抜いた母親の体験を紹介した。投下から数日のうちに熱傷や放射線障害で命を落とした人々に触れるとともに、生き延びた人々も極めて過酷な状況に置かれていたと語った。
時がたつにつれ、人々は深刻な健康問題を訴えるようになったが、自分たちを苦しめる病の原因を理解できなかった。広島・長崎への原爆投下から80年を経た今も、被爆者とその子孫は、がんや白血病など、被ばく後、長い年月を経て発症する病気に苦しみ続けている。同時に、彼らは何よりも平和の大切さを訴えるため、国際社会に向けて自らの体験を語り続けている。

「あらためて私は訴えます。核兵器と人類と共存できません。」と松浦氏は述べた。「すべての国が一日でも早く核兵器禁止条約に参加しましょう。そして、核兵器の当面の禁止と将来的な廃絶を実現しましょう。そのために皆さんと力を合わせるために、私はやってきました。」
キリバスのような太平洋島嶼国も、核実験が地域社会に及ぼした影響を物語る事例である。太平洋で核実験が行われたのは、大陸から比較的離れていることを理由としたものだったが、島嶼国とその住民も放射線被ばくの影響を免れなかった。
文化・伝統上、神聖とされる場所を含む一部地域は、今日に至るまで居住できないままである。キリバス国連常駐代表部のジョセフィン・モーテ副代表・参事官は、核実験の被害を踏まえ、被害を受けた人々や地域に対する正義の重要性を強調した。
核兵器の影響を論じるうえで、社会と環境にもたらされる混乱や破壊的影響を見過ごすことはできない。
松浦氏と、核戦争防止国際医師会議スウェーデン支部(IPPNWスウェーデン)のヨセフィン・リンド事務局長はいずれも、放射線被ばくが妊婦と胎児・子どもたちに及ぼした影響に言及した。
ルンド氏は、原爆投下後、医療体制が崩壊したと指摘した。ほぼすべての病院が破壊され、医療従事者の3分の2以上が死亡したため、生存者は十分な治療を受けられなかった。
さらに、汚染されていない食料や水の確保は極めて困難となり、インフラの破壊と衛生環境の悪化は、疾病が急速に広がる土壌となった。こうした事実は、人間が核戦争の影響に対して「極めて脆弱」であることを示していると、ルンド氏は述べた。
「核兵器は単なる戦争の道具ではありません。それは大量の苦しみをもたらす兵器です。その影響は時間的にも空間的にも制御できません。民間人を傷つけ、医療体制を破壊し、環境を汚染し、人類に長く消えない傷痕を残します。」とルンド氏は語った。
核兵器の脅威は、現代におけるもう一つの存亡に関わる脅威である気候変動とも密接に結びついている。紛争や通常兵器の使用でさえ、環境に壊滅的な被害をもたらし得る。

さらに、核兵器と気候変動はいずれも、核時代平和財団のアウトリーチ・コーディネーター、アンデュイン・デボス氏が「脅威を増幅させる要因」と呼ぶものだ。その影響は「平和と健康を維持するために必要な条件を損ない」、「不安定化を招く要因を深める」と同氏は述べた。
気候変動は、大規模な移住・避難や希少資源をめぐる競争を引き起こし、不安定化や紛争を招く要因となり得る。一方、核兵器が存在し続け、軍縮努力が進展しないことは、NPT体制を脅かしている。デボス氏はさらに、「優先順位の危機」にも警鐘を鳴らした。核戦力の拡大を含む軍事活動への世界的支出は近年増加しているが、そうした資源は本来、軍縮活動や化石燃料依存からの転換に投じることができるはずだと指摘した。

それでもデボス氏をはじめとする登壇者らは、こうした困難な状況の中でも、このサイドイベントのような場から人々は励ましと希望を得ることができると強調した。この場では多様な視点が共有される一方、核軍縮こそが平和への道であるという共通の信念が参加者を結びつけていた。国連加盟国の半数以上が、NPTや核兵器禁止条約(TPNW)などの国際条約の締約国であるという事実にも、希望を見いだすことができる。
SGI平和センター事務局長の相島智彦氏は、平和教育が軍縮を促進し、核抑止論を退けるうえで重要な役割を果たすと強調した。
核爆発の現実を人々に伝えることで、核抑止論は戦略としての説得力を失い、むしろ「徹底して非人道的な」手段であることが明らかになる。
相島氏は、国連本部でのNPT再検討会議に戻る外交官らに対し、議論を続ける中で、市民社会と被爆者の警告に耳を傾けるよう呼びかけた。
「核兵器の人道的な影響を、皆様の政策の指針にしてください。共に、抑止という幻想を退けましょう。人間の安全保障を選びましょう。そして、希望を選びましょう。」

This article is produced to you by IPS NORAM, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan
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