【ニューヨークIDN=キャロライン・マワンガ】
22年前に採択された画期的な国連決議で定められた年次報告をアントニオ・グテーレス事務総長が発表したことを受けて、「女性・平和・安全に関する安保理公開討論」が先ごろ開催された。この中でアミナ・モハマド国連副事務総長は、女性の人権擁護とさらなる包摂の促進は、平和と安全をもたらす戦略として既に証明されたものであると語った。
グテーレス事務総長はその年次報告で「2000年以降の規範的な合意があり、ジェンダー平等が持続的な平和と紛争予防への道を提供するとの証拠があるにも関わらず、事態はその反対方向に向かっています。今日、世界では女性の人権に関してこの世代を通じて勝ち取られてきた成果がなきものにされようとする一方で、暴力的な紛争や軍事支出の増大を目の当たりにしています。」と語った。
グテーレス事務総長はさらに、「民主的で包摂的な政治に対する最近の挑戦は、女性嫌いと権威主義は相互に強化し合い、安定し繁栄する社会と相反するものであることを改めて示しています。一部の国では、暴力的な過激グループと軍関係者が力で権力を奪取し、ジェンダー平等に関する過去の公約を取り消し、女性が発言をしたり単に日常生活を送ろうとしたりするだけのことを理由に迫害しています。」と語った。
モハマド副事務総長は、「今日の世界において平和が危機的状況にあることは、家父長制の破壊的な影響と女性の声を圧殺する傾向と切り離すことができません。紛争の激化から人権侵害の悪化まで、私たちが直面している課題は、多くの点で女性の権利の踏みにじりと、世界中に深く根付いた女性差別と関係しています。従って、政治・経済・社会の構造やそれを維持する規範にも挑戦することが必要です。」と語った。また、「女性、平和、安全保障の課題は、歴史的な過ちや疎外に対する答えというだけでなく、これまでとは異なる方法で物事を進める機会でもあります。(女性に対して)包摂と参加への扉を開くとき、私たちは紛争予防と平和構築において大きな一歩を踏み出すことができるのです。」と指摘したうえで、選挙監視、治安部門改革、武装解除、動員解除、司法制度などの領域で、女性の包摂を促進するためのクォータ制の導入など、完全なるジェンダー平等を呼びかけた。
またモハマド副事務総長は、「あらゆるレベルにおける女性の参加が、この20年にわたる国際社会による平和と安全へのアプローチの方法を変えるにあたって中心的な役割を果たしてきた。」と述べる一方で、その進歩は、統計が示すように『あまりに遅い』と指摘した。
例えば、1995年から2019年の間で、ジェンダー平等の条項を含めた和平合意の割合は14%から22%まで増えたに過ぎなかった。すなわち、全体の8割の協定はジェンダーの問題を無視している。
さらにこの間、女性は平均して、交渉人の13%、仲介人の6%、主要な和平合意への署名者の6%を占めるに過ぎない。
「和平プロセスへの女性の参加と、女性の生活を左右する決定への影響力の行使は大幅に遅れた状態にあり、包摂的で耐久性があり、持続可能な平和への障壁となっています。私達は事態を改善できるはずだし、今やらねばなりません。」とモハメド副事務総長は語った。
「UNウィメン」のシマ・サミ・バホス事務局長は挨拶で、地域や世界のために行動することで自らの命を危険に晒している女性人権活動家たちの窮状にも言及した。
バホス事務局長は、国連高等人権弁務官事務所は、過去1年間に国連への協力に対する脅迫や報復があった350件近い個別事例のうち、60%が女性に関するものだったと報告した。
UNウィメンの調査ではまた、国連安保理に対して情報提供した女性の市民団体関係者の約3分の1がやはり報復を受けたことを明らかにしている。
バホス事務局長は、女性の人権活動家やその団体に対して、物質的・政治的支援を行ったり、女性であることを理由とした弾圧に対する保護や一時的移転、一時的保護地位の付与などのための立法を行うことといった措置を呼びかけた。
さらに、「女性を疎外することで安全が保たれると考える人がいないように、はっきりさせておきましょう。安全への配慮から女性の居場所やアクセス、資金を奪うことは、加害者を増長させ、彼らの目には彼らの戦術を正当化するように映るのです。」と指摘した。
バホス事務局長は、包括的で持続可能な平和に不可欠な女性の参加の価値を支持し、平和プロセスや議会、コロナ対策のような別の文脈における女性の参加率の低さを嘆いた。
「私たちは何をすべきかをよく理解しています。クォータ制や一時的な特別措置は、こうした不均衡を是正し、意思決定における平等を促進する最良の手段であり続けています。」
またバホス事務局長は、言葉を現実にするための重要な手段の一つである資金について、「女性のリーダーシップ、女性の市民社会組織、そして紛争状況における女性の人権擁護者を支援することが火急の課題であり、以前にもまして意味を持つようになってきている。」と語った。
「女性・平和・安全保障に関する行動計画」を策定する国が、10年前の37か国と比較して103か国にまで伸びてきていることはよい傾向だが、課題の大きさに対応する資金によって支えられて初めて、その約束を果たすことができる。
2021年、人道危機下におけるジェンダーを基礎とした暴力を予防し対処するための資金には72%の不足が生じていた。ジェンダー平等に対処するために脆弱かつ紛争下の文脈に対して行う二国間援助の割合は、わずか5%である。
最も必要とされている、紛争下にある国々の女性団体への資金提供は、2019年の1億8100万ドルから2020年の1億5000万ドルへと減少してしまっている。アフガニスタンでは2022年、女性市民団体の77%に対して全く資金援助がなく、活動をもはや続けることができなくなっていた。ミャンマーでは、女性団体のおよそ半分が2021年のクーデター後に閉鎖を余儀なくされた。
こうした中、UNウィメンのバホス事務局長は、国際社会に対して、この傾向を逆転させるよう促した。「そうすることができる立場にあるすべての人々は、紛争下におけるジェンダー平等への資金提供を強化してほしい。もしそれができなければ、私達の公約は果たせないということになります。」(原文へ)
INPS Japan
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