【ナイロビIDN=フランシス・キニュア】
新型コロナウィルス感染拡大の影響でケニアの学校が休校になってから9カ月、学校が再開され、新学期が始まった。1月4日の朝、カラフルな制服を着て大喜びで学校へと向かう子供たちの姿が街角にあった。
学校に復帰した子供たちは興奮を隠しきれない。新プンワニ小学校に通う、ケイトの12歳の娘・チャーレーンは、家にずっといるのは退屈だったと言い、「勉強や友達、先生が恋しかった。学校に戻れてうれしい。」と語った。
若者たちが人生の難題に立ち向かえるよう支援しているカムクンジ準郡の地域団体「カムクンジ地域エンパワメント・イニシアチブ」(KCEI)は、複数の学校を訪問し、学校当局が、衛生器具を準備し、清潔な水を提供し、施設に立ち入る際はマスク着用を義務化していることを確認した。
学校関係者が熱を測ったり手に除菌スプレーをかけたりする順番を校門の外に並んで待つ子供達のほとんどはマスクをしていたが、実際に危険なのは校門をくぐってからだった。
親たちの心配
子供たちに付き添う親たちには、嬉しさと心配が同居していた。ケニアでは依然として感染が広がっており、親たちは子供の安全を心配している。
保護者のイリーンは、「親としては、子供たちが学校に戻ることになって嬉しい。でも、同時に怖い面もある。どの子がウィルスを持っているかからないし、先生や支援員がウィルスを持っているかもしれない。心配はあるけれど、子供たちが安全でいてくれればと願っている。」と語った。
「政府は子供たちを学校に戻せと言うけれど、見たところ、子供は安全とは言えない。」と保護者の一人サイーダ(30)は言う。70人の子供が一つの教室にすし詰めにされ、どういう風にソーシャル・ディスタンスが取られているのかを見たうえでの判断だ。「教室も増設されていないし、机も増えていない。」コロナ禍以前と同じく、教室ではひとつの机あたり3人の児童が肩を寄せ合って座っていた。
「学校は混みすぎています。子供を学校に戻すにあたって、それが一番の心配だ。親の方だって苦しい。本を買うお金はないし、バス代も出せない。マスクや衛生用品を買うお金もない。子供たちの学校での安全を保証できない。心配だけど、政府の指示通り、子供たちを学校にやるしかない。」
不登校
2020年、世界保健機関と国際連合児童基金は、新型コロナウィルスの影響で学校が長期休校になっていることに懸念を示し、休校によって、より貧しい国々において、若者の妊娠が増え、栄養不良が加速し、学校からのドロップアウトが増えるかもしれないとしている。
今週、1500万人の児童が学校に戻るものとみられるが、KCEIは、プンワニのスラムでは数百人単位の子供が学校には戻らず、その多くが少女であると考えている。子供が学校に戻らない理由は現時点では明らかではないが、妊娠や結婚を理由に戻らないというのが一つのありうる理由だ。「学校は、女子生徒が学業に集中し結婚を避けるうえで、一つの安全地帯となっていた」とKCEIのメンバーであるキニュアは語った。「しかし、コロナ禍によってセイフティーネットが破れ、少女が児童結婚のリスクに晒されやすくなっている。」
世帯の収入が減り、倦怠感が支配的になる中、一部の生徒たちは、学校閉鎖中の家計を補うために、売春や麻薬、酒、街での物売り、クズ金属・プラスチック集め、物乞いに走っている。これは、学校再開の際の不登校の原因になりやすい。
コロナ禍やそれに伴う行動制限のために仕事がなくなり、企業が倒産していることに多くの人々が不満を抱いている。多くの親たちはKCEIに対して、授業料等の支払い、新しい制服や教科書、マスクなどの購入が難しいとして、子供たちを新たに学校に送り出すのに前向きになれないと語っている。「もう1年も働けず、家に閉じこもりっきり。学校に行く子供たちをどう支えたらいいものやら。」とカムクンジ中学校の保護者の一人ジェーンは語った。
「学校は、手洗い場だけではなく、適切な水や石けん、手の除菌剤を教師や生徒のために準備しなくてはならない。教室や机も足りず、『生徒の間に1メートルの間隔を保つ』というルールも守れなくなっている」と、プンワニ小学校の校長は語った。
KCEIは、全体として7割の生徒が今週学校に戻ったとみている。高い数字に見えるかもしれないが、学校の教職員たちは、年間を通じて、さまざまな社会経済的理由によって子供たちが学校に来られなくなるかもしれないと懸念している。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の第4目標(すべての人に質の良い教育)を達成するには、社会経済的地位に関わりなくすべての子供たちが教育を受けられるようにしなくてはならない。この目標を現実にするためのすべての利害関係者による協力が必須だ。(原文へ)PDF
※著者のフランシス・キニュアは、「カムクンジ地域エンパワメント・イニシアチブ」のメンバー。
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