【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】
仏教指導者で世界平和の構築を一貫して訴え続けてきた池田大作氏(創価学会インタナショナル(SGI)会長、東京)は、5月19日から21日まで広島で開催された主要国首脳会議(G7サミット)に先立ち提言を発表し、G7首脳に対し、ウクライナ紛争の解決に向けて大胆な措置を取り、「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議を主導して人類の安全を保証するよう呼びかけた。
今回のG7サミット開催地は、1945年の米国による原爆弾投下により広島・長崎合計で22万6000人以上が殺害されている(両都市では広島の方が被害が大きかった)ことから、象徴的な場所であった。
しかし、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国と欧州連合)の首脳は、ロシア・ウクライナ紛争や「核兵器の先制不使用」の誓約について大胆な措置を取ることができたのだろうか。
IDNは、寺崎広嗣SGI平和運動総局長にインタビューした。全文は以下のとおり。
Q: ウクライナ問題が焦点となり、ロシアと中国がG7を批判する中で5月21日に終了した広島サミットの結果をどのように考えておられますか。
寺崎:人類史上、初めて原爆が落とされた広島は、平和の原点であり、この地で核兵器全廃のための首脳会議を開くべきだ―池田SGI会長が1975年以来、繰り返し訴えてきたことです。
今回のサミットで核軍縮に向けて具体的前進があったとは言い難いですが、それでもなお、G7の首脳が、核兵器の惨禍を象徴する広島に会し、直接、被爆者の話に耳を傾け、被爆の実相に触れたことは、意義深いと感じています。
コミュニケが出されましたが、問われるのは、グローバルな危機に対処する、主体的な行動です。各国がイデオロギーや利害の壁を越えて、世界の平和のために開かれた対話を促進することを、強く望みます。
Q: 広島G7サミットは、ロシアとウクライナの敵対行為の停止に関して何を達成したと見ておられますか。停戦に向けた具体的な計画は策定されたでしょうか。
寺崎:まさに人々の悲願も、国家指導者たる者の責務も、第一に、壊滅的な結末の回避にあるはずです。
残念ながら、サミットではウクライナへの支援とロシアへの制裁強化や非難は表明されたものの、停戦に向けての交渉の具体的な計画は十分に示されていないと感じます。しかし、「グローバルサウス」との連携が強化された点は歓迎するものです。
これ以上、戦火によって苦しむ人々が拡大しないよう、私たちも、関係国が戦闘の全面停止に向けて協議の場を設けられるよう、より以上、声を上げ続けて参ります。
Q: 池田博士は提言の中で「先制不使用の誓約」は、核不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約をつなぐ車軸として、「核兵器のない世界」の実現を加速させることができる「希望の処方箋」となると訴えましたが、G7は広島サミットでこの議論をリードすることを約束したでしょうか。
寺崎:実際のところ、確たる成果は見えません。しかし、「種」は植えられたと信じたい。後世の人から「あれが時代の転換点だった」と言われる現実的な一歩を踏み出すべきではないでしょうか。
NPTと核兵器禁止条約の目的は、「核兵器なき世界」という点で一致しています。核兵器使用のリスクがかつてないほど高く、長期化する今、それを脱するための土台となるのが、核兵器国による「核兵器の先制不使用」にほかなりません。それこそが、NPTと核兵器禁止条約を繋ぐ土台になるものであり、「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議をG7が主導して進められるよう、引き続き働きかけていきたいと思います。
Q: 「核兵器禁止条約の精神」は、G20バリサミットの首脳宣言に明記した「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」との認識にも反映されていますが、G7は、広島から世界に向けてこの精神を力強く発信することに成功したでしょうか。
寺崎:今回のサミットで「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が出され、G20バリ首脳宣言についても確認したことは、特筆すべきことでしょう。
しかし、「他国の核兵器は危険だが、自国の核兵器は安全の礎である」との思考に基づく核抑止政策を転換していかなければ、人類は、いつ崩落するかわからない断崖に立ち続けるようなものです。この強い危機感から、被爆者や市民社会が後押しして誕生したのが核兵器禁止条約であり、その普遍化がますます必要です。
そのためにも、「核兵器の先制不使用」の誓約を基に、厳しい現実を乗り越える協議が前進するよう、引き続き核兵器の非人道性の認識を地域に、世界に広げて参ります。(英文へ)
INPS Japan
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