【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】
今年は、第二次世界大戦における連合軍の対独勝利75周年にあたるが、ロシアと当時の西側同盟国(英国・フランス・米国)において必ずしも一般に認識されていない第二次大戦勃発に至った経緯について、英国を代表する当時の戦略家と歴史家(リデル=ハート、A.J.Pテイラー)の文献をもとに改めて振り返った、ジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。(原文へ)
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今年は、第二次世界大戦における連合軍の対独勝利75周年にあたるが、ロシアと当時の西側同盟国(英国・フランス・米国)において必ずしも一般に認識されていない第二次大戦勃発に至った経緯について、英国を代表する当時の戦略家と歴史家(リデル=ハート、A.J.Pテイラー)の文献をもとに改めて振り返った、ジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。(原文へ)
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【ジュネーブ/ニューヨーク=ジャヤ・ラマチャンドラン】
6月4日にロンドンで開催される「世界ワクチンサミット」に先立ち、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(ユニセフ)、そして、貧困国へのワクチン供与を行っている国際機関「GAVIワクチンアライアンス」は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、命を守る予防接種サービスが中断に追い込まれ、富裕国、貧困国を問わず世界の何百万人もの子どもたちがジフテリア、はしか、ポリオなどに罹るリスクに晒されている、と警鐘した。
WHO、ユニセフ、GAVI、サビン・ワクチン・インスティテュートが収集したデータによると、少なくとも68カ国において、定期的な予防接種が行えず、1歳未満の乳児8000万人に影響がでている。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「予防接種は、公衆衛生の歴史で最も効果的かつ基本的な疾病予防の手段の一つです。」「COVID-19の感染拡大により予防接種プログラムが中断してしまえば、はしかのような予防接種で感染を防ぐことができる病気を封じ込めるためにこれまで数十年に亘って積み重ねてきた進歩を台無しにしてしまう恐れがあります。」と語った。
WHOによると、子どもの定期予防接種は、予防接種拡大計画が1970年代に開始されて以来、前例のない世界的規模で中断されている。データが利用可能な129カ国の半数以上(53%)において、中程度から大規模の中断、または2020年3月から4月の間の予防接種サービスの完全な停止が報告されている。
予防接種が中断される理由は様々である。移動制限、情報不足、またはCOVID-19への感染を恐れて、外出に消極的な保護者もいる。また、往来の制限やCOVID-19への対応、防護具がないといった理由から、医療従事者の人手が不足している。
Gaviワクチンアライアンスのセス・バークレー事務局長は、「今日、歴史上かつてないほど、ますます多くの国々で、ワクチンで感染予防が可能な病気からより多くの子どもたちを守れるようになりました。しかしこうした大きな進歩も、COVID-19の感染拡大により、予防接種の実施が危うくなっており、はしかやポリオといった感染症が再び流行するリスクが高まっています。」と語った。

さらに、ワクチン輸送の遅延が状況を悪化させている。ユニセフは、都市封鎖の措置や、その後の民間航空便の減少と限られたチャーター便の運航のため、計画されていたワクチン供給が大幅に遅れていることを報告した。これを緩和するために、ユニセフは政府、企業、航空業界などに対し、命を守るワクチンのために良心的な価格で貨物スペースを解放するよう求めている。GAVIは先日、輸送に利用できる民間航空便の数が減ったことを考慮し、ワクチンの輸送にかかる費用の増加を補うための事前資金を提供すると、ユニセフと合意した。
ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は、「一つの感染症と闘うために、他の感染症との戦いで得た長期的な進展を犠牲にするわけにはいきません。ポリオ、コレラの感染予防に効果的なワクチンがあります。状況によっては予防接種を一時的に中断する必要があるかもしれませんが、これらの予防接種はできるだけ早く再開しなければなりません。そうでなければ、感染症を一つ防ぐ代わりに別の感染症を流行させてしまう恐れがあるからです。」と、語った。
大規模な予防接種キャンペーンが相次いで一時中断

一方、WHOは、多くの国は、COVID-19パンデミックの初期段階から感染リスクを低減させ物理的な距離を保つ必要性から、コレラ、はしか、髄膜炎、ポリオ、破傷風、腸チフス、黄熱病などの感染症における大規模な予防接種キャンペーンを中断した、と発表した。
とりわけ、はしかとポリオの予防接種キャンペーンは大きな影響を受けており、はしかキャンペーンは27カ国で、ポリオキャンペーンは38カ国で中断している。GAVIの支援する低所得国21カ国において少なくとも2400万人が、キャンペーンの延期により、ポリオ、はしか、腸チフス、黄熱病、コレラ、ロタウイルス、HPV(ヒトパピローマウイルス)、髄膜炎および風疹の予防接種を受けられないおそれがある。
WHOは3月下旬、予防接種キャンペーンで多くの人が集まることでCOVID-19の感染を助長すると懸念し、リスク評価と新型コロナウィルスの効果的な感染対策が確立されるまでの間、予防接種を一時中断することを各国に推奨した。
その後、WHOは状況を監視し、各国が予防接種キャンペーンを再開する方法と時期を決定するために役立つガイドラインを発行した。ガイドラインでは、各国がCOVID-19感染のダイナミクス、医療体制のキャパシティ、および予防や流行への対応として予防接種キャンペーンを実施することによる公衆衛生上の利益に基づいて、特定のリスク評価を行う必要があると述べている。
このガイドラインに基づき、そしてポリオの感染拡大における懸念の高まりを受けて、世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)は、各国に向けて、とりわけポリオの感染リスクの高い国での予防接種キャンペーンの安全な再開を計画し始めるよう求めている。
このような課題があるにもかかわらず、予防接種を継続するために取り組んでいる国々もある。ウガンダでは、予防接種サービスが他の重要な医療サービスとともに継続できるよう取り組むとともに、アウトリーチ活動のための移動資金を確保している。また、ラオスでは3月の全国封鎖にもかかわらず、特定の場所での定期予防接種は物理的な距離をとる措置を講じた上で継続された。(原文へ)

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【ニューヨークIDN=アリス・スレイター】
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は先ごろ軍備や軍縮、国際安全保障の現状について報告した2020年版年鑑を発表した。覇権を競う主要核保有国間で高まる敵意に関する恐ろしいニュースが飛び交う中、SIPRIは軍備管理の暗い見通しについて述べている。核兵器の近代化や新型核兵器の開発、そして宇宙の兵器化が、何の制約や規制もない中で進められている。また、こうした軍備管理を巡る大国間の協力や相互監視の枠組みが急速に後退している中で、地政学的な緊張が高まっている。

こうしたことが、100年に1度の疫病が世界的に猛威を振るい、人種差別に対する人々の怒り高まっている中で起こっている。アフリカから自らの意思に反して鎖に繋がれ連れこられた奴隷たちの子孫に対して人種差別と警察による暴力が横行してきた米国のみならず、世界中の人々が、警察による暴力的で人種差別的なやり方に対して抗議している。警察の本来の仕事は、民衆を守ることであり、決して暴力で脅し、傷つけ、殺すことではないのだ!
真実を語り、人種差別がもたらす被害からの回復への道を探るなかで、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の1967年の演説を想起することが重要だ。ちょうど現在も、権力側は世界の活動家たちに対して、「活動を抑え」、不必要に挑発的だとして「警察の予算凍結」要求をしないよう要請しているが、キング牧師はこの演説の中で、まさにこのような旧態依然とした社会からの決別を訴えた。
キング牧師は、公民権に関して進展があったことを認めながらも、「人種差別、貧困、戦争」という3つの害悪に取り組むよう呼びかけ、権力者層を驚かせた。キング牧師は、公民権の分野で「人種差別の体系を揺るがし」進展がみられたからといって、このことで「表面的で危険な楽観主義に陥るわけにはいかない」と述べた。

キング牧師は、米国で4000万人が直面していた「貧困の害悪」にも取り組まねばならないと強く訴えた。当時、「メキシコ系、インド系、プエルトリコ系、白人貧困層…そして大部分を占める黒人」が貧困の中にあった。今日、疫病が蔓延する時代にあって、この数カ月で亡くなった犠牲者の中に、黒人やヒスパニック系などの貧困層の数のあまりにも多いという暗い統計をみれば、キング牧師が当時指摘した論点がよく理解できる。
最後にキング牧師は、「戦争の害悪」に言及し、「これら3つの害悪は何らかの点で結びついている。人種差別、経済的搾取、軍事主義の3つの害悪は、人類が今日直面している最大の難題が、戦争の廃絶であることを示している。」と力説した。
今日、私たちは、地球が直面している最大の生存上の脅威は、核戦争あるいは壊滅的な気候変動であることを知っている。母なる地球は私たちに時間的な猶予を与え、キング牧師が警告した3つの害悪にどう立ち向かうかをじっくり考えるよう要求している。
ちょうど私たちが、キング牧師が始めた仕事をやり遂げる、つまり人種隔離の法的撤廃後も横行してきた恐ろしい慣行を終わらせ、最終的に人種差別主義を止めようとしているように、SIPRIが報告した、急速に強化されつつある軍拡競争を止めなくてはならない。戦争を終わらせるために、経済的搾取を含むさらなる害悪に取り組み、軍拡を煽っているのは誰か、 そしてそれはどのように報じられているのかといった、軍拡についての真実を語り始めなくてはならない。
たとえば、トーマス・グラハム元大使による次の問題記事をご覧いただきたい。

「米国はこの約束(包括的核実験禁止条約を交渉すること)を真剣に受け取った。米国はすでに、1992年には核実験の一時停止を実行に移しており、世界の国々にも同じような行動を取るように促した。その結果、1993年以降は、世界全体が非公式に核実験停止に移行した。翌年、ジュネーブ軍縮会議は地下核実験の禁止を含むCTBTの交渉に入った。」
ここでグラハム大使は、誤って米国を誉めそやしているが、実のところ、ミハイル・ゴルバチョフ時代の1989年に最初に核実験停止を実施したソ連の方が先なのである。この時、詩人オルジャス・スレイメノフ氏が率いたカザフの民衆たちがセミパラチンスク核実験場でデモを行って、大気に放射能を漏れ出させ、周辺住民に障害や突然変異、ガンなどを引き起こした地下核実験に抗議したのである。

ソ連による核実験停止を受けて、「信頼できないロシアに歩調を合わせて核実験を止めることなどできない」と主張していた米議会も、最終的に米国の実験停止に合意した。「核軍備管理を求める法律家連盟」(LANAC)が、その創設者でニューヨーク市弁護士協会の会長だったエイドリアン・ビル・デウィンド氏の下で私的に募った数百万ドルで地震学者を雇い、ロシア政府の許可を受けてセミパラチンスク核実験場を調査したことを受けたものだった。地震学者をソ連の核実験場に訪問させたことで、議会の反対論を打ち破ったのである。
核実験停止の後、CTBTが交渉され、クリントン大統領が1992年に署名した。しかし、これはコンピューター・シミュレーションによる核実験や臨界前核実験が盛り込まれた「核兵器備蓄性能維持計画」に、年間60億ドルを超える資金を核兵器研究所に供与するという議会との取引を伴うものだった。米国政府は、ネバダ核実験場の地下1000フィートの地点で、高性能火薬を爆発させて生じた衝撃波をプルトニウムに当て、核分裂の連鎖反応で膨大なエネルギーが出る直前に終了するという未臨界実験を継続した。
当時クリントン大統領は、「この実験では核分裂の連鎖反応が起こらないから核実験にはあたらない」と説明していた。 時代は下って2020年、軍備「管理」業界の人々は、核実験ではなく、核「爆発」実験の禁止という言葉のすり替えを始めている。プルトニウムに爆発で生じた衝撃波を当てる臨界前実験が、まるで「爆発」を引き起こさないと言わんばかりである。

もちろん、ロシアもノバヤゼムリャの核実験場で臨界前核実験を実施し、米国のやり方に続いた。そして、この先進的な実験と実験室での試験こそが、インドがCTBT批准を拒絶し、署名から数か月以内に核実験停止のモラトリアムを破った理由とされている。核兵器の設計・実験を継続し、技術面での競争に後れを取りたくなかったパキスタンがすぐさまこれに倣った。そしてこうした核実験の連鎖は、今も続いている。なるほど、SIPRIの統計が暗いものになるわけだ!
米ロ間の核軍拡競争と宇宙軍拡競争を止めようとするならば、核軍拡競争を駆り立てる米ロ関係と米国の共犯関係を暴かねばならない。おそらく、この3つの害悪に取り組むことによって、私たち自身がキング牧師の夢をかなえ、国連が思い描いた任務を果たし、戦争の惨禍を終わらせることができるだろう! 今日の世界が母なる地球に注意を払い、この殺人的な疫病に対処する一方で、私たちは少なくとも、国連のアントニオ・グテーレス事務総長によるグローバル停戦の呼びかけを促進する必要があろう。(原文へ)
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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー】
最近発表されたある本(無料ダウンロード可)によれば、過度の経済的不平等を除去することで社会はより良く幸福になるという否定しようのない証拠があるという。
歴史を遡れば、「理性の時代」あるいは「啓蒙の時代」は、17世紀から19世紀にかけて世界の理念を支配した思想運動であった。アイザック・ニュートン卿はさまざまな物理現象(リンゴの落ち方も、惑星や彗星の運行)も同じ法則を用いて合理的に説明し、理性が迷信に勝ることを示した。
ディドロの『百科全書』とヴォルテールやルソーの著書は、世界全体において、封建時代の終わり、王権神授説の終わり、農奴と奴隷の解放への道を開いた。
英国では、ジョン・ロックが次のように時代の精神を表現した。「人々が理性に従ってともに生活しながら、しかも、彼らの間を裁く権威を備えた共通の上位者を地上にもたない場合、これこそが、まさしく自然状態にほかならない。…それはまた平等な状態でもあり、そこでは権力と支配権はすべて互恵的であって、他人よりも多く持つ者は一人もいない。なぜなら、同じ種、同じ等級の被造物は、分けへだてなく生をうけ、自然の恵みを等しく享受し、同じ能力を行使するからである。すべての者が相互に平等であって、従属や服従はありえないということは何よりも明瞭だからである。」
「しかし、これは自由の状態ではあっても、思いのままに振る舞える状態ではない……自然状態には、これを支配する自然法があり、何人もそれに従わねばならぬ。この法たる理性は、それに聞こうとしさえするならば、すべての人類に、一切は平等かつ独立であるから、何人も他人の生命、健康、自由または財産を傷つけるべきではない、ということを教えるのである。」
ロックの考え方は、アメリカ独立宣言の文言にも反映されている。
「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。」

残念ながら、これらの理想は今日の米国において実現されていないし、おそらくこれまでも実現されたことはないだろう。南北戦争を経て奴隷制の時代は終わり、公民権運動の努力はあったものの、今日でも人種差別は広範にみられる。事実、ドナルド・トランプ大統領は、明白に人種差別主義的な公約によって当選している。トランプ大統領は、就任以来、言動共に人種差別的である。
最近では、黒人のジョージ・フロイド氏が警官によって無意味に殺害されたことへの抗議で、米国の多くの都市が揺れている。国は深く分断されている。
人種差別主義、植民地主義、例外主義
諸国やその市民の大多数が、虐待や殺人、虐殺などの考えうる限り最悪の罪を犯しながら、それが高潔かつ望ましいことだと感じることはありうる。それがいかにして可能かということは、英国放送協会(BBC)によるドキュメンタリー「人種差別の歴史3部作(1)(2)(3)」を見れば理解できよう。
この番組は「BBC4」が2007年3月に放映したもので、映像はインターネットでも視聴できる。この目を見開かせるような番組は、人種差別と植民地主義との関係についての洞察を示してくれている。また、人種差別と植民地主義がいかにして米国の例外主義と新植民地主義に結びついているかを見て取ることも可能だろう。

このBBCのドキュメンタリーを見ることで、経済的な貪欲と植民地主義的な搾取が、いかに人種差別的な理論によって正当化されてきたかを見ることができる。ドキュメンタリーは、ヨーロッパ人がアメリカの先住民たちとアフリカ人に対して行ってきた信じがたい虐待について描写している。
たとえば、ベルギー国王のレオポルド2世が広大な土地を自らの私有地と主張したコンゴにおいては、村々の女たちは人質に取られ、男たちは森で強制的にゴム採取に従事させられた。人びとはこうした状況下では食べ物を作ることができないため、当然の結果として飢餓が発生した。
レオポルド2世の9万人の私兵には武器と弾薬が支給され、適切に使用するよう命じられていた。犠牲者の手は叩き切られ、弾薬を無駄遣いしていないことを証明するために送り返されたという。人間の手が一種の通貨となり、ゴム採取の割当量が満たされないときは、男であれ女であれ子どもであれ、生きた人間の手が切り落とされた。時には、わずか1日で1000個以上の人間の手が集められた。レオポルド2世治世下において、およそ1000万人のコンゴ人が殺された。実に、この地域の人口の約半数であった。(下の写真は、ゴムの収穫量が少ないとして、兵士によって切り落とされた5歳の娘の手と足を見つめる父親)
寡頭制と戦争

今日、世界はおよそ2兆ドル(約215兆円)を毎年軍事支出に費やしている。この想像を絶するほどの多額のお金の流れは、戦争機構を駆動する「悪魔の発電機」である。政治家は、この莫大な額のほんの一部で買収できることで有名だ。こうして民主主義は腐敗する。軍備に浪費されているこのほとんど信じがたい額のお金を建設的に使うことができれば、人類が直面している緊急の課題のほとんどが解決しうることも明白だ。
世界が毎年約2兆ドルを軍備に費やしているということは、非常に多くの人々がそれによって生計を立てているということでもある。戦争は人類に多大な苦しみをもたらす原因であり、全てを破壊する核戦争の脅威の下に私たちが生きていることを理解しているにも関わらず、戦争が続くのはこうした理由からだ。だからこそ、戦争をひとつの機構として語ることが正しいと言える。
軍産複合体の富裕な少数者たちからのお金が、マスメディアのプロパガンダと政治家の票を買うために使われる。プロパガンダの量に圧倒された市民たちは、恥ずかしげもなく膨れ上がった軍事予算を政治家たちが支持するのを許し、少数者たちがさらに富み、カネの流れの円環が続くのである。行き過ぎた経済的不平等と、民主主義的機構の喪失が、戦争の問題の根源にある。
新型コロナウィルス感染拡大の最大の被害者である貧困層
貧困層が新型コロナウィルス感染症による被害を最も酷く受けている。富裕層は自らを快適に隔離することができるが、貯蓄のない労働者は危険な労働環境に身を晒すか、収入ゼロによる飢餓に直面するかを選択するしかない。ジェイク・ジョンソン氏は「グロテスク」(『コモン・ドリームズ』5月28日掲載)と題した寄稿で「4100万人が新型コロナウィルス感染症の影響で失業する中、米国の大金持ちたちは5000億ドルの富を積み増した。」と書いている。
「多くの人々が苦難や困難、生命の喪失に直面する中、億万長者の富は同時に増え続けている。これは、米国社会の抱える深い不平等をグロテスクに示したものだ。」
「木曜日(6月4日)に米労働省が発表した統計によると、先週、210万人が新たに失業届を提出し、新型コロナウィルスの感染拡大による大規模レイオフが続く中、実に4070万人もの米国民がこの10週間で職を失ったことになる。」
「『政策研究所』の新たな分析によれば、同じ10週間の間に、米国の億万長者の富の合計は5000億ドルも増え、計3.4兆ドルとなった。」
スカンジナビアにおける平等・幸福・再生可能エネルギー
グリーン・ニューディールならば、気候変動と過度な経済的不平等の問題に同時に対処することができる。この関連で、ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・デンマーク・アイスランドといったスカンジナビア諸国の社会・経済システムを見ることが有益だ。

これらの国々では、貧富の差がかなりの程度縮められた。これらの国々では、貧困は根絶されたとすらいってほぼ間違いない。同時に、スカンジナビア諸国には、気候変動に対応する強力な政策もある。従って、スカンジナビアの成功は、グリーン・ニューディールは実行不可能だと主張する人々への反論に使える。
スカンジナビア諸国は「世界幸福指数」や「人間開発指数」でもかなりの上位にランクされ、平等がもたらす利益を証明している。
幸福で持続可能な世界を実現するために、国家の内部においても、国家間においても、過度な経済的不平等を早急に減らさなくてはならないのである。(原文へ)
※著者のジョン・スケールズ・アベリー(1933年、米国人の子としてレバノンにて出生)は、量子化学、熱力学、進化、科学史の分野において著作を残してきた理論化学者。1990年初頭以来、世界平和を目指す活動家。この間、「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」で活動してきた。
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【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】
メディアを含む世界の関心は、先の見えない恐怖から新型コロナウィルス感染症(COVID-19:死者43.6万人)に集中しているが、被害規模ではこのウィルスを上回る死因の種類と、財源を含む具体的な対処方法を議論したジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)の視点。昨年の死因でみると、マラリア(41.6万人)、エイズ(77万人)、交通事故(135万人)、飲酒(8百万人)。パワー氏は、COVID-19が制御不能になりつつあるインドやブラジルを除けば、こうした死因に対しても、法改正や軍事費等の支出を見直すことで、COVID-19同様の真剣な対策を図るべきだと提案している。(原文へ)
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【ジュネーブIDN=レネ・ワドロー】
大量虐殺など国レベルで裁けない凶悪犯罪を、国際法に基づいて裁く仕組みを追及してきた国際社会の戦後の歩みと、今日、トランプ政権の例外主義が大きな障害となっている現状を分析したルネ・ワドロー世界市民協会会長による視点。こうした歩みの歴史は、第二次世界大戦の悲劇(大量殺戮、絶滅収容所、残虐行為等)を二度と繰り返さないという理念を掲げて創立された国連の歴史とほぼ重なる。しかし、米軍のアフガン戦争における戦争犯罪容疑について国際刑事裁判所(ICC)が捜査に乗り出したことに、トランプ政権が反発し、捜査に関わるICC職員や家族に制裁を科す大統領令に署名する事態となっている。(原文へ)
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【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アヴェリー】
新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、今日国際社会は、1930年代の大恐慌以来の危機に直面していると指摘されている。「危機(Crisis)」の中国語の語源は「危うい(Danger)」と「機会(Opportunity)」から成り、当時のドイツは30年代の危機からアドルフ・ヒトラー率いるナチス政権を誕生させた。一方、デンマークは対照的に、この危機を機会に社会改革に着手し、今日につながる福祉国家を建設した。今回の危機も大きな変革につながることが予想されているが、はたして内向きで国家主義的な指導者が率いる流れになるか、それともグリーンニューディールのような社会改革が実現するような流れになるか…選択は今日を生きる私たちにある。(原文へ)
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【ウィーンIDN=ラインハルト・ヤコブソン】
CTBTO賢人会議のメンバーらが、米政権の高官らが「核爆発を伴う核実験」を再開するかどうか話し合ったとの「信頼性の高い報道に対して深い懸念」を表明した。
彼らは、もしそうした実験が行われれば、核爆発実験に関する世界的なモラトリアム(凍結)が破られることになり、世界のいかなる場所においても核爆発実験を探知し抑止するために設立された包括的核実験禁止条約(CTBT)体制を著しく毀損することになると警告した。
「いかなる目的であっても、核爆発実験は過去の遺物に過ぎない。今世紀に入って核爆発実験を行ったのは1カ国(=北朝鮮)しかなく、今日では世界のすべての核保有国が核実験のモラトリアムを順守している。」と賢人会議は主張している。

CTBTは全ての核爆発を禁止することで、核兵器の開発と質的な改善を抑制することを意図している。条約はまた、核実験による有害な放射性物質の排出予防にも役立っている。
米国は、条約の発効条件としてその署名・批准が求められる「附属書II諸国(CTBTの『附属書Ⅱ』に掲げられている条約交渉当時に核施設を保有していた44カ国)」の中に入っている。中国・エジプト・イラン・イスラエルと並んで、米国は条約を署名しているが批准を済ませていない。しかし、同じく附属書II国に含まれるインド・北朝鮮・パキスタンは署名すら済ませていない。
これまでのところ184カ国がCTBTに署名し、そのうち168カ国が批准を済ませている。
2013年9月26日にニューヨークの国連本部で立ち上げられたCTBTO賢人会議は、CTBTの早期発効に向けたCTBTOの取り組みを支援・補完するとともに、その目標を達成するための国際的な努力を活性化することを目指している。賢人会議には著名人や国際的に認められた専門家らが参画している。
2013年8月以来、ラッシーナ・ゼルボ氏が事務局長を務めるCTBTOとは、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)準備委員会のことである。条約署名国によって1996年11月19日に設立された国際機関であり、本部はオーストリアのウィーンにある。国連・CTBTO関係を規律する協定(A/RES/54/28)は2000年に国連総会で採択された。
賢人会議のメンバーらは、「附属書II諸国」のうち、未だCTBTに締約していない8カ国に対して批准を呼びかけている。「超低出力の核爆発と条約遵守の執行に対する懸念を解決する最も効果的な方法はCTBTを発効させることだ。CTBTが発効すれば、加盟国は、疑わしい活動を調査するために、短期通告で立ち入った現地査察を要求するオプションを手に入れることになる。」と、賢人会議は主張している。
賢人会議のメンバーらは5月29日の声明で、全ての責任ある国家に対して、CTBTが確立したいかなる規模の核爆発実験も認めないというグローバルな規範を改めて強く支持するとともに、CTBTを早期に発効させるための具体的な行動を取り、全ての人々にとってより平和的で安全な国際安全保障環境を構築するために、威嚇ではなく外交を用いるよう求めた。
条約の発効を待つ間、核爆発を監視する世界的な検証体制の構築がほぼ完成に近づきつつある。国際監視制度(IMS)として元々予定されていた337施設のうち300施設以上がすでに稼働している。すでに、2006年、09年、13年、16年、17年に北朝鮮が実施した小規模な核実験ですら、探知する能力があることが証明されている。
声明に賛同した賢人会議のメンバーは以下の通り。

阿部信泰(軍縮担当国連事務次長:2003~06)、ハンス・ブリクス(国際原子力機関事務局長:1981~97)、グリゴリー・ベルデニコフ(IAEA理事会理事長、ロシア代表)、デズモンド・ブラウン(欧州リーダーシップネットワーク運営委員会議長)、ジャヤンタ・ダナパラ(ノーベル平和賞団体「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」元議長)、セルジオ・ドゥアルテ(国連軍縮問題上級代表:2007~12、現パグウォッシュ会議議長)、トーマス・ハイノツィ(オーストリア欧州統合.外務省 軍縮軍備管理.不拡散局長)、タルヤ・ハロネン(フィンランド大統領:2000~12)、ウォルフガング・ホフマン(CTBTO初代事務局長:1997~2005)、アンゲラ・ケイン(国連軍縮問題上級代表:2012~15)、パトリシア・ルイス(英国王立国際問題研究所・安全保障研究部長)、ケビン・ラッド(オーストラリア首相、同国労働党党首:2007~10、13)、アフメット・ウズムジュ(化学兵器禁止条約機構元事務局長2010~18)(原文へ)
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【ニューヨークIDN=アントニオ・グテーレス】
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、世界中で人々の命や暮らしを破壊し続けていますが、中でも一番大きな影響を受けているのは、最も脆弱な立場に置かれた人々です。
それは特に、暴力や災害を逃れるために住む場所を離れざるを得なかった難民や国内避難民(IDPs)、不安定な状況に置かれた移民など、数百万にのぼる移動する人々に当てはまります。
こうした人々は今、3つの危機を一度に抱えています。
第1に、健康の危機です。社会的距離を取ることなど叶わぬ贅沢であり、医療や水、衛生、栄養などの基礎的条件がしばしば満たされない過密状態で、ウイルスに晒されることが多くなっているからです。

後発開発途上国で暮らす多数の移動する人々には、さらに深刻な被害が及ぶことになります。世界の国内避難民のうち、3分の1は新型コロナウィルス感染症の感染リスクが最も高い10カ国で暮らしているからです。
第2に、社会的保護を得られずにインフォーマル経済で働く人々をはじめ、移動する人々は社会経済的な危機に直面しています。
また、新型コロナウィルス感染症による所得喪失の結果、本国への送金額は1090億ドルというとてつもない規模で減少する可能性が高くなっています。つまり、政府開発援助(ODA)総額のおよそ4分の3に匹敵する金額が、本国で送金に頼って生活する8億人の手に届かなくなるのです。
第3に、移動する人々は保護の危機にも直面しています。
ウイルスの蔓延を防ぐため、出入国制限を課す国は150カ国を超えています。少なくとも99カ国は、迫害からの庇護を申請する者について、例外を設けていません。
同時に、新型コロナウィルス感染症に対する不安は排外主義や人種主義、感染者に対するスティグマ(偏見や差別)も一気に増加させました。
そして、ただでさえ不安定な立場に置かれる女性と女児は、ジェンダーに基づく暴力や虐待、搾取に晒される恐れが高まる中で、さらに悲惨な状況に直面しています。
しかし、難民や移民は、こうした課題に直面しながらも、勇敢にも必要不可欠な仕事の第一線で貢献しているのです。
例えば、全世界の看護師の約8人に1人は、出身国以外の国で働いています。
新型コロナウィルス感染症による危機は、人の移動について改めて想像力を働かせる機会でもあります。
その指針として、大事なことを4つ理解しておかねばなりません。
第1に、排除は高くつき、包摂は報われます。公衆衛生と社会経済面で包摂的な対応を行えば、ウイルスを抑制し、経済を再始動させ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて前進することにも役立つでしょう。

第2に、私たちはパンデミックの中でも人間の尊厳を守り、渡航制限や水際対策を実施しながらも、人権と国際難民保護の原則を全面的に尊重できることを示した一握りの国々から学ばねばなりません。
第3に、一人でも安全を確保できない人がいれば、誰の安全も確保できません。診断や治療、ワクチンは誰でも利用できるようにしなければなりません。
そして第4に、移動する人々は解決策の一翼も担います。意味のない障壁は排除し、移民の移住方法を正規化するためのモデルを模索するとともに、送金取引の費用を引き下げようではありませんか。
私は、国内に社会的・経済的、さらに現在では保健上の課題も抱えながら、難民と移民に国境と心を開いてきた国々、特に開発途上国に感謝します。
ドアが閉じられている今、このような国は他の国々に心を動かす教訓を与えてくれます。こうした国に対する支援を増大し、全面的な連帯を示すことが欠かせません。

世界の難民保護の責任を公平に分担され、人の移動が引き続き安全で包摂的、かつ国際人権・難民法を尊重したものであることは、私たちみんなの共通の利益です。
単独でパンデミックと闘ったり、移住を管理したりできる国はありません。
しかし、私たちが力を合わせれば、ウイルスの蔓延を抑え、最も脆弱な立場に置かれた人々に対する影響を緩和し、あらゆる人にとって利益となるような形で、以前の状況を上回る復興を達成できるのです。(原文へ)
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