Z世代を覆う不安

【カイロINPS Japan/ London Post=ナダ・サブリーン】

誰も、うつ病になることなど望んではいない。それにもかかわらず、うつ病は今や数百万人の生活に重くのしかかり、富裕層か貧困層か、先進国か途上国かを問わず、人々を苦しめている。経済的な豊かさや技術の進歩を示す指標が伸びる一方で、不安や孤独感、社会的孤立も、とりわけZ世代やミレニアル世代の間で深刻化している。この逆説は、一見単純でありながら、実は極めて複雑な問いを私たちに投げかける。なぜ、富では必ずしも幸福を買えないのだろうか。|英語版

うつ病に苦しむ人にとって最もつらいのは、病そのものではなく、その苦しみの深さを社会に理解してもらえないことなのかもしれない。うつ病を経験したエジプト人女性は、その思いを次のように語る。

 Nada Sabreen

「うつ病で最もつらいのは、病気そのものではなく、多くの人にその苦しみが見えていないと感じることです。身体の痛みなら目に見えるため、人は寄り添ってくれます。しかし心の痛みは、たとえ目の前でその人が次第に弱っていっても、多くの人には理解されないままなのです」

これは単なる一個人の証言ではない。周囲には見えない傷を抱え、声を上げられないまま苦しむ数百万人の悲劇を映し出している。

2025年版「世界幸福度報告書」が、富だけが幸福への道ではないと指摘しているのは偶然ではない。大規模な調査に基づいて毎年発表される同報告書は、社会的支援、信頼、自由、健康、寛容さなど六つの主要指標を通じて幸福度を分析している。フィンランドは8年連続で世界首位を維持した。また調査結果からは、幸福感を左右する要因として、人間関係の強さや相互の信頼が、所得水準だけの場合よりも大きな影響を持つようになっていることが明らかになった。お金は生活水準を向上させることはできても、孤独を追い払い、心の安らぎをもたらすことまではできない。

世界は、新しい世代が受け止めきれないほどの速さで変化してきた。COVID-19のパンデミック、戦争、地政学的緊張、気候変動、そして雇用の将来に新たな不安を投げかける人工知能(AI)革命―。これらすべてが慢性的な不安を生み出し、Z世代やミレニアル世代は、過去のどの世代よりも将来を強く意識せざるを得なくなっている。

ソーシャルメディアは、状況をさらに複雑にした。本来は人と人を結ぶ手段であったはずのソーシャルメディアが、絶えず他人と自分を比較する場になってしまうことも少なくない。今や不安は、失業への恐れや生活費の上昇だけに結びついているのではない。心理学者が「比較不安」と呼ぶものとも深く関係している。

若者がスマートフォンの画面を開けば、そこには自分より成功し、美しく、幸せそうに見える人々の姿が次々と流れてくる。しかし、その華やかな画像の裏側に隠された失敗や苦悩を知ることはない。こうした比較を続けるうちに、満たされないという感覚が心に定着し、人生がまるでゴールのない競争のように感じられるようになる。「世界幸福度報告書」も、若者の幸福感や生活満足度を最も大きく左右するのは、デジタル・プラットフォーム上のフォロワー数ではなく、人間関係の質であると指摘している。

いまや世界の幸福度指標を、メンタルヘルスの指標と切り離して読み解くことはできない。世界保健機関(WHO)によると、世界では約2億8000万人がうつ病に苦しんでいる。不安症とうつ病は、最も広くみられる精神疾患の一つとなっており、生活の質や生産性の低下を招いている。

複数の研究によれば、若者の不安やうつ病の割合は近年、特にCOVID-19のパンデミック以降、大幅に上昇した。メンタルヘルスの専門家は、経済的圧力、先行きの不透明感、社会的孤立、ソーシャルメディアの過度な利用などが重なり、Z世代やミレニアル世代を、それ以前の世代よりも不安やうつ病に陥りやすくしているとみている。世界とのつながりが最も強く、テクノロジーを最も自在に使いこなす世代であるにもかかわらずである。

最大の問題は、Z世代やミレニアル世代が不安やうつ病を打ち明けることを恐れなくなった一方で、社会の側が依然として、そうした告白を戸惑いや誤解をもって受け止めていることなのかもしれない。誰かが脚を骨折したり心臓手術を受けたりすれば、周囲はすぐに容体を気遣う。ところが、うつ病に苦しむ人に対しては、今なお「気を強く持て」「前向きに考えろ」「早く立ち直れ」と求めがちである。

精神医学は大きく進歩し、うつ病は治療可能な疾患であるとの理解も深まってきた。それでも、うつ病に伴う偏見は根強く、多くの人が適切な時期に助けを求めることを妨げている。

ここにこそ、最も重要なメッセージがある。幸福は売買できる商品ではなく、所得が増えれば自動的に得られるものでもない。それは、健全な人間関係、支え合う家族、心から信頼できる友人、そして人生の困難に一人で立ち向かっているのではないと感じさせてくれる社会から生まれるものである。優しいひと言、親身に耳を傾ける姿勢、そして誰かが自分の苦しみを分かってくれているという実感は、ときに回復への第一歩となる。

したがって、未来への真の投資は、経済だけでなく、人への投資から始まる。子どもたちを支える家庭、自ら助けを求めることは弱さではないと教える学校、そしてメンタルヘルスを、片隅に追いやったり隠すべき汚点とみなしたりするのではなく、総合的な幸福に欠かせない要素として扱う社会から始まるのである。

これこそが、大きな不安に覆われた現代から学ぶべき最も重要な教訓なのかもしれない。世界は、よりスマートな都市、より生産性の高い経済、そして距離を越えて人々を結ぶ通信手段を築くことには成功した。しかし、孤独や不安を和らげる点では、同じような成果を上げることができていない。

富があれば家を買うことはできる。しかし、家族の温もりを買うことはできない。最良の薬を手に入れることはできても、真の友人や、弱ったときに寄りかかることのできる肩を買うことはできない。結局のところ、真の幸福は、誠実な人間関係、相互の信頼、そしてどれほど孤独を感じても、自分の存在に気づき、理解してくれる誰かがいるという実感から生まれるのである。

ナダ・サブリーンは、世論動向、メンタルヘルス問題、地域社会の文化に関心を持つフリーランスのライター兼研究者。バシーラ世論調査センターおよびウェンス・センターに勤務した経験を持ち、エジプトの市民社会組織が実施する複数の取り組みに携わってきた。

INPS Japan

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