【東京IDN=浅霧勝浩】
広島と長崎は、8月6日と9日に、核兵器禁止(核禁)条約が今年1月22日に発効してから初の「原爆の日」を迎える。国際法に初めて「核兵器は違法」の規範が確立した歴史的偉業の背景には、ヒバクシャをはじめ様々な市民社会による積極的な貢献があった。
米国の核の傘に安全保障を依存している日本政府は、これまでのところ核禁条約に加盟しない立場をとっている。しかし、2020年中旬から21年1月の間に日本で実施された世論調査によると、明らかに大多数(最高値で72%)の国民が、日本政府は核禁条約に加盟すべきと回答していた。
こうした状況を背景に、連立与党を組む公明党からも、日本政府に対して、核抑止に代わる新しい考え方、安全保障の基盤を率先して考え、核禁条約の第一回締約国会合にも、少なくともオブザーバーとして当初から参加するよう求める声がでてきている。
インデプスニュースの浅霧勝浩アジア・太平洋総局長の電子メールによるインタビューに対して、斉藤鉄夫公明党副代表は、日本は唯一の戦争被爆国という立場であり、核禁条約参加への世界からの理解を得られるよう努力すべきだと語った。
インタビューの全文は次の通り:
浅霧:高校時代、そして公明党広島県本部代表として18年間を広島で過ごされていますね。広島の有権者からは「なぜ被爆国である日本が核禁約に参加できないのか」との声が続いていると伺っています。この重要な疑問に対して、どのように回答されてきたのでしょうか。
斉藤:個人的には「核禁条約に参加すべき。それがすぐできないのであれば少なくとも当初から締約国会議にオブザーバー参加すべき。」と考え、そのように国会で主張してきました。と、同時に核抑上論をベースとした日米安保条約に日本の安全保障を委ねている日本政府として条約への参加を躊躇していることは理解できないわけではない、とも感じているところです。
浅霧:公明党は連立与党の一員として、発効済みである同条約の締約国会議にオブザーバー参加をと政府に訴えています。その締約国会議は2022年1月に開催予定となっております。まさに公明党は、日本が被爆国としての役割を果たそうとするならば、同条約と真摯に向き合い受け入れるべきとの立場を取っているわけですが、その訴えに対する日本の行動を阻んでいるものは何であるとお考えでしょうか。
斉藤:上記に述べたように、隣国に価値観を共有しない核保有国を持つ極めて厳しい安全保障環境の中で日本の安全保障をアメリカの核の傘に全面的に依存しているという現実が、条約への参加を阻んでいる最大の障壁と考えています。しかし日本は唯一の戦争被爆国という立場であり、条約参加への世界からの理解を得られるよう努力すべきと考えます。
浅霧:中満泉国連事務次長も「日本は世界唯一の戦争被曝国として、核禁条約に関する対話に参加する機会を逃すべきではない」と述べています。連立与党のパートナーである自民党は、中満氏の言葉には心を動かされなかったのでしょうか。
斉藤:自民党の中にも中満氏の発言に賛同される方はいらっしゃいます。そういう方と連携していきたいと考えています。
浅霧:政府がこういった訴えに耳を傾けるよう働きかける計画はおありでしょうか。
斉藤:令和3年2月22日(月)の予算委員会での私の質問に対する茂木敏充外務大臣の答弁は画期的なものでした。即ち、核抑止論を越える新しい考え方について考えていかなければならない、というものでした。議論の糸口がつかめたと考えています。
核禁条約の締約国会議では、例えば「被爆者」の定義など、ヒロシマ、ナガサキの経験を持つ日本人だからこそ正確な議論に貢献できる分野がたくさんあります。これは核保有国にとっても知りたい議論だと考えます。少なくとも当初から日本はオブザーバー参加すべきです。(原文へ)
INPS Japan
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