【アスタナ、INPS Japan/フィデス通信=パオロ・アファタート】
10月7日にカザフスタンの首都アスタナで開催された「世界伝統宗教リーダー会議」の第24回事務局会合は、宗教間対話が新たな段階へと進みつつあることを鮮明に示した。議論から協力へ、相互理解から人類が直面する重大な課題に対する共通の解決策の模索へと、活動の重点が移りつつあるのである。
この変化についてフィデス通信に語ったのは、会合に参加した教皇庁諸宗教対話省のロラン・バサネー神父(イエズス会、部長)である。バサネー神父は、こうした取り組みを「スピリチュアル外交」と表現した。|スペイン語|イタリア語|フランス語|ドイツ語|中国語|英語|
それは国家間外交に代わるものでも、宗教が政治的な役割を担おうとする試みでもない。宗教指導者たちが出会い、互いの声に耳を傾け、それぞれが持つ道徳的権威を社会のために生かすことのできる、もう一つの対話の場を意味している。
アスタナでの会合では、人工知能(AI)、気候変動、治癒が見込めない病気を抱える子どもたちの保護という、一見すると異なる三つの課題に関する文書が採択された。
しかし、これらの文書には共通する根本的な問いがある。技術、環境、地政学的な変化が、各国の制度や国際機関による共通の対応を上回る速さで進むなか、いかにして人間の尊厳を守ることができるのか、という問いである。
対話から共同の行動へ
「世界伝統宗教リーダー会議の第24回事務局会合は、スピリチュアル外交の価値と有用性を改めて確認するものとなりました」
バサネー神父はフィデス通信にこう語り、「スピリチュアル外交」という表現が、今回の場合はカザフスタンのエルラン・カリン副大統領をはじめ、会議の関係者によって用いられていることに言及した。
バサネー神父は、この会合が持つ独特の性格についても説明した。
「政治的な側面があることは避けられません。参加者の中には、特に一部のイスラム教指導者や国家機関と関係のある代表者など、政府とのつながりを持つ人々もいるからです」
しかし、カトリック教会が何よりも重視しているのは、「兄弟愛と霊的なつながりに基づく出会いを通じて、私たちに何ができるのか、どのように協力できるのかを考えること」だという。
ここに、アスタナで続けられてきた宗教間対話の最も重要な変化がある。
長年にわたり、宗教間対話は主として相互理解を深めるためのものであった。
「それは必要な段階です。ともに行動するためには、まず相手を知り、その信仰、人生観、歴史、そして大切にしている価値観や感受性を理解しなければなりません」
バサネー神父はそう述べたうえで、次のように続けた。
「しかし、その段階を経た今、具体的な協力という第二の段階へ進む道が開かれています。今日、私たちが目指しているのは、出会いを通じて、より実践的な取り組みの道を見いだすことです」
つまり、今求められているのは、対話だけでなく行動である。
アスタナで取り上げられた三つの課題の選択は、まさにこの変化を反映している。
人工知能、気候危機、弱い立場に置かれた子どもたちの保護は、いずれも精神的・宗教的な視点を切り離して考えることのできない問題である。
同時に、これらは各国の法制度による対応が難しく、あるいは変化の速さに追いつけていない分野でもある。
バサネー神父によれば、カトリック教会には、こうした課題についてすでに蓄積された重要な教えがある。その例として、教皇レオの回勅『マニフィカ・フマニタス(Magnifica Humanitas)』や、教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ』を挙げた。
これらの文書に共通しているのは、こうした課題が政府や巨大テクノロジー企業、専門家だけに関わるものではなく、すべての人に関係しているという認識だと、神父は強調する。
「これらの問題は、信仰や精神性を持つ人間にも関わっています。信仰を持つ人々や宗教共同体もまた、社会の一員であり、市民だからです」
バサネー神父は、アスタナで採択された文書について、「法的拘束力を持つ文書ではありません」と認めつつも、「意思決定を担う人々が考える際の枠組みを提供し、その検討に貢献することができます」と述べた。
これこそが、神父の言う「表舞台には立たない声」の役割である。
政治的・経済的な権力に属することなく、それらの意思決定に伴走し、考えるべき方向を示す声である。
そこにあるのは、責任を分かち合うという考え方だ。
「私たちは皆、同じ人類に属し、同じ地球に暮らしています。政治、経済、金融、精神的・宗教的な分野など、それぞれが持つ能力や役割は異なります。しかし、誰もが共通善の実現に貢献することを求められているのです」
スピリチュアル外交は、政治的な意思決定者に取って代わるものではない。
むしろ、政策や決定が人間と社会にどのような影響を及ぼすのかを問い直す道徳的な視点を、議論に加えるものなのである。
三つの文書に共通する課題――人間の尊厳
アスタナで採択された三つの文書は、それぞれ異なる分野を扱っている。しかし、いずれも人間の尊厳を守り、人類の未来に対する共通の責任を果たすという、一つの問題意識に基づくものとして捉えることができる。
第一の文書は、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領の提唱によって策定された「宗教分野における人工知能の利用に関する倫理規範」である。
その出発点となっているのは、AIが宗教共同体の活動にも浸透しつつあるという、ますます明らかになっている現実である。
新しい技術は、情報発信や教育、コンテンツ制作、人々との交流、とりわけ若い世代とのつながりを深めるために活用できる。
しかし、だからこそ、宗教的感情を操作したり、憎悪を広めたり、信仰の内容を歪めたりする手段にもなり得る。
この倫理規範は、宗教共同体におけるAIの利用が、人間の尊厳と精神的・宗教的価値観の尊重に基づくものとなるよう、道徳的・倫理的な指針を示すことを目指している。
ここで問われているのは、単なる技術上の問題ではない。
宗教界には、技術そのものに先立つ根本的な問いを投げかける役割がある。
それは、人工知能に「何ができるのか」だけではなく、「何をさせることが許されるのか」という問いである。
第二の課題は、気候危機である。
採択された「気候変動との闘いにおける宗教の役割」に関する文書は、環境保護を政府の政策だけに委ねることはできないという認識を示している。
宗教共同体は、信仰を持つ人々に対して、自然界に対する責任を自覚するよう促し、持続可能な生活習慣を広めるとともに、資源の無秩序な開発や気候変動に伴う災害がもたらす影響に注意を向けさせることができる。
こうした影響は、特に社会的に弱い立場に置かれた人々に深刻な被害を及ぼす。
ここでも、精神的・宗教的な価値観が社会的責任として具体化される。
気候危機は、単なる科学的・経済的な問題ではない。
それは、人類が地球や資源、そして将来世代との関係をどのように捉えるかという問題でもある。
第三の文書は、「終末期にある子どもの権利憲章」である。
この文書は、人間の尊厳という問題を、より直接的で切実な次元から捉えている。
カザフスタンとバチカン市国による共同の取り組みとして提示されたこの憲章は、治癒が見込めない病気を抱える子どもたちの尊厳を、その中心に据えている(フィデス通信、2026年10月2日付参照)。
憲章は、人間としての尊厳を尊重したケア、医療および緩和ケアを受ける権利、心理的支援を受ける権利を確認している。
さらに、宗教間対話にとって特に重要な側面も盛り込まれている。
それは、子ども本人と家族の宗教的なニーズや世界観を尊重しながら、精神的・宗教的な支援を提供することである。
この第三の文書では、技術や政治に関する議論に代わって、他の二つの文書にも通底する根本的な問いが前面に現れる。
人間は、単なるデータでも、消費者でも、サービスの受け手でもないということである。
人工知能、環境問題、そして子どもの病気という三つの異なる分野は、こうして一つの原則を再確認する場となっている。
人間の尊厳は、効率性や技術、経済的利益よりも優先されなければならない。
対話から「グローバル平和運動」へ
第24回事務局会合で議論された「グローバル平和運動(Global Peace Movement)」構想は、アスタナが推進するスピリチュアル外交の次なる段階となる可能性を秘めている。
トカエフ大統領が提唱したこの構想は、宗教的・精神的なメッセージを、より継続性のある協力の仕組みへと発展させることを目指している。
第8回世界伝統宗教リーダー会議のテーマである「未来のための相乗効果(Synergy for the Future)」は、ここで具体的な行動につながる意味を持つことになる。
戦争や社会の分断、対立の激化、信頼の危機に直面する世界において、さまざまな宗教共同体が持つ力を結集し、共通の課題に取り組もうというのである。
そのなかでも、特に慎重な対応を要する課題がある。
それは、宗教的信念が操作されたり、武力紛争や敵意、ヘイトスピーチをあおる口実として悪用されたりすることを防ぐことである。
この責任は、宗教指導者たちに直接関わる。
宗教は、人々を分断し、暴力を正当化するために利用されることもある。しかし一方で、和解を促す力にもなり得る。
スピリチュアル外交は、まさに後者の可能性を強める必要性から生まれてきたのである。
アスタナで提示された資料によれば、この運動では、紛争地域で特に攻撃や破壊の危険にさらされやすい礼拝施設の保護に向けて、国連文明の同盟(UNAOC)と協力する取り組みも構想されている。
また、若者、研究者、メディア関係者が参加する恒久的な活動を通じて、若い世代の間に寛容と相互尊重の文化を育むことも目指している。
ここに、宗教間対話のための会議と、平和を支える本格的な基盤との違いがある。
会議は宣言を生み出すことができる。しかし、運動は、人々のつながりや人材育成、ネットワーク、そして長期にわたって継続できる行動を育むことができる。
スピリチュアル外交が示しているのは、宗教指導者たちが持つ道徳的な影響力、教育的な役割、地域社会とのつながりを通じて、政治指導者の思考や判断を豊かにできるという可能性である。
そのうえで、今問われているのは、異なる宗教的伝統を持つ人々が、個人の尊厳と平和、そして地球の未来を守るために、何をともに実行できるかということである。
この観点から見れば、「グローバル平和運動」は、その可能性を具体的に試す重要な試金石となるだろう。
(フィデス通信)Original URL:
フィデス通信は、バチカンの通信社であり、聖フィデスは古代ローマのキリスト教徒の殉教者で聖人です。フィデス通信は、信頼を意味するラテン語で、バチカンの公式な通信を担当している。INPS Japanはフィデス通信をはじめ世界10数か国から参加した国際記者団とともに、世界伝統宗教リーダー会議第24回事務局会合を取材した。

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