ニュースサウジアラビアの核武装の夢―米国の支援を受けて

サウジアラビアの核武装の夢―米国の支援を受けて

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

ドナルド・トランプ政権とサウジアラビア政府の蜜月は、核兵器取得というサウジアラビアの長年の夢を実現するために、直接的・間接的に米国がサウジを支援しているのではないか、との推測を生んでいる。

ニューヨーク・タイムズの11月23日の1面記事によれば、実に800億ドルにも上るとみられるサウジアラビアとの原子力協定に関する協議が秘密裏に進行していることで、こうした推測が強まっている。

この舞台の立役者は、全権力を掌握しているサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子である。元々の計画では、今後20年で16基の原子力発電所を建てる計画だったが、現在は2基にまで縮小されている。

ニューヨーク・タイムズの記事は、サウジの計画を詳細に分析し、「皇太子は原爆開発の基礎を築こうとしているのか?」と疑問を呈した。

タリク・ラウフ元国際原子力機関(IAEA) 渉外政策調整部 検証安全保障政策課課長はIDNの取材に対して、「サウジアラビアの原発に対する関心は、湾岸協力会議(GCC)がフランスとの協力で原子力の平和利用に関する研究を始めると発表した2006年にさかのぼる。」と語った。

サウジアラビアは、今後20~25年で推定費用800億ドルで2基の大規模原子炉を建設する計画を持っているとされる。

ラウフ氏によれば、2010年4月17日、アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)がアブドラ・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル・サウード国王の勅令によって設置されたという。2017年7月、サウジ国家原子力エネルギープロジェクト(SNAEP)の開始が閣議決定された。

2016年4月、サウジアラビアは、原子力を柱とするエネルギーミックスを盛り込んだ「ビジョン2030」を発表した、とラウフ氏は語った。

SNAEPは、(1)大規模原子力発電所、(2)小型モジュール原子炉、(3)ウラン・トリウム採掘や、ウラン濃縮を通じたその後の段階を含む核燃料サイクル、を基礎とする核計画の実施を呼びかけた。

核ホールディング社(NHC)がこれらの機能を担うものとされている。

ラウフ氏によれば、サウジアラビアはアルゼンチンや中国、フランス、ロシア、韓国との原子力協力協定を締結している、という。また、チェコ共和国、英国、米国とも原子力分野の連携強化に向けて議論を進めている。

Photo: Saudi National Atomic Energy Project SNAEP. Credit: KACARE
Photo: Saudi National Atomic Energy Project SNAEP. Credit: KACARE

同様に重要な疑問は、太陽光エネルギーが豊富なサウジアラビアが、なぜ原子力エネルギーを必要とするのか、ということだ。はたして、原子力エネルギー開発は、核兵器生産の隠れ蓑になるのだろうか?

ブリティッシュ・コロンビア大学公共政策・グローバル問題大学院教授であるM・V・ラマナ博士はIDNの取材に対して、「トランプ政権の行動は、安全保障や環境の持続可能性など他の観点を置き去りにして、再びお気に入りの企業の利益を優先していることを示しています。この取引は、世界で原子力が電力源として衰退しつつあることを考えると、なおさら正当化することはできません。」と語った。

ラマナ博士はまた、「太陽光と風力で効率的に電力をつくることができるサウジアラビアの自然環境を考えれば原子力開発は意味をなさない。」と指摘したうえで、「サウジアラビアは直達日射量が世界でもっとも多い国のひとつです。したがってこの国が原発建設計画を立てトランプ政権がそれを支援するのは理解しがたい。」と語った。

他方で、10月にトルコ・イスタンブールのサウジ領事館でサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害されてノコギリでバラバラにされたという疑惑が持ち上がり、トランプ大統領は煮え切らない態度を続けている。

トランプ大統領は、殺害の背後にサウジ皇太子が関与していると指摘した米中央情報局(CIA)の見方を否定して、記者団に「(皇太子が事件について)知っていたかもしれないし、知らなかったかもしれない。」と語った。

トランプ大統領はまた、サウジアラビアは経済的・戦略的パートナーであり、重要な石油供給元であり、米国製兵器の大切な顧客であり、イランとの戦いにおける「偉大な同盟国」でもあると語った。

一方、ブラッド・シャーマン下院議員(民主党、カリフォルニア選出、下院外交委員会委員)は、「ノコギリを使うような信頼できない国は核兵器に関しても信頼ならない。」と率直に批判した。

M.V.-Ramana
M.V.-Ramana

「サウジアラビアは、将来の計画に関して、ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理を含めた完全な核燃料サイクルを開発するため、核不拡散条約(NPT)第4条の下で同国が持つ権利を阻害あるいは制限しない原子力協定(=いわゆる『123条合意』)を米国と結ぶことをめざしていると報じられています。」とラウフ博士は語った。

これは、米国がアラブ首長国連邦(UAE)と締結した原子力協定とは異なっている。同協定でUAEは、国内で濃縮・再処理活動を行わないとの法的拘束力のある約束(=いわゆる「ゴールド・スタンダード」)をしたうえで、核燃料は世界市場から入手することとされている。

「かつてバラク・オバマ政権は、サウジアラビアに対して、いわゆる『ゴールド・スタンダード』による原子力協定を結ぶよう要求していました。しかし報道によれば、トランプ政権は、濃縮・再処理を禁じない協定を結ぼうとしていると疑われています。」とラウフ氏は語った。

さらに、2005年6月16日、サウジアラビアは、NPTに従ってIAEAと保障措置協定を締結した。しかしここには、サウジアラビアが核物質と核施設を保有するまでは同国を査察下に置かないとする「少量規則」が盛り込まれている。

「保障措置協定は2009年1月13日に発効したが、今日に至るまで、IAEAはサウジアラビアで保障措置の査察を行っていません。」とラウフ氏は語った。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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