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気候変動と紛争

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=タウキエイ・キタラ

2020年10月19日、太平洋諸島出身の鋭い知性を持つ有識者たちがフォーラムに登壇し、母国での生活や気候変動の影響と戦う日々について、幅広い豊かな経験を人々に伝える。スピーカーのうち2名は元国家首脳で、元ツバル首相のエネレ・ソポアガ(Enele Sopoaga)閣下と元キリバス大統領のアノテ・トン(Anote Tong)閣下である。太平洋諸島フォーラム事務局気候変動アドバイザーのエクスレー・タロイブリ(Exsley Taloiburi)氏、気候変動活動家であり詩人であるマーシャル諸島出身のキャシー・ジェトニル=キジナー(Kathy Jetnil-Kijiner)氏も討論に参加する。10月19日のオンラインフォーラムは、気候変動と主権を議題とするオンラインフォーラム・シリーズの第1回となる。狙いは、島ならではの知識と経験に脚光を当てることである。それは、太平洋諸島における主権のあり方がなぜ独特であるか、また、長年受け継がれてきたヴェストファーレン的主権概念(我々は、これを脱植民地化する必要がある概念とみなし始めている)となぜ異なるのかを理解するために不可欠である。(原文へ 

太平洋諸島の人々が、土地や海への直接的脅威となっている気候変動と戦っていることは、誰もが知っている。しかし、気候変動のために、私たちが政治的独立とアイデンティティーを求める戦いも強いられていることを、どれだけの人が知っているだろうか? これは、私たちの主権の問題である。たとえ祖国の土地が大きなリスクにさらされていようとも、主権を私たちの手から奪われるままにするわけにはいかない。

主権という概念に初めてふれる人のために説明すると、主権とは、それぞれの国が独立した国であり、国民や領土に関して独自の決定を下すことを認める基本的な国際法である。私の祖国であるツバルは、独立国家であるために、英国とキリバスの両方からの独立を確保するために、必死に戦った。ツバルの独自の文化を他者に支配されたくなかったからであり、自分たちの決定を自分たち自身で下したかったからである。自分たちの文化と国民のことは、自分たちが最もよく知っている。主権なくして、人々のために決定を下すことはできない。また、ヴェストファーレン体制では居住可能な土地があることが条件とされる。他国の一部の人々は、気候変動によって私たちの国が常に居住可能ではなくなったのだから、より大きな国で安全な居住地を手に入れる代わりに主権を放棄すればよいと考えているようだ。しかし、気候変動はほとんど私たちのせいではないのに、土地が居住困難になったからといって、なぜ私たちが、国民として国民のために決定を下す権利を放棄しなければならないのだろうか?すべての人は安全な居住地を持つ権利があるが、気候正義と人道主義のあらゆる原則に鑑みて、私たちの土地に何が起ころうとも、私たちが大切にするもの、つまり主権を放棄しなければならないということがあってはならない。その土地に根差す人々は、その領土に対する権利を持ち、その領土について決定を下す永遠の権利を持つ。たとえ領土がどれほど変化し、他の国々が私たちに何を負わせようとも、それは変わらない。

いずれ私たちはより安全な居住地を必要とするとしても、それを手に入れるために主権を放棄する必要はまったくなく、また、私たちの海を放棄する必要はまったくないと、私たちは認識する。豊かな国々は、私たちの豊かな海へのアクセスを求めるが、海は彼らの所有を得るためのものではない。大国は、私たちの豊かな海、私たちの祖国である島々、私たちの祖先が住み、私たちが文化を通して深く結びついている場所を奪う方法を模索し始めている。私たちは今、自分たちのものを持ち続ける権利を求めて戦う必要がある。何があろうとも、私たちの主権を守る必要がある。それを実現する方法について論じ始める必要がある。

10月19日のオンラインセッション(https://events.humanitix.com/climate-change-challenges-to-the-sovereignty-of-our-pacific-atoll-nations)は最初の一歩であるが、2021年には再びオンラインセッションが開催される。その際はさらに多くのスピーカーを迎え、もしかしたら対面の会議となるかもしれない。このオンラインフォーラムは、太平洋諸島の人々の視点から見た主権、そして、気候変動が太平洋地域に散らばる多くの小さな島々の主権にどのような影響を及ぼすかについて意見を表明し、公開討論する場をもたらす。オンラインフォーラムでの議論を足掛かりとして、いずれ、ここオーストラリアや太平洋地域から有識者、市民社会団体、関心を持つコミュニティーメンバーを招いた対面会議が行われるだろう。対面会議によって参加者同士の交流や議論が深まり、政策決定に役立つ、そして太平洋地域ならびに国際領域における法的境界の保全に影響を及ぼすビジョンが生まれるだろう。私たち太平洋島嶼国は、私たちの土地、価値、慣習、海洋領域に対する主権を気候変動によって奪われるままにすることはできないし、またそうするつもりもない。

タウキエイ・キタラはツバル出身で、現在はオーストラリアのブリスベーンに居住している。ツバル非政府組織連合(Tuvalu Association of Non-Governmental Organisation/TANGO)というNPOのコミュニティー開発担当者であり、ツバル気候行動ネットワークの創設メンバーでもある。ツバルの市民社会代表として、国連気候変動枠組条約締約国会議に数回にわたって出席している。ブリスベーン・ツバル・コミュニティー(Brisbane Tuvalu Community)の代表であり、クイーンズランド太平洋諸島評議会(Pacific Islands Council for Queensland/PICQ)の評議員でもある。現在、グリフィス大学の国際開発に関する修士課程で学んでいる。

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新型コロナウィルス感染症が拡大するなか「二重の脅威」に直面する移民たち

【バージニアIDN=ジャクリーン・シャルスキ-ファウツ】

移住労働者は、新型コロナウィルスの感染が世界的に広がる中、「エッセンシャルワーカー(=社会にとって必要不可欠な労働者)」として、世界経済の最前線に立ち続けてきた。しかしこれは大きなリスクを伴うもので、彼らは、「国際救援委員会」が「想像を超える二重の緊急事態」と言及しているものに直面している。

紛争や強制退去を経験した移民たちは、世界的なパンデミックだけではなく、経済不況がもたらす影響にも立ち向かっていかなければならない。脆弱な立場にある移民たちは貧困に陥りやすく、紛争や追放の憂き目にあったり、危険な労働環境や厳しい生活環境に追いやられやすい。従って、ホストコミュニテイーで失業が増えれば、移民たちに対する経済支援や法律面での支援、さらには感染から身を守るための個人防護具へのアクセスを支援する必要がある。

米国では、西海岸一帯に広がった山火事で空が赤く染まり、大気が危険な状態になっているなかで、カリフォルニア州のワイン産地であるセントラルバレーの農場では多くの移住労働者たちが働いている。

スペイン・アルメリアの農場では、モロッコからの移住労働者たちが、新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐためのマスクや消毒液といった防護措置がほとんど取られていないことに不満を漏らしていた。

photo: The virus highlighted the world’s structural dependence on cheap, exploitable labour. Source: salud-america.org

欧州連合(EU)内でスペインは移住労働者の割合が最も高い国の一つである。少なくとも同国の農業の25%が、外国人移民の労働に依存している。同様に、米国の農業労働者の3割と、EUの労働者の390~410万人が不法滞在者である。これらの外国人労働者は各国経済や世界経済で重要な役割を果たしているが、今やパンデミックの危険に正面から晒されている。

移住労働者と同じように、難民や国内避難民についても、パンデミックに伴う経済活動の停止の影響に対して脆弱であり、感染拡大に伴って健康上の懸念が持たれている。

経済活動の停止によって、基本的な生活水準をかろうじて保っていた多くの人々が、失業と、政府から経済支援を得る資格を喪失するリスクに晒されている。

新型コロナウィルス感染症に伴う経済活動の停止で世界中の国々の小規模ビジネスは大打撃を受け、今後「厳しい」経済不況に見舞われると予想されている。結果として、106万人が今年末までに貧困に陥る危険がある。その中には、非正規部門労働者のかなりの部分を占め、こうした危機に「とりわけ脆弱」な移民や難民が含まれている。

最近の研究によると、モロッコの非正規労働者の数は、労働者全体の3分の1以上にあたる約240万人であった。消費者が仕事を失い、企業がより安い商品とサービスを求めるなか、非正規労働者の数は今後も増えていくと予想されている。経済活動が停止していた間は、多くの非正規労働者は、顧客を見つけたり、交通手段がないために職場に行くことができなかった。

Image: Virus on a decreasing curve. Source: www.hec.edu/en
Image: Virus on a decreasing curve. Source: www.hec.edu/en

モロッコでは、労働市場と民間部門が経済活動の停止によって大きな影響を受けているが、なかでも最も影響を受けたのが非正規部門の労働者で、既に全体の66%が職を失っている。モロッコ政府は、とりわけ非正規労働者に関して収入喪失の影響を緩和しようと努めているが、7月半ば時点で、わずか19%の世帯しか恩恵を受けていない。こうした支援の大半は、移民、とりわけ非正規雇用や不法滞在状態にある者には届かない。

過去の金融危機の事例からも明らかなように、ほとんどの移民は本国に帰らない。むしろ、本国の経済的見通しが暗いことから、多くの人々が欧州に渡るべく北へ向かう。この数か月、チュニジアではイタリアに向う移民が増えて、昨年の6倍に達している。

しかし、旧来の(トルコ-バルカン半島を経由する)陸路での移動ルートが閉鎖されてしまったため、多くの移民がブローカーを通じて(地中海を渡る)海路による密航を選択した結果、今年だけでも675人以上が亡くなっている。

人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、新型コロナウィルスの感染拡大がもたらす複雑な状況について警告している。移住労働者はしばしば危険な労働環境や生活環境に直面しており、その結果、ウィルスに対してより脆弱な立場に立たされている。

SDGs Goal NO.10
SDGs Goal NO.10

2009年の経済不況に際して、ロンドンのブルガリア移民を調査したカヴィタ・ダッタ氏によると、解決策は2つしかないという。一つは移民を減らすこと。もう一つは、その国の中で移民に法的支援を与え、移民に関する理解を促進して、彼らが搾取される可能性を減らすことである。

移民政策センター」が主催したウェビナーでゲストスピーカーを務めた同センターのアンドリュー・ゲデス所長は、移民に関する新たな議論を呼びかけ、責任の共有や法的な道筋といった現在の政策を各国政府が再検討する必要性について語った。

自国を経由して非正規移民の大半を欧州に送り出しているリビアやモロッコといった北アフリカの国々に多くの非難が向けられている。移民を減らす英国政府の計画は、モロッコのような外国に収容所を設置するという内容を盛り込んだ。オーストラリア政府の同様の計画ではパプアニューギニアを利用している。この計画は、国連やその他の人権団体から批判された。

しかし、移民の増加に対して収容所の増設で対処するよりも、法的支援団体や移民支援政策はより人道主義的なアプローチを採用している。その方がより効率的に非正規移民を減らすことができるかもしれない。

権利と正義」のようなモロッコの団体や、フェスのシディ・モハメド・ベンアブドラ大学の学生団体「法学部法律クリニック」(CJFD)はそうした方向を進めている。

Map of Morocco
Map of Morocco

CJFDは「米国中東パートナーシップ・イニチアチブ」や「全国民主主義財団」の支援を得て、「ハイアトラス財団」との協力でプロジェクトを実施している。ここでは、法学生たちが、欧州を目指す移民の数を減らす多面的なアプローチの一環として、人権や社会的統合、起業訓練を促進しながら、法的支援を行っている。こうすることで、旧来からの移民送出地を支援の場に変え、定住を促している。

新型コロナウィルス感染症の拡大に対応して、世界中でボランティア活動と地域の連帯が活発化した。これは、移民を保護し受容するプログラムに対する支援を増やす基礎となった。移民送出国は、危険を伴う移動や搾取、あるいは貧困のリスクを抱えた移民の数を減らすために、各国政府と地域で活動する社会団体とをつなぐ動きを強めねばならない。(原文へ

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|アフリカ|10代の若者らが気候変動に対処する行動を求める

スウェーデンの気候活動家グレタ・トゥーンベリ氏と歩調を合わせるように、少なくとも2人のアフリカの若い活動家が国際舞台で存在感を高めている。彼女たちは世界の指導者に対し、「目を覚まし」、気候変動がとりわけ女性や少女に及ぼす深刻な影響を直視するよう訴えている。

南アフリカのノーベル平和賞受賞者デズモンド・ツツ大主教の誕生日に合わせて毎年開催される「デズモンド・ツツ国際平和講演」の一環として放映されたスピーチで、ウガンダの気候活動家バネッサ・ナカテ氏は、気候変動が貧困、飢餓、疾病、紛争、暴力と密接に結びついていると指摘した。

ナカテ氏は講演の中で、世界の指導者たちに向けて「私たちが直面している危険を見てください」と強く呼びかけた。

この講演は、ツツ大主教の誕生日である10月7日に合わせて行われている。今年、同氏は89歳を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今回は対面形式ではなく事前収録によって実施され、講演全体を通じて「地球規模での気候正義」の必要性が訴えられた。

ナカテ氏の発言は、とりわけアフリカ大陸に焦点を当てたものだった。アフリカは気候変動への寄与が最も小さい地域の一つである一方、その影響を最も深刻に受けるとみられている。

「気候変動は、私たちの暮らしのあらゆる領域に影響を及ぼす悪夢です」とナカテ氏は語った。さらに、「この危機に目を向けずして、どうやって貧困をなくせるのでしょうか。気候変動によって何百万人もの人々が食べるものを失っているのに、どうやって飢餓ゼロを実現できるのでしょうか。このまま何の対策も講じられなければ、災害が続き、困難が続き、苦しみが続くことになるでしょう」と警鐘を鳴らした。

そのうえで、ナカテ氏は各国首脳に対し、「自らの快適な場所から出て、私たちが置かれている危険を見てください。そして行動を起こしてください。これは生死に関わる問題です」と訴えた。(原文へ

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青年・平和・安全に関する初めての国連安保理決議

国連事務総長、軍備管理協議の停滞に懸念を示す

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は9月26日の「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」を記念して、「私たちは、信頼を基盤としつつ、核兵器のない世界という共通目標の達成に向けた指針となりうる国際法に基づいた、より強く、より包摂的な多国間主義を必要としています。」と語った。

この言葉は、国連に地球上から核兵器を廃絶するという目標を課した1946年の国連総会決議の精神を繰り返したものだった。グテーレス事務総長は、「総会決議から75年が経過した今も、私たちの世界は核による惨禍の影におびえ続けています。」と語った。

1959年、国連総会は全面的かつ完全な軍縮という目標を是認した。さらに1978年には、第1回国連軍縮特別総会が、「核軍縮と核戦争の防止のための効果的措置が最優先事項」であることを確認している。

ICAN
ICAN

しかし、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が指摘するように、約1万3400発の核兵器が依然として世界に存在する。核保有国は資金が豊富であり、核戦力を近代化する長期的な計画を有している。世界の人口の半数以上が、核保有国、もしくはそうした国の核の傘に依存する国で暮らしている。

冷戦が最高潮だった時代に比べると配備済核兵器の数はかなり減っているが、条約に従って物理的に廃棄された核兵器は、これまでただの一発も存在しない。また、現在進行中の核軍縮交渉もない。

さらに核抑止のドクトリンは、全ての核保有国とその大半の同盟国の間で、安全保障政策の一要素として根強く残っている。冷戦以来国際の安全に貢献してきた軍備管理の枠組みは、核兵器の使用にブレーキをかけ、核軍縮を前進させてきたが、現在では、次第に崩壊の危機に直面するようになってきている。

米国は2019年8月2日、それまで米ロ両国に特定のカテゴリーの核ミサイル廃棄を義務づけていた中距離核戦力(INF)全廃条約からの脱退を表明した。

さらに、「戦略攻撃兵器のさらなる削減と制限に向けた措置に関する米ロ間の条約」(いわゆる新START)は、2021年2月に失効する。同条約の効力が条項に従って延長されない、あるいは、後継条約の締結を見ないまま失効することになれば、1970年代以来初めて、世界最大の二大核保有国が条約に拘束されない状態になる。

新STARTによる現地査察は新型コロナ感染症対応のために3月以来停止しており、依然として再開されていない。新STARTの遵守履行機関である二国間協議委員会(BCC)の次回会合も延期されたままだ。

米国は矛盾するシグナルを送り続けている。

ワシントンのシンクタンク「軍備管理協会(ACA)」によると、米国は、査察とBCCでの協議をいつどのように再開するかについて検討しているが、他方で、両国のすべての関連職員が新型コロナウィルス感染症に罹患するリスクをいかに低減するかについても考慮しているという。ある国務省筋は「米国は新STARTを履行し、同条約に従い続ける」と述べている。

また、トランプ政権は、中国が米ロ中3カ国の軍備管理協議に即時に参加すべきとの要求を弱め、ロシアと政治的に拘束力のある中間的な枠組みを追求し始めているとの報道がなされている。

By Pacific Southwest Region 5 – Donald J. Trump, 45th President of the United States, Public Domain

しかし、トランプ政権は、2010年の新STARTを単純に5年間延長するというロシアの要求を撥ねつけ、いくつかの条件が満たされない限り条約延長を検討しないとしている。

トランプ政権は、ロシアとの新たな枠組みは、全ての種類の核弾頭を対象とし、検証体制を強化したうえで将来的に中国を入れる構造にしなくてはならないと主張している。

マイク・ポンペオ国務長官は8月31日、米国は「軍備管理協定に関してロシアと緊密な協議を行っており、両国が今年末までに合意に達するようにしたい。」と語った。

ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣を相手にウィーンで8月17・18両日開かれた協議の後、米国のマーシャル・ビリングスリー軍備管理大統領特使は、「条約の検証体制の不備を修正し、新しい枠組に合意することが、新START延長の条件だ。」と語った。

ビリングスリー特使は8月18日の記者会見で「オバマ=バイデン政権で交渉された新STARTには大きな欠陥がある。検証体制に重大な不備があります。」と指摘したうえで、不備の例として、ミサイルの遠隔測定に関する十分な情報交換がないこと、現地査察の頻度が低いことなどを挙げた。

Vladimir Vladimirovich Putin/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

核軍備管理に加えて、宇宙の安全保障問題も、両国間の核不拡散協議に影響を及ぼしている。新しい宇宙技術の急速な発展と世界の三大宇宙大国(米国・ロシア・中国)の間の競争は、宇宙という最後のフロンティアの「兵器化」への懸念を高めている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、第75回国連総会に寄せたビデオ・メッセージの中で、米ロ両国が宇宙で武力紛争を起こすことを避けるための協定について話し合うとの考えを示した。

「ロシアは、全ての主要な宇宙大国の間で、宇宙空間に兵器を設置したり、宇宙空間の物体に対して武力を行使したり、或いは行使を威嚇したりすることを禁じる法的拘束力のある協定を締結するよう提唱している。」とプーチン大統領は語った。

中国の汪文斌報道官は、プーチン提案に賛同して、中ロ両国は宇宙空間における軍備管理に関する協定案を提出したと指摘し、宇宙空間の軍事化を禁止することを目的とした協議を米国が妨害していると非難した。

汪報道官は、米国が、空軍や宇宙司令部を創設し、宇宙空間の軍事化を激化させることで宇宙支配を進めようとしていることを中国は深く憂慮しているとの見解を明らかにした。(文へ

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国連事務総長、反転する核軍縮への動きに懸念

カリブ海諸国、核兵器禁止条約の早期発効を誓う

|国連ハイレベル会合|完全核軍縮への支持、続々と

デジタルガバナンスに関する太平洋同盟に向けて

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

人工知能(AI)が人間の生活のあらゆる分野に大きな影響を及ぼすようになったAI時代に、(奇しくも「新型コロナ」が浮き彫りにした)これまでの「利益最優先の資本主義」ではなく、あらゆる利害関係者(=SDGsが対象とするあらゆる人々)に配慮した「ステークホールダー資本主義」に基づく新たな社会契約のあり方について検討しているイニシアチブに焦点を当てた記事。(原文へFBポスト

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国連、サイバー犯罪撲滅と、平和と安全の確保を誓う

財政危機に直面したスーダン、経済制裁解除前に新たな要求が突きつけられる

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

トランプ政権から、テロ支援国家解除の条件として、米国の中東政策への支持とイスラエルとの国交正常化を要求されているスーダンの民主派主導の暫定政権(昨年4月に30年に及んだバシール独裁政権を崩壊させた)が直面しているジレンマに焦点を当てた記事。暫定政権は、米国が前政権に課した制裁により経済が極度に疲弊しており、国際的な金融機関からの資金調達を可能にする制裁解除を1年半にわたって米国に訴えてきた。しかし、イスラム教徒が国民の7割を占め長年に亘ってイスラエルの強硬な敵国だったスーダンにとって、米国による(イスラエルとの)国交正常化要求は高いハードルとなっている。(原文へ

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アラブの権力闘争:「王は死んだ。しかし王政はこれからも続く」

|国連75周年|海洋法条約がいかにして公正かつ平等な社会を作ってきたか

【キングストンIDN=マイケル・W・ロッジ】

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、創設75周年に当たって国連に求められているものをテーマにした国連経済社会理事会での演説(7月)で、平和と安全、人権、持続可能な開発という大きな目標に向けられた多国間主義の強化と刷新を呼びかけた。

最大かつ最も長期的な効果をもたらした国連の成果の一つは、海洋に関する法的枠組みを打ち立てたことであろう。これは、正しくも「海の憲法」と称されている1982年の国連海洋法条約という形で結実した。我々は今週、国連創設75年を迎えるが、「より公正で平等な社会」という事務総長のビジョンに対する同条約の貢献を考えてみることは価値があるだろう。

第3回国連海洋条約会議(1973~82)は、それまでに招集された最大かつ最も複雑な多国間会議であった。一方的な主張が横行し、1958年と60年の2回の会議が失敗に終わり、海洋法の行く末に不確実性が漂う中での出来事であった。英国・アイスランド間で勃発した「タラ戦争」のように、アクセスや通過の権利を巡って武力紛争につながるケースもあった。

Michael W. Lodge

急速な脱植民地化とその結果として約100カ国が誕生したことで、「海洋の自由」の原則に見られた旧来の海洋秩序が挑戦を受けた。しかし、この原則は同時に、少数の海洋大国が海洋の排他的な利用を主張するために効果的に使われてきたものでもある。同時に、科学技術の急速な進歩が、過剰利用に対する海洋の脆弱性や公害の影響に関する我々の理解を深めてきた。

1982年の海洋法条約は、海洋法における確実性を打ち立て、海洋に平和と秩序をもたらした。海洋の利用における平等な関係を国家間にもたらし、国際の平和と安全に対する主要な貢献となってきた。同条約は、人間の海洋利用に関するあらゆる側面を網羅した多面的なものでありながらも、とくに4つの側面が際立っている。

第一に、海洋法条約は、諸国の海洋における管轄権の範囲という困難な問題を解決した。海軍大国が権利の究極の決定者であった400年間を経て、12海里の領海、200海里の排他的経済水域、大陸棚の定義、主張が競合した場合の紛争解決の仕組みについての合意がなされた。国際海運に用いられる海峡の通航権がすべての国に認められ、内陸国にも海への恒久的なアクセス権が確保された。90%以上の物資は海を通じて運ばれているため、このことは国際貿易・取引の発展にとって大きな貢献となった。

第二に、しばしば見過ごされている事実は、この条約が、これまでに採択された最も重要な環境関連条約の一つであるということである。一つの章がまるごと海洋環境の保護にあてられていることに加えて、「公害」の定義を条約として初めて盛り込んだ。この定義は、その発生源がどこであるかにかかわらず、人間の活動に由来したCO2の排出にも適用される。さらに、海洋環境に関連した同条約の条項は義務的なものであり、無条件、かつ例外を認めない。「能力に従って」「適切に」「実行可能な限り」といった、近年よく見られる語句が使われていないのである。

SDGs Goal No. 14
SDGs Goal No. 14

第三に、私が最も感心したのは、同条約が、地球上で開発されていない最大の天然資源に関する全く新たな法制度を作り上げたことである。「人類共通の財産」と位置づけられたこれらの資源は、国際海底機構(ISA)という国際機関によって管理され、全人類の利益のために持続可能な形で利用される。これらの資源へのアクセスは、先進国であれ途上国であれ、富裕国であれ貧困国であれ、大国であれ小国であれ、保証される。地球上のどの資源もこのような形では管理されておらず、同じような理念を地球外の資源にも適用するよう我々は努力してきたところである。

第四に、海洋法条約が効力を持ち続けていることである。国連が創設わずか37年で採択された同条約は強さを増し、今や加盟国は主要な海洋大国のほとんどを含む168を数える。海をめぐる紛争は条約に従って平和裏に解決され、他のどの条約よりも充実した包括的な紛争解決の仕組みを通じて、国際司法裁判所国際海洋法裁判所によって支援されている。

海洋法条約は、1994年に深海底の採掘について、1995年には国際漁業についてそれぞれ実施協定が採択され、変化する環境や新たな課題に対応できるものであることを示した。特に重要なのは、これらの協定が、1982年に合意された権利や管轄権の基本的なパッケージを損なうことなく、新たな科学的知見と高まる環境破壊への懸念に照らして条約の条項を発展させた点にある。

基本的な海域の区分/CC 表示-継承 3.0

海洋法条約は、国際法と衡平の原則がイデオロギーに勝利したことを示している。残念なことに、この勝利は依然として不完全なものであり、脅威に晒されてもいる。「不完全」だというのは、条約への普遍的な参加をまだ勝ち取っていないという意味だ。米国など一部の国々がまだ条約に加わっていない。「脅威に晒されている」というのは、グテーレス国連事務総長が指摘するように、不平等が強まり、より複雑化しているということだ。海洋に関して言えば、海洋科学技術の分野で起きている目まぐるしい進歩において格差が生じていること、その科学技術から利益を得る能力がほとんどの途上国に欠けていることに、そうした不平等の実態を見てとることができる。金持ちが先進的な船舶を建造して自由に研究できるのに対して、途上国は、国際的な科学研究に実効的に参加できていないことは言うに及ばず、自らの領海すらまともに調査できていない。

国連75周年は、国際社会が国際海洋法条約へのコミットメントを再確認し、その条項が、平等の原則に従い、全人類の利益になるよう確実な履行を保証する重要な節目なのである。(原文へPDF

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|フィジー|コロナ禍で観光産業が打撃を受ける中、人々は農漁業に活路を見出す

【シドニーIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

COVID-19危機は、観光業に依存する太平洋島しょ国に深刻な打撃を与えている。なかでも最大の島しょ国フィジーでは、ホテルや旅行会社など観光関連産業で職を失った人々が、生計維持のため農業や漁業へと活路を求めている。比較的広い国土と豊かな漁場を持つ同国では、自然資源への依存によって危機の衝撃を和らげようとする動きが広がっている。

リゾート施設での仕事を失った36歳のシングルマザー、サイニミリ・ダウヴェレさんは、フィジー国営放送に対し、こうした自然の恵みを「神から授かった資源」と表現し、友人たちに希望を失わないよう呼びかけた。旅行代理店で働いていたリティアナ・ナコウラさんも同様に、「いまは仕事がなく家にいますが、政府の支援が届くのをただ待っているわけではありません。私たちには畑があり、そこで何かをすることができます」と語っている。

南太平洋大学(USP)のジャーナリズム・コーディネーター、シャイレンドラ・シン博士は、首都スバからIDNの取材に応じ、「こうした人々の多くは家族を支えてきた。唯一の稼ぎ手だった人も少なくない。雇用喪失が家計に与えた影響については、いまだ包括的な調査が行われていない」と指摘した。

フィジーでは、観光部門が直接・間接に15万人超の雇用を支えている。2018年の国勢調査によると、人口は88万3483人。観光業は国内総生産(GDP)の3割強を占め、同年の観光客到着数は87万309人と、総人口にほぼ匹敵する規模に達していた。

シン博士は、「フィジーには福祉制度がないため、影響を受けた家族への打撃は極めて深刻だとみてよい」と述べる。そのうえで、「農業や漁業は、食卓に食べ物を並べ、多少の現金収入を得るための一時的手段にはなり得る。しかし多くの場合、定期雇用に支えられていた観光業の継続的な収入を補うには到底及ばない」と語った。

一方で、USPで災害リスク管理の監督・調整を担うビラム・レセ氏は、やや異なる見方を示している。大学が実施した失業調査の結果をめぐるオンライン討論会で、同氏は、パンデミックが結果として失業を減らした側面もあると主張した。

レセ氏は、「失業」とは、働く能力がありながら就労せず、家計を支えるうえで貢献していない状態を指すと説明する。そして、「ロックダウンにより、働くことのできる人々が村や地域共同体へ戻り、家庭菜園やその他の活動に従事することで、地域社会に貢献する一員になっている」と述べた。つまり、彼らは必ずしも「失業者」ではないというのである。同氏はまた、庭の作物や家族農園、海から得られる食料への依存が高まっている現状を強調した。

フィジー事故補償委員会が9月初めに公表した報告書によると、2020年6月期の観光収入は同年3月期に比べて98.6%減少した。6月期の観光収入は420万フィジードル(190万米ドル)にとどまり、前年同期の5億2880万フィジードル(2億4881万米ドル)から99.2%も落ち込んだ。

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が2020年7月に公表した「フィジーCOVID-19企業調査:観光業特集」によれば、調査対象となった観光業関連企業の50%が休眠状態または完全閉鎖に追い込まれ、35%は人員削減を伴いながら営業を継続している。「この状況が今後6カ月以内に改善しなければ、調査対象の観光業企業の29%、非観光業企業の11%、計約500社が倒産する見通しだ」と、IFCのオーストラリア・南太平洋地域担当カントリーマネージャー、トーマス・ジェイコブ氏は警告した。

これに対し、ファイヤズ・シディク・コヤ商業・貿易・観光相は、「フィジー経済は2020年に推計21.7%のGDP縮小という過去最大級の落ち込みを記録し、失業率は27%まで上昇すると予測されている」と述べた。

IFC報告書はまた、観光業企業の20%がすでに債務返済不能の状態にあり、さらに観光業企業の16%、非観光業企業の11%が、今後1~4カ月以内に債務不履行に陥る可能性があると指摘している。

国営航空会社フィジー航空は便数の95%を運休しており、経営破綻寸前との見方も出ている。さらに、パンデミック発生以降、279のホテルやリゾートが閉鎖され、その数はいまなお増え続けている。地元旅行会社Rosie Holidaysのマネージャー、トニー・ウィットン氏は、観光業の回復は少なくとも2021年末までは見込めないとの見通しを示している。

3月に国境を閉鎖し、フィジー最大の観光市場を断ったオーストラリアは、最近になってフィジー経済への支援策を示唆している。フィジー駐在オーストラリア高等弁務官ジョン・フィークス氏は、国境再開と渡航手続きの整備後、フィジー人や他の太平洋島しょ国出身者に雇用機会を提供する可能性をキャンベラが検討していると述べたと報じられている。オーストラリアでは、農業、園芸、食品生産分野で労働力不足が生じている。実際、9月初めには、バヌアツから果物収穫労働者を乗せたチャーター便がオーストラリアの農場へ向かった。

もっとも、COVID-19の打撃以前から、気候変動はすでに太平洋島しょ国とその観光産業に影響を及ぼし始めていた。このため、太平洋グローバリゼーション・ネットワーク(PANG)のコーディネーター、モーリーン・ペンジュエル氏は、フィジーや太平洋島しょ国がポストCOVID-19期の観光回復を図るうえでは、気候変動の影響に対応する環境的視点を組み込む必要があると指摘する。

同氏は、「フィジーや他の開発途上国が適応し、生き残るためには、変化の激しい将来に柔軟に対応できる余地を確保しなければならない。そのためには、自由貿易協定によって産業育成に必要な政策空間を手放してはならない」と警告している。

フィジーのボレケ・バイニマラマ首相は、9月のVirtual Island Summit 2020で、「この新たな危機は、すでに気候変動の最前線に立たされていた国々にとって、不運な運命の転換である」と述べた。そのうえで、「いま私たちは、気候変動と感染症という二重の危機に直面している。島しょ国はこれまで以上に結束した声を上げなければならない」と訴え、危機克服のためには「適応と革新」が必要だと強調した。

だが、フィジーの行動余地は巨額の債務によって大きく制約されかねない。政府は7月、COVID-19の影響に対処するため、20億フィジードル(9億2700万米ドル)の景気刺激策を予算の一環として打ち出したが、その結果、債務残高の対GDP比は83.4%に達した。

シン博士は、「私たちは借りた時間と借りた金の上で生きている」と語る。そして、「問題は『あとどれだけ持ちこたえられるのか』ということだ。もう一つの問いは、この前例のない災厄に直面して、政府に他の選択肢があったのかという点である」と述べた。(原文へ

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ラダックの仏僧が国境紛争の平和的解決に努力

【シンガポールIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

インドのS・ジャイシャンカル外相と中国の王毅外相が9月10日、モスクワで開催された上海協力機構外相会合に合わせて会談した。王外相は「インドと中国が、隣接する大国同士、異なった見解を持っているのは当前のことだ。」と述べた。

インドのNDVTネットワークよれば、王外相は、中印両国はともにアジアの新興国として、対立ではなく協力し合うべきであり、不信ではなく相互信頼を促進すべきだ、と述べたという。

ヒマラヤ山地にあるラダックは、インド領内で最も仏教人口の多い地域であるが、中心都レーで活動する仏教僧のサンガセナ師は、中印両軍が今年6月に国境付近で衝突し、インド兵20人が死亡してから、紛争の平和的解決を訴える運動を主導してきた。

Map showing the union territory of Ladakh shown in red. / By RaviC – Own work, CC BY-SA 4.0

サンガセナ師は、IDN-INPSのパートナーメディアであるロータス・ニュースが「WhatsApp」を使ってレーから行った取材に対して、「もし戦争が起これば、国境に接するラダックが真っ先に戦場となりここの人々が最も被害を受けます。そうなれば、カシミールやアフガニスタンのような状況になってしまいます。」と語った。

ナレンドラ・モディ首相が昨年、ジャンムー・カシミール州のラダック地方を連邦直轄領だと宣言した際、ラダックの仏教徒の間では安堵の声が広がった。というのも、この措置により仏教徒は初めてラダックの運営に関してより大きな発言権を得られると期待できたからだ。しかし、レーで様々な支援活動を行っている大きな仏教組織である「モハボディ国際瞑想センター」を率いるサンガセナ師は、インドの宗教指導者らは、間近に迫りつつある紛争について沈黙を保っていると嘆く。

「平和を促進するのがあらゆる宗教指導者の務めです。」「インドは、ヨギ(ヨガの指導者)、リシ(ヒンズー教の聖人)、ムニ(古代インドの苦行者)など、『非暴力が最大の義務だ』と語ってきた人々が多くいる土地柄です。だから、非暴力はインドのグル(導師)がまず唱える標語となってきました。しかし、中印間の国境紛争を平和的に解決するよう訴えるグルがいないことに、驚いています。」と、サンガセナ師は語った。

9月8日、「平和のために働き、歩き、祈る」の標語の下に、サンガセナ師は、仏教徒だけでなく、ムスリム、ヒンズー教徒、キリスト教徒、シーク教徒など地元の宗教指導者らによる行進を実行した。彼らは、地域で深刻になっている憎悪と緊張、恐怖、不安定をなくすために祈るとともに、それぞれの宗教の代表が、無知を克服し、平和に共存するための知恵を説いてまわった。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

「インドの大半のメディアには本当に失望しています。メディアは憎悪や戦争、暴力を煽り、民衆を誤った方向に導いています。これは本当に悲しいことです。メディアには国民に対する道徳的責任感が欠けています。」とサンガセナ師は語った。

ムンバイ大学でメディアとジャーナリズムを専門のサンジェイ・ラナデ教授は、「インドの報道は、マハトマ・ガンジーやガウタマ・シッダールタ(釈迦)といった人物を取り上げながら平和について語っているが、好戦愛国主義的な傾向が強い。国際紛争で調停者として役割を想像することは、今のインド報道機関の編集部門には手に余ります。彼らは、支配的な体制に歩調を合わせるか、そうでなければ、野党勢力に味方するかしかないのです。」と、ロータス・ニュースの取材に対して語った。

ラナデ教授は、中国とインドが長年の宗教的な紐帯を有している文明であるにもかかわらず、宗教指導者らが中印紛争に関して沈黙を保っていることについて、「彼らは明らかに政治家らとの付き合いがあるにもかかわらず、『インドの宗教指導者は政治問題について発言しない。』と主張しています。彼らはまた、中印情勢については、宗教指導者ではなく、政治家や軍人が分析しコメントすべきものだと考えています。」と、語った。

ラナデ教授は、「そのひとつの理由は、この国の宗教活動の範囲がヒンズー=ムスリムの二重構造という枠に押し込められてきたためだと思われます。インドが長年にわたって9つのダルシャナ(哲学・宗教思想体系)の揺籃の地であったにも関わらず、(今日の)宗教指導者らは、神智学や哲学よりも、狭い儀礼の問題にばかり焦点を当ててきました。」と語った。

インドの元外交官ファンチョク・ストブダン氏が昨年『ヒマラヤ仏教圏を巡るグレートゲーム:戦略的支配を目指すインドと中国』という時宜を得た書籍を上梓した。同氏は、インド・中国両国とさらに隣接するネパール、ブータン王国に跨るヒマラヤ山岳地域は、新たな地政学上の対立地点になりつつあると警告し、中印両国が協力して同地域の仏教徒を支援し、仏教哲学が説いてきた平和的共存を促進すべきだと論じている。

自身も仏教徒であるストブダン氏は、「ヒマラヤ地域は、もう半世紀にもわたって、インドと中国の代理勢力による対立の場となってきました。」と指摘したうえで、「ラダックからアルナチャル・プラデシュ州に至る山岳地帯を覆う地域は、中印両大国間の国境紛争の温床となり、時として軍事衝突に発展してきました。また、米国のような外部勢力が、チベット問題を利用してこの地域に不和の種を蒔くことも考えられます。」と語った。

6月に中国による国境侵犯が問題になっていた際、ストブダン氏は、なぜダライ・ラマ猊下は国境問題に関して沈黙しているのかとテレビ番組で発言して、物議をかもした。「どうして中国軍がそこに来るのか。 誰が、そこが中国の土地だと言ったのか。 中国人はそこには住んでいないというのに、ダライ・ラマ猊下はなぜ黙っているのか。なぜ猊下は、ここはチベットの領域ではなく、インド領土だと言わないのか。」と矢継ぎ早に疑問を投げかけたうえで、「ダライ・ラマ猊下は発言すべきだ。中国が土地を奪おうとしている時に、祈りばかり捧げているわけにもいかないだろう。」と語った。

チベットの宗教指導者を非常に尊敬しているレーの仏教コミュニティーはこれらのコメントに反発し、抗議の意思を示すためとして1日間すべての店舗を閉鎖した。

その後ダライ・ラマは、雑誌のインタビューの中で、「近年、インドと中国は互いを競争相手とみなすようになってきています。いずれも人口10億人を越える大国です。いずれの強国も、他方を倒すことなどできない。つまり共存していくほかないのです。」と述べている。

サンガセナ師は、「私が平和的解決について語るとき、それが国の主権を譲り渡すとか、領土の安全を犯すといったことを意味しているわけではありません。そうではなく、信仰心を持っている人は国境の枠を越えて平和を促進しなくてはならないということを言っているのです。」と語った。

他方、ロシアが仲介したジャイシャンカル=王外相会談の終わりに、中印両国は、国境付近の部隊の撤収や緊張緩和など、現在の状況に関する5項目の合意を行った。

共同宣言によると、両外相は、国境付近での緊張は双方にとっての利益にならず、両国は「国境地帯の平和と安定を維持し高めるための新たな信頼醸成措置を取るための努力を加速すべき」ことで合意したという。(原文へ

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「緑の万里の長城」が2030年への道を切り開く

【ボンIDN=リタ・ジョシ】

グレート・グリーン・ウォール計画により、この13年間でサハラ砂漠の南縁部に広がる2000万ヘクタールの荒廃した土地が回復された、とする報告書が発表された。報告書は9月7日、サヘル地域に点在する11カ国(セネガル・モーリタニア・マリ・ブルキナファソ・ニジェール・ナイジェリア・チャド・スーダン・エリトリア・エチオピア・ジブチ)の環境相が、地域のパートナーや国際機関、開発機関と共に開いたオンライン閣僚会議で発表された。

「緑の万里の長城」とも呼ばれるこの計画は、アフリカ連合の主導で2007年に開始されたもので、アフリカを横断する形で、セネガルからジブチまでのサハラ砂漠南縁部に沿って長さ8000キロ・幅15キロにわたる長大な「緑の壁」を構築(多様で適応力の高い在来植物を植樹しその周辺に農地を形成)し、従来砂漠化により貧困と慢性的な食糧不足に苦しんできたサヘル地域の人々の生活を変革しようというものである。この計画が完了すれば、オーストラリアのグレートバリアリーフの3倍もの規模に及ぶ、地球上最大の生態構造物が出来上がることになる。

閣僚会議で発表された「緑の万里の長城:実施状況と2030年に向けた見通し」は、この壮大な環境修復活動に関する初の包括的な現状報告書である。これによると、2007年から18年にかけて新たに35万人以上の雇用と約9000万ドルの収入が創出されている。

SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

砂嵐を防ぎ空気や土壌に潤いをもたらす「緑の壁」が構築されたことにより、農産物の生産と収穫が可能になったため、これまでに22万人以上が、農業・牧畜と非木材生産物の持続可能な生産に関する訓練を受けた。また、これまで回復された緑地帯(計画全体の20%に相当)では、2030年までに300メガトンCO2以上が吸収される見込みで、これは全体目標のおよそ3割に当たる。

報告書はまた、2030年までにサヘル地域の1億ヘクタールの荒れ地を再び農業が可能な土地に回復するという目標を達成するには、参加11カ国は毎年43億ドルを投じて820万ヘクタールの土地を回復していく必要があると指摘している。また計画では、2030年までに1000万人の雇用創出を目指している。

アミナ・モハマド国連副事務総長は閣僚会議の挨拶の中で、「緑の壁は、サヘル地域に暮らす数百万の人々の生活に変革をもたらすでしょう。植林や商品作物の栽培・収穫に従事する雇用が増え、食糧事情の改善により健康が増進し、地域住民の生活はより安定したものになります。そして、コミュニティーのレジリエンスが増し、全ての人が恩恵を受けられる経済成長へとつながっていきます。」と語った。

モハマド副事務総長はさらに、「新型コロナウィルス感染症がもたらした被害を調査し、強力な刺激策を通じた再建計画が模索される中で、包摂的で持続可能な経済対策および復興策として、『緑の万里の長城』計画という絶好の投資機会を逃してはなりません。」と語った。

国連砂漠化対処条約(UUCCD)のイブラヒム・ティヤゥ事務局長は、「この計画は、緑の壁を構築している地域社会に対して直ちに目に見える恩恵をもたらしており、国際レベルにおいても、生態系に長期的なプラスの効果を生んでいます。つまり、各国が夢を描き、協力し合い、正しい方針を採るならば、共に繁栄し、自然と調和して生きていけることを、この大規模植林計画は実証しているのです。」と語った。

閣僚会議の閉会にあたって、「緑の万里の長城に関する共同宣言」が発表され、ポストコロナの経済回復や貧困削減、生態系の回復、気候変動への対応と緩和、女性のエンパワーメント、突発的な経済的移民への対処、雇用創出を達成する上でテコとなる、この計画の可能性に焦点があてられた。

共同宣言は、持続的で多面的な支援の必要性と、この計画の目標を達成するための、あらゆるパートナーによる積極的な参加を強調した。

閣僚らは共同宣言の中で、「各地の社会経済、さらには生態系にも短・中・長期にわたる影響を及ぼす新型コロナウィルス感染症が蔓延している世界の保健状況」に対して深い懸念を表明するとともに、従来、社会の悪化からテロリズムの温床や、欧州への移民の供給源となってきたサヘル地域で永続的な平和と安定を打ち立てるためには、「安全保障・経済開発・社会福祉の領域における共同の努力を必要といている。」と指摘した。そして、「緑の万里の長城」計画を引き続き履行していくことが、参加11カ国にとって最優先事項であり、各々の参加国が領域内に構築していく「緑の壁」を、ポストコロナの経済回復や、持続可能な開発目標の達成、「アジェンダ2063」、パリ協定の達成に向けたテコの一つにするという共通のビジョンを改めて表明した。

閣僚らは、気候変動ファンドや国連砂漠化対処条約、地球環境ファシリティ、世界銀行グループ、欧州連合、アフリカ開発銀行グループ、フランス開発庁等の関連する二国間パートナーなどの諸パートナーに対して、「緑の万里の長城」計画に関する包括的なプログラムに対して、継続的かつ多面的な支援を提供するよう求めた。(原文へ

Africa’s Great Green Wall. Source: FAO

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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