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洪水と旱魃ーそして銃器ーにより加速する広範な飢餓

【ニューヨークIDN=タリフ・ディーン】

国連の食糧援助機関(FAOとWFP)が発表した世界の飢餓状況は国連をして「ホラー映画を見ているような状況だ」を言わしめた衝撃的な内容だった。極端な不平等、紛争・内戦、援助資金不足、気候変動等の影響により2020年に飢餓に直面した人口は、前年から1.6億人増えて7.2~8.1億人にのぼり、2021年は新型コロナ(それに続くデルタ株の蔓延)のパンデミックの影響で一層悪化している。なかでも気候変動の影響は確実に迫ってきており、国連の報告によると、マダガスカルは、極端な気候が原因で飢餓状態に陥った最初の国となった(同国南部では続く旱魃で食料が枯渇し、生き残った人々はイナゴやサボテンの葉、泥まですする事態に追い込まれている。)(文へFBポスト

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我々は同時に2つの敵と戦っている:死を招くウィルスとより致命的な飢餓だ

|視点|「国際民族紛争裁判所」の設立を求めて(ジョナサン・パワー コラムニスト)

【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

20世紀末に亡くなる直前、偉大なる思想家アイザイア・バーリンは、「欧州にとって最悪の世紀だった。フン族襲来の時代よりも悪かったのではないか。なぜか?ナショナリズムは現代に蘇ったものではない。それは元々死んではいないからだ。人種差別にしてもそうだ。多くの社会体制を超えて、これらは今日の世界において最も強力な運動となっている。」と語った。

バーバード大学教授だった故ダニエル・パトリック・モイニハンはその著書『パンデモニアム』の中で、「第一次世界大戦がはじまった1914年に存在し、それ以来暴力によって政府形態を変更していない国は、現在の世界では7つしか残っていない」と書いている。米国・英国・オーストラリア・カナダ・スイス・スウェーデン・ニュージーランドがそうである。

「来る時代における紛争形態で支配的になるのは民族紛争だ。それは野蛮なものになるだろう。今後50年間で50の国が新たに誕生するかもしれない。そのほとんどが、流血の事態の結果として生まれることになろう。」とモイニハンは記している。

この加速度的に力を増す民族自決をみて、ビル・クリントン米大統領期の国務長官だったウォーレン・クリストファーは、もう降参といった様子でこう嘆いた。「一つの国で異なる民族集団が共存する道を見出すことができないならば、いったいどれだけの国が必要になるのか? きっと5000は必要だ。」

Charter of the United Nations and Statute of the International Court of Justice.

しかし、何が問題なのだろうか。1000の花が咲けばいいのではないか。残念ながらそれは単純に過ぎる。そんなことが起きるのは阻止しなくてはならない。難しいのは、AからBへと戦争なしに移行するのが難しいという人間の心理である。困ったことは、1990年代の旧ユーゴスラビアや今日のソマリア、ミャンマー、シリア、イエメンがそうであるように、より大規模で支配的な民族集団は、国内の少数民族集団が自治を獲得したり独立して国が小さくなるのを好まないということだ。かりに分離に成功したところで、世界の他の国々がそれを承認するだろうか? コソボに関してそうであったように、承認は、今日の国際法において最も難しいトピックだと見なされている。

国連憲章は「人民の自決」を承認している。しかし、主権という長きにわたって保たれてきた原則を相当程度に損なうものでもあるため、この民族自決権を適用してその結果を受け入れることは、国際法学者を二分する問題になっているのである。

概して、ほとんどの場合において、諸国のコミュニティは国際連盟の意見を基に動いてきた。1920年、バルト海にあるオーランド諸島のスウェーデン系住民が、フィンランドからの「自決」を認めよと国際連盟に要請し、連盟はこの要請を検討した。連盟の顧問らは「それが彼らの望みであるとか大きな喜びであるとかいったことを理由に、言葉の問題にしても、宗教の問題にしても、あるいは人口の一部分に対して、自らの属している社会からの離脱の権利をマイノリティに対して認めることは、国家の中の秩序と安定を破壊し、国際社会に無政府状態を生み出すことになろう」と述べている。

安保理五大国の連帯

1960年代、分離・独立を求める東部州(自称ビアフラ共和国)の武力反抗をナイジェリアが鎮圧する権利を、本国での批判の強まりを受けて英国政府が支持したのはこのためだ。今日、安保理の五大国がイラクやシリア、ソマリアの領土の一体性を主張しているのもこのためである。安保理五大国によるこの立場は、民族自決の常識に反すると思われる、国を持たない最大の民族集団クルド人問題についてでさえ同じである。

Dr. Lyle Conrad – Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, Georgia, USAPublic Health Image Library (PHIL); ID: 6901,Public Domain

しかし、明らかに態度に変容がみられる。米国と欧州連合は、スペインやロシアの反対にも関わらず、コソボの独立を強く後押しした。スペイン政府は、独立をめざすバスク地方のテロリストと、カタルーニャ州の激しい独立運動に直面して、国の統一が脅かされることを恐れていた。かたや、コソボの独立に反対票を投じたロシアは、世界各地のマイノリティも同じことを主張するようになるかもしれないと論じていたが、その数年後には、クリミア半島に侵略してウクライナから分離併合した。ロシアが自らの行動を正当化するコソボの先例がなかったら侵略などしなかったのではないかと思う人もあるかもしれないが、そんなことはないだろう。

西側諸国は1920年の立場からどれだけ変わったのだろうか? いったん球が転がり始めたら、クリストファー国務長官が警告したように、その球はいったいどこで止まるのだろうか? 民族紛争が勃発するためには、フロイトが「ナルシスト的に小さな違い」と呼んだように、大きな違いは必要なく、ほんのわずかの違いでよいのである。

国連は、西サハラの統治を目指してモロッコと闘うポリサリオや、ロシアのチェチェンの抵抗勢力、ミャンマーにおけるシャン族の反乱、シリア軍に包囲されたイドリブの人々、あるいは、インド北東部の一部分の独立をめざして戦っている人々を承認するのだろうか。リストはどこまでも続く。

今後ますます大きな問題になるかもしれない民族紛争について、私がながく考えてきたことは、国際民族紛争裁判所の設置というアイディアである。

分裂しようとしている国、あるいは脅威にさらされている民族集団がこの裁判所に訴え、人権宣言の原則が順守されているかどうかを問う判決を求めるのである。行政の境界線は公正なものか? 多数を占める民族が少数民族に与えた言語や教育、政治的代表の権利は適正なものか? 状況をより公正なものにするために裁判所が提示することのできる、法律や行政の改善案はあるか?

実際のところ、1920年代のオーランド諸島紛争の際に仲介者が行ったことがこれなのである。当時、これはきわめて大きな問題だった。しかし今日ではそうでもない。当時は国際連盟の裁定(新渡戸裁定)により、オーランド諸島はフィンランド領のままだが、島民がスウェーデン語を使う権利は強められている。

UN Photo
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民族紛争裁判所は、21世紀を流血の事態から救うかもしれない。50の新たな紛争、あるいは、50の新たな国の誕生は必要なくなる。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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国際法は民族紛争を減らす強力なツール

|エチオピア|「紛争に絡んだ性暴力に国際司法裁判所の裁きを」と訴え

国連、サイバー犯罪撲滅と、平和と安全の確保を誓う

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

デジタル技術の進化が人間の生活を革新しつづける中、国連が「将来世代の安全を危機に晒しかねない」悪意のある技術に「警戒し続ける」よう呼びかけている。現在、世界には46億人以上のインターネットユーザーがいる。

したがって、国連のミシェル・バチェレ人権高等弁務官が7月19日に次のように述べたことは驚くにあたらない。「さまざまな国でジャーナリストや人権活動家、政治家などを監視するためにスパイウェア『ペガサス』が広範に使用されていたことが明らかになったが、極めて懸念すべきことだ。人権を侵害する監視技術の濫用に対する最悪の懸念を確認した形だ。」

国連で軍縮を担当する中満泉事務次長は、平和と安全に関する国連安保理の最近の会合で「デジタル技術はますます、既存の法的・人道的・倫理的規範に制約を与え、不拡散、国際の安定、平和と安全に制約を与えるようになってきている」と述べたが、この発言のもつ重要性が際立ってきた。

Photo: Michelle Bachelet of Chile, newly-appointed as the next UN High Commissioner for Human Rights by Secretary-General António Guterres. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Michele Bachelet, Presidente of Chile speaks during Special Session of the Human Rights Council. 29 March 2017. UN Photo / Jean-Marc Ferré

中満氏はさらに、デジタル技術は、アクセスへの障壁を引下げ、国家や非国家主体に国境を越えた攻撃能力を与えることで、紛争の新たな領域を開きかねないと述べた。

2022年までに285億台のネットワークデバイスがインターネットに接続されると推測されているが、これは2017年の180億台よりも格段に増えていると中満氏は指摘する。

最近では、意図的に誤った情報を流したり、故意にネットワーク障害を引き起こす等、情報通信技術(ICT)を標的とした悪意のある事件が急増し、国家間の不信を増大させ、各国が依存する重要なインフラを危機に晒している。

中満氏は、新型コロナ感染症のパンデミック下で医療施設に対するサイバー攻撃が増えていることへのアントニオ・グテーレス国連事務総長の懸念を想起しつつ、こうした攻撃を予防し撲滅するよう、国際社会に一層の努力を訴えた。

「オンラインによる暴力的過激主義や人身取引きは、サイバー上のストーキング行為や親密なパートナーからの暴力、親密者の情報や画像を同意なしに拡散する行為といった他のICT関連の脅威と同様に、しばしば見過ごされがちな悪影響を、女性や男性、子どもに及ぼしている。」

デジタル領域の意思決定における男女の「平等で完全、かつ効果的な参加」が優先されるべきだと中満氏が述べるのはこのためだ。

サイバー犯罪との闘い

ICTの脅威が高まる中、それに対処するための取り組みも強化されている。10年以上にわたって、政府レベルの専門家グループが、国際安全保障に対するICTの既存および新規の危険性を研究し、それに対処する方法、例えば信頼醸成措置や能力開発、協力措置などを勧告してきている。いわゆる「公開作業グループ」は「具体的で行動指向の勧告」を採択していると国連当局は述べている。

他方で、地域機関も取り組みを進めている。国家が自発的で法的拘束力のない規範を採択することから、地域での信頼醸成措置の発展、ICTリスク軽減のための地域的ツールの採択などがここには含まれる。

国際安全保障を守る第一義的な責任主体は国家である。しかし、ICTは社会の統合的な部分であり、そこへの参加者もまた、安全なサイバースペースを守るための役割を担っていると国連人権高等弁務官は語った。

「民間部門や市民社会、学界からの視点が、国際社会が求めているサイバーセキュリティへの集団的な解決策に独自かつ重要な要素を与えることになるだろう。」

UN Secretary General’s Roadmap for Digital Cooperation

中満氏は、平和的なICT環境を促進するにあたって国連は「国家やその他の主体を支援する用意がある」と述べ、国連事務総長の「デジタル協力に関するハイレベルパネル」とその後の円卓会議について指摘した。

2020年6月11日、グテーレス事務総長は、あらゆる人々が接続でき、尊重され、保護されるデジタル社会を構築するために国際社会が取るべき行動について勧告した。国連事務総長の「デジタル協力へのロードマップ」は、インターネットや人工知能(AI)、その他のデジタル技術に関連した幅広い問題に対処する、多くの当事者による長年に亘るグローバルな取り組みの帰結である。

行動指向のこのロードマップは、次のような領域において、グローバルなデジタル協力を促進する多様な利害関係者による具体的な行動を勧告している。

・2030年までの普遍的な接続の確立:誰もがインターネットへの安全かつ安価な接続を可能とすること。

・より公正な世界を導くデジタル公共財の促進:インターネットのオープンソース化を促進し、公的な起源を取り込み支持すること。

・社会的弱者も含めてすべての人々にデジタル技術を提供する:開発を促進するために、現在はサービスを受けていない集団もデジタルツールに平等にアクセスする必要がある。

・デジタル能力開発の強化:スキル開発と訓練が世界中で必要。

・デジタル時代における人権の擁護:人権がオンライン・オフライン両方で適用されること。

・信頼でき、人権を基盤とし、安全で、持続可能で、平和を促進するような人工知能に関してグローバルレベルでの協力を支援する。

・デジタルの信頼と安全を促進:持続可能な開発目標を前進させるグローバルな対話を呼びかけ。

・デジタル協力へのより効果的な仕組みの構築:デジタルガバナンスを優先し、国連のアプローチに焦点を当てる。

国連事務総長の「ロードマップ」は、「デジタル協力に関するハイレベルパネル」の勧告と、加盟国・民間部門・市民社会・技術者・その他の利害関係者からの意見を基にしている。

中満氏は、国連事務総長の「軍縮アジェンダ」もまた、「既存の法的・人道的・倫理的規範や、不拡散、平和と安全」に対する挑戦となっている新世代の技術に対処するものであると指摘した。

Photo: Izumi Nakamitsu, the UN High Representative for Disarmament Affairs (UNODA). Credit: UNODA

軍縮アジェンダは、平和目的の技術革新に関して科学者や技術者、産業界と協力し、「サイバースペースにおける責任ある行動に関する新たな規範やルール、原則に関するアカウンタビリティと遵守の文化を生み出す」ために加盟国と関与することを呼びかけた。

デジタル空間が日常生活のほとんどの側面を支えるようになっているなか、ICTがサイバー攻撃された場合の被害の大きさ広がりは重大な懸念だ、と中満氏は語った。

中満氏は、「意図しない武力対応や事態のエスカレーションなど重大な帰結」を引き起こしかねないサイバー攻撃の責任国を追及する動きや、国々が敵対国の技術利用に対して「攻撃的な態勢」を採用する動き、さらには、非国家主体や犯罪集団が「責任を取ることから高度に逃れた状態で社会を不安定化する能力」を開発する動きに対して、強い警告を発した。(原文へ

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北大西洋条約機構、対ロ・対中対策にシフトへ

大手タバコ産業が世界的な禁煙の取り組みに立ちはだかる

【ワシントンDC IDN=マシュー・マイヤース】

世界保健機関(WHO)が公表した「世界のたばこ流行に関する報告書2021」は、各国がたばこ対策で一定の進展を遂げている一方、電子たばこや加熱式たばこなどの新たなニコチン・たばこ製品の拡大と、たばこ産業の介入によって、その成果が損なわれる危険が高まっていると警告した。

同報告書を受け、禁煙を推進する国際団体「キャンペーン・フォー・タバコフリー・キッズ(Campaign for Tobacco-Free Kids)」のマシュー・L・マイヤーズ代表は7月27日、新製品に対する規制の遅れが、世界的なたばこ流行終結への取り組みを後退させかねないと指摘した。

WHOによれば、世界では増税、屋内禁煙、警告表示、広告規制など、実証済みのたばこ対策を導入する国が増えてきた。しかし同時に、電子ニコチン送達システム(ENDS)を含む新製品が急速に普及し、とりわけ若年層を標的にしたマーケティングが深刻な課題となっている。

報告書は、一部の市場では約1万6000種類もの電子たばこ用フレーバーが存在し、その多くが子どもや若者に訴求する設計になっていると指摘する。ENDSを使用する子どもや若者は、従来の紙巻きたばこを使用する可能性が2倍以上高いとの研究結果も示された。

健康影響についても懸念は強い。循環器系や呼吸器系への悪影響、紙巻きたばこと電子たばこを併用する「二重使用」によるリスクなど、有害性を示す証拠が増えている。一方で、電子たばこが禁煙に有効であるかどうかについては、特に集団レベルでは結論が出ていないとされる。

規制の現状を見ると、ENDSの販売を全面的に禁止している国は32か国にとどまり、79か国が部分的な規制を導入しているに過ぎない。多くの国では、製品の成分表示、広告規制、フレーバー制限などが十分に整備されていないのが実情だ。

マイヤーズ氏は、「たばこ産業は、新製品を通じて次の世代をニコチン依存に引き込もうとしている」と指摘し、各国政府に対し、WHOの「たばこの規制に関する枠組条約(WHO FCTC)」に基づく実効的な対策を全面的に実施するよう求めた。

WHOは、従来型たばこ対策で得られた成果を守り、さらなる前進を実現するためには、新型たばこ・ニコチン製品を含めた包括的な規制が不可欠だとしている。若年層を中心とする新たな依存の連鎖を断ち切れるかどうかが、今後の世界の禁煙対策の成否を左右することになりそうだ。(原文へ

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途上国では疾病よりも死の原因となる公害

|米国|新天地で新たな人生を踏み出すソマリア難民

【ニューヨークINPS Japan/UN News Feature=ムヒディン・リバア】

ケニアで国連が支援する難民キャンプで何年か過ごしたのち、約220人の元ソマリア難民が、米国メイン州の農場でビーツやスティックセニョール(ブロッコリーに似た緑黄色野菜)等の作物を育てている。

アフリカの角地域に位置するソマリアで続いている迫害や内戦から逃れた数千人のソマリア人が、米国などの第三国への再定住を支援するプログラムの恩恵を受けている。

ムヒディン・リバアさんもそうした難民の一人だ。リバアさんは取材に対して、メイン州のルイストンに設立したソマリ・バンツーコミュニティー協会について語った。同協会は、新たに到着した元難民がソマリアバンツー族の文化を保持しながら、アメリカの生活様式に適応できるよう支援する活動を行っている。

「私は1991年にソマリア南部ジュバ渓谷の村が襲撃された際に、家を後にしました。故郷は内戦の当事者らによって、多くの人々が殺害されたり餓死に追い込まれました。また女性は強姦され、土地や財産は略奪されました。」とリバアさんは当時を振り返った。

迫害

私はソマリアの少数民族であるバンツー族に属します。バンツー族はソマリアに数世代前に奴隷として連れてこられた人々の末裔です。そうした背景から、ソマリアでは私たちは常に迫害されてきました。

私は父と共に国境を越えてケニア東部のダダーブ難民キャンプに収容されました。当時私は15歳で、通学経験もなく、知っていることと言えば畑で耕作することぐらいでした。銃を持った少年達が至る所にいたので、もしあのままソマリアに留まっていたら、とっくに殺されていたと思います。

国連の子

私はダダーブ難民キャンプで10年暮らしましたが、現地の気候は冬でも緑豊かだった故郷のジュバ渓谷とは全く異なる乾燥して砂埃が舞う大変熱い気候で、そこでの生活は大変厳しいものでした。

ダダーブ難民キャンプは、いわば屋根のない広大な刑務所のようなところで、あまり活動ができませんでしたが、国連が学校を設立してくれたおかげで、初めて勉強をすることができました。故郷では同世代の子どもたちが銃を持たされている状況でしたから、難民キャンプで教育を受けることができたのには大変感謝しています。国連はまた、食料や水を配給してくれました。こうしたことから、私は国連の子だと思っています。ムヒディン・リバアさんは、ここダダーブ難民キャンプで10年を過ごした。

ケニアでは国連に頼りきりだったので、米国に再定住してからは、農家のための自給自足のコミュニティーを創りたいという夢を持つようになりました。ソマリ・バンツーコミュニティー協会は、大半の人が英語を話せないバンツー族の同胞たちをエンパワ―する一つの手段です。

農業生活

UN News/Daniel Dickinson
Muhidin Libah set up the Somali Bantu Community Association in Lewiston, Maine.

私たちは最近メイン州ルイストンで長期にわたる土地所有権を確保し、ここで将来を切り開いていけると確信できる新たな段階に入りました。私たちはこの新天地を、私たちに自由をもたらす地という意味合いを込めて自由農場(Liberation Farm)と呼んでいます。

220人からなる農業コミュニティーの4分の3は女性で、それぞれが10分の1エーカー(約120坪)の農地で様々な農作物(モロヘイヤ、茄子、アフリカトウモロコシ、アマランサス、各種豆等)を伝統的な手法で耕作している。また、点滴灌漑や列作といったアメリカの新しい農業技術も学んで、新たにビーツやフエンネル、スティックセニョール等を栽培している。多くの家庭は、こうした有機栽培の収穫からなんとか家庭内食料と収入を確保できているため、食料配給券に頼らず暮らせている。

バンツーの文化では一生を通じて、土地が私たちの生活に深いつながりをもっているので、農業はこの協会における活動の中心を占めています。私たちはまた、紛争の調整や健康アドバイス、青年団といったコミユニティー支援活動も行っています。

SDGs Goal NO.10
SDGs Goal NO.10

ルイストンとその双子の街オーバーンには7000人のソマリア人が暮らしており、その内3000人がソマリアバンツー族です。私たちのコミュニティーがアメリカの生活スタイルに適用するスピードは遅く、その理由として、英語が話せないことに加えて、外国から来た異質な人々に対する米国人の理解不足が挙げられると思います。しかし、食は世界共通ですので、元難民コミュニティーの人々の農業活動が、この地元住民との差異を埋めていく一助となると思います。農業は異なるコミュニティーを結びつける役割があり、既にその兆候は地元の生産者直売所で私たちの農作物が売れていることに表れていると思います。

今の子どもたちが米国の学校を卒業する次の世代になれば、この元難民コミュニティーも米国社会に完全に統合できるようになっていると思います。

私たちは従来の伝統を可能な限り保持したいとは思っていますが、この社会で多才にうまく立ちまわれる次世代の子ども達を育てていけるよう、ソマリバンツー族とアメリカ文化の最も良いところを身に着けながら米国社会にもうまく適応していきたい。(原文へ

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アフリカ連合、米国の移民政策を非難

米国は核先制不使用を約束すべきだ

【ウェリントン(ニュージーランド)IDN=ヴァン・ジャクソン】

核兵器は、他国による核兵器使用の抑止にはなるかもしれないがその他には使い道がない、というのが冷戦の最も重要な教訓の一つだ。突発的に大規模な暴力を引き起こすだけの能力しか持たない兵器は、ほとんどの場合において、強制力を伴う信頼できるツールとしてはあまりに粗雑なものだ。

もし米国が抑止だけを目指し、核兵器から政治的利益を引き出そうとするのでないのなら、核兵器先制不使用政策の採用は、単に低リスクであるというだけではなく、必要なことだ。

2020年の大統領選で民主党からの指名を争っていた主要候補のほとんどが核先制不使用政策を主張していた。この方針を採用させるための立法に対する支持も米議会では強くなってきている。実際、米国の通常戦力が世界中に展開しているなかで、敵方の核兵器使用の前に米国が核兵器を使用するシナリオを想定することは難しい。

核先制不使用政策はしたがって、当然の核政策なのである。まともな大統領であれば、悲劇的な誤解をしていない限り、敵方の前に核兵器を使うことなどしない。しかし、トランプ政権以来、核先制不使用政策採用の必要性はより緊急なものになっている。

トランプ時代の政策決定以降、米国の戦略的な能力を信じるのは愚か者だけであろう。トランプ現象はひとつの常態であって、今日の米国政治の例外ではない。トランプは共和党内に多くの追従者を産んだ。彼らは、陰謀論を信じ、国内政治でのポイントを稼ぐために、敵対的で軍事的、急進的な外交政策を推進するのである。

核兵器を発射する権限を与えられた極右の候補を誰が信用するだろうか。先制不使用は、核の領域において米大統領の権限を抑制するのに必要な多くの政策の中で、最も簡単にできるものだ。

米国のジョー・バイデン大統領は過去に先制不使用政策に前向きな発言をしているが、バイデン政権のこれまでの核政策はトランプ政権のそれとあまり区別できない。過去4年間で米国はほとんどの軍備管理協定から撤退し、極超音速滑空体への投資を拡大し、低出力の「戦術」核兵器の開発を進め、最も非合理な形で核使用の威嚇をかけ、1.5兆米ドルを核近代化計画にかけている。

では、現在の状況が、米国の抑制というよりも野放図な軍拡となっている時に、先制核使用のオプションを保持し続けることがなぜ望ましいのか? 核先制不使用への反対論は、3つの論拠を挙げている。

Image source: SIPRI

第一に、核の主唱者たちは、中国やロシア、北朝鮮は自らの核先制不使用方針を真面目に守ろうとしてはいないと主張している。しかし、国家行為において相手を欺くことが時として利益を生むからと言って、核先制不使用政策への反駁にはなるまい。もし敵方が米国の核計画について最悪を想定しているのなら、彼らが核兵器を使わない限り、米国の核兵器について心配するには及ばないと主張することに何の問題があるのだろうか?

もしこの約束の信頼性が問題だというのなら、米国政府はさらなる変化を通じてそれを強化することができよう。大統領の権限を抑制する立法は一つのメカニズムであり、したがって、核の三本柱のうちICMBを廃絶し、トランプ時代に廃された軍備管理協定を新たに結び、中距離地上発射ミサイルや「戦術」核弾頭への投資を抑制するということもあるだろう。複数のシグナルがつながってひとつの共通のメッセージを送る時、とりわけそのシグナルが、コストがかかり自らの手を縛るようなものであるとき、判断が変化や宣言を生み出す文脈は、信頼性のあるものとなろう。

第二に、曖昧な政策は、米国が核兵器を敵方に対して使用するかどうかについての不確実性を増し、敵方が米国やその同盟国に対して核兵器を使用するのを防ぐという。しかし、米国の通常戦力がグローバルな展開をしている時に、自らが先に核兵器を使ってしまおうと敵方が考えるシナリオとはどんなものだろうか?

もし、核の報復という現実味のある脅威が中国やロシア、北朝鮮を抑止できないとすれば、米国の核政策が大胆なものである必要があるだろうか? 米国の核の威嚇によっては、敵が土地を奪取したり、隣国の領土を侵略したりすることを防ぐことはできない。核戦略に関する米国の意図について敵に常に疑問を持たせておいた方がよいとする考え方は、戦場のロジックを平時に持ち込んだものだ。

もし米国が紛争において核の先制使用の脅しが適切だと本当に考えているのならば、先制不使用から宣言的な曖昧政策へと移行することが「敵に疑問を持たせ続ける」うえで有効であろう。戦争の霧でもって常に地政学を覆い続けることによっては、平時の抑止は得られない。

第3の議論は、米国の拡大核抑止に依存している同盟国が、彼らに代わって米国が敵国を抑止する能力あるいは意思について疑問を持つかもしれない、というものだ。だから、なんだというのだろう。どの同盟も、核だけを問題としているのではない。同盟国が抱く「見捨てられる恐怖」と「巻き込まれる恐怖」を完全に和らげることなどできないのだから、米国は彼らの意向に囚われすぎないように注意しておけばよいだけのことだ。

ICAN

極端に言えば、米国が日本や韓国、オーストラリアに拡大核抑止を提供しなくなったら、これらの国が核武装化するかもしれない。しかし、同盟国が軍拡しないように米国が代わりに軍拡するという古い型の取引きは、米国の政治が悲しいまでに無計画になってきている中では、意味をなさない。同盟国への核拡散はそれ自体リスクではあるが、米国による核の独占や、大統領が核の先制使用権限を持っている状態に比べれば、ましなのかもしれないのである。

核先制不使用に反対する議論には根拠が薄い。一方、理性的な人々はそのことをこれまでも論じてきた。しかし、状況は大きく変わってきた。抑制が効かず狂信的かもしれない大統領に対して、米国の敵方がそうする前に核兵器を発射する命令を発する権限を与えるべきかどうかについて、核政策は再考すべきなのだ。

もしその目的が、長期的に見て米国の外交政策の核兵器への依存度を下げる一方で核戦争のリスクを最小化することにあるというのならば、核先制不使用政策の採用は、より理性的な世界に向けた道を歩むうえで米国が最低限すべきことなのである。(原文へ) 

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|視点|核不拡散条約と軍縮の将来に不確実性漂う(タリク・ラウフ元ストックホルム国際平和研究所軍縮・軍備管理・不拡散プログラム責任者)

|視点|核兵器は常に違法だった:とっくに廃絶されてしかるべきものだ(ジャクリーン・カバッソ西部諸州法律財団事務局長)

人類が核時代を生き延びるには、核兵器がもたらす厳しい現実と人類の選択肢を報じるジャーナリズムの存在が不可欠(ダリル・G・キンボール軍備管理協会会長)

|ロシアと中国|アフリカにおいては地政学的ライバル

【モスクワIDN=ケスター・ケン・クロメガー】

アフリカへの進出を強める中国とロシアの開発戦略を分析したリプトン・マシューズ氏(研究員・ビジネスアナリスト)のインタビュー記事。マシューズ氏は、①中国による過去30年に亘るイフラ開発における貢献、②共にアフリカで植民地支配の過去を持たない中ロ両国の比較有利と協力の可能性、③今年初めに発効したアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定がもたらす展望について語った。(原文へ

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米国、拡大する中国の影響力に対抗する「体系的な」協定網の構築へ

アフリカに新天地を見出す中国人労働者

16ヶ国が核保有国に対して核軍縮への決定的措置求める

【ベルリンIDN=アール・ジェイ・ペルシウス】

「核戦争に勝者はなく、戦われてはならない」―米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、冷戦最終盤に前任者のレーガンとゴルバチョフが合意したこの有名で根本的な真実を6月16日のジュネーブサミットで再確認したと、7月5日付のドイツ紙『ライニッシェ・ポスト』への寄稿で、ドイツ外相(ハイコ・マース)、スペイン外相(アランチャ・ゴンザレス・ラヤ)、スウェーデン外相(アン・リンデ)が述べている。

当時、レーガン・ゴルバチョフ共同声明は、人類すべてに利益をもたらす米ソ間の軍備管理協議の始まりを画することになったと外相らは回顧している。バイデン・プーチン両大統領が再確認したこの言葉は、世界は核軍縮の道へと回帰することができるという新たな希望を世界にもたらしている。

3外相は、「私たちはさらなる進歩を必要としている。核軍縮・不拡散に関する協定は近年揺らいでおり、世界の大国間で新たな緊張と不信感が強まり、このところ核戦力の削減に陰りがみられる。」と強調した。

President Reagan meets Soviet General Secretary Gorbachev at Höfði House during the Reykjavik Summit. Iceland, 1986./ Ronald Reagan Library, Public Domain
President Reagan meets Soviet General Secretary Gorbachev at Höfði House during the Reykjavik Summit. Iceland, 1986./ Ronald Reagan Library, Public Domain

その一つの例が「2019年に失効した軍備管理の重要な協定である中距離核戦力(INF)全廃条約だ」と3外相は記している。実際、技術的な進歩によって複雑性が増し、新たなリスクが生み出され、あらたな軍拡競争の原因になるかもしれない。「そして、イランや北朝鮮のような地域的な核拡散問題に対しても、私たちは引き続き完全なる関与していかなければならない。」

3外相は、7月5日にマドリードで開催された「核軍縮と核兵器不拡散条約(NPT)に関するストックホルム・イニシアティブ」の第4回閣僚会議の直後にこの記事を寄稿した。

スウェーデンは16の非核兵器国の外相とのこの会談を2019年6月にストックホルムで開いたのだが、その目的は、核兵器のもたらす問題に対して効果的に対処することを可能とする建設的で革新的、創造的なアプローチを用いて「核軍縮外交をいかに前進させられるかを議論すること」にあった。

16カ国はあらゆる大陸から参加しており、アルゼンチン、カナダ、エチオピア、フィンランド、ドイツ、インドネシア、日本、ヨルダン、カザフスタン、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン、スイスで構成されている。

ストックホルムでこの構想が立ち上げられてから、外相らは2020年2月にベルリンで第2回会合を行い、同年6月にオンライン会合をもった。第3回会合はヨルダンの首都アンマンで今年1月6日に開かれた。

この会議の際、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「核軍縮と核兵器不拡散条約(NPT)に関するストックホルム・イニシアティブ」に対して「皆さんの国は、個別には別の地域を代表しているが、合わせてみれば、核兵器のない世界に対する集団的な公約を代表したものだ。」と語った。

3外相は共同寄稿の中で、この構想は4回の閣僚会議を通じて、核不拡散条約(NPT)を強化し、2021年8月のNPT再検討会議に向けた軍縮目標を履行するための20件以上の実行可能な提案をしてきた、と指摘した。

今年初めに新STARTが2026年2月4日まで延長され、軍備管理の将来とリスク軽減措置に関して米ロ間で新たな協議がなされる見通しがあり、6月16日の米ロ首脳会談で表明されたように最高の政治レベルで互いの抑制が約束されたことは好ましいことだ、と3外相は述べている。「こうした考えは、私たちが構想で提案してきた『飛び石』を構成するものだ。」

外相らは、こうした積極的な進展を歓迎しつつ、核兵器国に対して、軍縮に向けて更なる決定的な措置を取るように求めた。例えば、政策やドクトリンにおける核兵器の役割の低減、紛争や偶発的な核使用リスクの最小化、備蓄のさらなる削減、次世代の軍備管理協定への貢献などである。

外相は、これらによって、国連の「軍縮アジェンダ」と、軍備管理や核軍縮を求める世界各地の団体の見解を支持した。このことは、これを機会に包括的核実験禁止条約(CTBT)を発効させることで核実験を終わらせ、軍事目的の核分裂性物質の生産を禁止する条約の交渉を開始し、強力かつ信頼性のある核軍縮検証能力を強化しようとの彼らの呼びかけにも適用されるものでもある。

「言い換えれば、私たちは歴史に学び、将来を形作らねばならない。その中で、広島・長崎を含めた、核の影響を受けた地域とのつながりを強め、若い世代と関与していくことになろう。また、核軍縮分野の意思決定プロセスにおける女性の完全かつ平等な参加と、ジェンダー視点の完全なる取り込みに向けても、努力することになろう。」と3外相は述べている。(原文へ) 

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領は、6月16日にジュネーブで開いたサミットで、「核兵器に勝者はなく、戦われてはならない」とするロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフが1985年に合意した原則を再確認した。両大統領はまた、「将来的な軍備管理とリスク軽減措置に向けた下準備をするため」の強力な「戦略的安定」対話を行うことを決めた。

しかし、2017年のノーベル賞受賞団体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が指摘するように、「ジュネーブサミットの結果は、現在の核のリスクの重大さを反映したものになっていない。」プーチン、バイデン両大統領は「核兵器禁止条約や世界の世論に従って自国の「核戦力を削減する公約を何ら行っていない」とICANは述べた。

ロシア(保有数6255発)と米国(5500発)は世界全体の9割の核兵器を保有しており、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、1945年8月に広島に投下された核兵器よりもはるかに強力な核兵器が世界には約1万4000発も存在するという。他の核兵器国は、英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮である。その他31カ国が、核兵器の存在を是認している。

「軍備管理協会」のダリル・G・キンボール事務局長は、ジュネーブサミットのコミュニケは、「内容が穏健で遅きに失したものではあるが、現状は危険であり持続不可能であるとの明確な認識を示したものだ」との見解を示した。それは、世界を核の破滅の淵から救う軌道修正をするチャンスを提示している。

6月16日の会合に続いて発表された戦略的安定に関する共同声明で、米大統領とロシアのプーチン大統領はさらに、「戦略的安定対話は、『総合的に』『よく考えられた』『強固なもの』になるだろう。」と述べた。しかし、それぞれの当事者がどの程度歩み寄るかは不透明だ。米ロ両国は来たる戦略的安定対話に異なった思惑を込めている模様だ。

バイデン大統領は、この対話は「反応時間を短くし、偶発的戦争の可能性を高める危険で先進的な新型兵器が現れてきており、その規制につながるようなメカニズムについて話し合うもの。」だと述べたが、どの特定の兵器を念頭に置いているのかについては触れなかった。

両大統領は、対話の日程や場所はまだ決まっていないが、米国務省と、ロシア外務省によって間もなく決定されることになる。

軍備管理協会のキングストン・ライフ氏、シャノン・ブゴス氏、ホリス・ラマー氏は、6月22日の「カーネギー国際核政策会議」におけるロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相の発言に注意を促している。同氏は、ロシア政府は米国に対して「第一歩として、互いの安全保障上の懸念について共同で検討すること」を提案した、と発言している。

次のステップは「この懸念に対処する方法を検討すること」であり、「結果として、実際的な協定や取決めにつながる交渉への関与を促す」ような合意された枠組みが目標になるという。

重要なことは、ジュネーブサミットの共同声明が、10年に及ぶ停滞の末に核軍備管理の分野で進展をもたらす長いプロセスの第一歩を記したということだ。世界最大の核大国間の最後の軍備管理協定があと5年で失効するだけに、なおさらだ。

前回の戦略的安定対話はトランプ政権下の2020年8月に行われており、新戦略兵器削減条約(新START)の失効が翌年2月に迫っていた。しかし、条約失効2日前に、バイデンとプーチン両大統領は、新STARTを2026年まで延長することを決めたのであった。

2020年6月の戦略的安定対話においては、米ロ両国が3つの作業部会を立ち上げることを決め、同年7月に会合が持たれた。米政府筋は当時、作業部会のテーマは、核弾頭・ドクトリン、検証、宇宙システムの3つであるとしていた。

それ以降、これらの作業部会が活動してきたかどうかははっきりしない。

軍備管理の専門家は、戦略的安定対話は、新STARTの後継となる軍備管理協定に関する協議とは別物であるとしつつも、そうした正式な後続協議の基礎を築くことにはなるかもしれない、としている。

米政府で新STARTの交渉責任者であったローズ・ゴットモーラー氏は、6月14日の『Politico』紙への寄稿で、戦略的安定対話の目標は「条約よりも、むしろ充実した議論でなくてはならない。もちろん、のちには、相互理解と信頼、予測可能性を築くための何らかの措置に両者が合意するかもしれないが。」と述べている。

Official portrait of United States Assistant Secretary of State for Verification, Compliance, and Implementation Rose Gottemoeller./ Public Domain

新STARTに替わる今後の協議に関してゴットモーラー氏は、米ロ首脳に対して「新条約が何を対象とし、いつまでに協議を終わらせるかについて、明確かつ簡潔な指針を示すべきだ。」と促した。

「軍備管理協会」は、バイデン政権は「両国が直面している極めて複雑な一連の核戦力問題」について議論することを目指しているとする、ジェイク・サリバン国家安全保障問題顧問の6月10日の発言に注目している。その問題とは例えば、新STARTの後継条約はどうなるのか、中距離核戦力(INF)全廃条約がもはや存在しないという事実をどう考えるか、ロシアの新核兵器システムに関する我々の懸念にどう対処するか、といったことである。

1987年に署名されたINF全廃条約によって、米ソが保有する射程500~5500キロの核搭載及び通常型の地上発射及び巡航ミサイルが2692基廃棄された。

米国政府は、ロシアの非戦略核兵器の問題に対処し、中国を軍備管理プロセスに巻き込みたいとの意向を表明している。サリバン氏は「宇宙やサイバーといった領域において戦略的安定対話に新しい要素が持ち込まれるかどうかは、今後の成り行きによって決まってくるだろう。」と述べている。

On November 25, 2019, Prime Minister Abe welcomes the State Councillor and Foreign Minister of the People’s Republic of China Wang Yi at the Prime Minister’s Office./ By 首相官邸ホームページ, CC BY 4.0

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は6月9日、「戦略的安定に影響を与えるどんな問題でも対話の対象となる」と述べた。例えば、「核兵器、非核兵器、攻撃的兵器、防御的兵器」がそこには含まれるという。加えて、ロシアは、中国だけではなくフランスや英国も協議に含めるよう提案しているという。

リャブコフ副外相は6月22日の「カーネギー国際核政策会議」で、「両者は、必要とあらば、異なったステータスの相互に関連した取決め或いは協定を採択することを決定するかもしれない。さらに、他の主体が参加する余地を残すための要素を検討することも可能かもしれない。」と語った。

中国の趙立堅外交部報道官は、ジュネーブサミット翌日の17日、「中国は、戦略的安定に関する二国間対話における関与に関して米ロ間で成された合意を歓迎する」と述べた。

趙報道官は「中国は常に核軍備管理における国際的な取り組みを積極的に支持してきた。また、5つの核兵器国の協力メカニズムやジュネーブ軍縮会議、国連総会第一委員会といった枠組みの中で、関連する主体とともに、戦略的安定に影響のある幅広い問題について議論を継続していきたいと考えている」と約束した。

さらに趙報道官は「相互の尊重をもって、平等な立場であるのならば、関連する主体と二国間対話をもつ用意は我々の側にはある」と述べた。この数日前、中国の王毅外相は5核兵器国に対して、「核戦争に勝者はおらず、戦われてはならない」とするレーガン=ゴルバチョフの原則を再確認するよう訴えていた。(原文へ

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