【アブダビWAM】
「中東では紛争に直面している諸地域からの死と破壊に関するニュースが絶えないなか、5月13日、サウジアラビアから新鮮な変革の兆しを予感させるニュースが飛び込んできた。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。同日、サウジアラビアのサウード・ファイサル外相が、「我が国の政府は、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相にリヤドを訪問するよう招待状を渡している。」と明らかにし、イラン政府も「招待を歓迎する」と応じたのである。
昨年8月のイラン大統領選で、前政権下で悪化した米国および近隣諸国との関係改善を訴えて当選したハサン・ロウハニ新大統領は、駐イランサウジアラビア大使に対して「両国間の対話と協力は中東地域全体の安定にとって重要であり、両国の関係改善の可能性は高い。」と述べていた。
そうしたことから、ザリーフ外相が昨年12月に湾岸諸国を歴訪(クウェート、カタール、オマーン)した際には、イランと地域最大のライバルであるサウジアラビアとバーレーンとの間に関係改善の動きが出るのではないかとの期待が湾岸地域全体に広がった。しかし同外相の湾岸諸国歴訪は今年4月のUAE訪問をもって終了し、結果的にサウジアラビアとバーレーンを外す形となっていた。
「中東各地の紛争はイランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈して既に長年が経過している(両国はサウジアラビア及びバーレーン国内のシーア派への支援や、レバノンのヒズボラ、イエメン北部のアルホウシ族への対応を巡って対立してきた:IPSJ)ことから、中東地域が抱える諸問題の大半は、イランとサウジアラビアの関係改善が進めば解決されるはずだと一般に考えられる傾向にあるのは無理もないと言えよう。」とガルフ・ニュース紙は5月17日付の論説の中で報じた。
またガルフ・ニュース紙は、「従って、両地域大国の間で関係改善が進めば、両国の国民はもとより、むしろ(両国の支援を背景にした)宗派闘争による社会分裂に悩まされてきた近隣諸国の利益にかなうことになるだろう。」と報じた。
「中東における全ての紛争の責任をサウジアラビアとイランの対立に求めるのは誇張しすぎだろう。しかしその多くについて解決の鍵を握っているのが両国であることは、ほとんど疑いの余地がない。とりわけイエメン、イラク、レバノンといった国々の内戦は、両国の協力なくして解決の見通しは立たないだろう。」
また同紙は、「サウジアラビアとイラン両国は中東地域全体に対して両国間の食い違いを解決する義務がある」と強調したうえで、「そうした対立点の解消は(武力によるものではなく)交渉のテーブルに臨んで行う必要があるという姿勢を示したことは、成熟の兆候であり、中東地域に対して両国が負っている極めて重要な責任を認めたことの表れだろう。」と報じた。
「中東地域の命運と諸問題は域内においてのみ解決が図られるということを、サウジアラビアとイラン両国が理解して初めて、真の意味での永続的な平和が中東で実現することになるだろう。域外の諸大国は今後も、中東地域への進出を図っては、各々の都合で去っていくだろう。従ってそうした域外勢力がいつまでも中東の国々の隣国との関係を規定し続けることはできない。それができるのは中東域内の国々自身なのである。」とガルフ・ニュース紙は報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
関連記事: