この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています
【Global Outlook=孫太一(スン・タイイー)】
この1週間に起きた3つの出来事は、世界政治で広がりつつある亀裂を鮮明に映し出している。
中国の習近平国家主席は、上海協力機構(SCO)首脳会議に出席するためキルギスを訪問した後、エジプトを公式訪問した。エジプトでは国賓として手厚い歓迎を受け、人工知能(AI)、デジタル・インフラ、製造業、サプライチェーン、現地通貨建て決済などの分野に及ぶ一連の協力協定に署名した。一方、米ノースカロライナ州アッシュビルでは、20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が開催された。しかし、中国やロシアへの対応に加え、どのG20加盟国を会議に参加させるべきかをめぐっても意見が対立した。ほぼ同じ時期、米軍は再びイラン国内の標的を攻撃し、これに対してイランも報復に踏み切った。その結果、原油価格の動向やホルムズ海峡の安全保障をめぐる懸念が再び高まった。|英語版|

これらの出来事は、それぞれ独立した出来事ではない。そこから浮かび上がるのは、単なる米中間の覇権争いではなく、「国際的なリーダーシップはいかなる価値を提供すべきか」をめぐる新たな競争である。
エジプトにとって、中国との関係を深める理由は明確だ。米国は依然として同国にとって重要な安全保障上のパートナーであり、その関係を放棄することは現実的な選択肢ではない。しかし、イラン情勢の緊迫化やガザ紛争、さらに地域の貿易・海運を繰り返し混乱させる危機を受け、単一の大国への依存はこれまで以上に大きなリスクとなっている。そのためエジプトは、近年、指導部が「戦略的バランス」と呼ぶ外交路線を積極的に推し進めている。
中国は、こうした戦略に自然に適合する存在となっている。なぜなら、中国は米国とは異なる価値を提示しているからである。カイロで習主席は、産業発展、デジタル化の推進、インフラ整備、サプライチェーンの強化について語り、エジプトをアジア、アフリカ、欧州を結ぶ地域ハブとして発展させる構想を示した。さらに共同声明では、グローバル・サウス諸国の連携強化と、より代表性の高い国際機関の実現に向けた協力が呼びかけられた。
こうした姿勢は、多くの国々にとって、ワシントンのアプローチとの違いをますます鮮明に映し出している。米国は依然として、中国を大きく上回る強力な威圧手段を有している。金融制裁を発動し、企業や組織をドル決済システムから排除し、軍事力を行使するとともに、米国市場へのアクセスを外交上の圧力として利用することができる。一方、中国は近年、インフラ整備や産業基盤の強化、再生可能エネルギーのサプライチェーン、貿易ネットワーク、多国間制度などを築く「建設者」として、自らを位置づけようとしてきた。
もっとも、この違いを「善意の中国が破壊的な米国に取って代わる」という単純な図式として捉えるべきではない。中国もまた、独自の経済的な威圧手段を有しており、その輸出中心の経済モデルに対しては、各国で強い反発が広がっている。実際、直近のG20財務相会合では、米国は重要な成果を収めた。過度な貿易黒字や市場をゆがめる非市場的慣行への対処を盛り込んだ文言を19カ国が支持し、この問題では中国は孤立する形となった。各国が自国の経済的利益が脅かされていると受け止めた場合、米国には依然として幅広い国々を結集する強い力がある。
しかし、その一方で、同じG20会合は米国の立場が抱える別の側面も浮き彫りにした。
ウクライナで戦争が続く中、米国がロシアのアントン・シルアノフ財務相をG20の対面会合に再び招待したことに、欧州各国の当局者は反発した。一方、G20創設メンバーであり、アフリカ最大の経済大国である南アフリカは、会合そのものに招かれなかった。さらにカナダは、米国との通商交渉が決裂し、米国が数十億ドル相当のカナダ製品に50%の関税を課したことで、異例の貿易摩擦の渦中にある中で会合に臨んだ。
緊張は経済分野にとどまらない。トランプ米大統領は、毎年実施される米韓合同軍事演習「乙支フリーダム・シールド」の期間を、11日間から5日間へと突然短縮した。その理由として、自身と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との関係に加え、韓国が米国の対イラン軍事行動への支持を拒んだことを挙げた。長年にわたり維持されてきた同盟の枠組みの一つが、綿密な戦略的見直しの結果ではなく、数千キロ離れた別の戦争をめぐる意見の対立を一因として変更されたのである。
エジプトのような中堅国をはじめ、多くの国々にとって、こうした一連の出来事が示す教訓は極めて明快だ。「すべての卵を一つのかごに盛るな」――すなわち、一つの大国だけに依存してはならない、ということである。
こうした状況は、9月24日に予定されている習近平国家主席のワシントン訪問を理解する上でも重要な背景となる。その首脳会談に先立つ習主席の一連の外遊には、見過ごすことのできない象徴的な意味がある。習主席はまずキルギスで主要な多国間首脳会議に出席し、その後、エジプトで国賓として最高水準の歓迎を受けた。この外交日程は、ワシントンに対する控えめながらも明確なメッセージと受け止めることができる。習主席は、米国の歓心を得ようとする立場でワシントンを訪れるのではない。北京には米国以外にも協力相手があり、外交の舞台があり、選択肢があることを示した上で、ワシントン入りするのである。
だからこそ、外交儀礼は重要になる。トランプ大統領が5月に北京を訪問した際、中国側はレッドカーペットで迎え、軍による栄誉礼、21発の礼砲、国賓晩餐会など、最高水準の歓待を行った。トランプ氏自身も、習主席の答礼訪問では同等の待遇を約束している。北京が、その約束が目に見える形で示されることを期待するのは当然だろう。関税や台湾、イランといった重大な課題に比べれば、外交儀礼の細かな演出は些細な問題に思えるかもしれない。しかし、大国外交では国家としてどのような待遇を受けるか、すなわち地位や威信そのものが重要な意味を持つ。キルギスとエジプトで国賓級の歓迎を受けた後だけに、ワシントンでそれに見合わない待遇となれば、その落差は一層際立つことになる。
もっとも、トランプ氏にとっては、そこに国内政治上の難題がある。9月24日は、中間選挙まで6週間を切った時期に当たる。習主席を盛大に歓迎すれば、共和党候補が経済ナショナリズムや製造業の復活、対中強硬姿勢を掲げて選挙戦を展開する最中に、共和党の大統領が米国最大の戦略的競争相手を歓待する姿を映し出すことになり、対中強硬派に格好の攻撃材料を与えかねない。
こうした選挙日程は、現在の米国の対イラン政策を理解する上でも重要な手掛かりとなる。
トランプ政権は「オペレーション・エコノミック・アウトキャスト(Operation Economic Outcast)」を開始した。スコット・ベッセント財務長官はこれを、イランに残された資金調達ルートを断ち切るための「経済戦におけるDデー」と表現している。約60の団体、個人、船舶が制裁対象に指定され、デジタル資産、テクノロジー、金、航空、海運などの分野にも二次制裁の対象が拡大された。
しかし、「最大限の経済的圧力」への転換は、軍事的威圧が成功したことを意味するとは限らない。むしろ、その逆を示している可能性がある。米国の弾薬備蓄は大幅に減少し、国防総省は軍需企業に増産の加速を求めている。また、政権当局者は、中間選挙が終わるまでイランとの戦争をできるだけ表面化させたくないと考えているとも報じられている。8月下旬に実施されたロイター/イプソスの世論調査では、この戦争を支持した米国民はわずか31%にとどまった。さらに、燃料価格の上昇も政権にとって大きな政治的リスクとなっている。
そのため、経済的圧力には戦略的な狙いと政治的な狙いの双方がある。トランプ氏はテヘランへの圧力を一段と強化していると主張できる一方で、少なくとも理論上は、高強度の軍事作戦を長期間継続する必要性を減らすこともできる。
問題は、二次制裁を実効あるものにするためには、米国が同時に疎外し、圧力をかけ、あるいは威嚇している国々の協力が不可欠だという点である。そして、中国が依然としてイランと外部世界を結ぶ経済的生命線の中心に位置している以上、中国の協力もまた欠かせない。
ここに、習主席が現在展開している外交の、より深い意味がある。中国は、グローバル・サウスのすべての国に「ワシントンか北京か」の二者択一を迫り、自国を選ばせる必要はない。中国にとって望ましいのは、エジプトのような国々が複数の大国との関係を維持し、「戦略的自律性」を保とうとする世界である。
米国は依然として、より強力な威圧力を有しており、G20での貿易をめぐる議論が示したように、幅広い国々を結集する力もなお保持している。しかし、威圧力だけで国際的なリーダーシップを長期にわたって維持することはできない。9月24日を前に、ワシントンと北京の双方が認識すべきなのは、真の競争とは単に「どちらが相手により大きな代償を強いることができるか」を競うものではないということだ。問われているのは、自国の力によって他国により大きな安全と繁栄、そして何よりも「自ら選択する余地」をもたらすことができると、どちらがより説得力をもって示せるかである。
タイイ・スン(Taiyi Sun):ボストン大学政治学博士。クリストファー・ニューポート大学政治学准教授。『The Myth of War in the Taiwan Strait: Elite Perspectives from Beijing, Taipei, and Washington, amid the YiZhou Dilemma』(Lexington、2025年)の筆頭著者。また、『Disruptions as Opportunities: Governing Chinese Society with Interactive Authoritarianism』(University of Michigan Press、2023年)の著者であり、米国政治学会(APSA)が2021年に刊行した『Teaching Civic Engagement Globally』では共同編集者および執筆者を務めた。国内外のメディアにテレビ解説者、コラムニスト、専門家として定期的に出演している。Global Forum of Chinese Political Scientistsの主要刊行物『Global China』の編集責任者を務めるほか、中国語による日刊政治ブリーフィング『Inside the Beltway』を創設した。
Original URL:https://toda.org/global-outlooks/before-washington-xi-and-the-contest-over-global-leadership/
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