SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)ミッシングリンク - 太平洋先住民の気候知識

ミッシングリンク – 太平洋先住民の気候知識

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=タフエ・M・ルサマ】

世界における気候変動の論調は、主にヨーロッパ中心の哲学、枠組み、概念によって形成されている。ほとんどの場合、適応と緩和対策は太平洋地域の外で策定され、それらが太平洋島嶼国にとって最善の解決策であるという前提のもとに太平洋地域において試行され、そして実施される。草の根レベルで確かに存在する先住民の知識が考慮されることはない。

このようなアプローチの例として、キリバスやツバルのような国々に導入されたタイプの防波堤がある。これは失敗だった。というのも、ひとえに費用がかかり過ぎ、また材料が国外から持ち込まれるからである。(

支配的な欧州中心の視点とは対照的に、太平洋神学大学(PTC)は、気候変動を太平洋の文脈で理解するために、太平洋先住民コミュニティーの哲学、枠組み、概念を取り入れる試みとして、「気候に関する先住民知識研究所(Institute for Climate Indigenous Knowledge:ICIK)」を設立した。同時に、研究所は若い世代の人々に、気候変動の解決策を求めて外(外国の哲学や神学)に目を向けるより、内(自分たちの哲学、精神性、世界観)に目を向けるよう教育することを目的としている。

太平洋先住民は、世界中の他の先住民コミュニティーと同様、自分たちの哲学や精神性を生かしながら、外国の哲学に依存することなく、何世紀にもわたって持続し存続してきた。彼らは、土着の科学的知識を生かして、多くの環境問題を乗り越えてきた。先住民の知識は、狩猟、漁労、植物栽培、航海術、建築、芸術、治療など、多岐にわたる技術を生み出す。そこには通常、ホリスティックな価値観が包含されているため、環境に影響を及ぼす可能性のある行為に関し、長期的に見た費用と便益について比較検討する機会が生まれる。

このような太平洋の関係性の中に、ICIKは自らを次のように位置付けている。

  1. 「生命全体」(訳者注=人間も自然という大きな生命体の一部であるという世界観)という太平洋的な新しい気候意識の形成に重点を置く。
  2. 太平洋コミュニティーのレジリエンスと先住民の気候知識に関する「生命全体」的研究を開発する。
  3. 太平洋コミュニティーに今も息づく気候をめぐる先住民の精神的伝統を気候政策に反映することに影響力を発揮する。
  4. 生命を肯定する信仰と先住民の知識に基づく教育的訓練、刊行物、会議を開発する。
  5. 先住民の若い環境活動家が、コミュニティーを基盤とする気候正義のアプローチを策定できるよう手助けする。
  6. 国内、地域、世界の気候関係者との有意義なパートナーシップと関係構築に関与する。

これらの目標を追求することによって、ICIKは、気候移住と適応の取り組みや対策の枠組み策定に当たって先住民の気候知識や理解に対する認識を高めることに寄与する。ICIKは、コミュニティーに存在する先住民の気候知識に関する調査研究を行う。例えば、地元先住民の専門家による研究成果を検証するために重要なセミナーやワークショップの実施、研究成果を共有・公表する会議の開催、太平洋地域各国の政策立案者に向けた提案を行う資料を発表することである。

現在の主流をなす気候変動の論調に欠けているものは、気候に関する先住民の知識と理解である。それらが議論に組み込まれるだけでなく、国、地域、世界の気候政策に意味のある影響を与えることができるようなプロセスを開始することが不可欠である。ローカルな先住民コミュニティーは国際的な気候議論に参加し、さらには彼ら先住民の気候知識に根差した解決策を策定することである。

太平洋神学大学(PTC)の「生命全体」というビジョンは、変革的プログラムを生み出すことを目的としている。それはコミュニティーを基盤とし、コミュニティーの特徴を反映し、草の根の地元地域が持つ生態系に関する知識、信仰、精神性に根差したプログラムである。このビジョンは、「生命全体」を神学、教育、開発、教会の務めの中心に置いて、生命を肯定する哲学、価値観、ベストプラクティスに基づいた、持続可能な太平洋のやり方を構築する助けとなる。何世紀にもわたって太平洋のコミュニティーにおける開発を形作ってきた破壊的な植民地主義的価値体系による約束に対し、取って代わるものを提供することを目指すビジョンである。

現在、太平洋の視点で捉え直した開発戦略では、開発において「文化と人々」が持つ意義を認識することに重点が置かれているが、コミュニティーとその知識体系を中心に据えない限り、それだけでは不十分である。「生命全体」のアプローチに伴う変革は、太平洋的な「神の家族」とその「生命全体」的構造の破壊を促した既存のイデオロギー的、哲学的な開発原理を再考し、解体することによって、教会、政府、より広範な太平洋のコミュニティーが改革的な変化をもたらす一助となることを目指している。

この変革の一環として、太平洋の人々が環境をより良く管理し、共有する太平洋の伝統を保護するのに役立つ、安価で持続可能な実用的方法やアプローチをを確立する新たな意識の確立や解放の道筋の開くことが求められる。

タフエ・M・ルサマ牧師(博士)(Rev. Dr. Tafue M Lusama)は、フィジー共和国スバの太平洋神学大学で気候変動担当者(Climate Change Officer)を務めている。また、ツバル・キリスト教会の牧師である。

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