ホーム ブログ ページ 227

パレスチナ人専用バス路線の導入は民族差別政策に他ならない」とUAE紙

0

【アブダビWAM】

「イスラエル運輸省は3月4日、アラブ人の乗客は「セキュリティー・リスク」だというユダヤ人入植者の反対を受けて、ヨルダン川西岸地区(ウェストバンク)からイスラエル中心部に通勤するパレスチナ人を対象に、新たに専用バスの運航を開始した。しかしこのようなことが実際にあり得るだろうか?このような措置は、民族毎に人々の往来を隔離する露骨な人種差別政策に他ならない。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。 

「他でもないユダヤ人国家イスラエルが、このような人種隔離政策を施行したとは、歴史の皮肉とでも言う他ない。かつて第二次世界大戦以前の欧州諸国で、ユダヤ人を標的に類似の政策が施行された歴史の教訓を、イスラエル当局関係者は、既に忘れてしまったというのだろうか?」とガルフ・ニュース紙は3月5日付の論説の中で報じた。

 運輸省当局は、今回の措置は「パレスチナ人がイスラエルに入るためのサービスを改善するためのものだ。」と主張した。しかし「パレスチナ労働組合総同盟によると、国際労働機関(ILO)は、このイスラエルの措置を「あからさまな人種差別」だとして強く非難している。しかし、このような措置に対しては、ILOにとどまらず、すべてのまともな考えをもった人々や各国政府が、『(このような政策は)不快で、下品かつ不道徳であり、全く誤ったものである」という主張を堂々と声高に叫び続けるべきである。」と同紙は報じた。 

またガルフ・ニュース紙は、「イスラエルがパレスチナ人の土地を不法に占領し住民を迫害していること自体、既にとんでもないことだが、今やイスラエルは公然とパレスチナ民族を侮辱しているのである。」と報じた。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 

関連記事:

|南アフリカ|「パレスチナ占領地」製品の表記義務付けを決定

核兵器と闘う「人道外交」

0

【オスロIPS=ジャムシェッド・バルアー】

史上初めて、核兵器禁止の必要性を訴えるために、「人道外交」が展開された。しかし一方で、世界を何回も破壊できる能力をもつ1万9000発にのぼる核兵器の大部分を保有するP5(国連安保理の5常任理事国)は、事前に示し合わせたうえでこの動きに加わらなかった。 

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

  この人道外交にむけた最初のステップは、ノルウェー政府が3月4日から5日にかけてオスロで主催した政府間会合「核兵器の人道的影響に関する国際会議」においてとられた。さらに、メキシコフアン・ホセ・ゴメス・カマチョ国連大使は、今回の会議をフォローアップする会合を「適宜」、「必要な準備の後に」メキシコ政府がホストして開催すると発表した。 

 この会議には、127か国の政府代表、国連諸機関に加え、国際赤十字委員会(ICRC)、国際赤十字赤新月運動、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)をはじめとした市民団体など約550人が参加した。 

またICANは、ノルウェー政府の支援を得て、政府間会合直前の3月2日~3日にかけて「市民社会フォーラム」を開催し、約500人の活動家、科学者、医師、その他の専門家らが出席した。同フォーラムは、すべての核兵器を違法化する世界的な運動にさらなる弾みをつける契機となった。 

ICANの代表らは、各国政府や国際赤十字赤新月社連盟などと協力して、核兵器禁止条約の実現に向けて取り組んでいくと述べた。ICANのプロジェクト・マネージャーであるマグナス・ロボルド氏は、東京に本部を置く在家仏教組織「創価学会インターナショナル」(SGI)の池田大作会長による2013年の平和提言を歓迎した。 

 池田会長は、平和提言の中で、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を発足させ、非人道的であり、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを開始させること提案している。 

SGIの寺崎広嗣平和運動局長は、ICANの市民社会フォーラムもノルウェー政府主催の政府間会合も、核兵器なき世界をもたらす重要な機運を醸成したと語った。 

SGIは、2015年の主要国首脳会議(G8)広島・長崎原爆投下70周年が、核兵器なき世界に向けた拡大首脳会議を開催する重要な節目になることを期待している。 

政府間会合の参加者の多くが、P5(米、ロ、中、英、仏)が特に理由も示さず会議を欠席したことへの失望を表明した。 
 
 一方、政府間会合の議長を務めたノルウェーのエスペン・バート・アイデ外相は、(P5の欠席にもか

Espen Barth Eide
Espen Barth Eide

かわらず)「多くの国が、全世界からの参加を得られるような方法で、核兵器がもたらす人道的影響についてさらに探求していくことに興味を示した。議論を継続し、核兵器の人道的影響に関する議論の幅を広げていくことにも興味を示した。」と政府間会合の成果を総括した。 

アイデ外相は、P5の会議ボイコット決定に対する厳しい批判を避けつつ、「(会議に)これだけの幅広い参加を得たということは、核兵器爆発のもたらす結果が我々すべての人にとって極めて重大な問題であると認識されているのみならず、この問題に対する世界的な懸念が高まっていることを反映しているものであると考える。」と述べた。 

ノルウェーが28か国から成る北大西洋条約機構(NATO)の原加盟国であることを考えると、これらの発言は大きな意味を持ってくる。NATOは2010年11月のリスボン会合で「戦略的概念」を発表したが、ここで、「NATOは核兵器なき世界への条件を作り出すという目標を掲げるが、世界に核兵器がある限り、NATOは核同盟であり続けることを再確認する」としているのである。 

アイデ外相は、IPSの取材に対して、ノルウェーは「核兵器なき世界の条件づくり」に邁進すると強調した。アイデ外相は、圧倒的多数の国家が核不拡散条約(NPT)に署名した1968年以降では、今日ほど、核不拡散への懸念から、すべての核兵器がもたらし続けるリスクに対する認識が高まった時期はないとみている。 

2010年のNPT再検討会議以来、まだ生まれたばかりではあるが、核兵器の違法化を求める運動が大きくなりつつある。 

2010年NPT運用検討会議の最終文書は、「核兵器のいかなる使用も人間に与える壊滅的な結果に対する深い懸念」に留意し、「全ての国家が、国際人道法も含め、適用可能な国際法を常に遵守する必要性」を再確認している。 
 
 これに、2011年11月の国際赤十字赤新月運動の代表者会議における決議が続いた。同決議は、「法的拘束力ある国際取り決めを通じて、核兵器の使用を禁止し、完全に廃絶するための交渉を誠実に追求し、緊急性と決意を持って妥結させること」をすべての国家に対して強く訴えた。 

 その後、2012年5月に開かれた2015年NPT運用検討会議第1回準備委員会において、ノルウェーとスイスを中心とした16か国が、核軍縮の人道的側面に関する共同声明を発した。同声明は、「冷戦の終結した後でも、核による絶滅の脅威が21世紀の安全保障環境の一部であり続けていることに深い懸念を持つ」と述べている。 

また同声明は、「これらの兵器は、いかなる状況においても再び使用されてはならないということが極めて重要である……すべての国家が、核兵器を違法化し核兵器なき世界の実現を図る取り組みを強めなくてはならない。」2012年10月、この声明は、小さな修正を加えて、国連総会第1委員会に35の加盟国とオブザーバー国によって提出された。 

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

こうした広範な意見に沿うように、ICRCのピーター・マウアー総裁は、ノルウェー政府が主導して、「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が開かれたことを歓迎し、「核兵器は、軍事、技術、地政学的な観点からこれまで何十年にも亘って論じられてきたが、今回の会議以前に、核兵器が人間に与える影響を論じるために諸国が集ったことがないというのは驚きだ。」と語った。(原文へ) 

IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事: 
核廃絶国際キャンペーン、核兵器禁止への決意あらたに 
|NPT準備会合|長崎市長、核なき世界の実現を訴える 
核兵器廃絶のための「連帯」と「意志」(寺崎広嗣SGI平和運動局長)

まるで冷戦が終わっていないかのような核の警戒態勢

【ベルリンIDN=ジャムシェッド・バルアー】

国連軍縮研究所(UNIDIR)の最新の報告書が、20年前に終わったはずの冷戦が変わらず続いているかのように、米露両国が核戦力の多くを、数分以内に発射できる高度な警戒態勢下に置きつづけているという憂慮すべき結論を引き出している。 

ハンス・M・クリステンセン(米国科学者連盟[ FAS]核情報プロジェクトディレクター)とマシュー・マッケンジー(天然資源防衛評議会)の共著である報告書『核兵器の警戒レベルを下げる』によると、仏英と合わせると4か国で約2000発の核兵器が短い通告で使用可能な状態にある。これはその他の核兵器国が保有する核弾頭数を全て合わせた数よりも多い。

 「現在の警戒レベルは冷戦期の思考に深く根ざすものだが、現在および予測できる将来の安全保障上の必要を大きく上回っており、核兵器の占める主要な位置や役割を低減しようとの取り組みに反するものである。この警戒レベルは、ロシアの核戦力が警戒態勢下にあるので米国の核戦力も警戒態勢を保ち、そのまた逆も起こるという循環的で(しかし誤った)論理に基づくものである。別の言い方をすれば、核戦力がもし警戒態勢下になければ、核戦力を警戒態勢下に置く必要はなくなるということでもある。」と報告書は指摘している。 

報告書の著者らが指摘するように、国際社会は警戒態勢下に置かれた核弾頭数の削減を望んでおり、多くの退役軍人も、十分な配慮と計画をもってすればそれは可能だと論じている。 

「しかし、核を警戒態勢下に置く4か国の核関連当局は、警戒態勢を解除すればかえって不安定化を招く危険性があり、しかもそれを証明するのは困難かつコストが高すぎると主張している。こうした議論は、核態勢に変化をもたらそうとする力を抑え込むためにこれまでも使われてきた論理である。」と同報告書は指摘している。 

また同報告書によると、「戦略的抑止・グローバル打撃」(作戦計画8010-08)という米国の現在の核戦争計画の名称自体が、米核戦力の2つの任務を表しているという。 

この計画の「戦略的抑止」の部分では、敵国が米国およびその同盟国を攻撃することを抑止するための確実な報復能力を展開することに焦点があてられている。一方、「グローバル打撃」の部分では、抑止が機能しなかった場合も含めて、数多くの戦争シナリオが立てられている。 

この計画の基礎となっている「核兵器運用政策」(ドナルド・ラムズフェルド国防長官が2004年4月19日に署名した「NUWEP-04」)は、「米国の核戦力は、潜在敵の指導層が非常に重きを置き、戦後の世界において自らの目的を達するために頼りとなるような、重要な戦争遂行および戦争支援資産・能力を破壊する能力を持つもの、あるいは持っていると相手に思わせるようなものでなくてはならない」と述べている。 

上記の報告書によれば、核戦力の2つの任務は、オバマ政権が現在進めている「核態勢見直し」(NPR)後の動向にも反映されているという。ある米国防総省(ペンタゴン)高官の言によれば、ここで問題とされているのは、「敵を抑止するために核兵器を運用する指標となる概念は何であるか、そして、すでに始まってしまった核紛争の被害を最小限にして終わらせるための指標となる概念は何か?」ということである。実際のところ、現在の米国の核兵器計画は、抑止と戦争遂行という、互いに関係しているものの異なった目標を基礎としている。 

警戒態勢の解除 

報告書の著者らは、警戒態勢の解除を支持する人々に対して、この2つの目的を明確に区別するよう警告している。そうでないと、人々の懸念に応えるものとならないからだ。「核の警戒態勢を下げることに反対している人々の主張の中核をなしているのが、危機に際して効果的な非核手段を用いて事態のエスカレーションをコントロールする(Crisis Escalation Control)という考え方である。現在設定されている戦略戦争計画には、事態のエスカレーションをコントロールし勝利をおさめるという考え方に基づいて、敵の戦力とインフラに対する一連の限定的な攻撃オプションが埋め込まれている。」著者らによると、核の警戒態勢に競って復帰することがもっとも危険なのは、こうした非核手段による交戦が起こった後のこの段階であるという。なぜなら、警戒態勢によって、核兵器国による核の第一撃が促進されてしまうかもしれないからだ。 

報告書は、仮想的な事例として、ロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)が警戒態勢に復帰した場合を挙げている。これは、米国の核搭載潜水艦を即時に打撃する強いインセンティブをロシアに与えてしまう。両者が警戒態勢に競って復帰することで、敵方の戦略的核兵器の大部分をわずか数発の攻撃によって破壊してしまう危険性が生まれる。 

いかなる危機もエスカレートする危険性があり、警戒態勢下にある核戦力がそれを止められる保証はない。警戒態勢への復帰競争という主張は、空虚な理論にほかならない。第一に、今日の米国とロシアの核態勢は、危機にあって戦力を「生み出す」計画をすでに含んでおり、戦力を増強・分散し、警戒度と弾頭の搭載比率を上げることを想定している。 

完全なる警戒態勢解除の状態からの復帰ではないにせよ、こうした戦略的戦力増強計画は、もし実行されれば、打撃の準備段階と敵方に解釈される可能性が極めて高く、他方の核戦力増強を促してしまう。したがって、警戒態勢を解除された核態勢を再度警戒態勢に戻すことで安定を崩す効果があるとすれば、今日すでに安定は崩されつつあるのである。 

第二に、より望ましくない状況であった過去の事例とは異なって、警戒態勢復帰の競争を防止するように核戦力を構築することは可能である。実際、米国とロシアの戦略的核戦力は、安定的な抑止力となる全体構造が、脆弱で警戒態勢を解除された部分から構成されるように構築することができる。 

一方で、この報告書は、いったん始まった核紛争でもどうにか管理できるという考え方はきわめて疑わしいと指摘している。米露両核大国の間で、もし片方が交戦状態を終わらせるために有利な状況を作り出そうとして核兵器の使用を開始すれば、どちらかが引き下がると想定するのは、誤っているからである。 

また報告書は、「核戦力を警戒態勢下に置いていない小規模の核保有国に対して核の警戒態勢が維持されれば、そうした国をして、警戒態勢を取るか、あるいは、中国のケースに見られるように、警戒態勢下にある敵方の核戦力に対する脆弱性を減じようとしてより移動性の高い核体系の開発に走らせる危険性が十分あり得る。小規模な核兵器国は、こうした対応によって核大国に対して『勝利』することはできないが、限定的な数の核兵器によって相当な損害を相手に与えることは、なお可能だ。」と指摘している。(原文へ

翻訳=IPS Japan 

関連記事: 
米ロ核軍縮のペースが「鈍化」 
安定的な「核兵器ゼロ」は可能 
2030年までに世界的な軍縮の実現を目指して

核廃絶国際キャンペーン、核兵器禁止への決意あらたに

【オスロIDN=ラメシュ・ジャウラ】

ノルウェーは、28か国から成る北大西洋条約機構(NATO)の加盟国として米国の核の傘の下で保護されている。しかし、そのノルウェーからの大きな支援を得て、核兵器の違法化を目指す世界的な運動が生まれつつある。オスロで2日間の日程で開かれている「 ICAN市民社会フォーラム」でのことだ。 
 
 「核兵器の人道的影響に関する国際会議」に先立って、3月2日~3日にかけて約400人の若者がこのノルウェーの首都に集まった。しかし、5つの「公式の」核兵器国(同時に国連安全保障理事会の五大国[P5])でもある米国、ロシア、中国、フランス、イギリスは、協議の上で会議をボイコットし、各国当局や、ICAN(核廃絶国際キャンペーン)のフォーラムに参加した非政府組織を驚かせた。

ICAN Civil Society Forum
ICAN Civil Society Forum

 ICANのフォーラムは、エジプト、ナイジェリア、南アフリカ、ブラジル、チリ、コスタリカ、ドイツ、スウェーデンから若い活動家を選抜し、「核兵器の禁止」への幅広い世論の支持獲得を誓って、終了した。 

1945年に広島・長崎に投下された原爆の被爆者たちによる胸をえぐられるような証言を聞いて、参加者らの決意はさらに強固なものとなった。また、核兵器の投下が医療、社会、気候に与える影響、いわゆる「核の飢饉」の恐るべき道筋についての報告もなされた。 

アラン・ロボック博士は、インド・パキスタン間でほんの数発の核兵器による交戦があったとしても、大気中に多量の煤煙(ばいえん)が巻き上げられて、もっぱら北半球で太陽光を10年にわたって遮断し、地球上の気温を引き下げて「核の冬」を引き起こし、数十億人が飢餓状態に陥ると指摘した。 
 
 ノーベル賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)のアイラ・ヘルファンド博士は、核兵器がニューヨークに投下された場合の恐るべき帰結について報告した。爆心地から半径3キロ以内では、爆発から100万分の1秒で太陽の表面よりも気温が高くなり、その次の3キロでは生物のすべてが破壊され、さらにその次の3キロではすべての可燃物が瞬時に発火してすべての酸素を費消し、巨大な火の玉が出現するという。その外では被害の程度は軽減されるがそれでもきわめて甚大なものである。しかもこれらは、その後の放射線被害と気候への影響を抜きにした、直後の被害だけの話だ。 
 
「戦争と暴力のない世界」の国際スポークスパーソンであるトニー・ロビンソン氏は、科学者らによるモデルは、彼ら自身も言っているようにあくまでモデルであって、実際にはそれよりも被害は大きくなるであろうと指摘した。地球は「核の冬」を経験し、作物は何年も収穫できず、人類は絶滅の淵に追い込まれるであろう。彼らのモデルは、地球上にある1万9000発の核兵器のうちほんのわずかの部分が爆発したと想定しているにすぎないのだ。 
 
 ICAN運営委員会のメンバーであるトーマス・ナッシュ氏は、フォーラムの閉会にあたってこう述べた。「政府間会合はまだ始まっていないが、すでに我々は多くのことを成し遂げたように感じています。我々皆が言ってきたことは、各国政府は、核兵器がもたらす人道的帰結に焦点を当てるべきであり、130の政府がそのことを問題にするためにこの都市に集まってきている、ということなのです。」 
 
「これを実現したのは私たちです。会議がどんな結果になろうとも、そのことは記憶しておくべきです。P5を追い込んだのも私たちなのです。」 

ICAN英国支部の一部である「第36条」に勤めるナッシュ氏は、クラスター弾禁止に熱心にかかわった活動家でもある。クラスター爆弾禁止条約(CCM)はオスロで2008年に署名された。この条約の準備に尽力したノルウェーの国際的役割を示している。 

CCMは、クラスター弾を無条件に禁止し行動の枠組みを設定することで、クラスター弾によって引き起こされる人間への影響と民間人への容認されざる被害の問題に対処している。記録に残されているクラスター弾被害者のうち、3分の1は子どもだ。被害者のうち6割は、日常の行動の中で被害にあっている。 

市民社会の動員

ナッシュ氏は、ICANフォーラムは「大量破壊兵器を違法化し廃絶するための効果的な市民社会の動員の歴史における最新のステップ」のように感じられた、と語った。市民社会は、化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約によって、大量破壊兵器3種類のうち2つの禁止に成功している。また、核実験もすでに禁止されている。 

「これらの動きでは、こうした兵器が人間や健康に与える影響は容認できないという認識を基にして、市民社会が動員された」とナッシュ氏は付け加えた。彼は、ニュージーランドの高校生だった約20年前、フランスの団体「平和運動」が主催して、フランスが太平洋で行った核実験に抗議するために、活動家の代表団の一員としてフランスに渡航したときのことを振り返った。 

またフォーラムでは、ICANの共同議長で、「アクロニム軍縮外交研究所」の所長でもあるレベッカ・ジョンソン博士が、なぜ核兵器禁止条約が現実的で達成可能、実行可能なのかについて報告した。 

ノルウェーのグライ・ラーセン外務副大臣は、核兵器廃絶は夢物語ではなく、核軍縮は現実に生きる人間の問題だとフォーラムの参加者に対して語った。 

ベテラン俳優で、テレビドラマ「ザ・ホワイト・ハウス」で米大統領役を演じたこともあるマーチン・シーン氏は、もしマハトマ・ガンジーマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が生きていたなら、彼らもICANに加わったであろうとフォーラムで語った。シーン氏は慈善事業に多くの時間と金銭を費やし、人道的な活動によって2つの賞を受けている人物だ。 

「もし核兵器を禁止できないとすれば、それは私たちがそれが可能だと信じられなくなった時だ」というナッシュ氏の言葉は、フォーラム参加者の圧倒的な見解を表しているようにみえた。 

Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun

またナッシュ氏は、「今後数週間、数か月で私たちが一致団結し、尊敬の念を持って包括的な運動を作り上げることができるならば、私たちは、核兵器禁止の交渉プロセスのただ中に自らの姿を見出すことになるでしょう。いったんそのプロセスが始まったら、それを止めるのは非常に難しいでしょう。」と語った。 

ICANの代表らは、新しい核兵器禁止条約に向けて、各国政府や国際赤十字赤新月社連盟などと協働していくことになると述べた。この文脈で、ICANのプロジェクト・マネージャーであるマグナス・ロボルド氏は、東京に本部を置く在家仏教組織「創価学会インターナショナル」(SGI)の池田大作会長による2013年の平和提言を歓迎した。 

池田会長は、平和提言の中で、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を発足させ、非人道的であり、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを年内に開始させること求めている。 

 SGIは、「あなたの大事なすべてのもの―核兵器なき世界に向けて」と題する展示をフォーラムと同時に開催している。この展示は、SGIとICANが共同で制作したもので、IPPNWの第20回世界大会が2012年8月に広島で開かれたのに合わせて開始された。 

12の視点から核兵器に関する40枚のパネルが展示されている(12の視点とは、人道、環境、医療、経済、人権、エネルギー、科学、政治、宗教、ジェンダー、世代、安全保障)。 

SGIの寺崎広嗣平和運動局長は、1957年9月8日に創価学会の戸田城聖第2代会長が発した「原水爆禁止宣言」の55周年を記念するという意味合いもこの展示には含まれている、と語った。(原文へ) 

翻訳=INPS Japan 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事: 
2030年までに世界的な軍縮の実現を目指して 
「地球破滅の日」を回避する努力 
|軍縮|「核兵器をターゲットに」

|スリランカ|出稼ぎ問題|体に打ち込まれた釘は「幸運にも」24本で済んだ

【コロンボIPS=アマンタ・ペレラ】

スリランカ南部マタラ出身のラハンダプレゲ・アリヤワティさん(52)は、サウジアラビアにおける自分の体験は比較的軽く済んでよかった、と思っている。体に打ち込まれた釘が幸運にもわずか24本だけで済んだからだ。 

彼女は、2011年初めに故郷に家を建てるのを夢見てサウジアラビアに渡航し、家政婦として働いた。しかし5ヵ月後、体のあちこちに生々しい傷を負って帰国することになった。彼女は雇い主から懲罰として熱した鉄釘を皮膚に打ち込まれていたのだ。 

故郷の自宅前で取材に応じたアリヤワティさんは、「あの程度で済んだのは幸運だと思うわ。もっとひどい目にあっていた可能性は十分あるのだから。」と語った。

彼女が「幸運」だと思ったのは、もっとひどい事例もあるからだ。今年1月10日、同じスリランカ出身で、サウジアラビアで家政婦をしていたリザナ・ナフィークさん(25)が、家族やスリランカ当局への事前通知さえないまま、収監されていたサウジアラビアで斬首刑に処せられた。世話をしていた乳児を誤って死なせた罪であった。 

彼女は幼児の扱いについてなんの訓練も受けていなかったが、生後4か月の赤ちゃんの世話をさせられることとなった。そしてその幼児は、ナフィークさんが哺乳瓶でミルクを飲ませている時に誤ってのどを詰まらせ、死亡してしまったのだ。人権活動家によると、ナフィークさんは、適切な裁判や領事館の接見、さらには法的な支援も一切受けることなく有罪となり、2005年から刑務所に収監、2007年からは死刑囚として過ごしていた。 

「私も同じような目に遭っていたかもしれない。」と、未だに体内に6本の金属片が埋まっているというアリヤワティさんは語った。 

ナフィークさんは、17才の時に仕事の斡旋業者が渡した偽造パスポートでサウジアラビアに送られていた。ナフィークさんの家族や彼女の事情を知る人々によると、仕事斡旋業者が貧困に苦しんでいる家庭の事情につけこみ、若い娘たちをサウジアラビアに家政婦として送り出しているという。 

ナフィークさんの故郷スリランカ北東部(トリンコマリー地区)ムトゥール村にいる家族は、娘に起こった不幸を運命として受け入れて、あきらめているようだった。「私たちに何ができるでしょう?これ以上何もできない状況で、私たちは前に進んでいくしかないのです。」と父のアボドゥル・ムハンマド・ナフィークさんはIPSの取材に対して語った。 

研究者によると、こうした家政婦自身や家族が抱いている無力感は、辺鄙な村々を廻ってナフィークさんのような貧困家庭の娘たちを探しに来る仕事斡旋業者らによって、巧みに吹きこまれているという。 

「家政婦として出稼ぎに送り出される少女たちや家族は、娘は何の保護も無い外国にいるのだから、何か起こってもしかたがない、と信じ込まされているのです。」と、スリランカの人権擁護団体「法と社会トラスト」のミユル・グナシンゲ氏は語った。 

一方グナシンゲ氏は、同じサウジアラビアに出稼ぎ労働者を送り出す国でも、サウジアラビア政府と2国間協定を締結して労働者の権利保護を確保している事例を挙げて、スリランカは移住労働者の権利擁護について立ち遅れている点を指摘した。「フィリピンがよい事例です、同国政府はサウジアラビア政府がフィリピン人労働者の権利を保護する2国間協定の締結に同意するまで、一年近く労働者の派遣を差し止めたほどですから。」と語った。 

こうした2国間協定における合意事項は、労働者の最低賃金の保証にとどまらない。労働者の就労時間や生活環境、さらには労働者の諸権利についても規定されている。また、こうした協定は、全ての出稼ぎ労働者が特定の契約内容や受入国の部族法に縛られるのではなく、平等に処遇されることを保障するものである。スリランカ政府は、このような協定をバーレーンとヨルダンとは結んでいるが、サウジアラビアとは未締結のままである。 

ナフィークさんの斬首刑を契機に、スリランカ国内でもサウジアラビアにおける同胞の境遇に関する批判と関心が高まったが、スリランカ政府は、未だにサウジアラビア政府との2国間協定に向けた交渉を開始する意図を明らかにしていない。 

ナフィークさんの死刑執行から2週間後、ディラン・ペレラ海外雇用相からの提案によって、スリランカ政府は、サウジアラビアに送り出すメイドの年齢下限を25歳に引き上げる閣議決定を行った。その他の中東諸国への出稼ぎ年齢下限は、従来どおり23歳である。 

また出稼ぎ労働者らには3週間の合宿研修を受講して政府が発行する家政婦認定書を取得することが義務付けられている。 

しかしグナシンゲ氏は、「この措置にはあまり意味がない」と指摘したうえで、「たとえ25才になっていたとしても、それまでに十分な学校教育を受けておらず、英語も話せず、電気器具等の取り扱い方も分からない状況では、また同じような問題が起きてしまうでしょう。」と語った。 

グナシンゲ氏はそのうえで、スリランカ政府は研修をもっと重視し、職務に十分適応できる有資格労働者を、より高い賃金で送り出すべきだ、と語った。 

前出のアリヤワティさんの場合、出国前に政府が定めた語学を含む3週間の合宿研修を受けていたが、現地では雇い主とのコミュニケーションをうまくとることができず、家庭用電気製品の使い方もよくわからなかったことから、怒った雇い主によって釘を打ち込まれるという暴力を受けたのだった。 

グナシンゲ氏は、「政府は仕事斡旋業者の活動を規制する法律を厳格化するとともに、現状では労働者の海外雇用促進のみが取り扱われている海外雇用庁法を改正して、労働者の権利確保を項目に加えるべきだ。」と主張するとともに、「もしこうした数百万人の出稼ぎ労働者に投票権が与えられていたとしたら、スリランカの国会議員らは、こうした労働者のニーズにもっと注意を払うようになるだろう。」と語り、スリランカ政府の対応の鈍さを嘆いた。 

こうしたスリランカ政府の対応の鈍さの背景には、スキルの低さや低賃金の問題(家政婦の中には月給僅か100ドル程度のものもいる)を抱えながらも、こうした出稼ぎ労働者からの送金が同国で最大の黒字をもたらしている現実がる。今年は、海外からの送金総額が50億ドルにも達するとみられている。 

海外で出稼ぎ労働に従事しているスリランカ人の総数は、約200万人にのぼるとみられている。そのうち、少なくとも80万人が家政婦で、彼女たちの大半が中東湾岸諸国で働いている。サウジアラビアは、依然として最も人気ある出稼ぎ先である。 

しかし、2011年末以降、移住労働者への暴力がメディアを通じてスリランカ社会に知られるところとなり、サウジアラビアへの出稼ぎに躊躇する労働者もでてくるようになった。こうした事態に、サウジアラビアでの就労に同意する家政婦に800ドルのプレミアムを支払う仕事斡旋業者もでてきている。 

ナフィークさんの故郷ムトゥール村では、女性たちが政府に対してサウジアラビアへの家政婦派遣を禁止するよう求める署名活動を行っていた。 

「人々は、ムトゥール村の者たちは処刑されたリザナ・ラフィークさんの件について口を噤んでいると思っています。でも実際は違います。私たちはこの件について、正義がなされたと思っていません。私たちはリザナの死を単なる統計に一部にされてしまうことを決してよしとは思っていません。」と、同村の民生委員モハメド・ジハードさんは語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 

関連記事:
|米国|ゲスト労働者に奴隷のような扱い 
|スリランカ|茶農園の労働力不足

政治的に悪化する核をめぐる国際環境

【国連IPS=タリフ・ディーン

核をめぐる国際政治環境はますます悪化しつつあり、脅しと非難、国連安保理決議への明白な反抗であふれている。 

長く待ち望まれている、フィンランドが主催予定の中東非核兵器地帯化に関する国際会議の実現は、未だ程遠い状況にある。大量破壊兵器の廃絶を目的とした核兵器禁止条約(NWC)にしても然りである。 

そして2月12日、北朝鮮が国連の警告を公然と無視して3回目の核実験を強行した。一方、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、イスラエルの核戦力が西側世界の暗黙の承認を得ている中東において、イランは核兵器を保有する権利を留保している、との認識を示した。

ハメネイ師は、「核兵器は廃絶されなければならない。我々は、核爆弾の製造を望んでいない。しかし、もし我々がそう考えず、それを持とうと決めたならば、いかなる勢力も我々を止める事は出来ないだろう。」と警告した。 

「核兵器なき世界」という究極の目標が遠ざかる中、東京に本部を置く在家仏教組織のリーダーが先週、2015年に国連や他の核保有国、非核地帯の代表などが一堂に会する「核サミット」の開催を開催を呼びかけた。 

Photo: SGI president Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

創価学会インタナショナル(SGI)池田大作会長は、広島・長崎への原爆投下から70周年にあたる2015年に開催予定のG8サミット(主要国首脳会議)に続いて、「核兵器なき世界」に焦点を当てた「拡大首脳会合」を開催するよう提案している。 

「2015年のG8サミットは、こうした核サミット開催に向けて適切な機会となるでしょう。」と池田会長は述べている。 

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のティム・ライト氏は、IPSの取材に対して、ICANは池田会長らの提案を支持し、核兵器を禁止する条約の締結に向けたプロセスを今年中に開始すると語った。 

「我々は、核同盟の一翼を担う国も含め、すべての国に対して、こうしたプロセスに建設的に関わるよう強く求めます。」とライト氏は語った。 

またライト氏は、このプロセスには市民社会組織の関与が不可欠と指摘したうえで、「核兵器を世界的に禁止することは、可能かつ必要であり、また、緊急の課題なのです。」と語った。 

さらにライト氏は、「このような兵器が存在する限り、偶発的であろうと意図的であろうと使用される可能性は現実に存在します。そしてひとたび使用されれば、それが人間や環境に与える被害は甚大なものになるでしょう。」と主張した。 

池田会長は、1月26日に発表した平和提言「2030年へ 平和と共生の大潮流」の中で、3つの具体的な提案をしている。 

第一に、2015年以後に国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)などのアジェンダの主要テーマの一つに、軍縮を当てることを提案している。 

とくに、世界全体の軍事費を2010年の軍事費を基準として半減させるとともに、核兵器の廃絶と、国際法の下で非人道的とみなされるその他のあらゆる兵器を全廃することを提案している。 

そしてこれらの目標は、2030年までに達成すべき、と池田会長は主張している。 

第二に、核兵器禁止条約(NWC)の交渉プロセスをスタートさせ、2015年を目標に条約案の合意を進めることを提案している。そして、日本は、核による被害を経験した国として、NWC実現に向けて積極的な役割を担うべき、と池田会長は主張している。 

さらに、北東アジアに「非核兵器地帯」を設置するための信頼醸成に努める中で、日本は、グローバルな核廃絶の実現に向けての環境づくりに貢献すべきだとしている。 

「この目的を達成するために、我々は、核兵器の非人道性を柱としつつ、核兵器にまつわる多様な角度からの議論を活発化させながら、国際世論を幅広く喚起していかなければなりません。」 

「例えば、2015年のホスト国であるドイツと交代する形で、2016年の担当国である日本がホスト役を務め、広島や長崎での開催を目指す案もあるのではないか」と池田会長は述べている。 

第3に、2015年のG8サミットに合わせて、国連や他の核保有国、非核兵器地帯の代表などが一堂に会する「『核兵器のない世界』のための拡大首脳会合(核廃絶サミット)」とするよう提案している。 

池田会長は、過去の平和提言においては、核廃絶サミットを実現する手段として、2015年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の広島や長崎での開催を提唱してきた。 

しかし今回の平和提言では、190か国もの代表を集める実務面の問題を考えると、慣例通り、ニューヨークの国連本部でNPT運用検討会議を開くことになるかもしれない、と指摘したうえで、「その場合、NPT運用検討会議の数カ月後に行われるG8サミットの場が、世界の指導者がこの重大な問題に取り組む絶好の機会を提供することになるだろう。」と述べている。 

また池田会長は、SGIが長年に亘って核兵器の問題に取り組んできた理由について、核兵器の存在自体が「生命の尊厳」に対する究極の否定であるという認識に基づいている、と指摘するとともに、その目的について次のように述べている。 

「核兵器の問題というプリズムに、生態系の健全性や、経済開発、人権等さまざまな観点から光を当てることで、『現代の世界で何が蔑にされているのか』を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること―そして、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』を創出することにあります。」(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC. 

関連記事: 
非核中東に向けた機会は失われた 
北朝鮮、3回目の核実験で国連に反抗 
核廃絶を求める広島・長崎

|UAE|科学者グループ「蜂蜜が癌細胞の増殖を抑制する」と発表

【アブダビWAM】

アル・アインを拠点とするUAE大学の研究グループが、マヌカ蜂蜜が乳房、皮膚、大腸にできた癌性腫瘍の増殖を効果的に抑制することを発見した。 

研究者らは動物の癌腫瘍を対象にした臨床研究(5年以上行なっている)において、化学療法と並行してマヌカ蜂蜜を静脈投与した結果、概ね被験動物の生存率に改善が見られた。」と2月25日、地元英字日刊紙が報じた。

 蜂蜜には、従来から薬効効果(とりわけ抗菌作用や傷を治癒する作用、様々な肌のトラブルを緩和する作用等)があることが知られている。「マヌカ蜂蜜にはかなり以前から、抗菌作用に加えて抗炎症作用や創傷治癒促進作用があることが知られています。しかし、癌細胞に対する潜在的な効果については、詳細な研究はされてきませんでした。」とUAE大学医療保健学部医微生物学・免疫学科長のバゼル・アル・ハマディ教授は語った。 

 アル・ハマディ教授は、「チームは研究に3種類の異なる癌細胞(乳癌、皮膚癌、大腸癌)使用し、僅かな量のマヌカ蜂蜜(最少で1%程度)を投与するだけで癌細胞の成長を最大70%阻止することができることを立証しました。」と語った。 

同教授によると、研究者らは、この臨床結果を受けて、癌抑制機能に関するマヌカ蜂蜜の分子基盤を解明すべく、様々な実験に着手してきたという。「私たちはこの臨床研究の結果から、マヌカ蜂蜜は癌細胞に直接的に働きかけてアポトーシス(プログラムされた細胞死)を引き起こす決定的な証拠を得ました。」とアル・ハマディ教授は語った。 

アポトーシスとは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のことである。 

「マヌカ蜂蜜がもつ効能は、非常に魅力的な研究分野といえます。私たちはこの研究成果が、特定の種類の癌に対して新たな治療方法を開拓する可能性を感じています。」とアル・ラマディ教授は語った。 

また、この研究からマヌカ蜂蜜には、癌患者に化学療法が適用された際に問題となる副作用を軽減する特性が備わっていることが明らかになっている。 

ラマディ教授率いる研究チームの成果は、最近著名な国際科学雑誌「Plos」に掲載された。チームは、タワン病院腫瘍科及び外科との協力のもと、引き続き研究を進めている。 

タワン病院は、国内で最も包括的な腫瘍治療施設を備えた医療機関で、癌患者の最大8割が登録している。 

マヌカ蜂蜜は、ミツバチがニュージーランドの大部分とオーストラリア南東部に自生するマヌカの木(学名:Leptospermum Scoparium)から採集した花の蜜を巣の中で加工・貯蔵したものである。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

関連記事: 
|イラク|子ども達は実験用マウスだったのか

|米国|民間シンクタンク「イラン核武装化でもサウジアラビアは追随しない」

0

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

著名なシンクタンクが19日にワシントンで発表した報告書で、米国政界の一般通念に反して、イランの近隣諸国、とくにサウジアラビアは、イランが核兵器を取得してもそれに追随することはないだろうとの見通しを示した。 

『核の王国:もしイランが核兵器を作ったら、サウジアラビアはそれに続くか?』と題された49ページの報告書は、サウジアラビア政府は「イランの核兵器に対抗するために、何らかの形の核抑止力を取得することに強い動機を持っている」と述べている。 

しかし、自ら核開発に走ったり、あるいは、(パキスタン政府との緊密な関係にもかかわらず)同国から核を取得したりするよりも、はるかに高い確率で米国の核の傘の下での庇護を求めることになるだろうという。報告書を出したのは「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)で、バラク・オバマ政権の国防総省や国務省に多くの人材を輩出している団体である。

 
主著者のコリン・カール氏(オバマ政権第1期で中東政策担当のトップを務める)は、「サウジアラビア政府は、パキスタンあるいは米国という外国から提供される核による安全の保証を求める一方で、現在の通常兵器による防衛のさらなる攻撃的な強化と、原子力の民生利用というヘッジ戦略を追求することになろう」と言う。 

「そして最終的には、パキスタンの核よりも米国の核の保証の方が、サウジアラビアにとってより確実で魅力的なものになるだろう」と報告書は述べている。報告書の著者にはメリッサ・ダルトンとマシュー・アーバインも名を連ねている。 

イランが核兵器かあるいは「最後の一線を越える能力」を取得した場合には中東の他の諸国も核武装化に走るという、イスラエルや歴代の米国政権が固く信じていた通念に挑戦したこの新しい報告書が出された今、私たちは重要な局面にいる。 

7か月の中断を経て、イランといわゆる「P5+1」(米国、イギリス、フランス、ロシア、中国にドイツ)は2月27日にカザフスタンでイランの核問題に関する協議を再開する。ただ、6月にイランの大統領が交代になるため、大きな進展があるとは考えづらく、事態が打開される見通しは薄いと多くの識者はみている。 

しかし、もし今回の交渉で進展が見られないようであれば、イランに対する強硬策を求める圧力がオバマ政権にかかるであろう。さらなる制裁措置と、軍事力行使の脅しの信ぴょう性を増すことで、イランが核兵器を取得することを「防止」するという既存の方針によってそれが正当化される可能性が高い。 

強力な「米イスラエル公共問題委員会」(AIPAC)がワシントンで3月3日から5日にかけて開催予定の年次政策会議では、これが中心的なメッセージになりそうだ。米議会のほとんどの政治家は会議に参加するとみられている。 

イスラエルと米国は、核武装したイランは「容認できない」と長らく主張してきた。なぜなら、彼らの見方では、ソ連に対して適用された封じ込め戦略の中心的要素であった「抑止」が、イランに対しては効きそうもないからだ。 

イスラエルの指導者の中には(とくにベンヤミン・ネタニヤフ首相)、イランはその宗教的な「メシア信仰」によって抑止不可能な存在になっていると考える向きもある。 

イスラエルと米国政府はまた、イランが核兵器を取得すれば連鎖反応を引き起こすと考えてきた。中東におけるイランのライバル国であるトルコ、エジプト、そしてとりわけサウジアラビアが、イランを追いかける火急の必要性を感じ、世界でもっとも紛争含みでエネルギー資源の豊かなこの地域において一触即発の「核の火種」が生まれる、というのである。 

イスラエル・ロビーやネオコンのシンクタンク・識者、不拡散タカ派がとくに主唱してきたこの議論は、ここワシントンでは常識になりつつある。しかし、前述のCNAS報告書は、これは「おそらく間違い」だと指摘している。 

CNASのこの最新の研究では、オバマ政権の見方と同じく、「中東に核兵器国が複数生まれるリスクはどんな小さなものであっても避けるべき」であるから、イランの核武装防止を政策目標にしつづけるべきであると強調されている。 

しかし、「同時に、(場合によっては軍事力行使も含む)予防措置が失敗した場合に備えて、サウジアラビアに核による安全の保証を供与することも含め、抑止と封じ込めの仕組みを作る準備を密かに開始すべきだ」と報告書は言う。 

カール氏とCNASによるこの勧告は、口では「予防を図る」と言っておきながら、実際はムスリム世界でのあらたな戦争に米国を引きずり込みかねない行動をオバマは避けようとしているのではないかとの疑いをネオコンやイスラエル・ロビーの間に広げることになろう。 

報告書はもっぱらサウジアラビアに焦点を当てているが、エジプトとトルコについても、イランの核兵器取得に対して自前の核兵器計画によって対応するとは見られない、と論じている。エジプトの場合は、イランを「生存上の脅威」とみなしておらず、他に対応すべき問題が多いためであり、トルコの場合は、とりわけ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として信頼性の高い核抑止力をすでに手にしているためである。 

他方で、サウジアラビア政府の場合は(すでに一部の指導者は、イランの核武装化に対して同様の行動をとると示唆しているが)、イランが、核の盾に隠れて、直接あるいは代理集団を通じて、サウジアラビアに対してより攻撃的に出てくるのではないかという不安が実際に存在する。 

しかし、報告書は、これらの恐怖があっても、核武装化への主要な「逆インセンティブ」を乗り越えることにはならないだろう、と結論している。「逆インセンティブ」とは例えば、イスラエルからの攻撃を誘発するリスク、米国との重要な安全保障上の関係が断絶する可能性、自国の国際的な評判が低下したり、国際的な経済制裁の対象になる可能性などである。 

米国も、サウジアラビアがイランの後を追わないように積極的なインセンティブを与える可能性がある。サウジアラビアに対して核の安全保証を供与するだけではなく、核計画に厳格な制限を課すことを条件に民生核協力を強化する用意もある。 

米国はまた、マイナス・プラス双方のインセンティブを通じて、エジプトと同じようにイランを生存の脅威とみなしていないパキスタンに対して、サウジアラビアに兵器を移転しないよう圧力をかけるかもしれない。 


CNAS報告書によれば、地域のある一国が核兵器を取得した場合にその隣国が同じ反応を示すことで核が拡散するという予想は、たいてい誤っている。 

また報告書では、中国が核兵器を実験してからの50年間に核兵器を取得したのはイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮の4か国だけであり、他の7か国が、サウジアラビアがおそらく直面するであろう「逆インセンティブ」を一部の理由として、核武装化を放棄するか、あるいは高度に発展した計画を中止している。 

核軍縮を求める団体「プラウシェアズ財団」のジョー・シリンシオーネ代表は、IPSの取材に対して、「私は以前、北朝鮮やイランが核武装化したらドミノ的な拡散が起こると考えていました、歴史的証拠を無視することはできません。」と指摘したうえで、 

「北朝鮮は2006年に核実験を行ったが、それに追随する隣国はありませんでした。つまり、核兵器の使用は抑止可能であり、その拡散は封じ込められるのです。こうして世界的な[核不拡散]体制は、重大な衝撃を受けつつも生き延びてきたのです。」と語った。 

|カンボジア|疲労困憊してもマッサージ嬢らに休息なし

【プノンペンINPS=ミシェル・トルソン】

人口の3割以上が貧困線(一日当たりの所得が1ドル)以下の生活を送るこの東南アジアの国(人口1400万人)では、労働者は厳しい現実に直面している。正規雇用を見つけるのは難しく、多くの人々が、最低賃金の規定もなく労働法もほとんど遵守されない「インフォーマルセクター」での就労を余儀なくされている。 

先日、高級スパのマッサージ嬢らが起こした労働争議をきっかけに、労働者の人権が最も侵害されやすい分野のひとつとみられている「娯楽産業」の実態に光があてられることになった。

 それまでカンボジアの「娯楽産業」は、秘密のヴェールに包まれていたが、昨年10月にノロドム・シアヌーク国王が崩御した際に、「『アジアデースパ』に勤務する5人のマッサージ嬢が、国王に最後の別れをするために休憩をとりたいと申し出でたところ拒否された」との報道を契機に、急遽この産業の実態にスポットライトがあてられることとなった。 

「マッサージ嬢らは、2012年10月15日に国王崩御を伝えるニュース報道に接して、『亡き国王を悼むために数時間の休憩時間をほしい。』と申し出ました。彼女らは、週6日、朝10時から夜10時までの12時間勤務に従事しているのです。」と娯楽産業に従事する労働者団体「カンボジア食品・サービス労働組合連盟(CFSWF)」のモラ・サル理事長は語った。 

しかしスパのオーナーはこれを拒否。亡き国王を追悼するために数百万人の国民がカンボジア各地から首都プノンペンに続々と集まる中、結局、彼女らは群集に加わることにした。ところが、翌日彼女らが出勤してみると、既に解雇されており、最後の月に働いた分の支払いも行われないと知らされた。 

労働争議を調停する任務を負った政府機関「仲裁評議会」が、スパオーナーによるカンボジア労働法違反を認める判決を下したにも関わらず、スパ側はこの判決に従う意向を示さなかった。 

 そこで解雇されたマッサージ嬢らと、CFSWF、その他の娯楽産業に従事する労働者らは、1月11日から18日にかけて、拡声器、看板、チラシ(英語及びクメール語)などを持ち寄り、外国人顧客を対象とした高級スパとして有名な問題の施設の前で抗議集会を開いた。そしてこの集会は、この事件に対する地元メディアの注目を集めることとなった。その結果、5人のマッサージ嬢には、前月分の給与、年次休暇分の取り分、及び解雇手当(勤続年数に応じて300ドルから1000ドル)が支払われた。 

これはマッサージ嬢が勝ち取った判決としては画期的なものだが、サル理事長によると、「まだまだ始まりに過ぎない。」という。CFSWFでは、この最新の訴訟に加えて、カンボジア北西部シエムリアップ州にある大型マッサージパーラー「アラスカマッサージ」で働く15名のマッサージ嬢が起こした訴訟も支援している。この韓国人所有のマッサージパーラーでは、約200人の従業員が1月あたり僅か50ドル(日当2ドル程度)の低賃金で労働に従事しているという。 

商業的性労働と「娯楽産業」の違いは紙一重 

カンボジアのマッサージ嬢らをとりまく労働環境についてはほとんど知られていない。メディアは長らく、ビール販売員、ホステス、カラオケ店の歌手やダンサーなど、カンボジアの娯楽産業に関する報道を行ってきたが、そうした記事の大半は、マッサージパーラーではなくむしろ地方のナイトクラブやビアガーデンで働く女性を取材したものだった。 

しかし実際のところ、カンボジアには、女性が性労働者として搾取されてきた長い歴史がある。そして性産業に取り込まれる女性たち(大半が正規の教育を受けていない女性たち)は、男らしさと女性の貞操観念を重視するこの国の文化が生み出した二重基準の被害者でもある。 

グエルフ大学(カナダ)の研究者イアン・ルーベック氏は、カンボジアの若い男性が性産業に安らぎを求める傾向にある一因として、1975年から79年のポルポト時代に、生きていれば子どものために見合い縁組をしたであろう両親を殺害された影響を指摘している。ポルポト時代に殺害された犠牲者は75万人~300万人と推計されている。 

また一方でルーベック氏は、独身・既婚男性の性産業における買春経験(全体の25%)を調査した政府統計を引用して、既婚男性も売春宿に頻繁に通っている点を指摘した。 

カンボジアでは2007年12月に議論を呼んだ「人身取引・商業的性的搾取取締法」が議会を通過し、2008年には国内各地の売春宿が閉鎖された。しかし行き場を失った性労働者らが、大挙して娯楽産業に移っていったため、影の多い娯楽セクターが急成長することとなった。国際労働機関(ILO)の調査報告書によると、プノンペンで売春を行っていたマッサージ嬢の数は2008人には推計494人であったのが、翌年末には2424人と390%の増加を示している。また同報告書によると、ビアガーデンやビールの売り子として働いている人々の人数も、マッサージ嬢の場合と並行した動きを記録している。 

この調査結果は、娯楽産業の仕事は性労働とは区別されるものだが、両者の間に重複している部分があることを明白に示している。そして、娯楽産業の女性たちを性労働に押しやる背景には、正規労働から得られる所得が極めて低い(低賃金)問題と、顧客や雇用主が性的なサービスを求める職場のプレッシャーが存在する。結局、生活費の不足分を埋める必要性から多くの女性従業員がこのプレッシャーに屈することになるのである。 

記者が取材した女性たちの多くが、低賃金に加えて、農村部の親戚を支援する必要性から、結果的に自らの基本的な必要を満たすことさえままならない経済状態におかれていることを告白している。 

ルーベック氏はIPSの取材に対して、「ビールの売り子、ホステス、マッサージ嬢、カラオケ店の歌手など1800人に取材をした結果、雇用主が地元娯楽施設の所長か世界的なビール会社か地元の代理店かの違いに関わりなく、常に極めて低い賃金しか支払われていない実態が分かりました。」と語った。 

またルーベック氏は、2002年から1012年までの調査結果を網羅した最新の報告書を示しながら、娯楽産業の労働者に払われている平均賃金は、彼女たちの基本的な必要を満たす最低資金の半額程度に過ぎないため、常に残りの40%から60%の収入を顧客からのチップに頼らざるを得ない構造になっている、と説明した。このルーベック氏の研究結果は、売春宿が閉鎖される前から、こうした労働者達に性的サービスを迫る圧力が既に存在してきたことを物語っている。 

性労働者の共同体「連帯のための女性ネットワーク(WNU)」のピセイ・リー代表は、IPSの取材に対して、「カンボジア人男性を顧客にする農村部の低価格帯のマッサージパーラーにおける通常のマッサージサービス料金は7000~10000リエル(1.75~2.5ドル)です。もしマッサージ嬢が場所を店外移して性的サービスを提供する場合、追加料金として5ドルを請求します。」と語った。 

リー氏によると、性労働者らは、売春行為が違法とされたため、このようなマッサージパーラーのような娯楽施設を顧客獲得の窓口として利用しているという。「ちなみに、こうした娯楽施設を利用するのは大半がカンボジア人男性で、一方、外国人の場合は、マッサージパーラーよりも、バーやナイトクラブでフリーランスの売春婦を誘って買春しています。」とリー氏は語った。 

一方、高級スパの場合、外国人の顧客を対象にする傾向があり、サービスも専ら治療的なマッサージサービスに限定されている。従って、このような施設で働くマッサージ嬢をとりまく労働環境は比較的恵まれているといえる。 

サル理事長は、「(5人のマッサージ嬢が労働争議を起こした)アジアデースパの場合、マッサージサービスの料金は1回につき8ドルから18ドルで、マッサージ嬢らはチップを含めて各顧客から直接支払いを受けることができます。つまりこの店の月収70ドルは賃金レベルでは最高級のカテゴリーになるのです。」と語った。(原文へ) 

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩 

2030年までに世界的な軍縮の実現を目指して

0

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】 

著名な仏教指導者である池田大作氏は、2015年に「拡大首脳会合」を実現させ、「核兵器のない世界」への潮流を決定づけるとともに、2030年に向けて世界的な軍縮の流れを巻き起こす出発点にすることを呼びかけています。 

そのうえで、池田氏は、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を発足させ、非人道的であり、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを年内に開始させることを求めています。 

「そこで今後、重要なカギを握るのが、核保有国による“核の傘”に自国の安全保障を依存してきた国々の動向です」と、東京に拠点を置く世界的な仏教団体である、創価学会インタナショナル(SGI)の池田会長は、記しています。

 大量破壊兵器である核兵器の不拡散と廃絶を求める共同声明には、「非核兵器地帯に属する国々や、非保有国で核廃絶を求める国々などと並んで、NATO(北太平洋条約機構)の加盟国として“核の傘”の下にあるノルウェーデンマークも加わっています。しかも両国は、声明づくりにも関わってきました。」と、池田SGI会長は歓迎しています。 

一方、米国の“核の傘”の下にある日本は、この重要な共同声明の署名を拒否しています。それに対し池田氏は、「非人道性の観点から核兵器の禁止を求めるグループに一日も早く加わり、他の国々と力を合わせて『核兵器のない世界』を現実のものとするための行動に踏み出すべきである」と訴えています。 

2030年へ平和と共生の大潮流」と題する2013年の平和提言の中で、池田氏は、「平和と共生の地球社会の建設に向けた2030年へのビジョン」を展望しています。 

1957年に発表された、創価学会・戸田城聖第二代会長の「原水爆禁止宣言」を原点に、池田氏は、1983年以来毎年平和提言を発表しており、平和と人間の安全保障の実現に向けて地球社会が直面する様々な挑戦と、仏教の基本概念との相互の関係性に焦点を当てています。これまでの平和提言のなかで、池田氏は、教育改革、環境問題、国連の在り方、核兵器の廃絶についても言及してきました。 

核兵器の人道的な影響に関する国際会議が、ノルウェー外務省の主催で、本年3月4、5日の両日、オスロで開催されます。(これに先立ち、世界的な核兵器の禁止を求める市民社会フォーラムも開催されます。)さらに9月の国連総会では、「核軍縮に関するハイレベル会合」が開催されます。池田氏の2013年の平和提言は、これら二つの重要な行事に至る過程で発表されています。 

池田氏の2013年の平和提言では、世界全体の核兵器関連予算が「保有と維持だけでも重大な負荷を世界に与え続けている」ことに言及されており、「その莫大な資金が各国の福祉・教育・保健予算に使われ、他国の開発を支援するODA(政府開発援助)に充当されれば、どれだけ多くの人々の生命と尊厳が守られるか計り知れません。」と記しています。 

背景 

この最新の平和提言の背景には、2010年のNPT(核不拡散条約)運用検討会議を契機に、非人道性に基づいて核兵器を禁止しようとする動きが芽生えていることがあります。 

NPT再検討会議では、「核兵器のいかなる使用も破壊的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」との一文が最終文書に盛り込まれました。 

以来、2011年11月に国際赤十字・赤新月運動の代表者会議で、「すべての国家に対し、法的拘束力を持つ国際条約によって、核兵器の使用禁止と完全廃棄を目指す、誠実かつ緊急で断固たる条約の交渉」を求める決議が採択されました。 

その後、2012年5月には、次回2015年のNPT再検討会議に向けて行われた準備委員会の場で、ノルウェーやスイスを中心とした16カ国による「核軍縮の人道的側面に関する共同声明」が発表されました。この共同声明では、「冷戦の終結後においてすら、核による絶滅の脅威が、21世紀における国際的な安全保障の状況の一部であり続けていることは、深刻な懸念」との認識が示されています。 

またこの声明では、「もっとも重要なことは、このような兵器が、いかなる状況の下においても二度と使用されないことであり、すべての国家は、核兵器を非合法化し、核兵器のない世界を実現するための努力を強めなければならない」と強調しています。2012年10月には、この共同声明に若干の調整を加えたものが国連総会第1委員会で発表され、賛同の輪はオブザーバー国を含めて35カ国にまで拡大しています。 

さらに池田氏は、2012年4月に発表された核戦争が及ぼす環境への影響について重要な研究結果をまとめた報告書「核の飢餓」に言及しています。これはIPPNW(核戦争防止国際医師会議)PSR(社会的責任を求める医師の会)が作成したもので、比較的に小規模な核戦力が対峠する地域で核戦争が起きた場合でも、重大な気候上の変動を引き起こす可能性があり、遠く離れた場所にも影響を与える結果、大規模な飢餓が発生して10億人もの人が苦しむことになると予測しています。 

SGIがこれまで核兵器の問題に取り組んできた理由を、池田氏は次のように述べています。「核兵器の存在自体が『生命の尊厳』に対する究極の否定であり、その禁止と廃絶を実現させる中で、“国家として必要ならば、大多数の人命や地球の生態系を犠牲にすることも厭わない”との非道な思想の根を断つことにありますが、理由はそれだけにとどまりません。」 

「もう一つの大きな目的は、核兵器の問題というプリズムに、環境や人権といった、さまざまな観点から光をあてることで、“現代の世界で何が蔑ろにされているのか”を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること—そして、将来の世代を含め、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』の創出にあります。」 

三つの提言 

上記を踏まえて、池田SGI会長は、三つの提案をしています。 

第一に、「持続可能な開発目標」の主要テーマの一つに軍縮を当て、2030年までに達成すべき目標として「世界全体の軍事費の半減(2010年の軍事費を基準とした比較)」と「核兵器の廃絶と、非人道性などに基づき国際法で禁じられた兵器の全廃」の項目を盛り込むことを提案しています。また、池田氏が2012年6月に発表した環境提言で、「持続可能な開発目標」の対象分野にグリーン経済や再生可能エネルギー、防災・減災などを含めるべきとの提案について、さらに軍縮も対象分野に含めるべきであると提案しています。 

さらに、国際平和ビューローと政策研究所の二つのNGOが中心となって軍事費の削減を呼びかけており、SGIとしても「人道的活動としての軍縮」を重視する立場から、その運動に参加していきたい、とも池田氏は記しています。 

第二に、池田氏は、核兵器禁止条約の交渉プロセスをスタートさせ、2015年を目標に条約案のとりまとめを進めることを挙げ、「核兵器の非人道性を柱としつつ、核兵器にまつわる多様な角度からの議論を活発化させながら、国際世論を幅広く喚起していくこと」を提案しています。 

第三に、広島と長崎への原爆投下から70年となる2015年にG8サミット(主要国首脳会議)を開催する際に、国連や他の核保有国、5つの非核兵器地帯条約署名国(NWFZ) —南極条約、ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)、南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)、東南アジア非核兵器地帯条約(バンコク条約)、アフリカ非核兵器地帯条約(ぺリンダバ条約)— さらに核兵器廃絶に積極的に取り組む諸国の代表が一堂に会する「核兵器のない世界のための拡大首脳会合」を行うことをSGI会長は提案しています。 

さらに、「2015年のホスト国であるドイツと交代する形で、2016年の担当国である日本がホスト役を務め、広島や長崎での開催を目指す案もあるのではないか」と池田氏は付け加えています。 

これまで発表された平和提言の中で、池田氏は、核兵器廃絶のための首脳会合を実現にむけ、2015年のNPT運用検討会議を広島や長崎で開催することを提唱しており、その実現を切望しています。 

「190近くの国が参加する大規模な会議であることなどの理由から、慣例通り、国連本部での開催が決まった場合には、運用検討会議の数カ月後に行われるG8サミットの場で論議を引き継ぐ形で、『拡大首脳会合』を行い、この重要な問題に取り組む絶好の機会を設けてはどうか」とも池田氏は主張しています。 

その意味から、池田氏は、2012年3月26日に韓国外国語大学における講演でバラク・オバマ大統領が述べた次の言葉が心強いと述べています。 

「我が政権の核態勢は、冷戦時代から受け継いだ重厚長大な核兵器体系では、核テロを含め今日の脅威に対応できないとの認識に立つ. . . 米国には、行動する特別な責務がある。それは道徳的な責務であると私は確信する。私は、かつて核兵器を使用した唯一の国家の大統領としてこのことを言っている。」 

これは当然、2009年4月のプラハ演説で述べた信念をあらためて表明したものですが、オバマ大統領はこう続けています。 

「何にもまして、二人の娘が、自分たちが知り、愛するすべてのものが瞬時に奪い去られることがない世界で成長してゆくことを願う一人の父親として言っているのだ」と。 

さらに池田氏は、「この後者の言葉、すなわち、国や立場の違いを超えて一人の人間として発した言葉に、あらゆる政治的要素や安全保障上の要請を十二分に踏まえてもなお、かき消すことのできない “本来あるべき世界の姿”への切実な思いが脈打っている気がしてなりません。私はここに、『国家の安全保障』と『核兵器保有』という長年にわたって固く結びつき、がんじがらめの状態が続いてきた “ゴルディアスの結び目”を解く契機があるのではないかと考えるのです。」と述べています。 

そして池田氏は、次のように付け加えています。「核時代に生きる一人の人間として思いをはせる上で、広島や長崎ほどふさわしい場所はありません。2008年に広島で行われたG8下院議長サミットに続いて、各国首脳による『拡大首脳会合』を実現させ、『核兵器のない世界』への潮流を決定づけるとともに、2030年に向けて世界的な軍縮の流れを巻き起こす出発点にしようではありませんか。」と。 (原文へ

IPS Japan 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.


関連記事: 
核廃絶を求める広島・長崎 
核軍縮達成に向けたゲーム・チェンジ(レベッカ・ジョンソン核兵器廃絶国際キャンペーン〈ICAN〉副議長) 
核戦争の恐怖のシナリオ(アイラ・ヘルファンド核戦争防止国際医師会議共同代表)