ニュース途上国で盛んな「臓器移植ツアー」

途上国で盛んな「臓器移植ツアー」

【カリフォルニア州オークランドIPS=ビル・ベルコウィッツ】

人身売買業者による身体部分の不法取引は、映画やテレビやSF小説に出てきそうな話だが、実際に相当な頻度で起きている。カリフォルニア大学バークレー校で医療人類学を専門とするナンシー・スケイパー-ヒューズ教授は、1980年代半ばにブラジルのスラム街で広まった不法臓器取引の噂が発端となって作られたOrgans Watchの共同創設者兼代表であり、この問題を知り尽くしている。

NACLA(北米ラテンアメリカ会議)米州レポートの最新号である2006年3・4月号に掲載された「生物的海賊行為と人間の臓器の地球規模の探索」と題された評論で、スケイパー-ヒューズ教授は不法臓器取引について述べている。

 外国の大病院に勤務している米国人あるいは日本人の医療関係者が死体を盗み、臓器を取り出して遺骸を「田舎の道端や病院の大型ごみ収納器に」捨てているといった話を調査するために、同教授は1997年から数年にわたって12カ国を回り、不法取引の現場を50カ所以上訪ねた。各国で法規制は進められているが、臓器移植を望む患者数は多く、取締りは難しい。

同教授にとって衝撃的なのは身体部分の取引という嫌悪感を催す商売が実利的見地から認証された医療事実になりつつあることだ。2003年世界保健機構(WHO)会議の組織・臓器移植における倫理、手段、安全に関する委員会のメンバーだった教授は、臓器取引の商業化を是認する主張を耳にした。同時に民間組織による角膜やアキレス腱の不法取引も目にした。こうした取引では身体の一部を奪われた人間以外は皆が得をしている。

合法的な臓器提供者が少ない中で、臓器移植を待つ人の数は増大している。教授はIPSの取材に応じて「Organs Watchでの活動に積極的に取り組み続ける」と語り、現在WHOとともに中国、パキスタンの不法移植ツアー「多発区域」について調査し、さらに南アフリカとブラジルの保健省と連邦警察とともに「不法移植手術執刀医」の逮捕と裁判に協力している。不法臓器取引の実態について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

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