【国連IDN=タリフ・ディーン】
かつて米国の政界でもてはやされたジョークに、「バグダッドのアブグレイブ刑務所にあるイラクのサダム・フセイン大統領の悪名高い拷問室は、かつて蛮行の象徴として取り上げられたが、閉鎖されることはなかった。」というのがある。
米国によるイラク軍事侵攻と占領(2003~11年)の後、刑務所の外に掲げられた看板には、こう書かれていたらしい。「新体制のもとで……」。
アブグレイブ刑務所でのイラク人収容者に対する拷問・虐待を示す写真が公表された後の米政権の困惑ぶりは、世界の人権侵害に関する国務省の年次報告書の公表を延期したことからも明らかである。
しかし、土壇場で公表が延期された理由が公式に明らかにされることはなかった。
この報告書は通常、事実上すべての国を狙い撃ちにし、米国による虐待をそのページから除外する一方で、主に権威主義的な政権の人権侵害に焦点を当てている。
いつも疑問視されるのは、米国は毎年、年次報告書で他国の人権状況を叩いているのに、果たして米国自身は他国より道徳的に優れているなどと主張できるのだろうか、ということである。
『ニューヨーク・タイムズ』紙でさえ、社説で「米国は屈辱を受けた」と認め、政府高官がその年の国際人権報告書を「他国から嘲笑されるのを恐れて発表できないほどになっている。」と記している。
昨年、ニューヨーク・タイムズ紙は、2002年にバグラム収容施設で米軍当局によって殺害された非武装のアフガン国籍の囚人2人に関する2000ページに及ぶ米軍報告書を入手した。
ハビブラとディラワルという2人の囚人は、天井に鎖でつながれ、殴られて死亡した。これは、拷問がイラク、シリア、アフガニスタン、リビア、サウジアラビアなどの権威主義的な政権の独占物ではないことを証明するものであった。
再び2022年に話を進める。
12月22日に発表された国連の新しい報告書は、世界中で拘束されている1000万以上の人々を拷問や虐待から守るためには、国内および国際レベルで、すべての収容施設を定期的に訪問できる機能的で独立した予防メカニズムが不可欠である。」と述べている。
国連の拷問防止機関が、拷問禁止条約選択議定書(OPCAT)採択20周年を契機に執筆したこの研究報告書は、国際機関や国内機関による拘禁場所への定期訪問に基づく拷問を防止する革新的かつ積極的な方法が、20年前に確立されたと述べている。
2002年12月に国連総会で採択されたOPCATでは、「拷問防止小委員会(SPT)」が設置された。
2007年に活動を開始して以来、「拷問防止小委員会」はこの予防制度の締約国91カ国のうち60カ国以上を訪問し、80以上のミッションを実施してきた。
これらのミッションの中で、「拷問防止小委員会」の代表団は、重大な暴力が発生した「エクアドルとメキシコの受刑者が支配する自主管理刑務所」を訪問した。
また、同委員会のメンバーは、ブラジル、グアテマラ、カンボジア、英国を含む数カ国の高セキュリティ刑務所を調査した。さらに、同委員会の代表団は、ナウル、トルコ、キプロス、イタリアの閉鎖的な収容施設で移民がどのように収容されているかを監視し、すべての訪問先で精神科病院を調査した。
2023年には、「拷問防止小委員会」はクロアチア、ジョージア、グアテマラ、カザフスタン、マダガスカル、モーリシャス、パレスチナ、フィリピン、南アフリカ、さらに「当該年度の予算に応じてその他の可能な国々」を訪問する予定である。
2023年2月9日に開催される予定のイベントでは、小委員会は多くの関係者とともに、拷問防止における成果を評価し、この人権の重要な分野における課題を検討する予定である。
生存者を治療する最大の国際組織であり、世界中で拷問の廃止を提唱している拷問被害者センターの所長兼CEOであるサイモン・アダムス博士は、IDNの取材に対して、「諸国家が拷問禁止条約の選択議定書に署名するのを推進することは重要な目標ですが、本当の試練は、拘束施設の抜き打ち独立訪問を許可するなどして、拷問を積極的に防止する義務を国々がいかに果たすかです。」と語った。
「拷問やその他の残虐で、非人道的な、品位を傷つける扱いは、通常、鍵のかかったドアの向こう、暗闇と絶望の秘密の場所で行われ、被収容者は意図的に世界の目や耳から遮断される。」と指摘した。
「国連拷問防止小委員会の訪問は、そのような暗黒の隅々にまで光を当てるのに役立ちます。拷問を防止するための中核的な原則である透明性と説明責任を確立するのです。」
アダムズ博士は、国連拷問防止小委員会がすべての締約国を平等に扱うことが不可欠であると述べている。
しかし、より大きな問題は、国際法が例外なく、いつでもどこでも拷問を禁止しているのに、選択議定書を批准している国が91カ国しかないことである。
つまり、拷問は普遍的に違法とされているのに、国連加盟国193カ国のうち、次のステップに進み、国際的な検査機構を約束した国は半分以下しかない。
「特にアジア、アフリカ、北米において、より多くの国が選択議定書に署名することが必要だということです。」とアダムス博士は語った。
一方、訪問中、国連拷問防止小委員会の代表団は拘禁されている数千人の女性、男性、子どもにインタビューを行い、患者、移民、また自由を奪われた人々と働く医師、ソーシャルワーカー、警備員、スタッフにも話を聞いた。また、裁判官、検察官、議員、弁護士、当局、非政府組織にも聞き取りを行った。
さらに、2022年11月に発表された声明によると、同委員会は、正式には国家予防機構(NPMs)と呼ばれる独立した国の監視機関と緊密に協力し、拘禁施設への合同訪問を実施した。
国連拷問防止小委員会は、国家予防機構がその任務を効率的に遂行するために、より多くの予算と国当局からの独立性を求める要望を支持した。
各訪問の後、同委員会は各国政府に対し、観察結果、懸念事項、さらなる拷問や虐待を防止し、拘禁の状況を改善するための対応勧告を含む機密報告書を提出した。
国家予防機構は、拷問禁止条約選択議定書の締約国になってから1年後に設置されることになっており、70カ国以上が設置している。しかし遺憾ながら、14カ国が国家予防機構の設置に関して特に対応が遅れている。しかし、国連拷問防止小委員会は引き続きこれらの国々に働きかけ、同機構の設立を支援していく予定だ。
国連拷問防止小委員会のスザンヌ・ジャブール議長は、「世界中で拘束されている1000万以上人々が、ネルソン・マンデラ・ルールなどの国際基準に従って尊厳を持って扱われ、拷問や虐待が防止されるよう、すべての自由剥奪の場を定期的に訪問できる機能的で独立した、十分な予算を持つ予防メカニズムをすべての国が持つことが最も重要である。」と述べている。
「国連拷問防止小委員会の予防的任務をより効果的に遂行できるよう、同委員会自身の予算も増やさなければならない。」とジャーブール議長は語った。(原文へ)
INPS Japan
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