SDGsGoal14(海の豊かさを守ろう)死にゆく海:死海の存続をかけた闘い

死にゆく海:死海の存続をかけた闘い

死海は地球上で最も美しく、また独特な場所の一つだ。しかし、この宝石のような存在は今まさに消えようとしている。その海岸線は常に変化しており、湖面は縮小し、干上がろうとしている。

【テルアビブ INPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

死海はヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区の境界に位置する塩湖である。海抜マイナス400メートル以上、地球上の陸地で最も低い場所にある。死海の水は塩分濃度が高く、人が楽に浮くことができる。この塩分濃度の高さから、湖には生物が存在せず、それが死海という名前の由来となっているまた、湖岸には治療効果のある泥も見られる。

Seaside resort at Dead Sea. Photo Credit: Roman Yanushevsky.

しかし、特に北部では水位が低下し続けていることは肉眼でも明らかだ。2015年の面積は810平方キロメートルだったが、現在は605平方キロメートル以下となっている。1990年以来、湖の水位は30メートル以上低下している。

死海の保全プロジェクトは、国連の持続可能な開発目標の多く(SDGsの目標12 責任ある生産と消費、目標13気候変動への対策、目標14水中の生命、目標17パートナーシップで目標を達成しよう)に関連している。

幸いにも、死海はシリア・アフリカ地溝帯という2つの地殻プレートの境界線上に位置しているため、かなり深い位置にある。しかし、それでもなお、水位の低下は、この地域の独特な生態系に悪影響を及ぼしている。

死海の沿岸には、この標高でしか生育できない昆虫や植物の種が存在する。海面が後退するにつれ、土壌が浸食され、大小さまざまな陥没穴が形成される。そしてその数は合計1,400以上にもなっている。

The Jordan River runs along the border between Jordan, the Palestinian West Bank, Israel and southwestern Syria. Credit:Wikimedia Commons.

死海の水位低下は、気候変動だけでなく、人間の活動によっても引き起こされている。農業用水の確保のために水が引かれるため、死海に流れ込む主要な水源のひとつであるヨルダン川の水位は著しく低下した。過去半世紀で、ヨルダン川の流量は15分の1に減少し、年間1億立方メートルとなっている。

さらに、死海の南岸では、マグネシウム、食塩、臭素、塩化カリウム、および粒状ポタッシュを抽出する産業が稼働している。さらに化粧品業界もこの地域で活動しており、それがさらに水位に影響を及ぼしている。

長年にわたり、死海を救うためのさまざまな選択肢が専門家によって提案されてきたが、それらは国際協力を必要とし、政治的な課題によってしばしば阻まれてきた。

死海に水を供給することを目的としたプロジェクトは少なくとも3つある。

北部ルート:この計画では、ハイファ湾からガリラヤ湖を通り、地中海と死海を結ぶ開渠の運河を建設する。運河は道路、橋、人口密集地、農地など広範囲にわたって横断することになる。

中央ルート:エンジニアは、地中海と死海をつなぐトンネルの建設を提案した。アシュケロン近郊から始まり、アラドを経由して死海に至るトンネルだが、渓谷のある山岳地帯での建設費が高く、計画は却下された。

南部ルート:この計画では、水力発電所と観光インフラとともに、160キロメートルの開水路を建設することが提案されている。しかし環境保護団体は、このプロジェクトが地域の生態系を破壊するとして反対している。この地域は、アフリカとの間を移動する渡り鳥にとって重要な中継地である。

さらに、紅海から死海に200キロメートルのパイプラインを敷設し、淡水化施設や発電所を建設するという計画もあるが、このプロジェクトは環境面のみならず政治的な課題にも直面している。

Dead Sea. Photo Credit: Roman Yanushevsky.

このようなプロジェクトを実施するには、イスラエル、ヨルダン、パレスチナ自治区間の緊密な協力が必要である。この件に関する話し合いは1990年代半ばから継続的に行われてきたが、政治的理由により、直近では2017年に議題から外されるということが繰り返されてきた。また、近隣のエジプトは、この運河が地震の多いこの地域で地震活動を活発化させることを懸念している。エジプトはまた、イスラエルが運河の水を利用して原子炉を冷却に使用することを恐れて反対している。

各国が合意に至れず手をこまねいている間にも、死海の水位は毎年低下し続け、このままではやがて荒れ果てた土地が残されることになる。(原文へ

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

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