ニュース視点・論点|視点|ベルリン大空輸から70年、米欧関係を振り返る(フレデリック・ケンペ大西洋評議会会長・CEO)

|視点|ベルリン大空輸から70年、米欧関係を振り返る(フレデリック・ケンペ大西洋評議会会長・CEO)

【ワシントンDC IDN=フレデリック・ケンペ】

今から70年前の1948年、ソ連は、冷戦が始まって最初の主要な危機で早期の勝利を収めようとして、西ベルリンに向かう全ての鉄道と道路を封鎖した。しかしソ連の予想に反し、徹底した対抗措置を決意した米国は、英国と協力して「ベルリン大空輸作戦」(又の名称は「糧食作戦Operation Vittles」)を6月26日に開始した。

この大空輸作戦は318日続き、27万回のフライトで150万トンもの物資が西ベルリンに空輸された。ソ連は米国との全面衝突を避けるため、西ベルリンの封鎖を解除した。この事件から1年を経過しない1949年4月、12カ国の首脳が、その後の北大西洋条約機構(NATO)の創設につながる北大西洋条約に署名した。

Berlin blockade/ By Leerlaufprozess, CC3.0
Berlin blockade/ By Leerlaufprozess, CC3.0

現在、米国の北米と欧州における同盟諸国は、米国との非難の応酬がエスカレートする中で追加関税による報復合戦を繰り広げるなど、ベルリン大空輸以来、最も深刻な正念場を迎えている。したがって、ベルリン大空輸作戦が投げかけた、より深いメッセージを振り返ってみる価値はあるだろう。つまり、もし米国が当時危機に直面しても動じない決意を明らかにせず、西ベルリンの市民や西ドイツの国民が米国の意図を疑ったり、リスクが高い大空輸作戦に反対していたとしたら、冷戦はずっと早期に共産主義の勝利の下に終結していた可能性がある。

歴史を念頭に、そして未来に危機感を抱きつつ、私は実態調査と、大西洋評議会主催の国際会議「360・OSサミット電子情報の科学捜査研究所」出席を通じて民主主義の新たな戦いの最前線で活躍している新世代のデジタル自由戦士たちを励ますために、先週ブリュッセルとベルリンを訪れた。

また6月23日には、大西洋評議会主催の「第10回自由賞」を、自由のために貢献した女性達に授与した。今年の受賞者は、マデレーン・オルブライト元米国国務長官、9才のシリア人少女ベナ・アルバエド、アフガン人歌手で活動家のアルヤナ・セイユド、国際女性メディア財団であった。オルブライト元国務長官は、基調講演のなかで、「私たちは今宵、かつて破壊され分断されながら今や新しい欧州の中心にある首都として甦った街(=ベルリン)に集っています。」と語った。

しかしこの授賞式の感動も、注意散漫な米国と方向が定まらない欧州の出現という高まりつつある危険性を覆い隠すことはできなかった。ベルリンとブリュッセルに滞在中、欧州の政策責任者らと面談したが、欧州の安全保障に対する70年におよぶ米国のコミットメントを確信できず不安を抱く者や、むしろ欧州独自で目標を追求する機会だと見ている者もいた。また、実現するには政治的一体性や軍事的資源、核抑止や戦略も欠く「戦略的自治権」といった構想も耳にした。

欧州滞在中、米国の方向性に関する様々な懸念を耳にしたが、私はむしろ欧州の将来について以前より疑問を抱いて帰路についた。移民対策を巡るメルケル新連立政権内の葛藤は、ドイツ政府にとっての懸念事項という問題に留まらず、欧州で最も重要な影響力を持つ国の政治的安定と方向性について疑問を提起している。またイタリアのポピュリスト(大衆迎合主義)連立政権(「五つ星運動」と「連合」)の動向は、ユーロ通貨圏や恐らく欧州連合の将来を占う試金石となるだろう。

英国のブレグジットから中欧における民族主義の台頭まで、ポピュリズムは、共同主権を必要とする欧州プログラムの存続そのものに関する疑問を投げ掛けている。最近米国では、移民の家族が引き離される問題が大きくクローズアップされたが、欧州では、移民論争は、政権の存続を揺るがしかねず、これまでにも難民の受入れを巡って欧州連合加盟国間で対立を引き起こす火種となってきただけに、一層深刻な問題である。(原文へ

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