【アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】

カザフスタンの首都アスタナで開かれた非公開上映会では、人工知能(AI)を使って制作された映画が、研究室やデータセンターの外にも広がる技術革新の可能性を映し出していた。制作者にとってAIは、かつては映像化が難しかった物語を形にし、観客に届ける手段になりつつある。
10月3日、初開催のアスタナAI映画祭は、ラトビアの映画監督ニコラ・シェスタク氏による『The First Honest Day』にグランプリを授与した。カザフスタンのミルザハン・ジュマハン氏は、『It Was Just a Joke』で最優秀キャラクター賞を受賞した。
「AI & Digital Bridge 2026」と並行して開催された映画祭は、より大きな構想の一端を示していた。技術への投資を、人々が学び、働き、事業を起こし、創作する機会につなげようというものである。
記者説明会や展示ブースでの取材からは、こうしたつながりを生み出そうとする取り組みが見えてきた。開会時の議論が国家戦略や基盤整備に重点を置いていたのに対し、その後の対話では、構想を実践へ移し始めた人々の姿が浮かび上がった。

その中核の一つが、旧EXPO会場の球体の建物に設けられた「Alem.AI」だ。10月2日の記者説明会で、ジャスラン・マディエフ副首相兼AI・デジタル開発相は、一般の人々がAIに触れるところから、教育、研究、起業を経て、経済の各分野での活用へとつなぐ拠点として説明した。
出発点にあるのは好奇心である。家族や子どもたちは展示を通じてAIに触れ、無料のTUMOプログラムでは、12~18歳の若者が技術や創作分野を学ぶ機会を得られる。
省の説明資料によると、TUMOには4500人が登録している。18歳以上を対象とするTomorrow Schoolでは、学生同士で学ぶ方式を採用し、実践と協働を通じて技能を身につける無料の学習環境を提供している。マディエフ氏によれば、このプログラムは14地域にも展開している。
こうした取り組みは、技術を学ぶ入口を広げ、変化する経済に必要な能力を育む場を提供している。
会場では、アティラウから来た18歳の学生、ダスタンさんが、AIを学んでいると話した。翻訳を介したやり取りで、自分自身で理解を深める代わりにAIへ頼ることへの懸念を示した。その言葉は、学習機会の拡大とともに取り組むべき教育上の課題を映していた。強力な道具を使いながら、自ら考える力をどう育てるかという課題である。

技能を仕事につなぐ別の道筋は、ネットワーク・スクールのブースで紹介された。担当者は、住居や共同作業の場、家族を持つ参加者への支援を組み合わせたコミュニティーについて説明した。
同担当者はまた、オンラインと対面の試験、面接、試用段階を通じ、カザフスタンのソフトウエア技術者を国際的な企業の仕事につなぐ仕組みを紹介した。通常の学校教育を提供することよりも、実証された能力を就業機会に結びつけることに重点を置いている。
カザフスタンに暮らしながら遠隔で働ける技術者にとって、こうしたつながりは、国際市場に参加する機会を広げうる。
デジタル技術を企業の実務に役立つ仕組みへと発展させる取り組みは、同国の起業家にも見られる。

BTKazのマディヤール・アイイップ最高経営責任者(CEO)は、企業間の調達や、買い手と供給業者のやり取りを、より効率的で透明性の高いものにするデジタルプラットフォーム「FOCUS」を開発していると説明した。
「私たちにとって、デジタル化が価値を生むのは、実際のビジネス上の問題を解決するときです」とアイイップ氏は語った。「調達では今も、連絡が複数の手段に分散し、供給業者を探すのに時間がかかり、技術面や取引条件に関する提案を何段階にもわたって比較することがあります。FOCUSでは、その過程をできるだけ一つのデジタル環境にまとめたいと考えています。」
開発の出発点となったのは、適切な供給業者を見つけ、提案を比較し、要件を調整して取引を進めるという、調達現場の具体的な課題だった。地元のスタートアップで働きながらソフトウエア開発の技能を身につけたアイイップ氏は、将来的に世界各地の企業に役立つサービスを開発する基盤として、AIに可能性を見いだしている。
カザフスタンは、海外からの人材誘致にも力を入れている。10月3日の記者説明会で、Astana Hubのマネージング・ディレクター、リナタ・イリュバエワ氏は、技術者や起業家、研究者、投資家が同国を活動拠点として選べるよう支援する「Trusted Kazakhstan」構想を説明した。同氏が紹介した支援は、入国・在留手続きや必要書類の準備から、教育、創業支援、事業成長の支援まで幅広い。外国籍の創業者も会社を設立し、Astana Hubの優遇措置やサービスの利用を申請できるという。起業家のコミュニティーと実務的な支援を組み合わせることで、新たに来た人々が製品開発に集中できる環境を整えようとしている。
Astana Hubが以前に紹介した事例は、仕事の機会と生活の定着が互いを支えうることを示す。Datanomixのニキータ・スソエフ氏は、カザフスタンでの5年間にキャリアを築き、家庭を持ったと説明した。自社のサービスはウズベキスタンから米国まで展開しており、デジタルノマド制度が、同国で長期的な生活と仕事の展望を描く安心感につながったと述べている。
省の説明資料は、住居、教育、医療、安全を、人材の定着を支える条件として挙げた。市当局者による説明会では、学校、医療施設、スポーツ施設への投資が紹介され、急成長する首都を支える生活基盤の重要性が示された。


人材が能力を発揮するには、組織の側にも変化が求められる。10月2日のパネル討論で、カザフテレコムのバグダト・ムシン氏は、AIによって個人の生産性が高まっても、提案が長い承認手続きに阻まれれば、企業全体の変革にはつながらないと指摘した。その発言は、人材育成と組織改革を結びつけるものだった。働く人々には新たな能力を発揮する機会が必要であり、経営者には、有用なアイデアを実行に移せるよう業務の進め方を見直す役割がある。
創造産業も、技能を経済活動につなぐ道を開く。主催者の公式発表によると、映画祭には125カ国から8067作品が寄せられ、応募数で世界最大の国際AI映画コンペティションとなった。25作品が最終選考に残った。
グランプリを受賞したシェスタク氏には、賞金45万ドルが贈られた。同氏は約4年前に監督として活動を始め、2年前からAIを使った映画制作に取り組んでいるという。賞金は新たな映画の制作に投じる考えだ。インドのアビク・バネルジー氏による『SITARA』が第2位となり、賞金20万ドルを獲得した。スペインのエルネスト・デスンビラ氏による『Looking For Perseida』は第3位となり、10万ドルが贈られた。

技術への習熟は、審査の一要素だった。共同創設者でクリエイティブ・ディレクターのアイザット・クサイノフ氏によると、選考では、創作者の構想と作品全体のまとまりを何より重視した。
この審査方針は、技術が変化する時代にも、人間の判断が中心的な役割を担うことを示している。AIは制作の可能性を広げるが、その可能性を意味のある映画へと形にすることは、創作に携わる人々の仕事である。
映画祭の総資金200万ドルのうち、100万ドルが賞金に充てられ、別の100万ドルは、有望なAIチームへの投資とカザフスタン国内の制作活動の発展に充てられる予定だ。主催者は、映画祭での上映にとどまらず作品を観客に届けるため、配信プラットフォーム「Mooncast.ai」の開発も進めている。
イリュバエワ氏は、映画祭を、創造分野で活動する起業家の誘致や、国内でのAI映画制作の発展に結びつけて説明した。学び、制作、配信、投資をつなぐことで、継続的な創作活動を支える基盤が生まれる可能性がある。
各事業の進捗は異なり、学びが就業にどれだけ結びついたかは、今後も重要な評価指標となる。それでも、取り組みに共通する方向は見え始めている。学ぶ機会を広げ、技能を仕事につなぎ、事業を支え、作品を観客に届けることである。
カシムジョマルト・トカエフ大統領は、技術の進歩を一人ひとりの国民の具体的な利益へと変えるべきだと述べている。アスタナでは、その構想が、人々を新たな可能性へとつなぐ組織や出会いを通じて形になりつつある。その持続的な価値は、学ぶ人が実践の担い手となり、起業家が事業を着実に育て、制作者が自らの物語を届ける観客を見いだすなかで生まれていくだろう。

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

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