ニュース第2期トランプ政権:多国間主義と国連への試練(アハメドファティATN国連特派員・編集長)

第2期トランプ政権:多国間主義と国連への試練(アハメドファティATN国連特派員・編集長)

Ahmed Fathi, ATN
Ahmed Fathi, ATN

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

ドナルド・トランプ氏の再選が実現すれば、国連(UN)などの多国間外交や国際機関にとって大きな障害となるだろう。重要な合意からの離脱、国際機関への資金削減、一方的な外交政策決定など、トランプ氏の第1期政権では多国間主義に対する懐疑的かつ時に敵対的な態度が特徴的であった。2期目のトランプ政権ではこれらの傾向がさらに強まる可能性が高く、多国間システムの持続性や世界的なガバナンスの方向性に重大な課題を突き付けることになるだろう。

トランプ第1期政権:多国間主義からの脱却の遺産

トランプ氏は第1期政権を通じて「米国第一主義」のモットーを掲げ、多国間主義をしばしば拒絶した。その主な事例として以下が挙げられる:

イラン核合意(JCPOA)からの離脱:トランプ政権は、この合意がイランの地域的野心や核能力を十分に制限していないとして離脱した。

パリ協定からの離脱:経済的コストや、中国やインドに比べて米国が不公平な扱いを受けているとの主張から、この国際的な気候変動協定からも離脱した。

国連教育科学文化機関(UNESCO)および国連人権理事会からの撤退:これらの機関がイスラエルに対して偏向しているとし、非効率であると批判した。

国際機関への資金削減:COVID-19パンデミックの最中に世界保健機関(WHO)への資金提供を大幅に削減するなど、重要な国連プログラムへの拠出を縮小した。

双務協定の優先:多国間交渉よりも双務的な協定を優先し、取引重視の外交アプローチにより、米国がグローバルなプロジェクトにおいて信頼できる同盟国としての地位を低下させた。

これらの行動は、国際機関の正当性と効率性を損ない、中国やロシアなどの国が指導力の空白を埋める自信を得る結果を招いた。

分析:第2期トランプ政権がもたらす多国間外交への課題

トランプ氏の第2期政権では、これまで以上に多国間機関に対する懐疑的な姿勢が強調され、国連および国際外交に多くの課題をもたらす可能性がある:

1. 国連の正当性の低下

トランプ氏の多国間主義に対する軽蔑は、特に米国が国連の世界的調停者としての役割を損ない続ける場合、国連の権威をさらに低下させる可能性がある。主な課題として以下が挙げられる:

国連資金とイニシアティブへのさらなる削減:気候変動、パンデミック、人道危機などの世界的課題への対応能力を著しく損なう恐れがある。

国際協定の弱体化:米国が軍備管理(新START条約)や気候変動(パリ協定)に関連する重要な協定から撤退する、または参加を拒否する可能性があります。

2. 地政学的分極化

トランプ氏の中国およびロシアに対する攻撃的な姿勢は、国連内部の地政学的対立を拡大させるかもしれない。彼の政権は、総会および安全保障理事会において中国政府とロシア政府を牽制することで、世界政治の分極化を促進する可能性がある。

3. 国際規範の弱体化

気候変動、紛争解決、持続可能な開発における集団行動を含む主要な国際的規範が、トランプ氏の取引重視の外交や共有責任よりも主権を重視する政策により損なわれるかもしれない。

4. 米国への信頼低下

世界的な協力の推進者として、同盟国やパートナーは米国への信頼を失う可能性がある。これにより、国連の普遍的な使命が損なわれ、他国が国連システムの外で地域的または双務的な合意を模索することを促進する恐れがある。

見通し:第2期トランプ政権下での多国間主義の未来

トランプ氏の第2期政権は、世界外交に深刻な脅威をもたらす一方で、国連および他の国際機関が改革や適応を進める契機となる可能性もある:

1. 改革の可能性

米国の関与が減少する中、国連および加盟国には革新と改革が求められる:

資金の多様化:中国、インド、欧州連合(EU)などの国々からの寄付を促進することで、国連は財政的な自律性を追求する可能性がある。

業務の簡素化:予算の制約により、国連はインパクトの大きいイニシアティブに優先順位を付け、効率性を重視せざるを得なくなるだろう。

2. 中国の台頭

トランプ氏の多国間主義からの後退は、中国が世界的な主導者として台頭する速度を速めるかもしればい。中国政府はすでに国連への拠出を増加させ、WHOや国際電気通信連合(ITU)などの主要機関でリーダーシップを拡大している。第2期トランプ政権は、中国が21世紀の多国間主義を形成する中心的役割を確立する契機となる可能性がある。

3. 地域的多国間主義

国連が弱体化する中で、EU、アフリカ連合(AU)、ASEANなどの地域的枠組みが、世界的課題に取り組む主要な舞台となる可能性がある。これらの組織は、代替的なグローバル協力の場としての役割を果たすだろう。

4. 非国家主体と市民社会

民間企業、非政府組織(NGO)、その他の非国家主体が、米国の不介入による指導力の空白を埋める可能性がある。これらのグループは、国連と連携するか単独で活動し、持続可能な開発、人権、気候変動への取り組みを推進する可能性がある。

多国間主義の回復力:戦略

多国間機関とその支持者は、トランプ第2期政権の課題に先手を打って対応する必要がある:

非政府主体との連携強化:国連は非政府主体、地域組織、慈善団体とのパートナーシップを強化し、米国の関与低下を補う必要がある。

多極的リーダーシップの推進:EU、日本、カナダなどの他の大国が、気候変動、平和維持、パンデミック準備といった重要な課題で主導権を発揮する可能性がある。

米国との関係再構築:共通の利益と実用的な協力を強調し、外交官や国連職員はトランプ政権との積極的な対話を図るべきである。

国連の役割に関する啓発活動:国連が世界的課題に取り組む上での責任を周知し、草の根レベルでの多国間主義への支持を高めることが、これらの組織を信用失墜させようとする政治家の試みを牽制する助けとなるだろう。

本質的には、グローバルな回復力の試練

トランプ氏の第2期政権は、国連およびより広範な世界システムを厳しく試すだろう。彼の政策は、世界的な協力の理念と矛盾する可能性が高いものの、不確実な時代において国連が適応し、創意工夫を発揮し、その重要性を示す機会でもある。これらの課題に対処し、最も重要な問題に取り組む上で集団的な協力の必要性を強調する能力が、多国間主義の回復力を定義することになだろう。(原文へ

INPS Japan/ATN

Original Link: https://www.amerinews.tv/posts/analysis-and-outlook-trump-2-0-presidency-a-reckoning-for-multilateralism-and-the-un

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