【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
2人の南アフリカ人女性が、反アパルトヘイト闘争を通じて修得した知識を駆使して、南アフリカ共和国(南ア)政府が秘密裏に進めていた数十億ドル規模の原子力取引に異議を申したてた。この秘密取引が実現していれば、将来南ア各地にロシアからの原子炉が導入されることになっていただろう。南アはアフリカ大陸で唯一原発を稼働させている国である。
マコマ・レカラカラ氏とリツィウェ・マクデイド氏は5年前、原発建設に反対する法廷闘争を開始した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と南アのジェイコブ・ズマ元大統領(当時)の間に結ばれた秘密合意の存在など大きな困難が立ちはだかったが、ケープタウン高等法院は、2017年4月26日、760億ドルに及ぶ原発導入プロジェクトを憲法違反とする判決を下した。この判決は、未曾有の規模で原発産業が国内に拡大し大量の放射性廃棄物が生産される事態から南アを守ったという点で、画期的な法的勝利だった。
権威あるゴールドマン環境賞(環境分野のノーベル賞と言われる)の国際審査員は、レカラカラとマクデイド両氏を、今年のアフリカ部門(大陸毎に選出する)の受賞者に選んだ。
「(アパルトヘイト下の)1970年代と80年代に育った私たちは、社会で起こっているあらゆる不正義に立ち向かう決意をしました。」「私たちはやっと手に入れた権利を守っていかなければなりません。」とレカラカラ氏はBBCの取材に対して語った。
マクデイド氏は、「(私たちにとっての)成功とは、既存の原発が廃炉となり、政府が核のない南アを宣言したときのことです。」と述べ、今回の高等法院における勝利は、「核のない南ア」実現という目標に向けた一歩に過ぎないとの認識を示した。
この裁定により、南ア政府には今後原子力発電所を設ける計画を進める場合、まずは議会の承認を得て国民に公開する義務があることが確認された。(関連映像)
今年のゴールドマン環境賞(北米部門)を受賞したのは、米国のリー・アン・ウォルターズ氏だ。彼女は、ミシガン州フリント市で進行していた水道水汚染の実態を明らかにする市民運動を率いた人物だ。水質検査の結果、フリント市住民の6軒に1軒(影響を受けた住民は10万人を超えた)において環境保護庁(EPA)が設定した安全基準値の7倍から800倍の鉛が検出された。ウォルターズ氏らの粘り強い運動の結果、行政当局も問題解決に乗り出した。(関連映像)
その他、今年のゴールドマン環境賞(中南米部門)を受賞した人物に、南米コロンビアのアフリカ系コロンビア人コミュニティーの女性リーダーフランシア・マルケス氏がいる。マルケス氏は、外部から大挙して地元のコミュニティーバックホーを持ち込み森林伐採や金採掘による水質汚染を引き起こしていた違法業者の活動をやめさせるため、地元の女性達を組織して抗議活動を率いた人物だ。問題の舞台となった山がちなラ・カウカ地区には約25万人規模のアフリカ系コロンビア人が(その多くが古くは奴隷貿易時代から)暮らしている。マルケス氏は、80人の地元女性らとともに、アフロコロンビア音楽を奏でながら、首都ボゴタまでの200マイルの道のりを10日かけて練り歩き、中央政府に対して違法伐採・採掘をやめさせるよう訴えた。ついにはコロンビア政府は非合法業者の立退きを命令し、従わない業者にたいしては治安部隊を派遣して強制的に排除した。(関連映像)(原文へ)
翻訳=INPS Japan
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