【ナイロビIPS=ジョイス・チンビ】
国際社会が「世界子どもの日」を迎えるにあたり、イスラエルによる激しい砲撃と軍事作戦によって1万1000人以上が死亡し、その40%が子どもであるガザ地区の子どもたちを含め、すべての子どもたちに権利が保障されるべきである。
「国際人道法と学校保護宣言に基づき、民間人、特に子どもたち、学校、学校関係者は保護されなければならない。この紛争で私たちが目にしているのは、地球上で最も人口密度の高い地域を襲う爆弾、攻撃される学校やその他の民間インフラ、そして全住民が安全な逃げ場がなく、最も悲惨な状況に追い込まれている現実です。生き残った子供たちは、傷ついたり、孤児になったり、親しい家族や親戚を失ったりしています。想像を絶する恐怖が目の前で繰り広げられているのです。」と、緊急事態や長期化する危機における教育のための国連グローバル基金である「教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait)」のヤスミン・シェリフ事務局長はIPSの取材に対して語った。
「ガザで起きていることに、子どもたちが備えることはできないし、備える必要もありません。子どもたちや青少年は傷つき、トラウマを抱えています。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、10月の初期評価では、少なくとも91%の子どもたちが急性ストレスとトラウマの兆候を示しており、メンタルヘルスと心理社会的支援(MHPSS)を必要としています。」
国連によると、ガザ地区では人口の半分近くを子どもが占めている。攻撃が続く中、625,000人以上の生徒と22,564人の教員が影響を受けている。少なくとも86%の校舎は、避難民のためのシェルターとして使用され、収容人数の4倍にまで達しているか、或いは既に破壊されている。
ノルウェー難民評議会(NRC)のベター・ラーニング・プログラムのグローバル心理社会的支援責任者であるカミラ・ロディ氏は、IPSの取材に対し、戦争が子どもたちに与える影響は壊滅的であると語った。
「紛争、戦争、強制移住を経験すると、子どもたちは個人的、継続的な生命の危機にさらされ、暴力とその影響を常に目の当たりにすることになります。このようなトラウマ的出来事に長期間晒されると、トラウマの処理が複雑になるリスクが高まります。戦闘がなくなると、高レベルのストレスやトラウマを経験した子どもや大人にとって、回復へのプロセスが始まります。メンタルヘルスと心理社会的支援(MHPSS)は贅沢なものではなく必需不可欠なものです。平常心を取り戻すのに役立つのです。」とロディ氏は語った。
心理社会的支援プログラムに取り組んでいる。簡単に言えば、子どもたちは元気で安全でないと学ぶことができないのです。MHPSSは、すべての緊急教育プログラムに組み込まれるべき、必要かつ不可欠の介入です。ベター・ラーニング・プログラム(BLP)は、NRCを代表する教室ベースの心理社会的支援介入であり、トラウマや強いストレスを経験した子どもたちの学習能力の回復を支援します。」
このプログラムは、ウクライナ、スーダン、パレスチナなど33カ国で子どもたちの未来に投資し、10年以上にわたって緊急かつ長期的なクリティカルケアと心理社会的支援を提供する最前線に立ってきた。ロディ氏は、「MHPSSは危機や緊急事態において非常に重要です。」と強調した。
シェリフ事務局長は、「この高レベルのストレスサイクルの中で家庭や学校が荒廃し、生き残った子どもたちが生涯にわたって深刻な精神衛生上の問題を抱える危険性があります。」と強調した。衰弱し、慢性的な不安や鬱病、様々な程度のトラウマに悩まされる生活が、紛争や危機の渦中にいる2億2400万人以上の子どもたちや青少年に待ち受けている。
緊急事態や長期化する危機の影響を受けている40カ国以上の子どもたちの教育プログラムを支援している「教育を後回しにはできない基金」は、2020年以降、MHPSSをすべての国レベルの投資の中核的な要素に含めている。これには、NRCのベター・ラーニング・プログラムへの支援も含まれる。
「ECWは、生徒と教師の心の健康が学習の基盤であることから、生徒と教師の心の健康を守り、促進するために、MHPSSを優先してきました。私たちは、メンタル・ヘルスと心理社会的支援サービスのために、リソースの少なくとも10%を投資する目標を持っています。」とシェリフ事務局長は語った。
ECWはこのほど、UNRWAとユニセフを支援し、ガザ地区の子どもたちに命を救うメンタルヘルスと心理社会的支援を提供するため、1000万ドル(12カ月)の助成金を拠出すると発表した。
「ガザ地区は特に、執拗な暴力の連鎖によって定義される人道的大惨事に陥っています。ベター・ラーニング・プログラムの過去の調査によると、悪夢や睡眠障害で助けを求めた1093人の生徒(6~17歳)が、週平均4.57日、平均2.82年の期間、トラウマ性の悪夢を繰り返したと報告しています。」とロディ氏は語った。
「私たちは常に、不作為の代償について話しています。特に暴力とトラウマの連鎖の永続化についてです。紛争が終結すると、子どもたちへの苦痛と心理的影響が始まり、もしそのまま放置されれば、生涯にわたって続くことになります。このようなネグレクトは、教育や発達の歩みを遅らせる結果にもなり、精神衛生上の障害に罹りやすくなるのです。さらに、平和の安定剤である地域社会とのつながりの感覚も損なわれます。また、医療費の増加や長期的な生産性の低下により、経済的・財政的な影響も大きいのが現実です。」
ロディ氏は、大人の争いの代償を子供が払うべきでないと強調し、安全感と予測可能性を再確立し、子供たちが安全な環境でレクリエーション的な遊びや教育活動を再開し、「緊急事態、逃避モード」にある身体を安全に休めることができるようにするためには、停戦が急務であると強調した。
「ガザの壊滅的な人道的状況を放置することはできません。すべての当事者は、国連憲章、国際人道法、普遍的人権を尊重しなければならない。私は、国連の同僚たちとともに、即時人道的停戦を求めています。」とシェリフ事務局長は語った。
「魂を打ち砕くような人間の苦しみを止め、安全を取り戻さなければ、国際社会としての私たちの道徳的な立場は、今日、そしてこの先何世代にもわたって、若い世代から問われることになるだろう。『すべての子ども、すべての権利のために』をテーマとするこの『世界子どもの日』に、私たちは危機に瀕した子どもたちにどのような約束をすればいいのだろうか。2億2400万人以上の危機的状況にある子どもたちを含め、世界のあらゆる場所にいる子どもたちは、その苦難にもかかわらず、そして特に苦難だからこそ、あらゆる権利と約束が提供されるに値するのです。」とシェリフ事務局長は語った。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau
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