SDGsGoal8(働きがいも 経済成長も)国連三機関が農村雇用への投資を要望

国連三機関が農村雇用への投資を要望

【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

3つの国連機関による共同報告書が、気候変動や減災、水不足などの大きな問題に対処する自然の力をさらに強化することで2000万人の雇用が生み出せると主張している。

国際労働機関(ILO)国連環境計画(UNEP)国際自然保護連合(IUCN)の共同報告書によると、「自然を基盤とした解決策(NbS)」を支える政策に投資することで、特に農村地帯において大きな雇用創出効果が見込めるという。

国連環境会議決議5/5は、NbSを「社会、経済、環境の課題に効果的かつ適応的に対処し、同時に人間の福利・生態系サービス・回復力・生物多様性の利益をもたらす、自然または改変された陸上、淡水、沿岸、海洋生態系の保護・保全・回復・持続的利用・管理のための行動」と定義している。

「『自然を基盤とした解決策(NbS)』における『ディーセントワーク(公正な報酬を受け、自由・公平・安全・人間の尊厳に配慮した生産的な仕事と定義)』」と題されたこの共同報告書は、第15回国連生物多様性会議(COP15)にて発表された。国連生物多様性条約の第15回締約国会議は、カナダ・ケベック州最大の都市であるモントリオールで12月7日から19日まで開催された。同市には同条約の事務局が置かれている。

“Decent Work in Nature-based Solution 2022” Report/ ILO

報告書は、現在7500万人近くの人々がNbS関連の仕事に従事していると述べている。その大部分(96%)がアジア太平洋地域と低・中所得国にいるという。しかし、世界全体のNbS関連支出は高収入国で発生している。

その仕事の多くはパートタイムであり、雇用全体はフルタイム換算で1450万人分だと推定される。また報告書は、NbS関連雇用の測定には困難があると警告している。さらに、NbSの導入に伴って発生する可能性のある雇用の喪失や移動は、この数字には含まれていない。

報告書はまた、低・中所得国では、NbS関連雇用のほとんど(それぞれ98%と99%)が農業・林業部門であると述べている。高中所得の場合は42%、高所得の場合は25%となる。

農業の生産性が高い先進国では、NbS関連支出は生態系の回復や天然資源管理に集中している。高収入国では公共部門がNbS関連支出の最大部分を占め(37%)、建設部門もそれなりの比率を占める(14%)。

もしNbS関連予算を2030年までに3倍にすることができれば、世界全体で2000万人の雇用創出効果が見込める。これは、国連の「2021年自然のための金融状況」で提示された生物多様性や土地の回復、気候関連目標の達成に向けた大きな一歩になると考えられてきた。

報告書は同時に、現在のところ、NbS関連雇用がILOの「グリーン雇用」の基準を満たす保証はないと警告している。基準を満たすためには、雇用が環境部門にあり、国際的・国内的な「ディーセントワーク」の基準に従うなどの要件を満たす必要がある。

ILO起業部のビク・バンブーレン部長は「NbSの利用を拡大する中で、NbS関連の労働者が現在直面している非正規労働や低賃金、低生産性のような『ディーセントワーク』に反する要素が拡大しないようにしなければならない。ILOの『公正な移行ガイドライン』がそのための枠組みを提供している。」と語った。

COP 27
COP 27

「我々はシャルム・エルシェイクで開催されたCOP27で『自然を基盤とした解決策(NbS)』が強調されたことを歓迎する。NbSは緩和措置の不可欠の部分となるだけではない。気候変動の影響への緩衝材となるなど、複数の利益をもたらす。この報告書が着目したのは、NbSの労働をいかに人々と経済のためのものにするのかということであり、それが成功に向けた主要素となる。若者層を前面に立てた広範な連携がこの達成のために必要だ。」と国連環境計画(UNEP) 生態系局のスーザン・ガードナー局長は語った。

「NbSは、『自然を基盤とした解決策』のためのIUCNグローバル基準に従って計画・実行される際には、連関している気候・生物多様性両危機の問題に対処する大規模かつ効果的な方法を提供すると同時に、良質かつグリーンな雇用など、人間の福祉と生活にも重要な利益をもたらす。ポスト2020年の『グローバル生物多様性枠組』の履行において不可欠なツールとなるだろう。」と国際自然保護連合(IUCN)のスチュワート・マギニス副事務局長は語った。

報告書は、NbS関連活動を行う企業や協同組合の育成・支援、適切なスキル開発、NbS関連雇用の獲得に向けた労働者支援、NbSを大学のカリキュラムに盛り込むための支援、中核的な労働基準(最低賃金、労働安全・保健、結社の自由など)をNbSが順守できるような政策などの「公正な移行」政策の実行を求めている。

COP27でILOとUNEPが新たに立ち上げた「グリーン・ジョブズ・フォー・ユース・パクト」は、100万人分のグリーン雇用を創出し、この報告書の勧告が実地で実現されるよう努力することを目的としている。

特に、報告書が指摘するように、現在の雇用や労働慣行が自然を持続不可能な状態で搾取している場合、より持続可能な慣行への移行が短中期的に生み出す雇用や生活へのリスクを軽減する「正しい移行」政策も必要である。

そうした政策には、転職促進サービス、公共部門での雇用プログラム、再雇用訓練、失業者支援へのアクセス、早期退職、生態系サービスの利用及び支払い(PES)プログラムなどが含まれることになるかもしれない。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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