炭化水素から炭水化物へ

中東での戦争による燃料価格高騰と肥料不足で、ネパールは食料危機に直面している

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

ネパール経済を動かすには石油が必要であり、ネパールの人々が生きるには食料が必要である。この二つは切っても切り離せない関係にある。|ENGLISH

ホルムズ海峡の封鎖が長期化したことで燃料価格が急騰し、食料と農業のコストを押し上げている。さらに、深刻な肥料不足と価格上昇により、今年の作物収量は減少する見通しだ。

差し迫る危機に追い打ちをかけるように、気象モデルは今年のモンスーンが平年を下回る可能性を示している。ネパールの農業は大半が雨水に依存しているだけに、その影響は大きい。化石燃料の燃焼が気候変動を引き起こし、異常気象を招き、それが食料供給を脅かす―悪循環である。

バレンドラ・シャー首相が政令や不法占拠地区の撤去に気を取られるなか、ネパールは食料危機へと陥りつつある。

Rural farmer watches approaching storm Image: INPS Japan

農業はネパールのGDPの4分の1を占め、国民の60%が農業に従事している。しかし、灌漑が整備されている農地は全体の35%にすぎない。若者の多くは農村から流出し、農地は耕作放棄地となり、残った農民も換金作物に見合う価格を得られていない。

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「ネパールが自国民を養うには、毎年1200万トンの穀物が必要で、そのうち200万トンを輸入している。しかし今年は生産量が少なくとも20%減る見込みで、輸入量を増やさざるを得ないだろう。」と、世界食糧計画(WFP)の各国代表を務めたビショウ・パラジュリ氏は警告する。「この10年ほど、ネパールの農業生産性は停滞している。農業部門が軽視されてきたためだ。」

例年でさえ、管理の不備や汚職により、田植えの時期には慢性的な肥料不足が起きてきた。だが、世界の肥料価格は2026年に31%上昇すると予測されている。尿素に含まれる窒素の原料となるのは天然ガスで、その尿素価格はすでに60%も上昇している。

ネパールはコメ生産だけで年間45万トンの肥料を必要としている。しかしインドが供給に同意したのは、尿素6万トンとリン酸二アンモニウム(DAP)2万トンにとどまる。インドは尿素需要の87%を国内で賄っているが、その製造には湾岸地域からの天然ガスが必要だ。また、他の肥料の原料となるアンモニア、リン、カリウムも輸入している。

こうしたなか、インド外務省のランディール・ジャイスワル報道官は、インドがネパールへの石油および化学肥料の供給を継続すると述べた。

「スーパー・デューパー・エルニーニョ」

状況をさらに悪化させているのが、今年、太平洋で発生している「スーパー・デューパー・エルニーニョ」である。これにより、世界各地で激しい嵐、熱波、干ばつが引き起こされるとみられている。南アジア気候見通しフォーラムは、今年のモンスーン期にネパールの降雨量が平年を下回ると予測している。

「平年を上回る雨が降った年でさえ、降雨は均等には分布していなかった。乾燥した期間の合間に、局地的な豪雨が起きたのだ」と、気候科学者のンガミンドラ・ダハル氏は語る。「昨年はタライ地方の農業が干ばつに見舞われ、穀物収穫に深刻な影響が出た。」

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灌漑は、とりわけ乾燥地域において影響を和らげる手段となり得る。しかし、シクタ、ベリ・ババイ、スンコシ・マリンといった流域間導水事業の多くは遅延または停滞している。さらに現在、ディーゼルやアスファルトの不足により、他のインフラ事業も脅かされている。

「時代遅れの用水路灌漑から脱却し、太陽光ポンプへ移行すべきだ。余剰電力を活用するため電気料金を引き下げ、農民が利用できるようにしなければならない」と、エネルギー起業家のクシャル・グルン氏は述べる。

当面の急務はインドから化学肥料をさらに購入することだが、ネパールは輸入負担を減らすため、ナワルプルで計画されている尿素工場の建設を急ぐとともに、有機肥料の利用を復活させるべきである。

ナワルプル事業の予備調査報告書の作成に携わったグルン氏はこう語る。「エネルギー省と農業省は、尿素工場の早期実現に向けて主体的に取り組むべきだ。生産される肥料の価格を定め、全量を買い取ると約束する必要がある。」

ネパールは現在、肉と卵の生産では自給を達成しており、乳製品でも前進している。これは農地に使える家畜ふん尿が十分にあることを意味する。都市部では、都市廃棄物の最大70%が生分解性であり、有機肥料やバイオガスに転換できる。

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「都市廃棄物のわずか20%を利用するだけでも、350万トンの肥料を生産できる。ただし、そのためには税制優遇や電気料金の割引といった投資家向けのインセンティブが必要だ。」とグルン氏は言う。

ネパールの農民が化学肥料を使い始める以前は、土壌の栄養分を補うため、主に家畜ふんを農地にまいていた。土壌有機物(SOM)は本来5%程度が望ましいが、ネパールでは現在2%を下回っている。タライ地方では、農薬や化学肥料の過剰使用により1%にまで低下している。

土壌の肥沃度が落ちたため、農民は即効性の栄養分を作物に与える化学肥料をさらに必要とするようになった。しかし、農薬や化学肥料は長期的には土壌を劣化させ、その結果、さらに多くの肥料が必要になる。

ンガミンドラ・ダハル氏は、バイオ炭と呼ばれる炭の一種を使えば、この問題を解決できると述べる。バイオ炭はスポンジのように水を吸収し、土壌を再生する働きがあるからだ。肥料の必要量が少なく、干ばつにも強いキビやソバなどの在来穀物を復活させることも、選択肢の一つである。

燃料、食料、肥料をめぐる差し迫った危機に対する解決策は存在する。輸入炭化水素の不足は、炭水化物の生産に影響を及ぼしている。だが、余剰の水力発電を活用して肥料を生産すれば、輸入を減らし、収穫量を増やすことができる。

ソニア・アワレはNepali Timesの編集者であり、同紙で保健、科学、環境分野の記者も務めている。気候危機、防災、開発、公衆衛生を幅広く取材し、それらの政治的・経済的な相互関係に焦点を当ててきた。公衆衛生を専攻し、香港大学でジャーナリズムの修士号を取得している。

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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