ニュース戦争経済―紛争はいかに企業利益を膨らませるのか

戦争経済―紛争はいかに企業利益を膨らませるのか

【メルボルンINPS Japan/London Post=マジッド・カーン】

中東上空でミサイルが発射され、ロシアの無人機がウクライナの都市を攻撃するとき、世界が目にするのは炎上する建物、避難所へ向かう市民、そして破壊された都市の姿である。しかし戦場から遠く離れた金融市場では、まったく異なる反応が起きている。投資家たちは、防衛関連株の値動きを注視している。

2026年、戦争と金融市場の結びつきは、世界経済を特徴づける重要な現象の一つとなった。ウクライナや中東で大量の兵器が消費されるなか、各国政府は備蓄を補充し、軍事予算を拡大し、兵器調達を加速させている。

その結果、防衛企業は生産能力を増強し、工場を拡張し、業績見通しを引き上げている。危険な世界は、防衛産業にとって大きな市場にもなっているのである。

戦場と企業収益を結ぶメカニズム

もちろん、防衛企業が戦争を引き起こしているわけではない。また、軍需関連株を購入するすべての投資家が、人々の苦しみに賭けているわけでもない。戦争には複雑な政治的、歴史的、戦略的背景がある。

しかし、いったん戦闘が始まれば、一つの強力な経済メカニズムが作動する。兵器が消費される。備蓄が減少する。 政府が補充を決定する。 企業が生産を拡大する。 契約が増える。そして売上高と利益が伸びる。

こうして、戦場と企業の貸借対照表が結びついていく。

7月23日、米防衛大手ロッキード・マーティンは、ウクライナ戦争やイランをめぐる軍事的緊張によってミサイルなどの需要が拡大していることを背景に、2026年通期の売上高と利益見通しを上方修正した。

同社の第2四半期の売上高は201億ドルに達し、前年同期比11%増加した。受注残高は約2300億ドルとなり、ミサイル・火器管制部門の売上高は約20%増の41億ドルに達した。

また、高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」の迎撃ミサイル増産に関連する350億ドル規模の契約も、同社の成長を支えている。

株式市場もすぐに反応した。ロッキード・マーティンとRTXが業績見通しを引き上げると、ロッキード株は10.6%、RTX株は7.7%上昇した。投資家が、軍事需要の長期化を織り込んだ結果である。

レイセオンを傘下に持つRTXも、2026年第2四半期に247億ドルの売上高を記録した。前年同期比14%増で、防空・ミサイル防衛システムへの旺盛な需要が業績を押し上げた。同社の受注残高は2890億ドルに達し、その後、2026年通期の売上高と利益予想も上方修正された。

ミサイル1発が新たな需要を生む

こうした数字は、単なる企業決算ではない。戦争が経済の中をどのように伝わっていくのかを示している。航空機を撃墜するために迎撃ミサイルが1発使用されれば、その分を補充するために新たなミサイルが必要になる。ウクライナで砲弾が1発発射されれば、その砲弾を補充するための発注が、欧州や米国のどこかで行われる。

無人機が防空システムによって撃墜されれば、迎撃弾や関連装備の追加調達が検討される。戦争が兵器を消費し、政府が追加発注し、企業が増産し、投資家が将来の収益増加を予測する。現代の防衛産業が、戦争を始める政治的決定そのものに関与しなくても、紛争によって経済的な恩恵を受けることができるのはこのためである。

停戦後も続く「再軍備サイクル」

さらに重要なのは、戦争が終わったからといって軍事需要が直ちに消えるわけではないことである。戦闘によって兵器備蓄の不足を経験した政府は、停戦後も従来の軍事予算に単純に戻るとは限らない。むしろ、「以前の備蓄量では足りなかった」と判断する可能性が高い。その結果、より多くのミサイル、無人機、航空機、レーダー、砲弾を保有しようとする。

つまり、停戦そのものが新たな軍事支出を生み出すこともある。戦争が終われば、防衛企業の株価に織り込まれていた目先の地政学的リスクは低下するかもしれない。しかし同時に、停戦は長期的な兵器補充サイクルの始まりにもなり得る。

軍関係者は戦場で使われた兵器の性能を分析する。高い効果を示した兵器は追加発注される。十分な成果を上げなかった兵器は改良され、場合によっては新しいシステムへ置き換えられる。こうして戦争は、将来の軍事調達を決める「実験場」としての役割も果たす。

世界規模で進む軍備拡大

世界の防衛産業は、最近の米国とイランをめぐる軍事的対立が激化する以前から、すでに拡大を続けていた。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公表している最新の包括的データによれば、2024年の世界の軍需・軍事サービス企業上位100社の兵器関連売上高は6790億ドルに達し、当時として過去最高を記録した。

そのうち77社が前年より兵器関連売上高を伸ばした。SIPRIは、旺盛な需要と巨額の受注残高を背景に、軍需企業の売上高は今後も増加する可能性が高いとみている。

2026年の世界を見ると、その構造はさらに鮮明になっている。

欧州ではロシアへの警戒から再軍備が進む。中東では、イランや地域情勢の不安定化を背景に、各国がミサイル備蓄や防空能力を拡充している。アジアでも、中国をめぐる安全保障上の懸念や将来の軍事衝突の可能性を背景に、防衛支出が増えている。

世界規模の軍事調達サイクルが形成されつつあるのである。

恐怖が需要を生む。→需要が契約を生む。→契約が生産を生む。→生産が利益を生む。→そして金融市場が、その利益を評価する。

雇用と安全保障、そして倫理的ジレンマ

数十億ドル規模の防衛契約を獲得した企業は、数千人の雇用を生み、生産設備を拡張し、長期間にわたる安定した収益を投資家にもたらすことができる。地域社会にとって、新しい軍需工場は雇用と税収を意味する。政府にとって、国内の防衛産業基盤は国家安全保障に不可欠な存在でもある。

しかし、そこには大きな倫理的問題がある。戦争が巨大な商業的機会を生み出すとき、その利益構造は政治にどのような影響を及ぼすのか。

軍需企業が特定地域の主要な雇用主となれば、政治家には軍事計画や防衛予算を守ろうとする動機が生まれる。軍需産業が地域経済を支えるようになれば、防衛支出の削減は政治的に難しくなる。投資家の資産が防衛企業の収益に依存するようになれば、地政学的不安定そのものが、金融市場において利益を期待される要因となる。そこには、無視できない「経済的利害関係」が形成される。

「戦争に備えること」が恒常的産業に

こうした現象が示しているのは、現代の経済が軍事支出と深く結びついているという現実である。もはや戦争への備えは、一時的な非常措置ではない。それ自体が恒常的な経済部門となっている。

しかし、戦争のただ中で暮らす市民にとって、この議論は決して抽象的なものではない。彼らが経験するのは、破壊された住宅やインフラ、避難、物価上昇、物資不足、そして家族や友人の死である。政府にとって、戦争は莫大な支出である。

防衛企業にとっては、莫大な需要である。

金融市場にとっては、各国政府が次にどこへ資金を投じるのかを示すシグナルである。これが、2026年の戦場と株式市場を結ぶ、居心地の悪い現実である。中東の空を飛ぶミサイルや、ウクライナ上空を飛行する無人機は、単なる軍事的出来事ではない。それらは政府予算、企業の受注台帳、そして投資家のポートフォリオへと伝わっていく経済的なシグナルでもある。

戦争は、朝に都市を破壊し、数カ月後には新しい軍事調達契約を生み出すことがある。停戦は戦闘を止めても、その後何年にもわたる兵器補充を引き起こすことがある。そして新たな脅威は、最初のミサイルが発射される前から需要を生み出すことさえある。

世界はこれからも、戦争が一刻も早く終わることを願い続けるだろう。しかし防衛産業はますます、戦争が長期化する可能性、あるいは次の戦争が起きる可能性に備えることを前提として構築されている。そこにこそ、現代の戦争がこれほど大きな経済力を持ち、その周囲に形成された企業利益や政治的利害から切り離すことが困難になっている理由がある。

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