地域アジア・太平洋アスタナ、23年の歩み―「信頼を築く外交国家」の台頭

アスタナ、23年の歩み―「信頼を築く外交国家」の台頭

【アスタナINPS Japan/Atlantica Africa=ナスララ・ベルカヤテ博士】

Dr Nasrallah Belkhayate

2026年10月7日、カザフスタンの首都アスタナで開催された「世界伝統宗教リーダー会議」の第24回事務局会合は、歴史的な視点から捉える必要がある。この会合だけを取り上げれば、世界各地で開かれている数多くの宗教間対話の一つに見えるかもしれない。しかし、これまでの歩みを振り返ると、そこには異なる姿が浮かび上がる。カザフスタンは2003年以来、宗教間対話のために始めた取り組みを、着実に本格的な外交基盤へと発展させてきた。世界伝統宗教リーダー会議は、もはや単なる会合ではない。国際社会における同国の存在感を高める外交手段となりつつある。

この変化がとりわけ重要なのは、カザフスタンが、その地理的条件ゆえに独自の外交姿勢を求められる国だからである。ロシア、中国、欧州、中央アジア、そしてイスラム世界の間に位置するカザフスタンには、外交の方向性を一つに絞るという選択肢はない。同国が進めてきた「マルチベクトル外交(多角的外交)」の本質は、まさに複数の方向に対話と協力の扉を開き続けることにある。世界伝統宗教リーダー会議は、この外交方針に独自の側面を加えている。国家間のバランスを取るだけでなく、国境を越えて広がる社会、伝統、宗教的権威が互いに関わり合うための枠組みを提供しているのである。

ここに、23年間の歩みから得られる第一の教訓がある。地理的条件は制約となり得る一方で、独自の役割を生み出すこともできる。カザフスタンは、複数の大国や地域勢力が交差する場所に位置している。アスタナは、この立地を弱点ではなく、外交上の資産へと転換しようとしている。カザフスタンは、従来の意味での大国になろうとしているわけではない。大国や地域の主要国、宗教指導者たちが、立場の違いを超えて対話を続けられる場となることを目指しているのである。

今回の第24回事務局会合は、こうした外交が新たな段階に入りつつあることを示している。世界伝統宗教リーダー会議の事務局長を務めるエルラン・カリン氏の発言は、その方向性をよく表している。目標は、もはや単に対話を支援することではない。宗教団体や国連、その他の国際機関と協力し、さまざまな構想を「合意文書と具体的な行動」へと結びつけることにある。この転換は極めて重要だ。会議を開催することを中心とした外交から、合意を実行に移す外交へと、活動の重点が移りつつあるからである。

専門家や市民社会の代表が参加する評価制度を導入しようとする動きも、同じ方向を示している。組織が自らの成果を検証し、その結果を評価する必要性を受け入れてこそ、影響力は高まる。したがって、本質的な変化は宣言の数を増やすことではなく、宣言がその後どのような成果につながったかを明らかにすることにある。大会が終わった後も、どれだけの取り組みが継続されているのか。そのうち、いくつが具体的な事業となったのか。そして、どれほどの取り組みが測定可能な成果を生み出したのか。カザフスタンが築いてきた外交モデルの信頼性は、今後ますます、こうした問いへの答えによって左右されることになるだろう。

成果を重視するこの姿勢は、カリン氏のもう一つの発言にも新たな意味を与えている。

「人間とその尊厳は、あらゆる意思決定の中心に置かれなければならない」

この言葉は、今回アスタナで議論された三つの主要課題を貫く共通の理念を示している。人工知能(AI)、気候変動、そして治癒が見込めない病気を抱える子どもたちの保護である。一見すると異なる三つの問題だが、その根底には同じ問いがある。技術、気候、そして力関係が急速に社会を変化させるなかで、私たちはいかにして人間の尊厳を守ることができるのか、という問いである。

人工知能(AI)は、こうした新たな段階の真価を問う、最も明確な試金石となるだろう。イスラム教指導者のアッラーフシュクル・パシャザデ師(シェイフルイスラーム)は、「AIには魂がないため、礼拝において人間の代わりになることはできない」と改めて指摘した。

この発言を、単なる宗教的見解として片づけることは容易だろう。しかし、それでは、この言葉が持つより広い意味を見落とすことになる。そこには、今や世界共通の課題となった問いが含まれている。機械は、いつの間にか人間に代わる権威となることなく、人間を支援できるのだろうか。最終的な判断を下す人間の責任を肩代わりすることなく、言葉や助言、解釈を生み出すことができるのだろうか。

中国仏教協会のチウ・シュアン副会長も、異なる立場から同様の懸念を表明した。同氏によれば、人工知能の発展は、生命と正義、そして「侵すことのできない人間の尊厳」を尊重するものでなければならない。

異なる宗教的伝統の間に見られるこうした認識の一致は、今回の会合で特に注目すべき点の一つである。宗教界は、もはや宗教同士の対話だけを目指しているのではない。社会を根本から変えようとしている技術に、どのような限界を設けるべきかという世界的な議論にも参加し始めているのである。

まさにここに、カザフスタンが国の規模に左右されない、新たな影響力を獲得する可能性がある。米国や中国をはじめとする大国は、極めて高度な技術力を持っている。カザフスタンが人工知能のあらゆる分野で、これらの国々と競争できるわけではないことは明らかだ。

しかし、国際社会における力とは、単に技術を開発する能力だけではない。その技術をどのように利用すべきかを定めるルールの形成に、どれだけ貢献できるかということでもある。世界伝統宗教リーダー会議は、こうした規範形成をめぐる議論が具体化する場の一つとなり得る。

同じ考え方は、気候変動にも当てはまる。今回の会合では、アゼルバイジャンのバクーで開催された第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)において、宗教指導者たちがすでに表明していた立場が改めて取り上げられた。

ここでも、宗教共同体が果たし得る役割は、道徳的な声明を発することにとどまらない。宗教共同体には、地域社会に根ざしたネットワークや礼拝施設、社会的に認められた指導者がおり、国際機関が必ずしも持ち合わせていない人々を動員する力がある。したがって、世界共通の目標を、地域社会における具体的な行動へと結びつける役割を担うことができる。

チウ・シュアン副会長が言及した「相互依存」の原理は、この問題にさらなる深みを与える。人間と自然が相互につながっているのであれば、気候変動はもはや環境政策だけの問題として捉えることはできない。それは、食料安全保障、水へのアクセス、移住、社会の安定、そして国際安全保障にも関わる問題となりつつある。ここで、精神的・宗教的な価値観は、極めて現実的な地政学上の課題と結びつくのである。

治癒が見込めない病気を抱える子どもたちの保護は、この三つの課題を結ぶ枠組みの最後の要素である。

アスタナで議論された取り組みは、医療だけを対象とするものではない。医療サービスに加え、人間の尊厳、心理的支援、精神的・宗教的なケア、そして子ども本人と家族の信仰や価値観への尊重を一体的に捉えるものである。

この考え方が重要なのは、宗教間対話から生まれた組織が、自らの本来の性格を失うことなく、人道的な問題にも取り組めることを示しているからだ。

こうして、世界伝統宗教リーダー会議の活動を貫く共通の理念が明らかになる。グローバル化のなかで技術的な問題として扱われがちな課題に、人間そのものを中心に据える視点を取り戻そうとしているのである。

人工知能は技術革新の問題として、気候変動は温室効果ガス排出の問題として、病気は医療の問題として捉えることができる。しかし、アスタナは、そこにもう一つの問いを投げかけている。こうした変化のなかで、私たちは人間をどのような位置に置こうとしているのか、という問いである。

この変化は、事務局会合に合わせて行われた一連の会合が持つ意味も説明している。

アッラーフシュクル・パシャザデ師が継続して参加していることは、この外交的枠組みにおけるコーカサス地域の重要性を示している。エジプトのイスラム教スンニ派の権威ある機関、アル・アズハルとの協力に関する協議は、教育と宗教間対話の新たな可能性を開く。ムスリム世界連盟の継続的な参加は、主要な国際イスラム組織とのつながりを維持する役割を果たしている。また、英国国教会との関係は、アスタナのネットワークがイスラム世界の枠を超えて広がっていることを物語っている。

こうした多様性は、単なる形式的なものではない。それ自体が、世界伝統宗教リーダー会議の外交的な資産なのである。

参加者たちにとって、同じように集まりやすい別の場所が必ずしも存在しない場合、その対話の場は特別な価値を持つ。コーカサス、エジプト、湾岸諸国、アジア、キリスト教文化圏の欧州、そしてその他の宗教的・文化的地域の代表が、政治的な立場を一致させることなく、同じ枠組みのなかで対話できるのである。

これが、アスタナの外交に「トラック2外交(非政府主体による対話)」としての側面を与えている。ただし、そこには独自の特徴がある。

従来のトラック2外交は、政治当局者間の公式な交渉に向けた環境整備を目的とすることが多かった。一方、世界伝統宗教リーダー会議は、社会、宗教的権威、地域共同体、文化的な代表者とも関係を築いている。そのため、政治関係が悪化した場合でも、人間同士のつながりを維持できる場合がある。こうした関係を通じて、危機が顕在化する前の段階から働きかけることが可能になるのである。

もっとも、すでに実証された成果と、今後の可能性として語られている構想は、明確に区別する必要がある。

カザフスタンが2003年以来、宗教間対話のための持続的な枠組みを築いてきたことは確かである。また、2026年の会合が、実践的な取り組みや専門的知見の活用、国際協力の強化を目指していることも明らかだ。

その一方で、将来的な「精神的安全保障理事会」や、恒久的な国際仲介機関の創設という構想は、現段階では仮説の域を出ない。発表された仕組みが実際に成果を生み出して初めて、その構想は信頼性を獲得することになる。

だからこそ、「グローバル平和運動(Global Peace Movement)」の発表には、特に注意を払う必要がある。

その重要性は、名称そのものにあるのではない。すべては、この構想がどのような制度的な仕組みとして具体化されるかにかかっている。

事業を立ち上げ、協力相手を結集し、成果を検証し、危機の際にも対話の経路を維持できる恒久的なネットワークへと発展するのであれば、それは大きな進展となるだろう。しかし、単なる新たな宣言にとどまるのであれば、その影響力は必然的に限定されることになる。

2028年という節目は、こうした変化に歴史的な意味を与えている。

2027年には第25回事務局会合が予定されており、2028年には第1回世界伝統宗教リーダー会議の開催から25周年を迎える。カリン氏は、これらの節目を、過去の成果を評価するだけでなく、「新たな段階へ進む」機会であると明確に位置づけている。

したがって、今後の予定は、カザフスタンにとって貴重な機会となる。25年間にわたって積み重ねてきた経験を、より体系的な制度的枠組みへと発展させることができるからだ。

そのような枠組みは、単純な原則に基づいて構築できるだろう。個別の宣言を増やすのではなく、その後の取り組みを充実させるという原則である。

平和、人工知能、気候変動、人間の尊厳に関する常設作業部会の設置。国連やその他の国際機関との協力関係の構築。独立した専門家の参加。試験的な事業の実施。進捗を測定するための指標の導入。そして何よりも、会合と会合の間も活動を継続することである。

そうなれば、世界伝統宗教リーダー会議は、もはや単発の行事ではなく、継続的な取り組みの過程そのものとなる。

このような変革は、現代の多国間主義が抱える弱点の一つにも応えることになる。それは、理念を宣言することと、その理念を実行に移すことの間に存在する隔たりである。

多くの国際文書は圧倒的多数の賛成によって採択される。しかし、その実際の影響は、最終的には組織や社会がそれらを実施できるかどうかにかかっている。カザフスタンは、自国の規模に応じた形で、宣言そのものと同じくらい、その後の実施と検証を重視する外交のあり方を試みることができるだろう。

そうなれば、国際社会におけるカザフスタンの立ち位置も、これまでとは異なる視点から理解できるようになる。

その強みは、大国に取って代わろうとすることではなく、特定の一国の専属的な手段となることなく、複数の大国にとって有益な存在であり続けられる点にある。

これは極めて重要な違いである。世界が対立する陣営へとますます分断されるなか、異なる勢力の間に橋を架け続けられる国家の価値は、必然的に高まっていく。

もっとも、「アスタナはユーラシアのジュネーブである」という表現には慎重であるべきだろう。

ジュネーブには、1世紀以上をかけて築かれてきた卓越した国際機関の集積と、その活動を支える制度的な歴史がある。アスタナは、まだその段階には達していない。

しかし、カザフスタンはジュネーブを再現しようとするのではなく、異なる独自の役割を築くことができる。その可能性は、外交、精神的・宗教的価値観、倫理、技術、そして紛争予防が交差する領域にある。

ここにこそ、世界伝統宗教リーダー会議の歴史が特別な意味を持つ理由がある。

2003年当時の試みは、基本的には対話の場を創設することだった。それが2026年には、実践的な取り組み、専門家による評価、国連との協力、人間の尊厳、人工知能、気候変動、子どもの保護、そしてグローバル平和運動といった言葉で語られるようになっている。

23年間で、活動の重心は対話から行動へと移ってきた。参加者の数以上に注目すべきなのは、この変化そのものなのである。

したがって、今後数年間の課題は、カザフスタンが対話を重視する国であることを世界に納得させることではない。その能力はすでに示されている。

これから問われるのは、対話によって、他の仕組みでは容易に生み出せないもの―信頼、紛争の予防、規範、そして場合によっては具体的な解決策―を生み出せると証明することである。

それは、これまでより困難な目標であると同時に、はるかに戦略的な意味を持つ目標でもある。

さらに、そこから派生する第二の効果も考えられる。

世界伝統宗教リーダー会議が、倫理的規範の形成や紛争の仲介において信頼できる場となることに成功すれば、その影響力は宗教分野にとどまらなくなるだろう。

人工知能に関する議論は科学者や政府の関心を集め、気候変動に関する議論は国際機関の参加を促し、弱い立場に置かれた子どもたちに関する議論には人道支援関係者が加わる可能性がある。

そうなれば、宗教は会議が扱う唯一の主題ではなくなる。世界的な変化を、より人間的な形で管理し、方向づけていくための重要な入り口の一つとなるのである。

第三の波及効果も、すでに見え始めている。カザフスタンは、自国の地理的な位置を、国際制度のなかでの地位へと徐々に転換できる可能性がある。

ユーラシアの中心に位置することは、地理的な事実である。

ユーラシアにおける特定の対話の中心となることは、政治的な選択である。

そして、世界各地の関係者が仲介や調停の機能を求めて集まる場となることは、外交努力によって築き上げる成果である。

この最後の段階に到達できるかどうかが、この取り組みの歴史的意義を決定づけることになるだろう。

現時点で提示できる仮説は、具体的であり、将来的に検証することも可能だ。

2028年までに、アスタナで発表された約束が、恒久的な制度、成果を測定できる事業、そして持続的な国際協力関係へと結びつけば、世界伝統宗教リーダー会議は、制度としての第二世代に入ったと評価できるだろう。

反対に、採択された文書や打ち出された構想が、実質的には宣言にとどまるのであれば、このモデルは強い象徴的価値を維持するものの、国際的な規範形成に影響を及ぼす力を備える段階には到達しないことになる。

創設から23年を経た今、カザフスタンは宗教の枠をはるかに超える問いに直面している。

もはや問われているのは、アスタナが世界の主要な宗教的・精神的伝統の代表者を一堂に集められるかどうかではない。その能力はすでに証明されている。

今、問われているのは、人々を集めるその力を、持続的に行動し、成果を生み出す能力へと転換できるかどうかである。

そして、おそらくここに、カザフスタンの外交モデルが持つ最も際立った特徴がある。

軍事力、資源、技術、資本によって国家の力が引き続き測られるこの時代に、もう一つの力が次第に価値を増していくだろう。

それは、他の主体がもはや信頼を築けなくなったときにも、信頼を生み出すことのできる力である。

カザフスタンが目指しているのは、すでに多くの大国がひしめく国際社会に、もう一つの勢力として加わることではない。

目指しているのは、「信頼を生み出す力を持つ国家」になることなのである。

そして、この構想が2027年から2028年にかけて実際の成果によって裏づけられるならば、それは独立以来のカザフスタンが築いてきた外交の歴史において、最も独創的な遺産の一つとなるかもしれない。

Financial Afrik(フィナンシャル・アフリク)は、アフリカの経済・金融・地政学を専門とする通信社。市場動向や投資、国際関係を現地の視点から伝え、アフリカの変化が世界経済や国際社会に及ぼす影響を理解するうえで有益な情報を提供している。主要6つのSNSで延べ約59万6000人のフォロワー・登録者を擁し、アフリカと世界をつなぐ情報発信を展開している。INPS Japanはフィナンシャル・アフリクをはじめ世界10数か国から参加した国際記者団とともに、世界伝統宗教リーダー会議第24回事務局会合を取材した。
アスタナのヌルスルタンモスクを訪問した国際記者団。最も右に立っているのがフィナンシャル・アフリク編集長であるナスララ・ベルカヤテ博士。写真:カザフ外務省

Original URL:Astana, Twenty-Three Years On: The Emergence of a Power of Trust – Atlantica Africa

INPS Japan

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