【ニューヨークIPS=アンワルル・K・チョウドリー】
次期国連事務総長の選出は、重大な局面を迎えている。そこには、世界で最も普遍的な機関である国連の公正性、透明性、地域間のバランス、そして民主的正統性をめぐる根本的な問いが突きつけられている。|英語版|
アラブ首長国連邦(UAE)は10月21日、同国のラナ・ヌセイベ国務相(大使)を候補に指名すると発表した。これにより、すでに長期化している選出プロセスに新たな局面が加わった。
ヌセイベ大使は経験豊かな外交官であり、国連への貢献でも確かな実績を持つ。しかし、この立候補のタイミングは、選出プロセスの健全性と信頼性について、正当な疑問を投げかけるものだ。
歴史的な選出をリードする2人の女性
安全保障理事会ではすでに6回の予備投票(ストロー・ポール)が行われた。その結果、国連のラテンアメリカ・カリブ地域グループに属する卓越した能力を持つ2人の女性、コスタリカのレベッカ・グリンスパン氏とガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏が上位2候補として浮上した。グリンスパン氏は直近の予備投票で、国連憲章が定める最低ラインである安保理15カ国中9票を獲得している。
これは史上初の出来事であるだけでなく、初の女性国連事務総長の選出に向けた画期的な道を開くものだ。それは国連憲章上の義務(第8条)を果たすことであり、国連のトップを男性だけが占めてきたという異常な状態を正そうとする、少なくとも10年来の世界の願いに応えることでもある。
上位2候補は精力的に選挙運動を展開し、自らのビジョンを示し、加盟国や市民社会と対話を重ね、度重なる予備投票の厳しさと不確実さに耐えてきた。その粘り強さには、心からの敬意と評価が払われるべきである。
ところが、両候補の立候補には、安保理常任理事国のうち2カ国が反対している。
拒否権が191の加盟国の意思に優先してはならない
ここで根本的な問いが生じる。なぜ拒否権を持つ2カ国の意向が、残る191の国連加盟国の総意よりも重んじられなければならないのか。
国連はすべての加盟国のものである。その指導者は、そうした普遍的な帰属を反映したものであるべきだ。
1945年の地政学的状況から受け継がれた拒否権は、いまなお国連に長い影を落としている。少数の国の意向が多数の国の選択肢を左右するようになれば、主権平等の原則と組織の実際の運営とを両立させることは、ますます難しくなる。
圧倒的多数の加盟国が、2つの強大な常任理事国の拒否権をめぐる思惑の人質にされてはならない。グリンスパン氏とロドリゲス=バーケット氏は、拒否権を持つ常任理事国5カ国のうち過半数にあたる3カ国から「奨励」票まで得ているのである。
総会は憲章上の権限を行使すべきだ
憲章上の側面についても、改めて注目すべきである。
国連憲章第97条は、事務総長は安全保障理事会の勧告に基づいて総会が任命すると明確に定めている。
総会の任命権限は明文で規定されている。密室で調整された安保理の決定を、形式的に追認するだけの儀礼的な役割に矮小化されてはならない。
総会は、勧告を受け入れられないと判断すれば、それを拒否する権限を持っている。この憲章上の責任は、独立性と確信をもって、恐れることなく、また何者にも偏ることなく行使されるべきである。
総会はすべての加盟国を代表している。その声と権限は重んじられなければならない。
地域間のバランスとラテンアメリカ・カリブ地域の正当性
地域代表のバランスも、欠かせない考慮事項である。
事務総長職の地域持ち回りについては、非公式ながら確立された了解が存在する。現職のアントニオ・グテーレス事務総長は西欧出身の4人目の国連トップであり、その直前は韓国の潘基文(パン・ギムン)氏がアジアを代表していた。
ラテンアメリカ・カリブ地域からは、これまでに1人の事務総長しか輩出されていない。1982年から1991年まで務めたペルーのハビエル・ペレス・デクエヤル氏であり、それは今から35年前のことだ。
したがって、同地域が「今度こそ自分たちの番だ」と期待するのには、説得力のある歴史的根拠がある。
同地域の候補者たちは、選出プロセスに多大な労力を注いできた。厳しい審査、不確実性、そして政治的抵抗に直面しながらも、彼女たちは威厳をもってその嵐を乗り越えてきた。
いま両候補を素通りすることになれば、それも主として2つの常任理事国が不満を抱いているという理由によってであれば、選出プロセス全体の価値に深刻な疑問が生じるだろう。
遅れて参入する候補とプロセスの信頼性
遅れての立候補は、現行の慣行の下では認められている。しかし、常任理事国の反対を明らかにする決定的な色分け投票を含め、6回の予備投票を経た後に参戦することは、手続きの公正さについての懸念を避けられない。
それはまるで、木を植えることも育てることもせずに、収穫の時期になって現れ、果実だけを手にしようとするようなものだ。
事務総長の任命をめぐっては、時にかなり恣意的なものも含め、さまざまな政治的思惑がたびたび表面化してきた。そうした思惑が、透明で信頼できる選出プロセスに取って代わってはならない。
次期事務総長には、高潔さ、独立性、そして勇気が求められる。ジェンダー平等と地域代表のバランスは、こうした資質を備えた人物の探求を弱めるものではなく、むしろ後押しするものであるべきだ。
いま加盟国の前にある選出は、国連が創設の理念に忠実であり続けていることを示す好機なのである。
81年間で9人の男性、女性はゼロ

何よりも、正されるべき歴史的不正義と容認しがたい現実について、改めて強調したい。
創設から81年、国連はいまだに女性の事務総長を一度も選んでいない。80年余りの間に、男性が9人、女性はただの1人もいないのである。何という恥ずべきことか。何という不名誉か。あらゆる演壇で平等を語る機関が、どうしてその頂点では不平等を体現し続けられるのか。
国連が掲げる主張の信頼性は、自らを鏡に映したときの姿にかかっている。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを掲げる組織にとって、これは途方もない矛盾である。
10人目の事務総長に女性を任命することは、あまりにも遅すぎたと言わねばならない。現在上位に立つ2人の女性候補は、拒否権の脅しや、この2つの常任理事国からの圧力によって撤退すべきではない。
総会が最終決定を下すまで、彼女たちの立候補は有効であり、総会の前に生き続けている。拒否権が国連の声になってはならない。
総会は、憲章第97条によって付与された正当な権限を行使しなければならない。
アンワルル・K・チョウドリー大使は、元国連事務次長・高等代表。2000年3月、国連安全保障理事会議長として、女性の平等な参画を明記した「女性・平和・安全保障」に関する安保理決議1325号を発議した。ユニセフ執行理事会の議長を2度務めたほか、「平和の文化グローバル運動(GMCoP)」の創設者であり、国連システムの活動に関する著名な論者でもある。
INPS Japan/IPS UN Bureau
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