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宗教指導者、アスタナ会議で対話と連帯を呼びかけ

【アスタナThe Astana Time=アイマン・ナキスペコワ】

第8回世界伝統宗教指導者会議が9月17日、カザフスタンの首都アスタナで開幕し、世界の主要宗教の代表、宗教団体や市民組織、政府高官など100の代表団が参加した。地政学的緊張や危機が高まる中で、カザフスタンが改めて宗教間対話の世界的拠点として位置づけられる場となった。

Sheikh Dr. Mohammad Abdulkarim Al-Issa, Secretary-General of the Muslim World League. Photo: Wikimedia Commons

開会初日には、人類の精神的・社会的発展における宗教指導者の役割をテーマにパネル討議が行われた。

イスラム世界連盟事務総長のモハンマド・アブドルカリム・アル=イッサ博士は、世界的な暴力と不信感の拡大に言及し、平和こそが第一の目標であると強調した。カザフスタンが精神的リーダーシップを推進していることを称賛しつつ、次のように語った。

「宗教指導者はその精神的権威によって信徒の心に大きな影響を及ぼします。価値観や伝統が異なっても、我々を結びつけるのは人間に普遍的な道徳です。責任は単なる象徴ではなく、対話と誠実さを通じて具体的な行動へと移されなければなりません。」

シナジー(相乗効果)への期待

ローマ教皇レオ14世は特別メッセージを寄せ、「分断された世界に癒やしをもたらすために集った。」と述べた。

Photo credit: Dicastery for Interreligious Dialogue
「暴力的な紛争が続く時代において、宗教間対話の重要性はこれまでになく高まっています。シナジーとは、互いに、そして神と共に働くことである。」とし、連帯を「隣人愛を世界規模で実践する行為」と位置づけた。

差異を消すのではなく、多様性を相互の豊かさの源泉とするよう呼びかけた。

Patriarch Kirill of Moscow Photo: Katsuhiro Asagiri

モスクワ総主教キリルは2012年のカザフスタン訪問と第4回会議を振り返り、「この会議は権威ある国際的プロセスに成長した」と評価した。「伝統宗教の違いがあっても、神への信仰とそれに基づく道徳で一致できる。真に信仰深い社会では、歴史が示すように平和と繁栄が可能だ。」と語った。

エルサレム総主教テオフィロス3世も、自らのアスタナ会議への参加経験を踏まえて次のように語った。「真の理解と相互尊重、共存は真摯で継続的な対話によってしか実現できません。対話とシナジーは相互に涵養し合い、未来の行動原理とならねばなりません。」

分断より対話を

世界道教連合会会長の李光富師は、政治的攻撃や環境危機など、世界が直面する課題に触れ、対話と協力こそが前進への道であると強調した。

「差異は対立の理由ではなく、むしろ相互支援と理解の基盤です。真の努力とは差異を消すことではなく、共通の願望に基づく合意形成を追求することなのです。」と語った。
Group photo of delegates. Photo credit: Akorda
Group photo of delegates. Photo credit: Akorda
国連からのメッセージ
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

国連のアントニオ・グテーレス事務総長はビデオメッセージで、カザフスタンの開催と宗教間対話推進への貢献に謝意を表した。

「国連は対話が平和を導くという信念の下に設立されました。分断と危機が深まる今こそ橋を架ける努力が必要です。宗教・精神的指導者は共通基盤を築くうえで不可欠であり、不寛容に抗い、希望を鼓舞する力を持っています。」と述べた。

多彩な発言者たち
Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0
Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0
Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC
Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC

このほか、イスラエルの最高ラビ、カルマン・メイール・バー師、国連文明の同盟上級代表のミゲル・アンヘル・モラティノス氏、英国国教会の初代主教ジョー・ベイリー・ウェルズ氏、イランのイスラム文化交流機構代表モハンマド・マフディ・イマニプール博士、OSCE(欧州安全保障協力機構)少数民族高等弁務官クリストフ・カンプ氏などが発言し、世界的危機への対応において、対話、寛容、連帯を指導原則とする決意を改めて示した。

会議に先立ち、「アスタナ・タイムズ」はカザフスタン国内のユダヤ教バハイ教ロシア正教会ペンテコステ派イスラム教カトリック仏教(長岡良幸創価学会国際渉外局長)などの宗教指導者へのインタビューを掲載し、多様な信仰共同体の声を紹介している。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/09/religious-leaders-call-for-dialogue-solidarity-at-congress-in-astana/

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|第8回世界伝統宗教指導者会議|危機を超えて対話を(長岡良幸創価学会国際局長インタビュー)

|バーレーン対話フォーラム|宗教指導者らが平和共存のための内省と行動を訴える

世界伝統宗教指導者会議、アスタナで新たな10年ビジョンに着手

トカエフ大統領、宗教指導者会議で平和を訴え

【アルマトイThe Astana Times=アヤナ・ビルバエヴァ】

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は9月16日、アスタナで開幕した第8回「世界伝統宗教指導者会議」で演説し、激化する国際緊張の中で、人類共通の価値観に基づく建設的対話の必要性を訴えた。

会議の意義と将来構想

大統領は、創設以来この会議が世界的課題について自由に議論できる貴重な場を提供してきたと指摘。参加者の提言に基づき、事務局が2033年までの発展構想を策定し、平和・共生・道徳的原則の共有といった共通目標を掲げたことを明らかにした。「会議の最終宣言が国連総会の公式文書として配布されている意義は大きい」と強調した。

宗教遺産の保護

国連文明の同盟(UNAOC)が会議の一環として宗教遺産保護に関する特別会合を開催したことを評価し、カザフスタンが聖地保護に取り組んでいる姿勢を示した。同国には18の宗派を代表する約4000の宗教団体が活動している。「聖域や宗教的象徴を守ることは、人類文明の基盤を守ることに直結する」と語った。

紛争リスクと外交の役割

大統領は、制裁や軍拡競争が激化し、核紛争の危険性が高まっていると警告した。「この厳しい現実の中で、建設的な外交こそが対話を促進し、疎外を克服し、国際舞台で信頼を築く主要な手段であるべきだ」と述べた。

さらに会議の枠組みで「平和運動」を立ち上げることを提案。その道徳的中核を宗教指導者が担い、信徒や政策決定者、NGO、専門家、若者を結集させて、暴力の終結と平和的解決を求める非政治的イニシアティブとする考えを示した。

気候変動への取り組み

気候変動を「科学的・経済的課題ではなく、人類に突きつけられた根本的な道徳的課題」と位置づけ、宗教指導者の積極的な関与を要請した。「生態学的破局を前にして、国際的な団結を強化し、地球規模と地域レベルで努力を調整することが不可欠だ」と訴えた。

さらに、精神的伝統に根ざした「気候変動対策における宗教指導者の役割」に関する共同宣言の作成を提案し、脆弱な地域への責任を強調した。

デジタル時代の倫理課題

人工知能(AI)の急速な進展に対応するため、宗教間の「AI開発倫理委員会」を設立し、普遍的原則を定めることを呼びかけた。「アルゴリズムに対する一種の戒律が必要だ。人間の尊厳の尊重、差別の排除、そして重大な決定における監督が含まれる」と述べた。

若者の役割

最後に大統領は、若手指導者の育成に言及。2回目となった「若手宗教指導者フォーラム」が新世代の対話と協働への意欲を示したと評価した。「我々に課せられた共通の責務は、この新しい世代の精神的リーダーを支えることだ」と強調して演説を締めくくった。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/09/tokayev-calls-for-peace-at-congress-of-leaders-of-world-and-traditional-religions/

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|第8回世界伝統宗教指導者会議|危機を超えて対話を(長岡良幸創価学会国際渉外局長インタビュー)

【アスタナINPS Japan/The Astana Times=ナギマ・アブオワ】

Photo credit: senate.parlam.kz
Photo credit: senate.parlam.kz

「持続的な平和のためには宗教間対話が不可欠です。」と、創価学会の国際渉外局長である長岡良幸氏が『アスタナ・タイムズ』のインタビューで語った。9月17~18日に中央アジアのカザフスタン共和国の首都アスタナで開催されている第8回「世界伝統宗教指導者会議」において、長岡氏は創価学会のこれまでの参加経験、カザフスタンの平和への取り組み、そして対話構築における青年の役割について言及した。|アラビア語中国語| スペイン語英語ヒンドゥー語|

創価学会と国際的ネットワーク

1930年代に設立された日本発祥の仏教団体創価学会(価値創造の団体という意味)は、日蓮大聖人の教えに根差し、「生命の尊厳」と「一人ひとりの力」を強調してきた。その後、日本有数の宗教団体へと成長し、教育・文化活動や地域社会への貢献を展開している。1975年に国際的ネットワークとして創価学会インタナショナル(SGI)が正式に設立され、現在は190を超える国と地域を結び、平和構築、宗教間対話、人権推進を主要な活動分野としている。

会議を通じた交流の拡大

Yoshiyuki Nagaoka, an executive director of the Soka Gakkai Office of International Affairs. Photo credit: Soka Gakkai

長岡氏によると、創価学会が初めて世界伝統宗教指導者会議に本格参加した2018年の第6回会議は、国際的な宗教対話を大きく広げる転機となったという。

「この会議には、日本ではほとんど馴染みのない宗教も多数参加しています。日本国内のイスラム教徒は少ないため、多くのイスラム団体と直接交流できたことは極めて貴重な機会となりました。」と語った。

「他宗教の指導者との関わりは、平和を共に追求する上で新たな展望を開き、連帯を大きく拡充する契機となりました。」とも語った。

さらにカザフスタンが果たす平和構築の役割に言及し、1991年の核兵器放棄や中央アジア非核兵器地帯条約の推進を高く評価した。2019年には寺崎広嗣氏を団長とするSGI派遣団が東カザフスタン州セメイを訪問し、ネバダ・セミパラチンスク運動の創始者オルジャス・スレイメノフ氏と会ったことも回想した。

「広島・長崎への原爆投下の悲劇に日本と共に立ってくれることに感謝しています。」と述べ、国連の協議資格NGOとしてカザフスタンと核廃絶に向けた連携を一層強化していく意向を示した。

デジタル時代の若者の役割

今回の会議では「青年宗教指導者フォーラム」も開催される。長岡氏は、技術革新に伴う世代間の変化の中で、若者が対話に新しい活力をもたらすと強調した。

「インターネットやスマートフォンの爆発的な発展により、若者と高齢世代の思考や生活は大きく異なってきています。若者は他国の文化や生活様式に容易に触れられるようになり、相互理解への第一歩を踏み出しやすくなっています。」と語った。

Asian businessman standing and using the laptop showing Wireless communication connecting of smart city Internet of Things Technology over the cityscape background, technology and innovation concept
Asian businessman standing and using the laptop showing Wireless communication connecting of smart city Internet of Things Technology over the cityscape background, technology and innovation concept

一方で、他文化への接触が必ずしも寛容につながるとは限らず、排外主義を助長する危険性にも注意を促した。

「だからこそ創価学会は、万人の尊厳を尊重する信仰に基づき、他者や異文化を尊重する若者を育むことを重視しています。」と語った。

また、故池田大作SGI会長が提唱してきた「世界市民の育成」にも触れ、創価学園や創価大学を含む教育機関の卒業生が国連など国際機関で活躍していることを紹介した。

世界観を広げた出会い

長岡氏は、創価学会の日刊紙「聖教新聞」の米国特派員時代の経験が自身の宗教間対話への姿勢を形づくったと振り返る。彼は、伝統を超えた連帯の必要性を強調する宗教指導者や学者とのインタビューを思い起こした。

「モアハウス大学キング国際礼拝堂のローレンス・E・カーター師は、公民権運動の指導者キング牧師の遺志を受け継ぐことに生涯を捧げた人物です。彼はバプテスト派の牧師として任命されましたが、池田大作SGI会長の思想と出会ったことをきっかけに仏教思想に強い関心を抱くようになりました。」と長岡氏は語った。

また、ハーバード大学のヌール・ヤルマン教授とも出会い、彼が仏教徒に対し、キリスト教とイスラム教の架け橋となり得る可能性を見いだしていたことを紹介した。

「このように、人類社会の未来に真摯に心を砕く人々との数々の出会いが、私の中に他者への深い寛容の感覚を育み、世界観を広げてくれました。」と長岡氏は語った。

この会議は緊急の危機が山積する中で開催され、対話が果たして即時的な解決をもたらせるのかという疑問も投げかけられている。長岡氏はこうした緊張感を認めつつも、その目標を達成するには忍耐と粘り強さが不可欠だと強調した。

忍耐と行動の継続

Photo: Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.
Photo: Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

彼は、池田大作氏が歴史家アーノルド・J・トインビー、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ元書記長、ハーバード大学の経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスらと交わした対話を想起し、それが冷戦から環境問題に至るまで幅広い課題を取り上げたことに触れた。

「池田氏は、一度の対話で大きな変革がもたらされることはないと理解しており、常に忍耐と粘り強さの重要性を強調していました。」と長岡氏は語った。

さらに同氏は、宗教指導者が政治の意思決定者に取って代わることはできないが、彼らの継続的な対話は地域社会を超えた理解を広げる助けとなると付け加えた。

「宗教と政治の関係、さらには宗教と政治のかかわり方は、国ごと、地域社会ごとに大きく異なります。したがって、宗教指導者が差し迫った課題にどう関わるかも、国や地域ごとに異なるのです」と長岡氏は語った。

祈りと共感が築く共生

会議の成果については、宗教指導者が示すべき最大の貢献は「祈り」と「共生の理念」であると語った。

「祈りは宗教の根本実践であり、どれほど社会が変化しても人間の精神を育む不可欠な営みです。」と強調した。

神学的な違いは分断の要因ではなく、人類の多様性の表れとして受け止めるべきであり、共感を通じてこそ平和の基盤を築けると確信している。

Group photo of delegates.  Photo credit: Akorda
Group photo of delegates. Photo credit: Akorda

「宗教間対話は政治家の会見ほど派手に報道されることはありません。しかし、この会議は人類を平和へと導く確かな進展につながると確信しています。」と結んだ。(原文へ

INPS Japan/ The Astana Times

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セメイから広島へ―ジャーナリズムで世界の連帯を築く(アスタナ・タイムズ編集長 ザナ・シャヤフメトワ氏インタビュー)

カザフスタン、宗教間対話の世界的拠点として台頭

|核兵器なき世界| 仏教徒とカトリック教徒の自然な同盟(ヴィクトル・ガエタン ナショナル・カトリック・レジスター紙シニア国際特派員)

日本、TICADでアフリカの保健の未来を後押し

【国連IPS=マンディープ・ダリワル、國井 修】

世界の保健が大きな変革期を迎える中、連帯はかつてないほど重要性を増している。他国が約束から後退する一方で、日本は人間の尊厳と安全を優先する共有の未来に向け、揺るぎない投資を続けている。

日本は第9回アフリカ開発会議(TICAD)でこのビジョンを改めて確認し、アフリカ主導の開発を掲げる同会議において、若者の雇用とデジタル変革を議題の中心に据えている。こうした優先事項に沿って、国際協力機構(JICA)はアフリカにおけるインフラ、教育、イノベーション支援のため1億6000万ドルの債券発行を発表した。特筆すべきは、この取り組みが日本企業や金融機関に対し、アフリカ諸国とのパートナーシップや投資を呼びかけ、相互利益を追求している点である。

日本のグローバルヘルス分野におけるリーダーシップは、長年にわたり「共有する責任」と「連帯」の強い意識に支えられてきた。豊かな国々は、日本にならいパートナーシップを構築し、実証済みのイノベーションを拡大し、アフリカの持続可能な成長を後押しすべきである。

アフリカ主導の保健主権と日本の支援

このアプローチは、現地生産、デジタルヘルスの革新、気候に強い保健システムの構築といった分野で特に変革的効果をもたらし得る。これらの分野では、すでにアフリカ発の解決策が台頭しつつある。

ガーナのジョン・マハマ元大統領が主催した「アフリカ保健主権サミット」で採択された「アクラ・コンパクト」は、自国民の健康を決定する権限と主導権をアフリカ諸国自身が有することを確認している。

日本は10年以上にわたり、国連開発計画(UNDP)と連携し、保健技術の開発・提供を支援する「アクセス・デリバリー・パートナーシップ(ADP)」や「グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)」を後押ししてきた。GHITは研究開発を促進し、UNDP主導のADPは各国や地域社会と協力して完成した医薬品や診断薬を導入・普及させる役割を担っている。

小児住血吸虫症治療薬の成功例

最近の成果の一つが、寄生虫による感染症「住血吸虫症」に対する新しい小児用治療薬の開発と普及である。同疾患は熱帯地域を中心に5000万人の就学前児童に影響し、貧血や発育不全、認知発達の遅れを引き起こす。

6歳以下の子どもでも小さな錠剤で治療可能となった。GHITと、ドイツ製薬大手メルクが主導する「小児プラジカンテル・コンソーシアム」が協力し、ケニアの製薬会社ユニバーサル・コーポレーション社(UCL)へ技術移転を実現。UCLは現地生産を開始し、地域社会に持続可能な治療薬供給を保障する体制を整えた。

For over a decade, Japan has supported the Access and Delivery Partnership, led by UNDP, to deploy health technologies on the continent. Credit: UNDP Ghana
For over a decade, Japan has supported the Access and Delivery Partnership, led by UNDP, to deploy health technologies on the continent. Credit: UNDP Ghana
アフリカで進む現地生産とデジタル変革

この現地生産へのシフトはアフリカ各地で加速している。セネガルからルワンダに至るまで、多くの国が診断薬やワクチン、医薬品の地域製造拠点となりつつある。

2024年にはダカールのパスツール研究所が新しい診断薬製造施設を開設。2023年にはルワンダがバイオエヌテックと提携し、アフリカ初となる可能性のあるmRNAワクチン製造施設を開設した。

同時にデジタル技術やAIもアフリカの医療システムの未来を形づくっている。6月にはAU加盟50カ国が、アフリカ疾病予防管理センターやWHOなどが共同開発したデジタル・マイクロプランニングツールを承認し、オンコセルカ症やデング熱といった顧みられない熱帯病の根絶加速に活用している。

こうしたツールの普及は、感染症流行への備えを強化し、災害時には封じ込めと大流行の分かれ目となり得る。アフリカのデジタル経済は2035年までに7120億ドル規模に成長すると予測されており、投資家にとっても強い誘因となっている。

日本の先行的取り組みと気候変動対応

日本はすでに先を行っている。近年、日本はガーナと協力し、同国4つの主要入国地点にモバイル検査室を設置してパンデミック対策能力を強化した。

さらに本年初めには、日本とコートジボワールが共同で、UNDPの「timbuktoo」イニシアチブを支援すると発表。これはアフリカの若手起業家を対象に、保健分野を含むスタートアップの育成を後押しする取り組みである。

また、気候変動の影響を最も強く受ける国々では、保健システムを強靭化する革新的なアプローチが試みられている。アフリカの主導的取り組み「アフリカ適応加速プログラム」は、すでに150億ドル以上を動員し、気候ショックへの備えを強化している。

UNDPや各国政府が連携した「Solar for Health」や「Smart Health Systems」といった共同プロジェクトでは、14カ国1000の医療施設に安定した電力を供給。これによりワクチンや薬剤の保存、照明確保が可能となっている。

共有の未来のために

気候変動の影響が保健システムに加速的に及ぶ中、こうしたプログラムを持続的に拡大していくことが不可欠である。投資の優先順位もそれに合わせて変わるべきだ。

日本が先導する今、他国も持続可能で公平、包摂的かつ相互利益に資する取り組みに資金を投じるべきである。それは単なる賢明な政策ではなく、私たちの未来を共有するための不可欠な課題である。(原文へ

本記事は当初『日本経済新聞アジア版(Nikkei Asia)』に掲載されたものです。出典:UNDP

マンディープ・ダリワル(UNDP HIV・保健グループ ディレクター)、國井 修(グローバルヘルス技術振興基金 CEO・事務局長)

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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火の試練

ネパール国家再建の先頭に立つべきは、今こそ団結したZ世代運動である

【カトマンズNepali Times=クンダ・ディクシット】

9月8日のZ世代集会で、多くの若者が「Enough Is Enough(もうたくさんだ)」と書かれた横断幕を掲げていた。しかし、その日の終わりから翌9日にかけて、理想に燃える若い活動家たちの手を離れ、放火と暴動は制御不能となった。国会、シンハ・ダルバール(首相官邸)、最高裁判所、そして公共・民間の財産が焼き討ちに遭い、略奪された。「Enough Is Enough」は別の意味を帯びることになった。

Kunda Dixit
Kunda Dixit

もともと有力政治家の子弟の贅沢な暮らしぶりを暴露するハッシュタグ運動から始まった動きは、やがて腐敗と不処罰への抗議へと拡大した。ネパールにおける「#Nepokids」現象は政治改革キャンペーンへと変容し、9日火曜日には階級怒りの爆発へと変質した。

先週のオリ連立政権によるソーシャルメディア禁止措置が、もともとオンライン運動だったものを街頭へと駆り立てた。ハミ・ネパールとZ世代プラットフォームは、物議を醸す政治勢力やその他の要素が集会に潜り込むとの情報があるにもかかわらず、月曜にマンダラで集会を組織した。そしてそれは現実となった。

火曜日の午後には、カトマンズは火炎瓶に包まれた。国家の三権――立法、行政、司法――は灰燼に帰し、第四の権力である報道機関も無名の放火犯の標的となった。被害は建物だけでなく、国民の精神にも深く刻まれた。

だが、2015年の地震の瓦礫からハミ・ネパールが立ち上がったように、2025年の灰燼からはZ世代運動が再建の先頭に立たねばならない。ネパールは灰の中から甦り、説明責任ある政府、公平かつ包摂的な成長、開かれた社会を基盤に、新しい世代によって根本から再構築される必要がある。

今回の動乱が示したのは、多くの命が失われ、物理的破壊が生じた悲劇だけではない。ネパール人が表現の自由を重んじ、それを不正に抗し、改革と進歩を追い求める力にできるという事実である。

Photo: AMIT MACHAMASI
Photo: AMIT MACHAMASI
しかし、落とし穴は残されている。Z世代集会に便乗した勢力の一部は、いまや暫定首相候補への反対のために軍司令部の門前に集結している。ネット上には、過去に見覚えのある人物が関与する「偽Z世代」アカウントが氾濫している。

軍は2005年2月1日の経験から学んでいるはずだ。軍は最後の非常手段として非政治的であるべきであり、司令部のトゥンディケル前に「首相志願者」が群がるべきではない。

火曜の夜、状況が制御不能に陥った際には軍の出動が必要だった。しかし今後は、安定回復のためにより積極的な役割を担うべきはラーム・チャンドラ・パウデル大統領である。彼は時間を浪費せず、潔白な暫定首相の下で選挙を監督する暫定政府を速やかに任命しなければならない。

これはまた、議会解散と広範な改革を可能にする憲法改正を求めるZ世代活動家の要求でもある。だが憲法をいま改正することは、2008〜2015年のような不安定な混乱を繰り返すことになる。改正は新しい選挙後に行うべきだ。

大きな変革の移行期には、利害集団が流動的状況を悪用しようとする。ネパールはこれまでも、1990年の人民運動や2006年の平和と民主化運動といった動乱を経験してきた。毎回、自由のために戦った指導者たちに人々は希望を託したが、結果は裏切られた。今回はそうであってはならない。希望と抱負、エネルギーと決意を持つ新世代こそが、独立心、勇気、誠実さで知られる暫定首相に導かれ、新しいネパールを築くべきだ。

本号では、2022年と2024年にそれぞれ自国の政府を打倒したスリランカとバングラデシュの若者主導の運動について、両国の筆者による寄稿を掲載している。そこにはネパールのZ世代にとって重要な教訓がある。

もし元最高裁長官のスシラ・カルキが暫定政府のトップに任命されれば、彼女はネパールの「モハマド・ユヌス」となり得る。しかしバングラデシュで見たように、すべてが円滑に進むとは限らない。スリランカの「アラガラヤ」運動後も同様だった。

スリランカ、バングラデシュ、ネパールで引き金はそれぞれ異なったが、共通するのは、見捨てられ、力を奪われた市民が「もう我慢できない」と立ち上がったことだ。彼らはソーシャルメディアを通じて有機的に組織し、変革を求めた。

三国に共通する不確定要素は、米国・中国・インドの戦略的三角関係、特にトランプとモディの対立に見られる地政学的駆け引きである。

時間は極めて重要だ。事態が長引くほど、共通の基盤を見いだし再建を始めることは難しくなる。暴力を終わらせることは、政治的空白を維持することではない。(原文へ

INPS Japan/ Nepali Times

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バングラデシュは「アラブの春」と同じ運命をたどるのか?

|視点|スリランカの危機から学ぶべき教訓(ラム・プニヤーニ 元インド工科大学教授、社会活動家、コメンテーター)

王政の亡霊がネパールを再び脅かす

アンゴラは大量の石油とダイヤモンドを産出するが、大多数の人々は恩恵を受けていない

CIVICUSによるフロリンド・チヴクテ氏(米国拠点の市民社会組織「フレンズ・オブ・アンゴラ」創設者兼事務局長)へのインタビュー

【IPS/CIVICUS=フロリンド・チヴクテ】

アンゴラ政府が7月1日にディーゼル補助金を撤廃し、公共交通費が急騰したことをきっかけに、一連の抗議行動が発生しました。アンゴラはアフリカ有数の産油国であるにもかかわらず、その富の恩恵を受けられない人々が貧困の中で暮らし続けています。市民は前例のない規模で街頭に立ち、汚職と失政の終結を訴えました。独立以来50年間政権を握る与党にとって最大の試練となっています。治安部隊は一部の略奪や破壊行為に対して致死的な武力を行使し、少なくとも30人が死亡、277人が負傷、1,500人以上が拘束された。

Q:抗議の引き金は何ですか?

チヴクテ氏:燃料補助金の撤廃が危機を招きました。抗議は7月28日、首都ルアンダで運転手らのストライキとして始まり、全国各地に広がって大規模な抗議行動へと発展しました。

The National Assembly building in Luanda, Angola, was built by a Portuguese company in 2013 at a cost of US$185 million./ By David Stanley from Nanaimo, Canada – National Assembly Building, CC BY 2.0
The National Assembly building in Luanda, Angola, was built by a Portuguese company in 2013 at a cost of US$185 million./ By David Stanley from Nanaimo, Canada – National Assembly Building, CC BY 2.0

燃料価格の高騰は多くの家庭に壊滅的な打撃を与えました。長引く不況と通貨下落で賃金は目減りしており、交通費が上がれば食料や学費も上昇し、生活に苦しむ人々はさらに追い詰められました。

しかし、燃料はあくまで引き金にすぎません。抗議は、若年層を中心とする高失業率、拡大する貧困、汚職や失政への怒りといった深刻な不満を背景にしています。公共資源は少数の権力者に結びついた豪華な支出やインフラ取引に流れ、基本的なサービスや雇用は放置されています。こうした不満に燃料価格の急騰が重なり、怒りが爆発しました。

Q:資源大国なのになぜ人々は困窮しているのですか?

チヴクテ氏:危機の核心にあるのは、この皮肉です。アンゴラは石油やダイヤモンドを大量に産出していますが、その恩恵は国民に行き渡っていません。失政と根深い汚職が問題の中心にあります。資源収入は政治権力に近いネットワークに吸い上げられ、国外に流出するか雇用を生まない形で投資されてきました。

さらに、アンゴラは燃料輸入に依存しています。国内の精製能力が不足しているため、石油収入が製油所建設や産業振興に使われず、むしろ政治的に結びついた者たちが精製品の輸入で利益を得る仕組みが続いてきました。この結果、地元産業や農業への投資意欲が削がれ、巨富を手にする小さなエリート層と、低賃金と劣悪なサービスに苦しむ大多数という構造が生じています。

Q:抗議は政府の支配をどう映し出しているのですか?

チヴクテ氏:今回の抗議は転換点を示しています。独立以来MPLA(アンゴラ解放人民運動)が政治を支配してきましたが、大規模な抗議は珍しいことです。首都を中心に多くの市民が街頭に立ったことは、政権と与党への不満の高まりを示しています。

当局は強硬な対応を取りました。治安部隊は催涙ガスや実弾を使用し、労組指導者やジャーナリストを含む多数を拘束しました。地域によっては略奪が発生し、治安部隊との衝突で死傷者が出ました。市民社会は殺害の真相解明と責任追及を求めています。

しかし、力による弾圧は逆効果を招きかねません。強権対応は不信感と怒りを強め、2027年選挙に向けた政治参加の在り方に影響を及ぼす可能性があります。

Q:市民社会はどう組織し、どんな困難に直面しているのですか?
Map of Angola
Map of Angola

チヴクテ氏:市民社会――教会、労組、地域団体など――は迅速に動き、責任追及と透明性を訴えています。例えばアンゴラ・サントメ・プリンシペ司教協議会の正義と平和委員会、フレンズ・オブ・アンゴラ、正義・平和・民主主義協会、プロ・ボノ・アンゴラなどが宗教団体と協力し、殺害の調査を求めるとともに、犠牲者家族への支援に取り組んでいます。

しかし環境は敵対的です。資金不足で人権・民主主義活動を持続するのが難しい状況です。国家による監視も障害となり、市民団体はサイバー攻撃や厳しい監視の対象となっています。共産主義的権威主義の遺産は根深い不信感を残し、組織化を妨げています。

さらに、言語の壁も国際支援を制限しています。活動の多くはポルトガル語で行われており、英語やフランス語、スペイン語を用いる国際社会との接点が限られています。

加えて、法制度による制約も強まっています。2024年の国家安全保障法や公共財・サービス破壊罪法案、2023年の大統領令で承認されたNGO法案などは、市民空間をさらに狭める恐れがあります。

Q:根本的な問題を解決するには何が必要ですか?

汚職を断ち、公的財政を透明に管理する強い政治的意思が必要です。入札や財政データを公開し、過去の不正を追及し、資源収入を病院、教育、地元産業に投入すべきです。教育・医療・小規模農業への投資は雇用を創出し、生活を安定させ、輸入依存を減らすことにつながります。

制度改革も不可欠です。財産権を保護し、投資が雇用につながるビジネス環境を整え、独立した司法と選挙制度を強化することが求められます。

国際社会も役割を担うべきです。選挙の透明性を支援し、アンゴラで活動する企業や政府に説明責任を求める必要があります。

2027年の選挙は重要な試金石となります。国際社会は注意深く見守り、透明性と選挙の公正を高める改革を後押しすべきです。選挙制度改革と地方レベルでの結果公開は、民主的プロセスへの信頼を回復する大きな一歩となるでしょう。(原文へ

INPS Japan

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カザフスタン、宗教間対話の世界的拠点として台頭

【アスタナINPS Japan=アイマン・ナキスペコワ】

民族間・宗教間の対立が高まる中、宗教・文化間の対話を促進してきたカザフスタン独自の経験が世界的に注目を集めている。世界伝統宗教指導者会議の第8回大会を前に、国際宗教間・宗派間対話センター議長顧問であり大使のブラート・サルセンバエフ氏が、アスタナ・タイムズとのインタビューで語った。

Bulat Sarsenbayev, Ambassador and Advisor to the Chairman of the International Center for Interfaith and Interreligious Dialogue

「カザフ首都が世界と伝統宗教の指導者の対話の恒常的な開催地、そして求められるプラットフォームとなったのは偶然ではない」と、同氏は述べた。サルセンバエフ氏は同会議の目標推進を担うコミッショナーも務めている。

この会議は2003年に創設され、普遍的価値の促進や宗教・文化・国家間の理解強化を目指している。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などの宗教共同体の支持を受け、短期間で世界的な対話の場として確立された。会議の間の活動を支えるため、事務局も設置された。

サルセンバエフ氏は「20年以上にわたり会議を開催してきたが、各大会はその時代が直面する課題を扱ってきた。だからこそ、これまでの7回はいずれも充実し、真に代表的なものとなった」と振り返った。

また、2022年の第7回大会でカシムジョマルト・トカエフ大統領から「2023~2033年の会議発展のためのコンセプトを策定せよ」との指示があったことを想起。2023年に事務局が採択したこの文書に基づき、「善意大使制度」や「青年宗教指導者フォーラム」を創設したと述べた。

過去20年間で、この会議は規模と範囲の両面で拡大してきた。初回の会議には17の代表団が集まったが、今年は100を超える代表団が参加すると見込まれている。

「世界と伝統宗教の指導者たちがこの会議に参加している。必ずしも最高位の指導者とは限らないが、それぞれの信仰共同体において意思決定を行える影響力のある人物たちだ。また、政治指導者や国家元首、国際機関の高いレベルでの関与も重要であることを指摘した」とサルセンバエフ氏は述べた。
議題の拡大
In an interview with The Astana Times, Bulat Sarsenbayev highlighted the roots of the Congress of Leaders of World and Traditional Religions, its new agenda, and the enduring importance of mutual understanding and dialogue. Photo credit: The Astana Times

第8回大会のテーマは「Dialogue of Religions and Synergy for the Future. (宗教間対話と未来のためのシナジー)」となる。サルセンバエフ氏は「対話だけでは十分ではない。共同行動こそが課題解決につながる。」と述べ、協働の重要性を訴えた。

第8回本会議に先立ち、9月15日の作業部会と16日の事務局会合で議題や手続きを最終決定する予定だ。事務局会合はカザフスタン上院議長のマウレン・アシンバエフ氏が主宰する。

Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC
Mr. Miguel Ángel Moratinos/ UNAOC

サルセンバエフ氏はアシンバエフ氏の発言を引用し、「21世紀初頭に世界宗教指導者の英知によって、人類は『文明の衝突』というシナリオを回避できた。」と指摘した。

今回は並行イベントも拡充される。第2回となる青年宗教指導者フォーラムでは世代間の継続性を重視し、「宗教指導者は高齢者が多い。若いリーダーをこのプロセスに参加させたい。」と語った。

また、初めて専門家グループが招集され、独立した視点から宗教間対話を分析する。さらに新たな善意大使が任命され、国連文明の同盟(UNAOC)高等代表のミゲル・アンヘル・モラティノス氏が議長を務める宗教施設保護の特別セッションも行われる。

「第8回会議はより集中的であり、従来型の形式から脱却する新たな段階を示している。参加者を十分に巻き込み、次の行動を明確にするため、並行イベントを取り入れてプログラムを多様化している」とサルセンバエフ氏は述べた。
現代的課題への対応

同氏は、このフォーラムが世界の宗教間対話を「対立から理解へ」と転換させたと強調した。
「ここに集う人々は議論で争うためではなく、互いの立場を共有し理解するために来ている。それ自体が大きな成果だ」と述べた。

Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Photo: The 7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions was held in Astana on 14–15 September 2022 Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

最も重要な成果の一つは、宗教指導者が一貫して「過激主義やテロは宗教と無関係」と明言してきたことだという。
「真の宗教は本質的に過激でも急進的でもテロ的でもない。そのようなレッテルを利用する者は信仰を悪用しているにすぎない」と語った。

さらに、デジタル化の進展による新たな課題も指摘した。

「多くの人々が仮想現実の中で生活し、社会の分断を招いている。精神性と道徳教育を守ることが極めて重要である。まさにそれこそが、このデジタル時代における宗教指導者の役割である。彼らは技術の専門家ではないが、精神性を担う存在なのだ」とサルセンバエフ氏は述べた。

サルセンバエフ氏は、会議を「世界の宗教指導者が共同体の灯台となる場」と位置づけ、その影響力は信徒にとどまらず、政府や議会の意思決定にも及ぶとした。

「平和とは単に対立がない状態ではない。対立は常に存在する。平和とは理解である。そして理解は、善意ある人々が解決を探り、橋を架け続ける努力の中から生まれる。それこそが本会議の本質だと私は信じている」と結んだ。(原文へ

INPS Japan

Origiinal URL: Kazakhstan Emerges as Global Hub for Interfaith Dialogue – The Astana Times

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台頭するカザフスタン―再生可能エネルギーと国際外交で切り拓く持続可能な未来

【London Post=スルシュティ・ホデ】

カザフスタンは、資源依存型国家から持続可能なエネルギーと外交的安定の拠点へと転換し、世界舞台で重要な存在感を示しつつある。再生可能エネルギーへの戦略的注力、均衡の取れた外交政策、包摂的成長への取り組みによって、同国は国際社会における役割を再定義している。

ワシントン・コンサルティング・ソリューションズのマネージング・パートナーであり、ヘンリー・ジャクソン協会の准研究員でもあるダレン・スピンク氏にインタビューし、こうした変化を詳しく探った。スピンク氏は今年初めのアスタナ国際フォーラムに参加しており、カザフスタンの再生可能エネルギー戦略、平和仲介者としての役割、文化外交や包摂的成長が同国の未来をどのように形作るかについての見解を語った。

再生可能エネルギーへの野心

カザフスタンは再生可能エネルギー分野で大きな前進を遂げており、エネルギー源の多様化と化石燃料依存の低減を目指している。過去10年で100件以上の再生可能エネルギー事業が開発され、風力や太陽光発電が含まれている。特筆すべきは、エンビジョン・エナジーとの合弁による風力発電機の国内生産計画や、アラブ首長国連邦の支援による出力1GWの風力発電所であり、年間30億キロワット時以上のクリーン電力を生み出す見込みだ。

スピンク氏は、この取り組みがカザフスタンを特別な位置に押し上げていると指摘する。「米国はいまだ化石燃料に大きく依存していますが、カザフスタンと英国は再生可能エネルギーで共通基盤を見いだしています。英国は洋上風力発電の経験があり、カザフスタンのグリーントランスフォーメーションに投資する意欲があります。」と述べ、両国の協力がカザフスタンを地域のクリーンエネルギーの先導役に押し上げる可能性を示唆した。

中立的な外交姿勢
President Tokayev’s New year address was aired on all national TV channels. Photo credit: akorda.kz
President Tokayev’s New year address was aired on all national TV channels. Photo credit: akorda.kz

カザフスタンの外交政策は、中立と対話を重視している。最近の例としては、カシムジョマルト・トカエフ大統領がアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領と電話会談を行い、地域の調停役としての役割を示したことが挙げられる。

「トカエフ大統領は、現代的な外交アプローチを通じて、カザフスタンが信頼される調停者としての役割を果たせることを示した。」とスピンク氏は述べ、同国の実利的な国際関係アプローチを強調した。

この中立外交は、強固な貿易関係や安全保障パートナーシップと相まって、中央アジアにおける安定勢力としての信頼性を高めている。

トランス・カスピ海開発銀行の構想

スピンク氏は、地域のインフラやエネルギー事業を資金面で支える「トランス・カスピ海開発銀行」の設立を提案した。こうした金融機関は、カザフスタンの再生可能エネルギー推進を後押しするだけでなく、カスピ海諸国間の経済統合と安定を促すだろうと語った。

「地域開発銀行を創設すれば、東西をつなぐ金融の架け橋となり、投資を促進し、繁栄を共有できる」とスピンク氏は説明した。

Map of Kazakhstan
Map of Kazakhstan
女性のエンパワーメントと包摂的成長

カザフスタンはジェンダー平等と包摂的な経済発展にも力を入れている。再生可能エネルギー分野では女性がリーダーシップを担う場面が増え、グリーントランスフォーメーションに貢献している。

「女性や若者を力づける社会は、その可能性を倍増させる社会です」とスピンク氏は述べ、持続可能な発展を推進するうえで包摂的政策の重要性を強調した。

次世代の力を引き出す

カザフスタンの若者たちも、再生可能エネルギーの取り組みに積極的に貢献している。中国で開催された第4回SCO青年イノベーション・起業家コンペティションでは、カザフのクリーンテック系スタートアップが上位入賞し、スマートエネルギーや持続可能な開発における革新的な解決策を披露した。

また、アルマトイ電力通信大学(AUPET)は学生にグリーンスキルを育成する拠点となっており、再生可能エネルギーやグリーン技術の教育プログラムが2024年のグリーンスキル賞の最終候補に選ばれた。同国が未来のリーダーを育成し、持続可能なエネルギー社会を築こうとしている姿勢を示している。

アスタナ国際フォーラム―世界対話の場

アスタナ国際フォーラムは、カザフスタンの世界的な野心を最も鮮明に示す舞台の一つとなっている。今年のテーマ「心をつなぎ、未来を形作る」は、トカエフ大統領が掲げる「対話こそが平和と進歩の礎」というビジョンを反映していた。フォーラムには政治、学術、経済の各界リーダーが集まり、アスタナは国際協力の拠点となった。

国際社会における戦略的位置

戦略的な地理的位置と均衡の取れた外交政策により、カザフスタンは世界の主要なプレーヤーとしての地位を確立しつつある。再生可能エネルギーを優先し、包摂的成長を推進し、地域の安定を図ることで、国際舞台での影響力を高めている。

トカエフ大統領の指導力は、持続可能な発展と国際協力への強いコミットメントを体現している。対話と現実的な外交を重視する姿勢は、革新、安定、そして国際的関与に特徴づけられる新しい時代をカザフスタンにもたらしている。

カザフスタンは、影響力とは単に国の大きさや軍事力から生まれるのではなく、信頼、均衡、そしてビジョンから生まれることを証明している。その意味で、「新しいカザフスタン」はまさに台頭している。(原文へ

INPS Japan

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国連、アフガニスタン東部の連続地震に対応 「より良い復興」目指す

国連と加盟国は、このたびのアフガニスタン東部での一連の地震と余震を受け、「地域主体の復興」を最優先課題として掲げている。

【国連IPS=ジェニファー・シンツ・リン・レヴィーン】

アフガニスタン東部の山岳地帯、クナル州ナンガルハル州を中心に発生した一連の地震と強い余震により、未曾有の被害が広がっている。暫定報告によると、少なくとも1,400人が死亡、3,100人以上が負傷。住宅や重要インフラの広範な破壊で数千人が避難を余儀なくされ、落石や地滑りが救助隊の到達を妨げている。

これを受けて、国連人道問題調整事務所(OCHA)は地震発生から数時間以内に1,000万米ドルを拠出し、避難所、食料、水、子どもの保護、医療支援を開始した。英国や韓国なども国連を通じた資金提供を約束している(英国はタリバン政権を承認していない)。OCHAと連携する国連開発計画(UNDP)は、即時の人道支援と長期的な復興・強靭性強化を結び付ける取り組みを進めている。国連は緊急アピールの準備を進めており、中央緊急対応基金(CERF)からの500万米ドルがすでに拠出された。

資金難と持続性への懸念

迅速な対応にもかかわらず、支援が持続できるかどうかには疑問が残る。トム・フレッチャー国連人道問題担当事務次長(緊急援助調整官)は「今回の危機は、人道支援のための資源が縮小している代償を露わにした」と警告。「大幅な資金削減により、何百万人もの人々に不可欠な保健・栄養サービスが停止し、遠隔地の命綱である航空機が地上に留まり、援助団体は活動規模を縮小せざるを得なくなっている」と述べ、各国に改めて支援を呼びかけた。

UNHCR’s partner, AREWO, assessing the needs of the population affected by the earthquake that hit the region on the 31st August.
「地域主体の復興」へ

こうした緊急性と資源不足の狭間で、UNDPは即時の生存支援を超えた復興ビジョンを提示している。UNDPアフガニスタン常駐代表スティーブン・ロドリゲス氏は、同国が「複合的な経済危機」に直面していると強調。国連の25の調査チームのデータによれば、これまでに8万4,000人が被災したという。

Stephen Rodriguez, UNDP’s resident representative in Afghanistan, addresses a UN press conference via videolink on the impact of the earthquakes on the country and its people. Credit: Jennifer Xin-Tsu Lin Levine/IPS
Stephen Rodriguez, UNDP’s resident representative in Afghanistan, addresses a UN press conference via videolink on the impact of the earthquakes on the country and its people. Credit: Jennifer Xin-Tsu Lin Levine/IPS

同氏は、がれきの撤去や住宅再建を行う家族への現金支援など「地域主体の復興」プログラムを説明。2023年のヘラート地震での成功例を引きつつ、加盟国に「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」への参加を呼びかけた。

女性と人道支援の課題

一方で、女性や少女への制限が国連活動に影響している現実も指摘された。女性人道支援員の採用は禁じられており、国連女性機関アフガニスタン特別代表スーザン・ファーガソン氏は「女性や少女が今後数日のうちに命を守る支援や情報から排除されかねない」と警鐘を鳴らした。

これに対しロドリゲス氏は、女性が緊急医療を受けられない事例は「あくまで孤立的なもので、体系的な制限ではない」と述べた。

タリバンとの協力と今後

一部の国々がアフガニスタン当局を通じた資金拠出を渋るなかでも、国連は人道原則―人道性、公平性、独立性――を堅持して関与を続ける姿勢を示している。

ロドリゲス氏は2023年の地震対応での困難がその後解消されたことを挙げ、タリバンのヘリコプターによる山岳地帯への支援輸送を含め、連携が改善していると説明。「人道第一」という理解が共有されたことを「模範的」と評した。

当面の焦点は、生存者の救出、食料や安全な水の供給、感染症の拡大防止に置かれる。しかし、国連当局者は、壊滅的な被害を受けた住宅や生計の再建には、緊急援助を超えた持続的な支援と長期的な関与が不可欠だと強調している。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Nureau Report

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分断された世界で橋を架ける「世界伝統宗教指導者会議」

【Astana Times=マラト・カリジャノフ】

国際関係における緊張が高まるなか、文明・文化・宗教間において建設的な解決策を提示し、信頼を育む持続可能な人道プラットフォームの必要性は一層切実なものとなっている。今日の国際課題の核心には、宗教間・宗派間対話、調和、相互尊重と理解、さらにはグローバルな協力とパートナーシップがある。

こうした世界的状況のなかで、「世界伝統宗教指導者会議」は、カザフスタン発の独自かつ顕著な外交イニシアチブとして台頭してきた。新千年紀の幕開けにアスタナで初めて開催されて以来、この宗教間フォーラムは四半世紀の歩みを経て、世界的に認知される権威ある国際機関へと発展した。

会議の使命は多面的かつ深遠であり、世界的調和の灯台としての役割を担っている。その核心は、主要な宗教・伝統宗教に共通する道徳的・人間的価値を見いだし、言語化することにある。この作業が、多様な信仰体系を越えた相互理解の架け橋を築く基盤となっている。

Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV
Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV

会議は、信仰や告白、国籍や民族を超えた相互尊重と寛容を育むことを目的とし、宗教的感情を紛争や軍事侵攻の口実として悪用する危険を防ぐことにも積極的に取り組んでいる。今日の複雑な世界において、これは極めて重要な課題である。

結局のところ、この会議は常設の国際宗教間機関として存続し続けている。その結果、将来の集会を導く理念とビジョンの継続的かつ専門的な発展が担保され、世界平和と対話を推進する持続的な原動力としての地位を固めている。

活動は明確に示している。矛盾や対立、分断、精神的緊張が高まる世界においてこそ、宗教間対話、連帯、価値に基づくリーダーシップ、協力といった道筋が、異なる信仰の間にある不信感と疎外感を実際に和らげるのだと。

とりわけ世界的危機の時期にあっても持続性と成功を維持してきたことは、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、仏教、ヒンドゥー教、道教、神道、ジャイナ教、ゾロアスター教、バハイ教など、世界の著名で尊敬される宗教指導者を一堂に会する能力によって証明されている。国際機関の代表や政治指導者の参加も、カザフスタンの「精神外交」の戦略的先見性と高まる権威を物語っている。

歴史的展望

この会議は、2003年にカザフスタンが主導し誕生した。世俗的価値と平和への献身に基づく同国の姿勢は、9・11同時多発テロ後に高まった宗教的過激主義のリスクに対する応答でもあった。多民族・多宗教社会としてのアイデンティティに根ざし、平和的共存と寛容を体現する国のビジョンを反映した取り組みである。

Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0
Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0

2003年9月23~24日の第1回会議には、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教などの代表者が相互尊重の精神で集まった。ヨハネ・パウロ2世、モスクワ総主教アレクシー2世、国連事務総長コフィ・アナンらの支持も得て、宗教間対話の制度化や国際機関との協働、メディア・若者・学術界との連携、寛容の推進による暴力と過激主義の克服が宣言された。

その後も、2006年の第2回会議(新設の「平和と調和の宮殿」で開催)、2009年の第3回会議、2012年の第2回会議、2015年の第5回会議、2018の第6回会議へと発展を続けた。それぞれの場で採択された宣言や設立された「宗教指導者会議」は、制度的枠組みを固め、宗教間協力を世界規模で推進する土台となった。

最新会議からの教訓
pope Fransisco(Left)and Kassym-Jomart Kemeluly Tokayev, President of Kazakhstan (Right). Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
pope Fransisco(Left)and Kassym-Jomart Kemeluly Tokayev, President of Kazakhstan (Right). Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

2022年9月14~15日の第7回会議は、アスタナ宗教間サミットが正式に国際的プラットフォームとして制度化される重要な節目となった。50か国から100を超える代表団が参加し、ローマ教皇フランシスコとアズハルのグランドイマーム・アフマド・タイーブ師が初めてそろって出席したことは、分断の時代における会議の国際的重みを象徴した。

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は基調演説で、宗教指導者を「人類の道徳的羅針盤」と位置づけ、真の平和には誠実な対話、国際規範の遵守、国家主権の尊重が不可欠だと強調した。

会議は最終宣言を採択し、2023~33年の「長期開発コンセプト」の策定を事務局に付託した。同コンセプトは2023年10月に承認され、2024~25年行動計画では宗教間協力の拡大、対話の深化、会議の地位強化が重点として打ち出された。

7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo by Secretariate of the 7th Congress
7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo by Secretariate of the 7th Congress
国際宗教間・宗派間対話センターの意義

大きな進展の一つが「国際宗教間・宗派間対話センター」の設立である。これは恒常的な拠点として、宗教・専門家コミュニティの間で持続的な交流を支える強固な基盤を築いた。中核には「宗教指導者会議」があり、戦略的監督を担う。事務局と作業部会、若手宗教指導者フォーラムが実務を進め、センターが直接的に関与している。

卓越した持続性と適応力

20年以上にわたり、この会議は急速に変化する国際秩序に対して卓越した持続性と適応力を示してきた。従来の外交では対応しきれない隙間を埋める「トラック2外交」の有効な手段として機能していることを、トカエフ大統領も強調している。

人道的イニシアチブとして始まったこの取り組みは、今日では世界安定のための制度化された動的メカニズムへと転じた。精神外交が古典的な外交手段を補完し、分断された世界に理解と協力をもたらす具体例となっている。

今後、世界的分断とイデオロギー的対立が強まるなか、今年9月に予定される第8回会議「宗教間対話――未来への相乗効果」は画期的な国際イベントとなる見込みである。倫理的誠実さに基づき、調和、相互理解、寛容、団結、平和、安全を推進する実践的な影響をもたらすことが期待される。(原文へ

筆者:マラト・カリジャノフ(国際宗教間・宗派間対話センター理事会代行議長)※本記事に記された見解は筆者個人のものであり、『アスタナ・タイムズ』の立場を必ずしも反映するものではない。

INPS Japan

Original URL: https://astanatimes.com/2025/07/why-congress-of-leaders-of-world-and-traditional-religions-builds-bridges-in-divided-world/

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