SDGsGoal3(全ての人に健康と福祉を)|米国|「核兵器予算をコロナ対策へ」と呼びかけ

|米国|「核兵器予算をコロナ対策へ」と呼びかけ

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

核兵器禁止(核禁)条約の履行を推進する非政府組織の連合体でノーベル賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が、核兵器からの資金引揚げを訴えている。「核禁条約の発効は、『財布(=資金源)』という核兵器製造者の最も痛いところを突く重要な機会を提供しています。」と、ICAN活動家は語った。

核爆発のリスクが冷戦後で最も高まっている中、銀行や年金基金、投資企業が2017年から19年の間に依然として7480億ドルを投資し、世界全体で前例のないような苦しみを人類にもたらしかねない兵器に私たちの貯金をつぎ込んでいる、とICANは主張している。

核不拡散・軍縮議員連盟(PNND)などに集う世界の議員らは、新型コロナウィルスのパンデミックがもたらす健康や経済上の課題に対処しつつ、核兵器やその他の軍備に割り当てられる予算を問題にしている。

PNNDと列国議会同盟が2020年11月に発行した『私たち共通の未来を確実に:安全保障と持続可能な開発に向けた軍縮に関する議員ハンドブック』で、こうした問題の一端が触れられている。とりわけ「パンデミックと軍縮、公衆衛生、経済の持続可能性」という章が重要だ。

他方、米議会では2人の民主党議員が「ICBM法案」と呼ばれる取り組みを開始している。地上発射型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)に対する930~960億ドル規模の国防総省の新規予算を阻止し、それを普遍的な新型コロナウィルスワクチンの開発に充てることを目指している。民主党のエド・マーキー上院議員は、「米国は、あらたな地上発射型大量破壊兵器よりも大量予防ワクチンに投資すべきだ。」と述べている。

マーキー上院議員は、PNNDの共同議長を務めている。PNNDは国内的にも国際的にも、議員らが集う超党派的なフォーラムで、核不拡散・軍縮関連の情報を共有し、協調的な戦略を発展させ、核軍縮への構想や核軍縮活動の領域に関与するための取組みをおこなっている。

マーキー上院議員は、2017年以来、カリフォルニア州第17区から下院議員に選出されている民主党のロヒット・カナ議員とともに、3月26日にこの取り組みを開始した。マーキー氏は、上院外交委員会東アジア小委員会の議長であり軍事委員会の委員でもある。カナ氏は、バラク・オバマ大統領の下で、2009年8月8日から11年8月まで、商務省次官補代理を務めた経験がある。

「ICBM法案は、偶発的な核戦争を引き起こすリスクがある冷戦期の核態勢から徐々に抜け出すことができる一方で、敵を抑止して同盟国への安全保障を維持しながら、新型コロナウィルスやその他の『今そこにある危機』に対して資金を振り向けることが可能であることを示しています。」と、カナ議員は語った。

「コロナ禍がもたらした惨事は、限定的ものでも核戦争がもたらす惨事と比べれば、かすんだものになってしまうだろう。ICBM法案は、核兵器から世界を救い、命を奪うのではなく救うためにお金を使うことを優先することを明らかにしたものです。」とカナ議員は付け加えた。

ICAN

「地上発射型弾道ミサイル計画は必要ありません……計画を前進させる論理的な理由はどこにもないのです。遥かに少ない予算で、既存のミニットマンIIIミサイルを延命させることもできるし、代わりに、新型コロナウィルスのパンデミックという目前にある緊急の国家安全保障上の脅威に対処すべきです。」と、カナ議員は続けた。

米会計検査院(GAO)は、米国の核兵器を近代化するために2046年にかけて計画されている、地上発射型弾道ミサイルやそれに関連する弾頭、プルトニウムピットの生産等を含めた1.7兆ドル規模の予算に対して、本当に支出可能なのかとの疑念を長らく指摘している。

ICBM法案は、米国が今後何十年にもわたって地上発射型弾道ミサイルに2600億ドルもの投資をしなくても、財政支出可能な範囲内で、引き続き敵を抑止し同盟国に安全を保障できる核戦力を維持することが可能だということを示している。2020年10月に実施された世論調査によると、大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」を新たな地上発射型戦略ミサイルに更新することを望んだのは有権者の僅か26%のみで、実に60%がこれに反対していた。

ウィリアム・ペリー元国防長官もこの法案を支持して、「この国の病理がどこにあるかと考えるかはともかくとして、新世代の核ミサイルがその答えでないことだけは確かです。良いニュースは、米国は、(ICBM法案を通じて)同時並行的にお金を節約しつつより大きな安全を確保できるということです。議会は、核兵器向け予算を、新型コロナ対策のようなより緊急のニーズに振り向けることができるし、またそうすべきです。」と語った。

生存可能な世界に向けた評議会」の代表であるジョン・ティアニー元米下院議員は、「第二次世界大戦の死者よりも多くの米国人が新型コロナウィルスで亡くなる中、米国は国家安全保障上の優先順位をどこに置くのかを再考すべき時にきている……冷戦戦略を闘うためにより多くの核兵器を製造するよりも、今日及び将来の難題に対処するためにお金を使おうではないか。」と語った。

プラウシェア財団」の政策研究責任者であるティム・コリーナ氏は、「新しい核ミサイルよりも、マスクとワクチンの確保を優先すべき時です。必要もないし安全ももたらさない核兵器に限られた資源を投じるべきではありません。代わりに、私たちの税金を、家族の支援やパンデミック対策に振り向けるべきなのです。」語った。

憂慮する科学者同盟」グローバル安全保障プログラムの責任者スティーブン・ヤング氏は、「米国は、我々の安全を守るためにICBMを必要としていないというだけではなく、現在の『即時発射』態勢は、誤認または偶発的な核発射のリスクを高めて核戦争を起こしやすくしているのです。」と指摘したうえで、「米国は、地上発射ミサイルの建造・配備のために2640億ドルもの資源を費やすのではなく、パンデミックの撲滅や気候変動対策、人種間の平等の構築のために資金を使うべきであり、ICMB法案はその重要なプロセスの第一報になります。」と語った。(文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

軍縮に向けた議会の行動に関する新たなハンドブック発行

新START延長も核兵器の近代化競争つづく

未曽有の危機に直面する世界に希望の光:仏教指導者からの提言

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN
IDN Logo

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken