地域アジア・太平洋|オーストラリア|先住民族、建国記念日の変更を主張

|オーストラリア|先住民族、建国記念日の変更を主張

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキー】

オーストラリアは、シドニー湾に最初の移民船が到着しサウス・ウェールズ植民地を建設した1788年1月26日を建国記念日と定め、毎年盛大なイベントを催している。

これについて、先住民族の学者、作家、映画監督であるサム・ワトソン氏は、「先住民族アボリジニは、何故1月26日を建国記念日とするのか当惑してきた。その日は、長期にわたる植民地侵略の始まりの日、つまり大量殺戮、大量処刑、土地の収奪、今日まで続く民族破壊政策の始まりの日だ」と語る。

実際、国家としてのオーストラリアは植民地の連邦化が行われた1901年まで存在しなかったのだ。

 植民地化以前の人口は少なくとも31万5,000人から75万人あるいは百万人を超えるとされるが、病気、迫害、強制的な立ち退きや融合策などにより先住族人口は1788年以降急減した。しかし、政府は1935年に1月26日を全国的な建国記念日と定め、1994年からは国民の祝日としている。祝日の前日には国会議事堂の前で国民栄誉賞が授与される。

今年の受賞者は、先住民族リーダーのミック・ドドソン法学教授(58)であった。北西部ヤウル族出身のドドソン氏は、国連先住民族問題常設フォーラムのメンバーでオーストラリア国立大学先住民族研究センターの所長を務める。ドドソン教授は直ちに建国記念日を変更すべきかどうかについて対話を行うよう要求。受賞の意思の無いことを明らかにした。

多くのオーストラリア人は対話を妥当と考えているようだが、政府はこれを拒否。ケビン・ラッド首相は、建国記念日のスピーチで「先住民族リーダーおよび建国記念日変更を要求する人々に対し、私はノーと言わせてもらう」と発言。その数日前には、先住民族問題担当ジェニー・マクリン大臣も変更の意思のないことを明らかにしている。

一方、活動家グループは、先住民族および彼らの環境に与えた被害を償うため補償が必要であり、すべてのオーストラリア人が建国記念日を祝う前に土地を巡る協定に調印すべきと主張している。ワトソン氏は、「この国の800に及ぶ先住部族と白人が協定を結んだ日こそ建国記念日にふさわしい」と語っている。

オーストラリアの建国記念日に関する諸問題について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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