ホーム ブログ ページ 227

|北朝鮮|「無視することが全ての国にとって最良の策」とUAE紙

【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は、22日から2日連続で日本海に向けて短距離ミサイル(計46発)を発射した北朝鮮の行動について、国際社会ののけ者国家(pariah state)の現政権は「危険なほど予測不能」であることから「全ての国にとっての最良の策」として、これを無視するよう各国に呼びかけている。

同紙は3月24日付の論説の中で、「北朝鮮によるミサイル発射は、韓国が毎年米国と実施している共同軍事演習(野外機動訓練「フォール・イーグル」)を牽制する象徴的な意味合いがある。国際社会が北朝鮮包囲網を形成しているという妄想にとらわれている同国は、この米韓軍事演習を侵略行為と見なすとともに、外国からの侵略に備えて常に警戒態勢を維持する大義名分にしている。」とドバイに本拠を置くガルフ・ニュース紙が報じた。

「しかし、60年前にこの国が危険な個人崇拝に基づく国づくりに乗り出して以来、国民を洗脳し恐怖と拷問で支配する専制国家に成り下がったというが現実である。」

「その結果、北朝鮮は恐怖を梃に行動を繰り返し、南の隣国(韓国)の安定と北東アジアの平和を脅かしてきた。抑制のきかない核開発にせよ、虚偽発表が絶えない大陸弾道ミサイル技術にせよ、国家による数世代に及ぶ人権侵害にせよ、現政権の動向は危険なほど予測不能である。」と同紙は報じた。

「一つ明らかなことは、北朝鮮は国際社会からの譲歩と栄養失調に苦しむ国民のための食糧援助を獲得するために、あえて危険な行動に出る『瀬戸際外交』に熟達した国になっているということである。」とガルフ・ニュース紙は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:
北朝鮮、3回目の核実験で国連に反抗

|北朝鮮-チェコ共和国|「一人は王朝に生まれ、一人は民主運動の中から生まれた」とUAE紙

|国連-北朝鮮|支援食糧がようやく飢えた国民のもとへ

「核兵器なき世界」に焦点あてた3つの会議

【ベルリンIDN=ジャムシェッド・バルーア】

ウクライナをめぐる米露間の緊張が高まり、核問題にも悪影響が出てくると予想される中、核不拡散・軍縮に向けた取り組みを強化するうえで、今年4月に予定されている3つの国際会議の重要性がますます高まっている。

その一つ目は、メキシコで行われた「第2回核兵器の非人道性に関する国際会議」から2か月後に広島で開催予定の「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)第8回外相会合」(4月11~12日)である。これに、東京に本拠を置く創価学会インタナショナル(SGI)が主催する「核兵器の非人道性に関する宗教間シンポジウム」(ワシントン、4月24日)と、国連本部で開催される「2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会」(ニューヨーク、4月28日~5月9日)が続く予定である。

準備委員会は、NPT各条項の履行状況を確認し、運用検討会議に向けて勧告を行うことを念頭に加盟国間の議論を促すことを目的としている。1970年に発効し1995年に無期限延長されたNPTは、5年ごとに運用検討会議を開催することを義務づけている。同条約は、世界の核不拡散体制の要石だとみなされている。

NPDI

UN General Assembly/ Wikimedia Commons
UN General Assembly/ Wikimedia Commons

「核兵器なき世界」の促進は、不拡散・軍縮イニシアチブ(NPDI)の一環として広島で開催される外相会合の目的でもある。NPDIは日本とオーストラリアが主導する国家連合で、全会一致で採択された2010年NPT運用検討会議最終文書の履行を支援するために結成された。

オーストラリア、カナダ、チリ、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、トルコ、アラブ首長国連邦からなるNPDIは、NPT交渉のペースや、不拡散・軍縮の両面において速やかに行動に移る必要性に関連した多くの宣言を発してきた。

NPDIは2013年4月にハーグで開催した(第6回)外相会合の共同ステートメントの中で、「全ての条約加盟国による更なる検討のために、核兵器の役割低減、非戦略核兵器、包括的核実験禁止条約(CTBT)、核兵器国への保障措置拡大、非核兵器地帯及び輸出管理に関する作業文書に加え、昨年の軍縮・不拡散教育に関する作業文書を更新したものを提出する等、準備委員会の作業に積極的に貢献する」と決意を表明している。

さらに「我々は、CTBTの普遍化及び早期発効は核軍縮の達成に必須なステップであると確信する。今年のブルネイ及びチャドによる批准により批准国数の合計が159カ国となったことを歓迎する。…我々は全ての非締約国、中でも残りの未署名・未批准の発効要件国8カ国に対し、これ以上の遅滞なくCTBTを署名・批准するよう緊急に求める。」「CTBT批准を促進する特別な責任を持つ核兵器国に対し、この分野において主導的な役割を果たすよう求める。条約の発効まで、全ての国に対し核実験やその他のいかなる核爆発も控えるよう求める。」と述べている。

3つの「阻止」と3つの「低減

広島外相会合の重要性は、1月20日に岸田文雄外相が長崎大学で行った演説でも強調されている。岸田外相は、核兵器が初めて実戦に使用されて犠牲となった広島の出身である。

岸田外相は、「3つの阻止」と「3つの低減」が、「核兵器なき世界にむけた(日本の)基本的な考え方の中心だ、と語った。「3つの阻止」とは、(1)新たな核兵器国出現の阻止、(2)核開発に寄与し得る物資、技術の拡散の阻止、(3)核テロの阻止であり、「3つの低減」とは、(1)核兵器の数の低減、(2)核兵器の役割の低減、(3)核兵器を保有する動機の低減である。

宗教間シンポジウム

Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun
Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun

SGIの池田大作会長は、「こうした措置の実現には、グローバル市民社会の積極的な参加が必要」として、(2011年の「平和提言」の中で)「国際政治のリーダーシップが欠けているならば、市民社会がその隙間を埋め、世界を新しくより良い方向へ動かすエネルギーの供給源になっていけばよいのです。」「つまり、民衆一人一人がそれぞれの場所で自分にしかできない役割を担うこと自体が、リーダーシップの本旨であるとの発想の転換こそが必要なのです。」と述べている。

池田会長はまた、2013年の「平和提言」の中で、「国家として必要ならば大多数の人命や地球の生態系を犠牲にすることも厭わないとの非道な思想の根を断つ挑戦をしていく必要があります。同時に、核兵器の問題というプリズムに、生態系の健全性や、経済開発、人権等さまざまな観点から光を当てることで、『現代の世界で何が蔑にされているのか』を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること―そして、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』を創出できると考えています。」と述べている。

こうした背景に照らせば、米国政府と連邦議会の本拠であるワシントンDCにおいてSGIが主導して開催される宗教間シンポジウムは、きわめて重要なものである。

第3回準備委員会

そして2015年NPT運用検討会議第3回準備委員会も極めて重要な会合である。広島・長崎は、2015年に原爆投下から70年を迎える。SGIの池田会長は、「この会合と2016年の主要国首脳会議(G8サミット)が、核兵器なき世界に向けた拡大サミットへの適切な機会となるだろう。」と指摘したうえで、「この拡大サミットには、国連や核兵器を保有する非G8諸国、5つの非核兵器地帯(南極条約、ラテンアメリカ非核兵器地帯[トラテロルコ条約]、南太平洋非核兵器地帯[ラロトンガ条約]、東南アジア非核兵器地帯[バンコク条約]、アフリカ非核兵器地帯[ペリンダバ条約])、それに、核廃絶に向けて主導的役割を果たしてきた他の諸国からの参加を含めるべきだ。」と提案している。

1月21日にジュネーブ軍縮会議(CD)の2014年会期の開始にあたって演説した国連の潘基文事務総長は、長らく膠着状態が続いているCDの現状に言及し「会議全体に広がってきている悲観論は打破されなければなりません。さもなくば、CDは時流に取り残されることになってしまうでしょう。」と述べ、国際社会の期待に応え、実質的な活動を再開するよう訴えた。

潘事務総長は、事態打開のための方策として、CDが引き続き軍縮交渉再開に向けた道筋を模索し続ける一方で、(有識者パネルや国連総会アドホック委員会の創設など)新たにCD枠外における議論を通じて条約の枠組みと提案を深めていくことも重要だとの持論を披露した。潘事務総長は「将来の交渉に向けたこうした基礎作業を行うことは、CDの意義を改めて示す具体的な第一歩となるでしょう。」と指摘したうえで、「この春に2015年NPT運用検討会議第3回準備委員会が開催されるまでに、CDにおいて大きな進展が見られることを願っています。」と付け加えた。

Ban Ki-moon/ UN Photo
Ban Ki-moon/ UN Photo

第3回準備委員会がきわめて重要な意義を持っていることは、中東非核兵器地帯創設に関する1995年の決議履行に「運用検討会議が一貫して失敗している」ことに抗議して、エジプトが2013年4月の第2回準備会合から途中退出したという事実からも明らかである。エジプト外務省は、2012年中に行われる予定だった「中東非核兵器地帯創設に関する会議」が延期されたのは、2010年NPT運用検討会議の決定に対する違反だと強調するとともに、これによって「NPT体制の信頼性に影響が出てくるかもしれない」と述べている。

中東会議はもともと2012年に開催される予定だったが、中東の全ての国家(とりわけイスラエル)からの会議出席の回答が得られないとして、会議を主催する四者(国連、米、露、英)が延期を決めた。

エジプト外務省は声明で、「NPT加盟国の一部、さらには一部の非加盟国」が会議の開催を妨げていると非難した。また声明は、「エジプトは、1974年に国連で構想を発表して以来、非核兵器地帯の設立に向けて努力してきた。」と指摘したうえで、NPT加盟国、国連、国際原子力機関(IAEA)、国際社会に対して、決議履行に関して責任を果たすよう求めている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

期限を切った核兵器禁止を求める活動家たち

「核なき世界」を引き寄せるヒロシマ・ナガサキ

|軍縮|パキスタン、核分裂性物質生産禁止条約に強硬に反対

政情不安と難民危機が続く西アフリカ

【アビジャンIPS=マーク・アンドレ・ボワヴェール

西アフリカでは、マリコートジボワールにおける政治危機が最悪の難民危機を引き起こしている。武装勢力が各地で跋扈し政情不安が続く中、難民の帰還問題も長期化する様相を呈している。

ナイジェリアではイスラム過激派組織が民間人を標的にしたテロ行為を繰り返してきたが、今では隣国のニジェールカメルーンに潜伏している。マリでは、国連部隊が政府への軍事支援を行っているが、イスラム過激派武装勢力「西アフリカ統一聖戦運動(MUJWA)」は依然として、各地で爆弾テロを展開するなど脅威であり続けている。

コートジボワールもまた、深刻な政情不安に直面している。同国は3000人に及ぶ犠牲者を出した2010年末の大統領選挙に端を発した内戦のダメージから回復したが、内戦中に隣国のガーナトーゴ、リベリアに避難した難民の帰還は遅々として進んでいない。

Map of Cotegibor
Map of Cotegibor

UNHCRによると、同近隣3か国を中心に国外に暮らすコートジボワール難民は93,738人、さらに国内避難民は24,000人にのぼるという。

しかし内戦中に多くの殺戮が行われた同国西部の低サッサンドラ州では、この数週間の間に再び武装勢力による襲撃事件が再発するなど、政情は不安定なままである。

スウェーデンのウプサラ大学平和・紛争研究学部博士課程の学生イルマキ・カイコ氏は、リベリア東部のコートジボワール難民が多数居住する地域において詳細な実態調査を行っている。

カイコ氏はIPSの取材に対して、「コートジボワール難民の多くは2015年の大統領選挙の結果を見据えてから帰還するかどうかを決めようとしているのです。」「彼らは現職の(アサラン)ワタラ氏が次回大統領選で敗れると予想していますが、もし選挙結果で勝利するようなことになると、再び騒乱が起こりかねないと考えているのです。」と語った。

ワタラ政権は、隣国に逃れた難民コミュニティーに、本国への帰還を歓迎するという政府のメッセージを携えた特使を派遣するなど、難民問題の解決に努力している。

この政策は、最近になってマルセル・ゴシオ元アビジャン港湾局長や1300人を超える元兵士を含む旧ローレン・バボ支持派(先の内戦の敵対勢力)の人々の帰還が実現するなど、ある程度成果を生み出しつつある。

先のコートジボワール内戦で拘束され失脚したバボ前大統領は、内戦期に人道に対する罪を犯したとして逮捕され、国際刑事裁判所の審理にかけられる予定である。

カイコ氏はまた、「難民の安全な帰還を実現するにはコートジボワール西部における土地所有権の問題解決が重要」と指摘したうえで、「現地の緊張状態はいまでも続いており、このまま難民が帰還すれば、暴力的な衝突が再燃するリスクは依然として高い。」と語った。

International Cocoa Organization
International Cocoa Organization

リベリアにおけるコートジボワール難民の大半は同国西部の世界有数のカカオ生産地から逃れてきた人々である。彼らは、コートジボワール政府の「土地は、実際にその土地を耕しているものに属する」という政策に則って、土地を開墾しカカオ栽培に従事してきたが、一方で先住のゲレ族との間に土地の所有権を巡る軋轢が生まれていた。内戦によって彼らが農地から離れたため、もはや土地の所有権は望めないと考えているのである。

カイコ氏は、リベリアに暮らしているコートジボワール難民の多くが本国帰還に消極的な最大の理由は、もはや戻るべき土地がないという土地所有権を巡る問題にあると見ている。

また、ナイジェリアでも政情不安が続いている。

ナイジェリア北部では、イスラム過激派武装組織「ボコ・ハラム」による一連の襲撃事件により、この数か月間で、1,500人が北に隣接するニジェール南部のディッファ地域に、さらに4,000人以上がカメルーンに難民として流出している。

ボコ・ハラムは、学校、病院など、欧米起源と見なされる施設を標的に襲撃を繰り返しており、治安の悪化とともに、近隣諸国や国内避難民が増加し続けるなか、難民への支援活動が困難になってきている。

ただし、治安悪化が原因で人道支援活動が困難になっているのはナイジェリアだけではない。

西アフリカ全域を通じて、援助活動に従事する要員が誘拐や襲撃を受ける事件が頻発しているほか、帰還難民も襲撃の標的になってきている。2月8日にはマリのキダルからガオに移動中の4輪駆動車がMUJAOに襲撃され、国際赤十字委員会のマリ人職員4人と他の援助団体の獣医師1名が拉致されている。

襲撃事件が頻発する中、多くの人道支援団体は、支援活動のため危険地帯に赴かざるを得ない職員のための治安対策を強化することを余儀なくされている。

「この地域では、武装勢力から職員を拉致されないように武装兵士によるエスコートが欠かせません。」とUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)ブルキナファソ事務所のムハンマド・バー広報官はIPSの取材に対して語った。

マリと国境を接するブルキナファソの情勢は比較的安定しているが、バー広報官は、「(マリに近い)北部遠隔地域、とりわけドーリやディーボ地域では厳格な安全措置を講じてスタッフの活動の範囲を制限せざるをえなくなっています。」と語った。

これにより人道援助活動や帰還難民の支援活動に支障がでてきている。

UNHCRマリ事務所のアリヴィエ・ビーア氏はIPSの取材に対して、「政情不安により、マリ国内で帰還難民へのアクセスが困難になっており、NGOの中には帰還難民が暮らす地域における活動を制限するところも出てきています。私たちがそうした地域に出向いて帰還難民に対する支援活動を行うには、国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)の支援が必要なのです。」と語った。

UNHCR
UNHCR

2012年12月にフランス軍がイスラム過激派武装組織の拠点に対する空爆を開始する数週間前の段階で、隣国に逃れたマリ人難民及び国内避難民の数は50万人に上っていた。

その後、MINUSMAが徐々に軍事作戦に取って代わり国内治安の安定化作業を進めるなか、隣国のブルキナファソ、ニジェール、アルジェリア、モーリタニアの各地に点在する難民キャンプに暮らすマリ人難民の数は167,000人に減少している。現在、マリ国内の避難民の数は約20万人である。

なお、UNHCRは現時点で難民の帰還を積極的に勧めていない。

「UNHCRが難民の帰還を支援する際には、難民の安全と尊厳が守られるよう一定の保護基準が満たされていなければなりません。」とビーア氏は語った。しかしマリでは、住宅や学校の不足、政情不安、司法へのアクセスの不在等の諸要因から、難民の帰還プロセスが遅れている。

しかしたとえ治安問題が解消されたとしても、難民の帰郷にはさらに多くの時間を要するかもしれない。いくつかの国連諸機関およびNGOが、現在西アフリカ地域は深刻な食糧危機に直面していると警告している。

英国に拠点を置く人道支援団体「オックスファム・インターナショナル」は、現在食料支援を必要としているマリ難民の総数は80万人以上に及んでおり、作物の収穫が少なくなる5月中旬以降には、さらに危機的な事態に発展する可能性があると予測している。

コートジボワール難民も同様に厳しい状況に直面している。UNHCRリベリア事務所のカシム・ディアニュ代表は、「もし難民に対する食糧供給量が2か月以内に増やされない場合、52,000人以上のコートジボワール人難民が餓死するだろう。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

世界各地で攻撃にさらされる教育現場

中東民衆蜂起で民主選挙へと転回するアフリカ

|マリ|キリスト教徒もイスラム教徒も―「私たちは皆、テロリストの被害者だ」

クリミア問題で綱渡りを強いられるトルコ

0

【イスタンブールIPS=ドリアン・ジョーンズ】

クリミア半島(自治共和国)をめぐるロシア・ウクライナ危機が、トルコに微妙な対応を強いている。トルコとしては、クリミアの少数派民族タタール人の擁護者として振る舞う必要がある一方、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に対して強硬な態度に出ることで、トルコ‐ロシア間の経済関係を悪化させたくない思惑があるからだ。

トルコがクリミア情勢に関心を持つのには十分な理由がある。クリミアは1475年から1783年までオスマン・トルコ帝国を宗主国とする独立国(クリミア・ハン国)であった。またトルコ人は、クリミア人口の約15%を占めるクリミア・タタール人と文化的に強いつながりを持っている。

トルコ国内には現在数十万人のタタール人が少数民族として暮らしているが、そのほとんどが1783年にクリミア・ハン国がエカテリーナ2世治世期(1762年~96年)のロシア帝国に併合された際にトルコに移住してきたタタール人の末裔である。

こうした歴史的・文化的要因もさることながら、クリミア・タタール人問題に関するトルコ政府の姿勢を形作っている最大の要因は国内の政治情勢であろう。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、側近や家族に大規模な汚職疑惑が持ち上がって、このところ政治的立場が危うくなっている。現在エルドアン首相は、スキャンダル発覚後初となる統一地方選挙を3月30日に控えて、政権基盤の立て直しに躍起となっている。

エルドアン首相が率いる与党公正発展党は、草の根の国粋主義的勢力をひとつの支持基盤としているため、党内首脳陣は、ロシア軍占領下にあるクリミア半島(1954年以来ウクライナ領)のタタール人の利益を擁護するトルコの政府姿勢を喧伝している。

トルコのアフメット・ダーヴトオール外相は、3月3日にトルコ在住のタタール人協会の代表者らと会見し、「我が国の首相や大統領がクリミア半島や世界各地の兄弟(タタール人)に影響を及ぼす問題について、よもや無関心だなどとは決して思わないでください。」と明言した。

この外相のコメントが出された前日、クリミアのタタール人同胞に対してトルコ政府が十分な対応をしていないと批判する抗議集会が、数百人が参加した首都アンカラをはじめ、多くのタタール人が住む国内各地の都市で繰り広げられた。

CNNのトルコ語放送は、クリミアに本拠を置くクリミア・タタール国会のトルコ代表ザフェル・カラタイ氏が「私たちは今日クリミアで起こっている現実に戦慄を覚えています。」と語る様子を報じた。

昨年夏に勃発したゲジ公園(イスタンブール中心部のタクシムに唯一残った緑地)再開発に端を発した反政府デモの余波に加えて、新たに噴出した不正疑惑で窮地に追い詰められているエルドアン政権にとって、海外の同胞クリミア・タタール人問題で、国内で弱腰だと見られることは、政治的に致命的な打撃を被ることになりかねない。

カーネギー国際平和財団欧州センター(ブリュッセル)のシナン・ウルゲン客員研究員は、「彼ら(与党公正発展党の首脳陣)は、国内の国粋主義支持層から、(クリミア半島の)タタール人同胞を守れなかったと批判されたくないのです。中東で虐げられた人々の擁護者を自認してきたトルコ政府が、自らの同胞であるクリミア・タタール人の運命に無関心であったと見られる訳にはいかないのです。」と語った。

トルコ政府は3月上旬にダーヴトオール外相をウクライナに派遣し、クリミア・タタールコミュニティーの代表と会見するなど、タタール人コミュニティを支援する意思を強く打ち出しているが、一方で国内では、国粋的な熱気を抑え込むことに躍起となっている。

その理由は、近年深化を遂げてきたロシアとの経済関係である。トルコは天然ガスの半分以上をロシアに依存している。またロシアは、トルコからの輸出先としては世界第6位(2013年の統計で72億ドル)であり、トルコ経済省の統計によれば、2012年末現在でトルコの対ロシア直接投資額は90億ドルとなっている。

トルコとロシアの外交関係はシリア政策を巡る相違から既に緊張状態にあり、トルコ政府としては、今回のクリミア問題でロシアに対して強硬な態度をとることはなるべく控えたいようだ。トルコ大統領府の公式声明によると、3月5日にプーチン大統領と電話会談を行ったエルドアン首相は、「今日のクリミア危機を招いた『最大の』責任は、ウクライナの現政権にある。」と指摘したうえで、「(ウクライナの)政情不安は、地域全体に悪影響を及ぼすでしょう。」と語ったという。

3月6日、国営放送のテレビ番組に登場したタネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源大臣は、ロシアからの天然ガス供給が滞るのではないかとする国内の不安を懸命に打ち消すとともに、「アゼルバイジャン等他国から新たに天然ガスの供給を得る方策を探る必要はありません。」と明言した。

しかし、こうした外交上のバランス政策をこなしていくことは、今後数週間から数か月、エルドアン政権にとって、ますます困難になっていくだろう。先述のウルゲン客員研究員はこの点について、「クリミアで最近実施された住民投票の結果が、ロシアへの編入を支持するものであったことから、エルドアン政権は難しいジレンマに直面することになるだろう。」と指摘している。

さらにウルゲン氏は、「トルコ政府は、これまでウクライナの領土保全とソ連・ロシア支配下のクリミア・タタール人に対する迫害を問題視する主張を展開してきた経緯から、もしクリミア半島がウクライナからロシアに割譲される事態になれば、トルコ政府はロシアに対してこれまでよりも遥かに厳しい態度を取らざるを得なくなるだろう。」と語った。

クリミアの首都シンフェロポリで6日に記者会見したタタール民族運動の指導者ムスタファ・ジェミリエフ氏は、トルコのダーヴトオール外相が、もしクリミアのタタール人が危険にさらされたらトルコは「直ちに関与する」と約束した、と述べた。

もしクリミア半島でタタール人とロシア系住民の間に衝突が生じれば、トルコ国内で愛国主義が再燃し、トルコ政府に対して、タタール人救済になんらかの行動をおこすよう求める圧力が強まるだろう。

イスタンブール工科大学のトルコ民族とトルコナショナリズムの専門家ウムト・ウゼル氏は、「(トルコ国内には)率先して現地(クリミア半島)に出向いて戦う用意ができている国粋主義者がいます。」と語った。

しかし、これ以上ロシアへの対決姿勢を強めれば、国内の保守勢力を満足させられたとしても、ロシアとの貿易関係が決定的になるリスクを避けられないことから、エルドアン政権としては、慎重にならざるを得ないだろう。

「とりわけエルドアン首相はプーチン大統領との間に良好な関係を構築してきたと思われることから、トルコ政府としては、ロシアとの二国間関係を危機に晒したくないというのが本音です。従って、エルドアン首相が今以上の対決的な姿勢をロシアに対してとることは極めて難しいと考えられます。」とウルゲン氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

新たな核軍拡競争にとらわれたNATOとロシア

|トルコ|行き過ぎた新自由主義経済政策が「内なる平和」を脅かす

国益擁護の立場からアサド政権を見放せないロシア(ニコラス・K・グボスデフ米国海軍大学教授)

|UAE|「まさかの時の友こそ真の友」とUAE紙

【アブダビWAM】

飢饉が発生し人道危機に陥っているパキスタン最大の砂漠地帯であるシンド州タルパールカル地区に対して、アラブ首長国連邦(UAE)政府は大統領の指示に基づいて緊急の食糧・医療支援を含む多次元に亘る支援を実施している。

「UAEは中東地域有数の人道支援提供国であるとともに、昨年台風第30号(ハイエン)で甚大な被害を被ったフィリピンに10億ドル規模の支援を行った例にも明らかなように、伝統的に世界中の支援を必要としている人々を人道主義の観点から援助する方針を堅持している。とりわけ大洪水・地震・飢饉などの大規模災害に頻繁に襲われているパキスタンに対して、一貫して多方面に亘る支援の手を差し伸べている。」とUAEの英字日刊紙「カリージ・タイムス」は3月14日付の論説の中で報じた。

また同紙は、「今回の飢饉に対してUAEパキスタン支援プログラム(UAE PAP)を通じて動員した基本食料品は1500トンにのぼり、1月に実施した食糧援助の規模(1600トン)に迫りつつある。UAEは1月にも洪水と対テロ掃討作戦で国内難民化した人々が寒波で飢餓に喘いでいる事態を緩和するため大規模な援助を実施した。」と報じた。

「またUAE PAPは、災害時の緊急支援とは別に、2011年からパキスタンの民衆の生活向上を目的とした開発援助(道路・橋梁建設、教育・保健支援・水供給向上支援等)を行っている。」

また同紙は、「UAEのパキスタンに対する援助については、少し前に、パキスタンがUAEではなく、他の2020年万博開催候補国を推していたとして非難する『全く不必要な』議論が取り沙汰された(パキスタン政府はそれはUAEのドバイが立候補する以前の約束だったと説明)。」点を指摘したうえで、「UAE政府の現実の行動が示している通り、UAEはパキスタンを兄弟国・友好国と見なしており、かかる噂や議論でUAE指導者層の寛大な人道支援の方針が影響をうけることは全くない。」と結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|UAE|「国際人道デー」キャンペーンが「平和」という言葉とともに閉幕

|パキスタン|今こそ支援の手を差し伸べるとき

新たな核軍拡競争にとらわれたNATOとロシア

0

【ベルリンIDN=ジュリオ・ゴドイ】

米国政府は、(ロシア政府が)2段式の地上発射巡航ミサイル「RS-26」の発射実験を行ったことは1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約違反だとして、非公式にロシアを非難している。

INF条約は両国に対して、弾道および巡航ミサイル、地上発射の中距離(1000~5500km)および短距離(500~1000km)ミサイルの生産・実験・配備を禁止しているが、米国はロシアのINF条約違反疑惑について、これまでのところ公式には言及していない。しかし、米国政府高官らは、(ウクライナ情勢を背景に)ロシアとの関係がとりわけ緊張感を増すさなか、米メディアに対するリークを始めている。

1987年、数年間の協議を経て、北大西洋条約機構(NATO)と当時のソ連は、米国の「パーシングIb」や「パーシングII」、「BGM-109Gグリフォン」など、すべてのミサイルや関連兵器を破壊し生産停止することに合意した。この際ソ連側は、1987年時点で核弾頭を搭載した最新型地上発射巡航ミサイル「SSC-X-4」を含むすべてのSSシリーズのミサイルを廃棄した。

中距離核戦力全廃条約/Wikimedia Commons
中距離核戦力全廃条約/Wikimedia Commons

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、「INF条約による制限の結果としてロシアのミサイル能力に残されたギャップ」を埋めるために、地上発射巡航ミサイル「RS-26」(ロシアはこれを「ミサイル防衛キラー」と形容している:IPSJ)の実験が行われたという。また同記事は、米国のローズ・ゴットモーラー国務次官補代理が1月中旬にNATOに対して米国のデータを提供したとしている。

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンタール氏やマーク・ストークス氏などの軍事専門家によれば、ロシアにとってのINF条約最大の問題は、同条約に縛られない中国が自前の中距離核戦力を整備しつづけている点にあるという。両氏は『ワシントン・ポスト』への寄稿の中で、「ロシアは、もし中国が同条約に署名しないなら条約から脱退するとすでに脅しをかけている」と述べている。

もしこの米国での報道が真実なら、ロシアの実験は、NATO・ロシアが軍縮協議を継続している裏で、既に新たな核軍拡競争を始めているではないかという、数多くの平和・反核活動家の警告を証明するものとなるだろう。

というのも、NATOも、とりわけ西欧諸国に配備している「B61」核弾頭を「近代化」する計画を保持しつづけることで、(ロシアと同じく)核能力の「ギャップを埋め」ようとしているからだ。

さらに、インドやイスラエル、北朝鮮、パキスタンを含めた実質上のすべての核兵器国が、このところ少なくとも1度は中距離ロケットや核兵器の能力を向上させている。

欧州に配備されている恐るべきB61は冷戦の遺物である。この大量破壊兵器が実際にどれだけ配備されているかは軍の極秘事項であるが、約20発がドイツ南西部の村ブエッヘル近くにある軍事基地、さらに、数は不明だが最大200発のB61が、NATO加盟国のベルギーイタリアオランダトルコに配備されている。

B61核爆弾/Wikimedia Commons
B61核爆弾/Wikimedia Commons

NATO、というよりもむしろ米国政府によると、B61はその旧式な性格を考えると近代化のための改修は必要なことだという。米上院での公聴会によると、これらは「無能兵器」(dumb weapons)あるいは「重力」爆弾と呼ばれており、目標地帯に対して軍用機から投下され、レーダーによって誘導される仕組みだが、このレーダーはそもそも「耐用年数5年」を想定して1960年代に作られたものであることが明らかになっている。

こうした「無能核兵器」を航空機から投下することは、それが想定どおり爆発した場合、広大な地域が地表から消し去られてしまうことを意味する。

さらなる危険

古い核爆弾B61には、とりわけNATO軍や欧州市民にとってさらなる危険な面もある。2005年に行われた米空軍のある調査では、欧州の核兵器維持に係る手続きはリスクを抱えており、雷の落下によって核爆発を起こす危険性があると判明している。

FAS
FAS

また2008年に行われた別の米空軍調査では、欧州における「ほとんどの」核兵器配備地は、米国の安全指針を満たしておらず、これを標準並みに引き上げるためには「相当の追加資源を必要とする」と結論づけている。

これらすべてのリスクが昨年末に米議会が開いた公聴会の場で確認されており、この公聴会で米軍関係者は、B61について予定される近代化改修の内容について説明している。

マデリン・R・クリードン国防次官補(グローバル戦略問題担当)が米下院小委員会で昨年10月に述べたように、米政府は公的にはこの近代化改修を「全面的耐用年数延長プログラム」(LEP)と称している。

この審議においてクリードン次官補は、B61は「米国の核備蓄の中で最も古い弾頭の設計であり、その部品の一部は1960年代にまで遡ります。」と指摘したうえで、その近代化改修は「軍事的な要請に合致し、より手頃なメンテナンス費用で耐用年数の延長を可能にするものです。また、米核安全保障局(NNSA)が、安全・確実で効果的な核備蓄を提供するために不可欠としている更新要件も満たしています。」と証言した。

同じ公聴会で証言に立った米戦略軍のC・R・ケーラー司令官は、多くの平和活動家らが長年指摘してきたにも関わらずNATOが最近まで一貫して否定してきた内容について語った。ケーラー司令官は、「平均的なB61は、配備開始から25年ほど経過しているため旧式の技術を含んでおり、性能を維持するには頻繁に手を入れねばなりません。」と指摘したうえで、「この陳腐化しつつある兵器を、もともと想定されていた耐用年数をはるかに超えて、安全・確実、かつ効果的な状態に保つには、非常措置をとる以外に方法はありません。」と証言した。

Gen. C. Robert Kehler
Gen. C. Robert Kehler

もし近代化のスケジュールが守られるとすれば、新型の「B61-12」は2020年までに運用可能となる。NNSAの現在の推計ではこれには少なくとも80億ドルの費用が掛かる。

しかし、ワシントンに本拠を置く「軍備管理不拡散センター」は、国防総省の第三者評価では実際のコストが100億ドルを超えることもありうるとされたことを指摘している。この費用だと、LEPは爆弾1発ごとに2500万ドルを要することになる。また同センターは、「プラウシェア財団」がこの価格では改修されたB61は同じ重さの金よりも高価になると批判していることを紹介した。

LEPに批判的な人びとによれば、近代化はたんに「耐用年数延長」だけを意味するのではなく、兵器の能力を格段に向上させる意味合いもあるという。

米科学者連盟」核情報プロジェクトの責任者で核兵器に関するもっとも著名な民間専門家のひとりであるハンス・M・クリステンセン氏は、LEPは「新しい軍事的任務を支援したり、新しい軍事能力を付与したりするものではない」という米政府当局の当初の誓約内容と、この兵器の新しい特徴とは矛盾している、と指摘している。

Hans Kristensen/ FAS
Hans Kristensen/ FAS

LEPに関する新情報は[米政府の主張とは]まったく逆の状況を示している。

クリステンセン氏は、「誘導尾翼を取り付けたことで、B61-12の命中精度が他の兵器と比較して向上し、新たな戦闘能力が付与されることになります。」「米軍当局は、50キロトンのB61-12が(再利用されたB61-4弾頭とセットで)360キロトンのB61-7弾頭と同じ標的をたたく能力を得るには、誘導尾翼が必要だと説明しています。しかしB61-7が配備されたことがない欧州では、誘導尾翼が付くことで(B61-12の)軍事能力が格段に向上することになるのです。これは核兵器の役割を低減させるという公約には見合わない改善措置と言わざるを得ません。」と語った。

比較のために言えば、米国が1945年8月6日に日本の広島市を破壊するために投下した原爆「リトル・ボーイ」の爆発力は13~18キロトン、その3日後に長崎市を破壊した「ファット・マン」の爆発力は22キロトンだった。

昨年10月に米下院が開いた公聴会で、B61-12は、1997年に導入された旧型で400キロトン規模の地中貫通型核兵器「B61-11」と、最大1200キロトンで様々な爆発力を持つ戦略核弾頭「B83-1」の代替となることが明らかになった。

クリステンセン氏は、「これによってB61-12の軍事能力は、B61-4(0.3キロトン)からB83-1(1200キロトン)に至る、重力爆弾の軍事的標的任務の全範囲と、B61-11の地中貫通能力までカバーするものとなります。」「つまり、そのような破壊能力の更新がなされれば、新戦力は『重力爆弾のあらゆる任務を包含した、共通の能力を持つ全対応型の核爆弾』となるでしょう。」と語った。

もっとも問題なのは

B61の大量破壊能力を極度に向上させる計画には多くの問題が内包している。なぜなら、欧州各国政府、とりわけドイツが、少なくとも2009年以降、この兵器の解体を希望する旨を明確にしてきているからだ。

世界中に拡散する核兵器を「冷戦の最も危険な遺産」だとした、2009年4月のバラク・オバマ大統領の歴史的なプラハ演説に対して、当時のドイツ政府は、国内に配備されている旧型のB61を解体するよう主張したのであった。

社会民主党出身の当時のフランク・ウォルター・シュタインマイヤー外相は、自ら「前例がない」と称する声明において、ドイツ領に配備されている米核兵器の撤去を要求した。2009年4月、オバマ大統領のプラハ演説からわずか数日後、シュタインマイヤー外相は独『シュピーゲル』誌に対して、「(B61核)兵器は今日軍事的に陳腐化している」と述べ、依然として配備されている米核兵器を「ドイツから撤去させる」ための措置をとると約束した。

それから2年、次の保守政権のギド・ヴェスターヴェレ外相も、B61解体の主張を続けた。キリスト教民主同盟・自由民主党連立政権のヴェスターヴェレ外相は、前任のシュタインマイヤー氏と同じく、反核活動家と同じような主張を行い、こうした核戦力は多くの意味において陳腐化していると訴えている。具体的にはその論拠として、B61はすでに使用されていない他の軍備とセットで使用することが想定されており、さらに、現在は存在しない旧ソ連圏という敵をターゲットとしている点を指摘している。

2010年3月、ドイツ連邦議会ブンデスターク)では圧倒的多数の支持で、「米国の核兵器をドイツ領土から」撤去するよう明確に要求する決議が採択された。

しかし、シュタインマイヤー氏もヴェスターヴェレ氏もNATO全体、そしてとりわけ米国を説得することに失敗している。それどころか、ワシントンで決定された既成事実、すなわち、B61が近代化改修されて(ハンス・クリステンセン氏の巧みな表現を再び用いれば)「共通の能力を持つ全対応型の核爆弾」となるにまかせざるを得なくなっている。

その後シュタインマイヤー氏は再び外相に就任したが、核撤去問題を公に論じることをとうに止めてしまっている。クリステンセン氏がヴェスターヴェレ前外相についてコメントしたように、シュタインマイヤー氏も「NATOにおける古い核の番人らからの猛烈な巻き返しに身を固くして」いるのかもしれない。

しかしシュタインマイヤー氏は、すべての政党が参加して米国の核兵器をドイツから撤去すべきと主張した「ドイツ国会議員宣言」に、少なくとも2年も経たない以前に署名しているのである。当時(野党の)社会民主党議員団のリーダーであったシュタインマイヤー氏らはこの宣言において、当時の与党保守連立政権(キリスト教民主同盟・自由民主党)がこの同じ目標を達成できないでいることについて「残念なことに、我が国の政府は、すでにこの目標に別れを告げてしまったかのようだ。」と痛烈に非難していた。

この同じ非難を、再度外相となったシュタインマイヤー氏に対して投げかけることができるだろう。彼は、NATOの核兵器を欧州領土から撤去すべきだという自身の信念に従っていない。ウクライナ動乱によって引き起こされた新たなNATO・ロシア危機は、シュタインマイヤー氏が自身の心変わりに疑問を付すような機会を確実に提供することだろう。(原文へ

※ジュリオ・ゴドイは、調査ジャーナリストでIDNの副編集長。共著の『殺人の実行―戦争というビジネス』『水を売り歩く者たち―水の民営化』に関して、ヘルマン・ハメット人権賞、米職業ジャーナリスト協会による「オンライン調査報道シグマ・デルタ・キー賞」、オンラインニュース協会および南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション学部による「起業的ジャーナリズムのためのオンラインジャーナリズム賞」等によって、国際的な評価を得ている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

│ウクライナ│不況と抑圧が民衆の怒りの火に油を注いた

核軍縮に向けた統合的アプローチの必要性(ジャヤンタ・ダナパラ)

まるで冷戦が終わっていないかのような核の警戒態勢

|UAE|アースアワーに向けてドバイ空港の一部消灯キャンペーン始まる

【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの国際空港では、3月29日のアースアワー(世界約150か国の人々が、同じ日の同じ時間に電気を消すアクションを通じて、「地球の環境を守りたい!」という思いをわかちあう国際的なイベント)に向けて、空港施設内の不必要なライトを毎日1時間消灯するキャンペーンを、通常よりも早く開始した。

キャンペーンはアースアワーの24日前に当たる3月6日午後7時に開始されたが、一部消灯措置による空港の安全な運営への影響はない。

ドバイ国際空港最高経営責任者のポール・グリフィス氏は、「当施設は2009年以来、1時間一部の電灯を消すことで毎年アースアワーに参画してきましたが、この活動を通じて、環境問題への意識を新たにするとともに、国際社会に対して、良い先例を率先して示すことができる機会だと考えています。またこの経験から、アースアワーの当日に限らず、この慣行を前倒しに行うことで、更なる波及効果を期待できるのではないかと思うようになりました。」と語った。

さらにグリフィス氏は、「ドバイ国際空港は毎月世界125ヵ国以上の国々から600万人近い搭乗客を迎える施設ですから、このキャンペーンを通じて、この環境保護メッセージを利用客に幅広くアピールするには理想的な舞台です。」と付け加えた。

24時間時間の消灯(1日1時間×24日)で節約できる電力量は約30万キロワット時で、二酸化炭素排出量に換算すると129トン、ガソリン換算で23,729ガロン、或いは5,427本分の樹齢10年の木を植樹したのに相当する。

3月6日から28日までの毎日午後7時から8時の間、そしてアースアワー当日3月29日の午後8時半から9時半の間、ドバイ国際空港の第1~第3ターミナル、及びアール・マクトゥーム国際空港の乗客ターミナルにおいて、全ての装飾的な照明のスイッチが切られる予定である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

被災地支援の取り組み:一冊の会『雪香灯』プロジェクト

IPSの報道が「国連特派員協会」の金賞(最優秀賞)受賞

|日中関係|環境対策で変貌を遂げたアジアの二都物語

世界各地で攻撃にさらされる教育現場

【国連IPS=カニャ・ダルメイダ】

戦地からの映像といえば、戦場と兵営だけを映していた時代がかつてあった。その後20世紀に入ると、戦闘地帯となった都市の中心部や農村ゲリラの前哨基地などの映像も含まれるようになった。

そして今では、公共の広場が、政治不安に陥った国の民衆がデモをおこしたり暴力的な衝突が発生する舞台として頻繁に映し出されるほか、負傷者の治療に当たる病院が格好の標的と見なされるようになってきている。

しかし、現代の戦争でもっとも憂慮すべき現象は、おそらく教育機関に対する攻撃が拡大してきていることだろう。

 「教育を攻撃から守る世界連合」(GCPEA)が、この問題を扱った調査報告書としてはそれまでで最も精緻な『攻撃にさらされる教育2014』(全250頁)を2月27日に発表した。この報告書には、学校、大学、教師、学生、学者らが政府当局及び非国家主体双方から攻撃されている実態が詳述されている。

GCPEA
GCPEA

2009年から2012年をカバーしたこの報告書は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)報告書(2007年から2010年を分析)に続くもので、教育活動に関わる人々に対して行われた威嚇や、意図的に使われた暴力について記録している。

最新報告書が示す状況は、決して明るいものではない。この5年の間に、世界中で多くの子どもたちが殺害されたり、怪我を負わされたり、或いは誘拐されたり強制的に兵士や性奴隷にさせられたりしている。2012年にパキスタンでタリバンからの襲撃を生き延びた15才のマララ・ユサフザイさんのケースは非常に有名だ。

多数の教師が襲われ殺害されたほか、数千棟の校舎や教育機関の建物が爆破されるか、或いは、軍関係者用の臨時宿舎として徴発されたりした。

また専門家らは、「教育機関へのテロが相次いだ結果、教育を受ける権利を奪われた学生の数は、数十万人に及んでいる。」と指摘している。

人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」で子どもの人権問題を担当するザマ・コーセン・ネフ氏は、IPSの取材に対して、「一つの襲撃事件が及ぼす影響が、対象となった学校の150名から200名の子どもたちにとどまらず、周辺地域の全ての子どもに及んでいることを考えれば、教育機関への攻撃の問題は、これまであまり注目されてこなかった現象だと言わざるを得ません。」「私たちはこの問題がもたらす波及効果について、ようやく理解し始めているところです。」と語った。

またネフ氏は、「国連や人権擁護団体の報告書から各国内の調査研究報告書まで幅広い情報源を基に作成されたこの報告書は、教育機関に対する攻撃の背後にある様々な動機を明らかにしました。つまり、当該地域の統治機構の信用失墜を狙ったものや、女子教育の妨害を目論んだもの、自身のグループの影響力拡大を意図したもの、特定の言語教育の阻止を狙ったもの、さらには、教員の組合活動や学問の自由を抑圧しようとしたものなど、様々です。」と語った。

2013年7月、ナイジェリアの反政府勢力「ボコ・ハラム」の指導者アブバカル・シェカウは、AP通信が報じたビデオメッセージの中で、「西洋式教育をやっている教師たちよ! 我々はお前らを殺す! 我々はお前らを殺す!」と語っている。「ボコ・ハラム」は、現地のハウサ語で「西洋式教育は罪深い」という意味である。

またそれより数か月前、ミャンマー中部のメイッティーラでは、約200人の仏教系国粋主義者らがイスラム教徒の学校に放火し、教員や生徒に襲いかかった。そして騒ぎが収まったあとには、32人の生徒と4人の教師の無残な死体が校庭に残された。中には、首を切り落とされたものもいた。

報告書にある70か国中30か国で、教育機関に対する意図的かつ体系的な攻撃が見られた。なかでも調査対象期間(2009年から2012年)における、アフガニスタン、パキスタン、コロンビア、ソマリア、スーダン、シリアの状況は最悪を記録した。

とりわけコロンビアは、教師にとって世界で最も危険な国の一つとなっている。過去4年間で140人の教師が殺害され、1086人が殺害の脅しを受けていた。

Source: Global Coalition to Protect Education from Attack
Source: Global Coalition to Protect Education from Attack

同時期、パキスタンでは838の学校が武装勢力によって破壊され、教師20人と30人の学生が殺害されている。

一方、内戦が続くシリアではユニセフが「少なくとも国内の20%の学校が教育機関として機能していない」と報告するなど、学校教育活動が寸断される中、約300万人の子どもが影響を受けている。

この報告書では、コートジボワール、コンゴ民主共和国、イラク、イスラエル/パレスチナ、リビア、メキシコ、イエメンが、調査期間中の攻撃時件数が500件から999件にのぼる「深刻な影響を受けた国」に分類されている。

高等教育機関で最大の犠牲者を出しているのはイエメンで、2011年には73人の生徒が殺害され、さらに139人が負傷している。

報告書はまた、こうした攻撃に対して、(1)モニタリング、襲撃事件の評価と報告、防犯体制の強化や(2)暴力と破壊行為に対するコミュニティーを挙げての対策、など対抗策や予防策についても紹介している。

「後者の対策は、時としてコミュニティーメンバーを、テロリストによる報復攻撃に晒すリスクを伴うが、コミュニティーの強い意志を示すことでテログループとの交渉による解決へと持ち込んだ事例もあります。」とGCPEAのディヤ・ニジョ代表は語った。

ニジョ代表は、「ネパールでは、学校の運営委員会が、ネパール共産党統一毛沢東主義派(マオイスト)武装勢力と交渉して、学校を和平地帯とする協定を結んでいます。また中央アフリカ共和国では、聖職者が政府軍と反政府勢力の間に入り、交渉の結果、反政府勢力の兵士たちを帰郷させることに成功しています。」と語った。

こうした努力は、より永続的な解決策に向けた小さなステップに過ぎないかもしれないが、同時に、教育を再び人類社会の神聖な位置に戻すという、従来とは異なる波及効果を生み出す可能性を持っている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|パキスタン|紛争地の子どもた

|バングラデシュ|社会の調和を訴える仏教徒たち

|シリア難民|子ども達が失っているのは祖国だけではない

|視点|核軍縮の現状(ピーター・ワイス核政策法律家委員会名誉会長)

0

【ニューヨークIPS=ピーター・ワイス】

もし精神病というものが現実との接点を失うことだとしたら、核軍縮の現状はまさに精神病と言えるだろう。

一方で核問題は、数十年にわたる休眠状態から表舞台へと徐々に現れつつある。他方で「核兵器なき世界」への核兵器国のコミットメントは、遵守というよりも違反としてとらえられている。

まずは、核軍縮に関する前進点と後退点を挙げることから始めてみよう。

Peter Weiss, President Emeritus of the Lawyers Committee on Nuclear Policy.
Peter Weiss, President Emeritus of the Lawyers Committee on Nuclear Policy.

前進点では、核軍縮問題の中心である米国において、(徐々にトーンが落ちてきてはいるが)この問題に繰り返し言及している大統領がいる。2008年6月16日にパデュー大学で行った講演でバラク・オバマ上院議員(当時は民主党大統領候補)は、「世界に対して、米国は核兵器なき世界を目指すとの明確なメッセージを送る時が来ました。…私たちは、核兵器廃絶という目標を核政策の中心的要素としたい。」と語った。

ただしオバマ氏は、その目標を達成するためにどれほど時間を要するかについては言及していない。その1年後、大統領に就任したオバマ氏
は2009年5月6日のプラハでの有名な演説で、「私は明白に、信念とともに、米国が核兵器のない平和で安全な世界を追求すると約束します。」と語った。しかし彼は「ゴールはすぐには到達できないでしょう。…恐らく私が生きている間には(難しいでしょう)。」と付け加えたのである。

オバマ氏は当時48才だった。その4年後、2013年6月19日、オバマ大統領はベルリンで行った演説の中で、「正義のある平和とは、その夢がたとえどんなに遠く見えようとも、核兵器なき世界の安全を追求することに他なりません。」と語った。

公正を期して言えば、プラハで発表された核廃絶への道のりが実行されたにせよ阻止されたにせよ、それは大統領の落ち度によるものではない。どういうことか。一方では、核兵器の大幅な削減がロシアと交渉され、米国の安全保障戦略における核兵器の役割は低減された。

いずれもオバマ政権が推奨していた、包括的核実験禁止条約の批准と核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉は、ひとつには米国上院によって、もうひとつには他国によって棚上げにされた。

しかし、削減は廃絶ではなく、米国国防総省もエネルギー省も、核軍縮には明確に反する政策を追求しつづけている。すなわち―

国防総省が2013年6月19日に出した「米国核兵器運用指針」は、核兵器は極限状況でのみ使用されるとしつつ、厳密に抑止にのみ使用目的を制限するのは時期尚早だとしている。

国防科学委員会が今年1月に発表した「核監視・検証技術評価」は、核時代が始まって以来初めて、米国が、水平拡散(核兵器を保有しない国への拡散)だけではなく垂直拡散(核兵器国内における核兵器保有量の増加)にも留意する必要性を認めた。

しかし、100ページに及ぶこの報告書は、核兵器のない世界における監視および検証の要件についてまったく言及していない。

2月6日、米国は、B-61核爆弾の衝撃実験(爆発を伴わない)に成功したと発表した。これは核不拡散条約の条文には反していないが少なくともその精神には明白に違反したものである。ドナルド・コック米国防次官補は、新型爆弾の検討が始まっており、「2020年代中ごろか末には」旧式モデルとの交代が可能になると語った。

こうした、核軍縮に関する米国の政策は、せいぜい玉石混淆といったところだろう。もちろん他の8つの核兵器国(ロシア、英国、フランス、中国、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮)の政策が米国よりましというわけでもない。

次に良い面はどうだろうか。昨年には、非核兵器国による好ましい方針がそれ以前よりも多く打ち出された。

・2月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるドイツの外務省が、「中堅国家構想」(MPI)の招集したフォーラム「核兵器なき世界の条件を創り枠組みを築く」を主催した。

・3月には、別のNATO加盟国であるノルウェーの外務省が、「核兵器の非人道的影響に関する国際会議」を主催した。会議には128か国の政府と多くの市民団体が参加した。

・10月21日、ノルウェーのデル・ヒギー国連大使が、その多くがオスロ会議に参加していた125か国による声明を国連総会第一委員会(国際平和を主要議題とし、軍縮と国際安全保障問題を主に取り扱う:IPSJ)で発表した。この声明は、核兵器が二度と使われないように保証する唯一の道はその完全廃棄である、と宣言している。

・核軍縮に関する「オープン参加国作業グループ」が5月にジュネーブで初めての会合を持ち、8月に国連総会に報告書を提出した。報告書は、国際法の役割に関する部分など、核軍縮を達成するさまざまなアプローチについて記述している。

・9月26日には、国連総会が史上初の「核軍縮に関するハイレベル会合」を開催し、参加各国の大統領や外相、その他政府高官らが次々と、核兵器なき世界に向けた迅速かつ効果的な進展を図るよう呼び掛けた。

・最後に、そして最も重要なことに、2月13日と14日にメキシコのナヤリットで開かれたオスロのフォローアップ会議(「第2回核兵器の非人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議))において、オーストリアのセバスチャン・クルツ外相が、「国際的な核軍縮の取り組みには緊急のパラダイム転換が必要だ」との理由を述べて、今年末にウィーンで(第3回)会議を招集することを発表した。

ウィーン会議は、筆舌に尽くしがたい核兵器の恐怖をたんに三度聞く場とはならず、重大な作業に取り組む場となるだろう。国連の潘基文事務総長が示唆したように、核兵器の使用および保有を禁止する条約の起草開始さえあるかもしれない。

しかし問題もある。核保有国はオスロ会議もナヤリット会議もボイコットした。もしウィーンもボイコットしたらどうなるだろうか? それが問題だ。またこのことは、官民双方に広がりつつある反核勢力が向き合わねばならない課題でもある。そこで(核兵器国が認識しているであろう)「後ろめたさ」は、外交の重要なカードにもなり得るだろう。

核兵器国がリップサービスをしてきた核不拡散条約(NPT)では、核兵器なき世界を達成するために全ての加盟国に誠実な努力を行うよう求めている。今こそ、核兵器国に、とりわけ五大核保有国に、この重要な義務すべてを思い起こさせるべき時だろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

国連での平和フォーラム、核廃絶を訴える

言語に絶する負の遺産を残す核兵器

課題は残るが、核軍縮によいニュース

国連での平和フォーラム、核廃絶を訴える

【ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連「文明の同盟」(UNAOC)上級代表のナシル・アブドゥルアジズ・アルナセル大使が、「核兵器の使用がもたらす破滅的な人道的帰結と、それが国際の平和と安全に及ぼす脅威」について深い懸念を表明している。ニューヨークの国連本部で開催された、新刊『平和のためのフォーラム―池田大作 国連提言選集』(I・B・トーリス社)の出版を記念するシンポジウム「世界市民と国連の未来」を開始するにあたって、アルナセル大使は、平和の文化の重要性についても強調した。

この書籍には、創価学会インタナショナル(SGI、本部:東京)の池田大作会長が国連に対して30年以上にわたって提言してきた内容が含まれている。議論されたテーマは、核兵器廃絶の必要性、世界市民教育、人間と環境とのつながりなどである。このイベントはUNAOCの支援を得て、SGIと国際通信社インタープレスサービス(IPS)、戸田記念国際平和研究所(東京、ホノルル)が共催して、2月20日に開催された。

Olivier Urbain/ By Kimiaki Kawai
Olivier Urbain/ By Kimiaki Kawai

書籍を編集した戸田研究所のオリビエ・ウルバン所長は、池田会長の、民衆の力に対する深い確信と、連帯に備わる潜在的な力に対する信頼に感銘を受けたと語った。戦争のない世界の実現を目指す池田会長の活動は、現実の核弾頭の廃絶にとどまるものではなく、世界が依然としてこの大量破壊兵器を保有しているという現実の背後にある人間の考え方をも問題にしている、とウルバン所長は語った。

「他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはできません。このことは国家に関しても言えることで、兵器の脅威に慄く他国の不幸と恐怖の上に真に永続的な国家安全保障を築くことはできないのです。」とウルバン氏は語った。

世界には依然として様々な紛争や脅威があるが、この本を読んで「大いに希望が湧いてきました」と言うウルバン氏は、「私たちの心の中に創造性と連帯の空間があるかぎり、人類に乗り越えられないものはありません。」と付け加えた。従って国連は、民衆の声が活動に反映されるチャンネルやメカニズムを作り出し、それによって民衆が国連を支援する体制を構築する必要がある。

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

シンポジウムの議長を務めた元国連事務次長のアンワルル・K・チョウドリ博士は、「これは私たちみなが読むべき書籍です。」と語った。チョウドリ博士はまた、「世界の歴史の中で、国連の活動について、池田会長ほど一貫かつ実質的な形で書いてきた人物はいません。」と指摘したうえで、平和を創り出すうえでの女性や若者のエンパワーメント(社会的地位の向上、権限付与)など、池田会長がこれまで行ってきた提言の多くが、国連の運営の中に反映されています、と語った。

チョウドリ博士は、対話と非暴力を通じて平和を推進する池田会長の「平和の文化」に関する考え方は、将来世代のために世界を安全な場所にするうえで不可欠なものです、と指摘した。

アルナセル上級代表は、平和と対話は国連「文明の同盟」の使命でもあると指摘したうえで、「民衆と国家が平和と繁栄のもとに共存できるようにすることは、国連の任務の礎となる部分です。私たちは国際社会として、文化や言語、宗教の違いに関わらず、人間性の基礎となる根本的に共通した価値観や原則があるとの信念で、結び付けられています。」と語った。

「私たちは国連ファミリーとして、多様性を重視し、寛容を推奨し、『他者』への恐怖を打ち破ることを通じて、より平和な世界を構築していくとの共通認識で、結び付けられています。また私たちは、世界的な解決策を必要とする共通の問題を世界の市民が共有していることを理解している点で、結び付けられています。ここにおいて、『核兵器の廃絶』と世界市民教育が役割を果たすようになるのです。」とアルナセル上級代表は付け加えた。

またアルナセル上級代表は、「国際社会は、文化の違いに関わらず、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的帰結と、それが国際の平和と安全に及ぼす脅威について、深い懸念をしばしば表明してきました。」と、会場を埋めた外交官やジャーナリスト、学者、非政府組織の代表らに語りかけた。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

国連加盟国は、これまでに生産された中で最も破壊的な兵器の大量かつ競争的な集積によって起こる未曾有の自己破滅の脅威に人類が直面している、と『軍縮機関の成果』において明言してきた。アルナセル上級代表は、「原子力の非平和的利用が人類に重大な脅威を及ぼし、これらの兵器の拡散によって状況がさらに悪化してきたことは言うまでもありません。」と付け加えた。

こうした背景の下に、国連加盟国の多数は「核兵器の完全廃絶こそが、核兵器の使用あるいはその威嚇に対する唯一の保証となる」と何度も再確認してきた。これらの国々は、「すべての非核兵器国に対して安全を保証する普遍的で無条件かつ法的拘束力がある取り決め」がこれに続かねばならない、との見解を持っている。

アルナセル上級代表は、1996年7月8日に出された核兵器使用の威嚇あるいは使用の合法性に関する国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見を想起した。ICJは、核兵器使用の威嚇あるいは使用を特別に認めた慣習法はなく、核兵器使用の威嚇あるいは使用は、武力紛争に適用される国際法の規則に一般的に違反し、とりわけ人道法の原則と規則に反すると判断した。

「核軍縮は、国際社会にとって最も高いプライオリティー(優先事項)の一つと信じます。」とアルナセル上級代表は語った。

世界市民教育

アルナセル上級代表は、平和の文化とつながりがある「世界市民教育」(GCE)の話題に移って、「もし平和の文化を私たちの中に、そして私たちの間に深く根付かせようとするならば、成長過程にある若い人たちの心に効果的に働きかけて、私たちの世界における平和という、人々を結びつける価値観を育み、それに関して教育しなければなりません。」と説明した。

Forum for Peace/ SGI
Forum for Peace/ SGI

またアルナセル上級代表は、「私たちは平和教育に大きな価値を置かなければなりません。今日の若い世代にはこれまでとまったく違った教育を受ける権利があります。つまり戦争を賛美するのではなく、平和を教えるような教育です。そうしたものとして、国連の潘基文事務総長は、2年前に立ち上げた運動『グローバル・エデュケーション・ファースト』の中で、『地球市民の育成』を3つの柱の一つに掲げています。」と付け加えた。

このイニシアチブは、この概念を、共通の価値観に息吹をもたらす変革的な教育と説明したうえで、人々がより平和で、寛容で、包括的な社会を構築するのを支援するうえで中心的な役割を果たすような教育を呼び掛けている。

アルナセル上級代表は、「国連『文明の同盟』は、私たちの中に、私たちの家族に、そして私たちの社会と国家の間に平和を作り始めることができる理想的なフォーラムなのです。」と語った。

Betty Williams/ Wikimedia Commons
Betty Williams/ Wikimedia Commons

ノーベル賞受賞者のベティ・ウィリアムズ氏は、「世界をよりよくしていくために、私たちには国連しかないのです。」と指摘したうえで、「(国連も)ある特定の領域においてはもっと多くを改善する余地があることを承知しています。しかしはたして、円滑に運営されている組織というものが世界にあるでしょうか? これまで国連がなかったら、私たちは何をなし得たでしょう?どれほど世界の情勢は悪化したでしょう?」と問いかけた。

平和な社会を推進したとして1976年にノーベル平和賞を受賞したウィリアムズ氏は、個々人が、世界市民として、世界に平和をもたらす役割を担っていると考えている。「私たちは、『私がやる必要はない。誰かがやればいい』などと言うことはできません。世界で子どもたちが、栄養不良や病気、戦争によって亡くなっていることに対して、私たちにはみな責任があるのです。人間の一員として、私たちにはみな責任があるのです。」とウィリアムズ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

人権教育を推進するHRE2020

|独占インタビュー|中東非核会議は優先課題(ナシル・アブドルアジズ・アルナセル国連総会議長)

|軍縮|福島原発危機にあたって、広島を想起する(ラメシュ・ジャウラ国際協力評議会会長)