SDGs水 > エネルギー > 食料

水 > エネルギー > 食料

ネパールは食料安全保障を「国家安全保障」の問題として早急に位置付ける必要がある

【カトマンズNepali Times=シュリスティ・カルキ

気候危機による異常気象、世界的なサプライチェーンの混乱、そして国内の政策運営の不備が重なり、ネパールの食料安全保障を脅かす「パーフェクト・ストーム(最悪の複合危機)」が生じている。|英語版

水、エネルギー、食料の相互連関が、今年ほど鮮明に浮かび上がったことはない。ネパールでは農地の60%以上が天水農業に依存している。毎年繰り返される肥料不足に西アジアでの戦争が追い打ちをかける一方、農村からの人口流出によって耕作放棄地も増えている。

先週6月29日の「田植えの日(Paddy Day)」は、例年になく盛り上がりを欠いた。恒例の泥遊びもほとんど見られず、田植えもあまり進まなかった。例年より降雨量の多いプレモンスーン期を受け、多くの農家が早めに田植えを始めたものの、本格的なモンスーンの到来は2週間遅れた。

こうした不安定なモンスーンは、ネパール各地で繰り返されるようになっている。雨を待つことに見切りをつけ、仕事を求めて出稼ぎに出る農家も少なくない。

降雨不足の影響で、2024/25年度のコメ収穫量は、前年度の600万トンから570万トンに減少した。スーパー・エルニーニョの動向を追う気象モデルは深刻な干ばつを予測しており、肥料不足も重なって、穀物収穫量はさらに落ち込む見通しだ。

ネパール開発研究所(NDRI)で生計・食料安全保障を担当する専門家、クリシュナ・パハリ氏は、「ネパールでは、コメなどの主食作物の生産が気候ショックに翻弄されている。今年はエルニーニョ現象の影響で、降雨量が平年を下回る見通しだ」と説明する。

国際栄養会議に出席中のローマから『ネパリ・タイムズ』の取材に応じたパハリ氏は、さらにこう語った。

「気候危機に、西アジアの紛争が引き起こした燃料や肥料の不足が追い打ちをかけている。こうした問題が続けば、ネパールの食料安全保障は一段と悪化するだろう」

かつてネパールは食料の純輸出国だったが、それも今は昔である。農業が抱える構造的問題の多くは気候危機以前から存在していたが、不安定なモンスーンと灌漑の未整備によって、状況はさらに深刻化している。昨年、ネパールは総額600億ルピーに上る100万トン超の穀物を輸入した。

カトマンズの統合開発研究所(IIDS)で食料安全保障とガバナンスを専門とするヤムナ・ガレ氏は、「ネパールは気候危機から深刻な影響を受けているが、気候変動に起因する災害が頻発し、農業資源や森林資源が失われた際の十分な復旧計画がない。」と指摘する。

さらに、「気候変動に対応し、栄養価にも優れた種子や品種の開発に十分な資源が投入されていない。その結果、輸入や援助に依存せざるを得なくなっている。」と語った。

ネパールでは人口の60%が農業に従事し、農業は国内総生産(GDP)の約4分の1を占めている。しかし、農村部では若者の流出が続き、地域に残る農家も換金作物を適正な価格で販売できない状況にある。

6月中旬、韓国政府は韓国国際協力団(KOICA)を通じ、タライ地方で気候変動に強いコメ生産と食料安全保障の強化を図る6年間の事業に、1200万ドルの無償資金協力を供与すると表明した。

専門家によれば、灌漑の整備によって、ネパールの農業生産性は最大30%向上する可能性がある。しかし、大規模な灌漑事業は、汚職やずさんな事業運営のため、数十年にわたって停滞している。

生産性の向上が重要である一方、生産された農産物をいかに損失なく消費につなげるかも大きな課題だ。収穫後の損失率は、穀物で15%、野菜や果物では40~50%にも達する。野生動物による農作物被害も深刻で、農村からのさらなる人口流出を招いている。

パハリ氏は、「収穫後の損失を減らすことは、人々に行き渡る食料を増やすことにつながる。そのためには、コールドチェーンや貯蔵施設、穀物サイロの整備・改善が必要だ」と指摘する。

このほか、加工によって食品の保存性を高める取り組みも必要だ。果物を乾燥させたり、ジャムに加工したりする方法が考えられる。また、学校給食では、子どもたちの好みに合わせてレシピや献立を工夫することもできる。

飢餓ゼロ

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

ネパールはこれまで、子どもの発育阻害(stunting)や消耗症(wasting)の削減で成果を上げてきた。しかし近年、開発援助の縮小・撤退によってその成果にも陰りが見え始め、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる2030年までの「飢餓ゼロ」の達成が危ぶまれている。

先月、ヘレン・ケラー・インターナショナルの支援を受け、ネパール全土の5歳未満児100万人を対象に実施された全国調査の結果が公表された。それによると、米国国際開発庁(USAID)が資金を拠出していた食料・栄養プログラムの終了に伴い、子どもの栄養不良が悪化している。急性栄養不良の割合は2025年の6.6%から今年は7.8%に上昇し、マデシ州では12.3%と国内で最も高かった。

パハリ氏は、「2030年までの『飢餓ゼロ』の達成に向け、ネパールは目標達成の軌道に乗っているとは言えない」としたうえで、「世帯の平均的な食料消費が改善しているのは、海外からの送金と社会保障制度によるところが大きい」と指摘した。

こうした状況を踏まえれば、問われるのは、RSP政権が食料増産と子どもの飢餓の削減に向け、どのような対策を講じてきたのかという点である。

スワルニム・ワグレ財務相は5月の予算演説で、農業部門の再生を「最優先課題」と位置付けた。しかし、農業に割り当てられた470億ルピーは予算総額の3%にも満たず、過去9年間で最低の水準となった。

しかも、その半分以上が化学肥料の輸入に充てられる。それでも、コメの田植え時期には毎年のように尿素肥料が不足している。

一部の専門家は、ワグレ財務相が商業的農業の振興と中間所得層の所得向上を重視していることについて、農村部で雇用を創出し、バリューチェーン全体の生産性向上につながると評価している。一方で、貧しい農家が取り残されるとの批判もある。

パハリ氏は、「この予算はネパールの中間所得層の活力を引き出すことに重点を置いており、その点では一定の合理性がある。しかし、ネパールの農家の大半は小規模農家だ。この層の問題に取り組まない限り、農業生産全体の拡大にはつながらない」と語る。

ヤムナ・ガレ氏は、他の多くの課題と同様、解決の鍵は政治的な優先順位と政策の実行にあるとみている。

「政策は政治的な選択の産物である。新たな政策の内容と予算規模を見れば、この政権が農業を優先課題とみなしていないことが分かる。その影響を最も強く受けるのは、社会的に周縁化され、排除されてきた人々だ」とガレ氏は指摘する。

一方、州政府による農業への予算配分は比較的手厚い。世帯レベルの食料不安が最も深刻なカルナリ州は、予算の21%以上を農業に充てている。また、急性栄養不良率が高いルンビニ州とマデシ州では、それぞれ予算の4%以上を農業に配分している。

ガレ氏は今月初め、アーメダバードで開催された世界銀行の地域政策対話で、南アジアの食料の未来を共に形作るための地域協力と政策対応をテーマとしたパネル討論の司会を務めた。

会合には南アジア各国から専門家、イノベーター、民間部門の関係者らが参加した。しかし、他国とは対照的に、ネパール政府の代表者の姿はなかった。「国内問題の解決」を優先する新指導部の下では、こうした招待を辞退することが常態化している。

参加者からは、ネパールの新指導部が会合を欠席したことで、インセンティブ、生産、市場をバリューチェーン全体で結び付け、農業のパラダイム転換を促す貴重な機会を逸したとの指摘も出た。

そして、クリシュナ・パハリ氏とヤムナ・ガレ氏は、奇しくも同じ言葉で問題の核心を言い表した。

「食料安全保障は国家安全保障である」

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

関連記事:

すべての人に教育を、教育にすべての力を

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken