SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)|視点|核時代から太陽光時代への平和的移行(ヘーゼル・ヘンダーソン「倫理的市場メディア」代表・未来学者)

|視点|核時代から太陽光時代への平和的移行(ヘーゼル・ヘンダーソン「倫理的市場メディア」代表・未来学者)

【IPSコラム=ヘーゼル・ヘンダーソン】

日本の仏教者で創価学会インタナショナル(SGI)の会長である池田大作氏2014年の「平和提言」は、日常のニュースから、人類共通の未来を確かなものにするためのより平和的で平等、持続可能な人間社会に向けたより長期的な関心へと私の焦点を引き上げてくれました。これらの幅広い関心は、今では、個人的、地域的、国家的な目標を超越した何百万人もの世界市民によって共有されています。

私たちの社会の既存のしくみの崩壊は、今では日常的な危機を引き起こしています。しかし同時に、人類が新たな解決策を求める中で新たな突破口も創り出しています。この惑星に38億年に亘って受け継がれてきた生命体に刻まれているように、ストレスは常に進化の手段であり続けてきました。

今日の危機は、いずれもシステム全体に及ぼす長期的な影響を考えることなく短期的な問題にのみ対処しようとしたかつての近視眼的な技術及び社会的革新の結果です。私が1960年代に人類がいかにして化石燃料を燃やしエネルギーを求めて地球を掘り起こしているかに関心を持ち、「世界未来協会」に参加したのは、まさにこうした問題意識からでした。当時私は、自分を含む母親たちが子どもを遊ばせていた公園に煤煙をまき散らしていた巨大な石炭発電所の近くに住んでおり、ニューヨークの汚れた空気を浄化する運動に率先して取り組んでいました。

それから時代は流れて2014年になりましたが、私は今でも徹底した未来主義者であり、「人類15のグローバル課題」を追及する「ミレニアムプロジェクト計画委員会」のメンバーでもあります。私たちが今年発表した最新の『未来展望レポート』では、これらの課題に対処するにあたってどの分野で前進し、どの分野で不足があるのかを検討しています。これらの課題とは、①持続可能な開発と気候変動②水③人口と資源④民主化⑤長期的な政策決定⑥情報技術のグローバル化⑦貧富の格差⑧健康⑨意思決定の能力⑩紛争解決⑪女性の地位の改善⑫越境組織犯罪⑬エネルギー⑭科学技術⑮グローバル倫理です。この「ミレニアムプロジェクト」には、50か国の学界、政府、市民社会、産業界から専門家が参加しています。

同時に、私が尊敬する『地球対談 輝く女性の世紀へ(Planetary Citizenship)』の共著者であり、1200万人の会員のリーダーである池田大作SGI会長も、今年1月に2014年の「平和提言」を発表しています。1928年生まれの池田会長は、1983年以来、毎年平和問題をはじめ様々な地球的問題を解決するための提言を行ってきており、世界で最も著名な世界市民の一人です。

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

池田会長の「地球革命へ価値創造の万波を」と題された2014年の「平和提言」は、国連が取り組んでいる課題、つまり、(2015年に期限を迎える)ミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標に関連して、191の加盟国が2012年の「リオ+20会議」で策定した持続可能な開発目標(SDGs)について言及しています。今やこれらの目標には、化石燃料や原子力から、現在進行中の、より分権的で、クリーンで、環境にやさしく、知識を豊かにするグリーン経済への移行が取り込まれています。私も、近著『太陽光時代への地球的移行を整理する』(2014)の中で同じような結論に至りました。人類が化石燃料やウラン、原発、核兵器の使用をやめることは、2014年の「グリーン移行成績表」で言及された多くの報告書で述べられているように、現在の技術によって今や実行可能となっているのです。

多くの国の政治的意思は依然として、特殊権益や従来からのしがらみがあるセクターからのロビー活動やカネ、そしてその歪んだ補助金の人質状態にあります。世界の市民運動が年金基金や大学の財団に働きかけて、化石燃料から、よりクリーンで環境にやさしく、より持続可能な領域へと投資を移すよう圧力をかけています。ジェレミー・グランサム氏ロバート・A・G・モンクス氏といったベテラン金融専門家たちが、汚い資産よりもしばしばよいリターンを見せる「化石燃料フリー」なポートフォリオを提案する資産マネージャーらとともに、こうした批判の輪に加わっています。より安価な風力や太陽光、効率的な代替案の存在によって米国や欧州で原発が廃炉になる中、アジアの多くの国は依然として原発を計画しています。今や太陽光発電で世界をリードする中国からしてそうなのです。

古いパラダイムと机上の理論に導かれた盲目を変えるためには、大胆な発想の転換が必要です。そうしたものの一つが、プランク財団による「イランは太陽光を使う」という開発提案で、もしイランがこれを採用すれば、民生用原子力開発の権利に関するすべての政治的論議に終止符を打つことが可能となります。またイランは、これによって、全ての(対イラン経済)制裁や、中東に新たな核保有国が生まれるかもしれないとのイスラエルの懸念を打ち消すことができ、さらに、来たる(2015年5月の)核不拡散条約(NPT)運用検討会議に「(いい意味で)衝撃を与える」ことができるのです。

池田会長は正しくもNPTの下での「(核兵器の)不使用」協定を求めていますが、プランク財団の計画はこれまでの発想を根本的に変革するものといえるでしょう。イランは、中国の太陽光エネルギー会社の株を取得し、できるだけ多くのソーラーパネルを購入することで、核燃料と化石燃料の両方からの移行を加速することが可能なのです。またこれは、原子炉や火力発電所を建設するよりも、はるかに安価な代替案と言えます。

そうすれば、イランの豊かな石油備蓄は、燃やしてしまうよりも、産業利用のための貴重なストックとして地下に保存されることになるでしょう。実は私は1965年にNBCで放送された「トゥデイ・ショー」のなかでこれをすでに提案していたのです! また、プランク財団の「イランは太陽光を使う」計画の詳細に見ると、(イランから)中国へと向かうシルクロードに沿って鉄道網を拡大するとともに、これまで多くの砂漠地帯で海水を利用した農業を拡大してきた「デザートコープ」(DeseatCorp)の技術を取り入れて、塩水を好む植物で沿線の砂漠地帯を緑化する計画が提案されています。

今日の私たちが直面している既存のしくみの崩壊は、長らく未来主義者と世界市民が提案してきた新たに体系的な計画と突破口を実際に生み出しつつあります。私たち共通の未来とグリーン経済に資するこうした諸計画については、「倫理的市場メディア」(米国およびブラジル)で余すところなく報じられていますが、主流メディアでは見落とされていることが少なくないのが現状です。

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

※ヘーゼル・ヘンダーソン氏は「倫理的市場メディア」(米国およびブラジル)代表で、「グリーン移行成績表」の創始者。

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