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FBO連合が差し迫る核惨事に警告

【国連IPS=タリフ・ディーン】

1か月に及ぶ核不拡散条約(NPT)運用検討会議が2週間目に入った5月1日、50の宗教を基盤とした組織(FBO)や反核平和運動家、市民社会組織(CSO)に難しい任務が与えられた。本会議で行われる市民社会プレゼンテーションにおいて、核攻撃が人間にもたらす壊滅的な結果についてわずか3分の発表で世界に警告せよ、というのである。

厳格な時間枠の中でこの任務をやり遂げた世界教会協議会(WCC)国際問題委員会のエミリー・ウェルティ副委員長は言葉を濁すことはなかった。

FBO連合を代表して共同声明の発表を行ったウェルティ博士は会場の政府代表にこう語りかけた。「私たちは、健全なる精神と人類が共有する価値観の名のもとに、声をあげます。おぞましい死の恐怖をもって、人類を人質にとるような非道は決して許されるものではありません。」

世界の政治家たちが勇気を奮い起こし、人間社会の存続を揺るがし共通の未来を脅かす、不信の負のスパイラルを断ち切るよう、ウェルティ博士は世界の指導者らに強く促した。

ウェルティ博士はさらに「核兵器は、安全と尊厳の中で人類が生きる権利、良心と正義の要請、弱き者を守る義務、未来の世代のために地球を守る責任感といった、それぞれの宗教的伝統が掲げる価値観と相容れるものではありません。」と指摘したうえで、「核兵器は、こうした価値観や約束事を蔑ろにするものです。国家の安全保障や国家関係の安定、あるいは政治的な慣性といったいかなる理由をもってしても、核兵器の存在、ましてやその使用を正当化することはできません。」と警告した。

FBO連合によるこの共同声明文は、ピーター・プルーブ(WCC国際問題委員会委員長)、スージー・スナイダー(PAX核軍縮プログラム・マネージャー)、寺崎広嗣(創価学会インタナショナル[SGI]平和運動局長)の各氏が音頭をとり、グローバル安全保障研究所北米イスラム協会キリスト連合教会仏教徒平和フェローシップ米国パックス・クリスティ宗教連合イニシアチブが参加している。

核軍縮を長年にわたって推進してきたSGIは、2013年3月のオスロ会議(ノルウェー)、14年2月のナヤリット会議(メキシコ)、同年12月のウィーン会議(オーストリア)と3度の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)に関与し、この2年の間にワシントンDCとウィーンで開催された2度の宗教間シンポジウムにも参加してきた。

いずれの会合でも、諸宗教の指導者らがすべての核兵器の廃絶を共同で呼びかけた。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

4月27日に始まった現在のNPT運用検討会議は、もし全会一致で採択されれば、「成果文書」をもって5月22日に閉幕する予定である。

今年の運用検討会議は、第二次世界大戦末期に米国が広島・長崎に原爆を投下してから70年目にもあたる。

ウェルティ博士は各国代表に対して、「両都市が核攻撃にさらされた1945年8月以来、人類は核兵器による黙示録的な破壊の影のもとで暮らし続けることを余儀なくされています。」と語った。

「ひとたび核兵器が使用されれば、人類文明のこれまでの成果が破壊されるだけでなく、現代を破滅させ、その先の将来の世代をも悲惨な運命にさらされるのです。」

FBO連合は、こうした大量破壊兵器を削減する義務と責任を、NPT第6条が何十年にもわたって全ての締約国に課してきた、と指摘した。

しかし、この義務の履行は繰り返し確認されてきたにも関わらず、その歩みは著しく遅く、今日ではほとんどその動きを感じ取ることはできない。

一方で、財政がひっ迫し人間の安全保障に必要なニーズが満たされない状況下で、国の限られた予算が現在進行する核兵器近代化プログラムに向けられている。

「このような状況は受け入れがたく、そうした状況が続くことは許されません。」とFBO連合は訴えた。

ロンドンに本拠を置く『エコノミスト』誌は最近、すべての核保有国が「その核戦力の近代化をはかるために多額の」支出を行っている、と指摘している。

Nuclear threats from Israel and Iran have triggered a potential competitor in Saudi Arabia. Credit: U.S. Air Force
Nuclear threats from Israel and Iran have triggered a potential competitor in Saudi Arabia. Credit: U.S. Air Force

ロシアの国防予算は2007年以来5割以上も増えた。そのうち3分の1が核兵器向けであるが、これはフランスの割合の2倍にあたる。

中国は潜水艦や移動ミサイル部隊に投資し、米国は核戦力近代化のために3500億ドルの予算承認を議会に求めている。

世界には、5つの主要な核兵器国(米国・英国・フランス・中国・ロシア)と、核兵器国と宣言していないが事実上の核兵器国であるインド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮がある。

FBO連合は次のことを誓った。

①核兵器の廃絶に向け人々の道徳的機運を高めるべく共に協力し、それぞれの宗教コミュニティーにおいて、核兵器の非人道性や非道徳性を訴え、核兵器の存在が、受け入れがたい危険を伴っていることを伝える。

②人道的観点から核兵器の禁止を訴える国際的取り組みを引き続き強く支持し、核兵器を禁止する新たな法的枠組みに関する多国間交渉について、全ての国々に開かれた、いかなる国も阻止できない場における、これ以上の遅滞ない開始を訴える。

FBO連合はまた、世界各国の政府に次のように訴えた。

①人類に同じ経験を二度とさせてはならないと、核兵器廃絶を訴え続けている世界中のヒバクシャの声に耳を傾け心に刻むよう求める。

②これまでの核兵器の人道的影響に関する国際会議で確認された現実を重く受け止め、NPTによって全ての締約国に課された既存の義務と一致する、核兵器の完全なる禁止に向けた具体的な行動を求める。

③ウィーン会議で発表された「オーストリアの誓約」に呼応し、核兵器の禁止および廃絶に向けた法的なギャップを埋めるための効果的な措置を追求するよう求める。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|視点|核兵器のない世界へ 行動の連帯を」(池田大作創価学会インタナショナル会長)

反核兵器で連合する宗教

各宗派の指導者が共同で核廃絶を呼び掛け

核軍縮が成功する見込みはない「しかしそれが間違いであればよいのだが」(ジェニファー・サイモンズ・サイモンズ財団創設者・会長インタビュー)

【国連IPS=タリフ・ディーン】

相対性理論を構築したことで世界的に有名な物理学者のアルベルト・アインシュタイン博士がかつて発した有名な言葉がある。「第三次世界大戦がどんな兵器でもって戦われるのか私にはわからない。しかし、第四次世界大戦は、石と棍棒で戦われることになるだろう。」

おそらくアインシュタイン博士は、次の世界大戦では核兵器の使用で壊滅的な大殺戮が起き、その結果、人類は石器時代に後戻りすることを分かりやすい形で示したのだろう。

ほとんどの平和活動家によると、核兵器廃絶に向けた現在の動きは勢いを増しているとはいえず、大量殺戮兵器のない理想的な世界が実現する見通しは明るくない。

この数十年で、5つの主要な核兵器国(米国・英国・フランス・ロシア・中国)に、新たに4つの国(インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮)が加わってきた。

そしてもし、遅かれ早かれイランが核武装化することになれば、エジプトやサウジアラビア、トルコもそれに続く可能性がある。

最も恐ろしい最悪シナリオは、ウクライナの政治的危機とロシアによるクリミア併合が主な引き金となった、米ロ間の新冷戦の登場であろう。

5月22日まで続く、1か月に及ぶ核不拡散条約(NPT)運用検討会議にあわせて出された提案のひとつは、すべての核兵器を世界的に廃絶する国際条約の締結に向けた交渉を開始するというものである。

核軍縮を弛みなく追求しつづけてきたサイモンズ財団の創設者・会長であるジェニファー・アレン・サイモンズ博士は、この提案の現実性についてIPSにこう語った。「この提案に成功の見込みはないと思います。しかし、この見方が間違いであればよいとも思っています。」

2000年のNPT運用検討会議と、2002年の同準備委員会会合でカナダ政府のアドバイザーを務めたサイモンズ博士は、「核保有国は、核戦力の性能向上と長期計画の策定を進める一方で、相変わらずのレトリックを使い続けています。」と指摘したうえで、「もし実現する可能性があるとすれば、核兵器が作戦上に占める役割を低減させることに関するコンセンサスぐらいでしょう。」と語った。

「警戒態勢の緩和に関するグローバル・ゼロ委員会の報告書は好意的に受け止められています。」と、NPT運用検討会議参加のため5月上旬に国連入りしたサイモンズ博士は語った。核廃絶を目指して設立されたサイモンズ財団は、今年で30周年を迎える。

以下は、インタビューの抜粋である。

Q:現在のNPT協議からして、5月22日までに全会一致での成果文書採択に運用検討会議が成功すると思われますか?

A:それを判断するのはまだ早いですが、今のところ、全会一致の文書を得る見通しはあります。その場合、核兵器禁止条約(あるいは核兵器禁止)、核使用の人道的側面の問題は盛り込まれないでしょう。一部の政府代表らが、かりにNPTがこの点での合意に失敗した場合、公開の作業部会を通じて、核軍縮条約(あるいは核兵器禁止)、もしくは合意の枠組みを推進する用意があると聞いています。

Q:米ロ間の新冷戦は運用検討会議の成果に影響があると思いますか?

A:核保有国は核戦力をなくすつもりがないですから、影響はないかもしれません。新しい戦略兵器削減条約(START)によって核兵器は削減されますが、さらなる削減を定めた二国間の取り決めは今後ありそうもありません。

Q:完全核軍縮に向けた主な障害は何だと思われますか?

A:主な障害は「恐怖」でしょうね! ロシアと西側との間の信頼の欠如、そして、30を超える核能力を持つ国家が核兵器取得能力を手にしようとするかもしれないという信頼の欠如。私が最も恐れるのは、偶然であれ、計算違いであれ、意図的であれ、あるいは、高度に自動化されたシステムを発動させるか偽の攻撃を仕掛けるサイバー攻撃の成功によってであれ、核兵器の爆発が核廃絶への触媒になってしまう事態です。

米国は、自国の核兵器システムは(サイバー攻撃によって)破られないと考えているようですが、米国防科学委員会の最近の報告書によれば、米国の指揮・管制システムの脆弱性は未だかつて正確に評価されたことはないとのことです。ロシアや中国のシステムが脆弱かどうかについても知られていません。また、インドやパキスタンのシステムが脆弱でないと想定する理由もありません。

ロシアのウラジミール・プーチン大統領がロシアの核オプションを誇示したことは懸念材料であり、核兵器のもつ政治的意味合いを変えることにとっては障害となるでしょう。また、他の核保有国に対して、自国の核を保持し性能向上を図る口実を与えることにもなってしまいます。

Q:私たちが生きているうち、あるいは今後50年の間に、核軍縮は実現するでしょうか?

A:私の生きているうちに実現するかもしれません。ただし、恐らくそれはもう一度核爆発が起こった場合に限られると思います。核兵器が使用されれば、その結果はあまりにも悲惨なものであり、その行為は人道に対する犯罪になりますから、核兵器の禁止を促すことになるでしょう。

こうした状況において皮肉なのは、誰もが核兵器の使用を恐れ、軍も核兵器を好んでいないということです。しかしそれは、戦争犯罪を行なったり人道への罪を犯したりしたくないからということだけが理由ではなく、より悪いことに、核兵器の維持コストがあまりにも高く、むしろ他の兵器購入のために資金を取っておきたいという理由のためなのです。

率直に言えば、なぜ人々が殺戮に手を貸したいと思っているか、私には理解できません。(原文へ

IPS Japan

奴隷状態から自立へ:南インド、ダリット女性たちの物語

この記事は社会に潜む2つの悪弊(①ヒンドゥー寺院における性奴隷の慣行。②違法鉱山での強制労働による搾取)と闘った2人の女性の実体験を取材したものである。二重奴隷の軛(くびき)からようやく解き放たれた彼女たちは、いかに質素なものであっても、やっとの思いで勝ち取った今の生活を守り抜いていく覚悟だ。彼女たちの経験は、たとえ絶望的に思われる状況にあっても確固たる決意さえあれば出口は見いだせるという言葉を広める必要性を改めて浮き彫りにするものだ。

【ベラリー(インド)IPS=ステラ・ポール

40代になるダリット女性のフリジェ・アンマさんは、ミシン台で上半身を前に傾けながら注意深くシャツの縁を縫っていた。彼女の傍には、22歳になる娘のルーパさんが、携帯電話に送られてきたメールを読みながら楽しげに笑っていた。

インド南西部カルナタカ州ベラリー県で暮らす2人は、つつましいながらも現在の生活に満足している。1日50セントでやり繰りし、家族の衣服は自ら縫い、地域の住民に教育を提供するプログラムに参加している。

しかし、それほど遠くない昔、この親子は奴隷の境遇にあった。彼女たちは、鉱物資源が豊かなカルナタカ州ベラリー県(インドの鉄鉱石埋蔵量の4分の1を占める)に潜む2つの悪弊(①ヒンドゥー教の寺院における性奴隷の慣行。②県内に点在する違法鉱山での強制労働による搾取)に翻弄されながらも、厳しい試練を闘い抜いて今の生活にたどり着いたのだった。

二重奴隷の軛(くびき)からようやく解き放たれたアンマさん親子は、いかに質素なものであっても、やっとの思いで勝ち取った今の生活を守り抜いていく決意だ。

それでもなお、彼女たちは、かつて自分たちの生活を規定していた悲惨さや、彼女たちを極貧と奴隷の境遇へと追いやったインド社会に根深く存在する宗教的・経済的仕組みのことを、決して忘れることはないだろう。

ヒンドゥー寺院から露天掘りの鉱山へ

フリジェ・アンマさんは、IPSの取材に対して、「私は、両親によって(『堕ちた者たちの女神』としてヒンドゥー寺院で崇拝されている)女神イェラマに奉納された時は12歳でした。私は『デーヴァダーシー(神の召使い)』になった、と言われたのです。」と語った。

「当時私にはそれがどういうことか、わかりませんでした。わかっていたのは、私はもう女神のものになったのだから、男の人と結婚することはできなくなった、ということでした。」

彼女の最初の印象は真実とさほどかけ離れていなかったが、無垢な少女が、それから長年に亘って自分の身にふりかかる恐るべき隷属の日々を知る由もなかった。

デーヴァダーシー」とは、特定の神や寺院に奉仕するために、ほとんどの場合、低カーストに属する少女を捧げる慣行で、南インドで数百年に及ぶ歴史がある。

デーヴァダーシーの女性はかつてインド社会で高い地位を占めていたが、インドの諸王国が大英帝国の統治下に置かれるようになると、寺院は経済的に困窮し、多くのデーヴァダーシーたちは、かつて彼女たちを支えていた仕組みがない状況に放り出されることになった。

神々に結び付けられている身として、他の仕事を見つけることができず困窮したデーヴァダーシーらは、インド南部一帯の多くの州で売春婦となった。インド政府は1988年、こうしたヒンドゥー寺院による奴隷制全体を禁止する命令を下した。

しかし、その後もこの慣行がなくなることはなかった。フリジェ・アンマさんのような元デーヴァダーシーだった女性が証言しているように、今日におけるヒンドゥー寺院の奴隷慣行は、犠牲となっている少女らに対する侮辱的で残虐な性質において、80年代となんら変わるところがない。

アンマさんは続けて「成長すると、多くの男性が夜ごと私の元に押し寄せ、性的行為を求めてきました。拒否することができず、別々の男性による5人の子どもを身ごもりました。しかし、そのうち誰も、私や子どもに対する責任を取ろうとはしませんでした。」と語った。

5人目の赤ちゃんが生まれた後、飢えと絶望に正気を失いそうになったアンマさんは、寺院を後にし、カルナタカ州北部の世界遺産「ハンピ」近くにある町・ホスペットまで逃れた。

露天掘りの鉱山で仕事を見つけるまでにそれほど時間はかからなかった。そこは、2004年から11年までこの地区一帯で操業していた数多くの違法鉱山の一つだった。

アンマさんは、夜明けから夕暮れまで、鉄鉱石を「発破」によって取り出すために露天にハンマーで穴をあける作業に6年にわたって従事した。

当時の彼女は、この肉体的に骨の折れる仕事が、カルナタカ州における大規模な違法採鉱の中核をなしているということを知る由もなかった。この違法採鉱によって、2006年から11年の間に2920万トンの鉄鉱石が採掘・輸出されたのである。

彼女が知っていたのは、自分自身と、横で児童労働者として働いていた娘のルーパさんが、毎日50ルピー(約0.7ドル)しか稼ぐことができない、ということだった。

当時警察が、違法取引を取り締まるためとして、しばしば鉱山に捜査に入り、労働者を逮捕していた。釈放してもらおうとすると、警官に200~300ルピー(約4~6ドル)の賄賂を払わなければならなかった。

One of hundreds of illegal open-pit iron ore mines in the Bellary District in India that operated with impunity until a 2011 ban put a stop to the practice. Credit: Stella Paul/IPS

「デーヴァダーシー」のしくみとの奇妙な類似だが、この警察による取り締まりによって、労働者たちの鉱山操業者への借金が「永続化」する仕組みになっていたのである。

2009年、過酷な労働が続き、元デーヴァダーシーの彼女を「格好の標的」としか見ていない他の労働者や出入り業者、トラック運転手らからの絶え間ない性的な誘いかけに耐えきれなくなったアンマさんは、思いきって、地元の非政府組織「サキ・トラスト」に助けを求めた。この団体は、彼女と娘を貧苦のどん底から引き上げるために大いに役立ったのである。

今日、彼女の子どもたちは全員学校に通うことができるようになり、長女のルーパさんは「サキ・トラスト」のユースコーディネーターとして働いている。一家はナジェンハリというダリットの村に住み、フリジェ・アンマさんは針子として働くかたわら、地域の若い女性たちに服飾技術を教えている。

カースト:インドのもっとも持続不可能なしくみ

この物語は、フリジェ・アンマさんとルーパさん親子にとってはハッピーエンドなのかもしれないが、インドの約2億人のダリットの多くにとっては、依然としてトンネルの先に光明は見えていない。

インドのカースト制度でかつては「不可触民」と呼ばれていたダリット(文字通り言えば「壊れた者たち」という意味)は、多様かつ分割された集団であり、いわゆる「カーストなき」コミュニティーから他の社会的に無視されてきた人々までを包含している。

ダリットというこの大きな傘の下に、さらなるカーストがある。たとえばマディガ・ダリット(しばしば「ゴミをあさる人びと」と呼ばれる)のような階層は、他のダリットからもしばしば差別されている。

歴史的に見れば、マディガは靴を作ったり、溝を掃除したり、動物の皮をはいだりする仕事をしてきた。それらはヒンドゥー社会の他のすべての集団からは、自分たちの品位に相応しくないと見なされてきた仕事である。

社会活動家で「サキ・トラスト」のバギャ・ラクシュミ代表によれば、南インドのデーヴァダーシーの多くはこうした階層の出身であるという。カルナタカ州だけで2万3000人の寺院奴隷がいると推定されているが、そのうち9割以上がダリットの女性だ。

20年近くにわたってマディガの人々とともに活動してきたラクシュミさんはIPSの取材に対して、「マディガの女性は抑圧と差別以外にはほとんど何も知らないまま成長します。」と指摘したうえで、「デーヴァダーシー制度は、制度化された、カーストを基盤とした暴力以外の何ものでもなく、ダリットの女性を無償労働や不平等賃金などのさらなる搾取にほぼ確実に追いやる仕組みです。」と語った。

鉱山で7年にわたって働いたマディガの女性であるミニ・アンマさんによると、例えば、違法操業の鉱山ですら、ダリットでない女性は1日あたり350~400ルピー(5~6ドル)を手にする。一方でダリットの女性は100ルピー以上を受け取ることがない。

しかし、この大規模な鉄鉱石の違法採掘・取引に囚われた労働者の大部分は、ダリット女性なのである。

「この地域のダリットの家を訪ねてみるといいですよ。『クーリー(労働者)』として鉱山で働いた経験がない独身女性や子どもはいないはずです」と、ベラリー県のマリヤマナハリ村で奴隷労働撲滅に向けて活動している元鉱山労働者のマンジュラさんは語った。

マンジュラさん自身、デーヴァダーシーの娘かつ孫であり、鉱山で子ども時代を過ごした。彼女は、強制労働と寺院奴隷のしくみは、インド南部諸州に広がる搾取の制度につながっており、カースト制度によってさらにこのつながりは強化されていると確信している。

ほとんどの公式統計と同じように、鉄鉱石採掘の現場に送り込まれたダリットの正確な数を彼女も把握しているわけではないが、「数千人」に上るのは確実だという。

生命と暮らしの破壊

インドの年間の鉄鉱石生産量は世界の7%を占めており、ブラジル、中国、オーストラリアに次いで第4位である。2011年の最高裁の報告書によると、インドは毎年、約2億8100万トンの鉄鉱石を生産している。

カルナタカ州はインドの鉄鉱石推定埋蔵量252億トンのうち90億トンを埋蔵しており、同国の輸出産業で重要な役割を果たしている。

ベラリー県だけでも推定10億トンの埋蔵量がある。2006年4月から2010年7月の間に、228の未認可業者が2920万トンの鉄鉱石を採掘し、カルナタカ州に約1600万ドルの損害を与えた。

250万人の人口が主に農漁業や牧畜によって生計を立てているベラリー県では、鉄鉱石の違法採鉱によって環境被害を被ってきた。

鉄鉱石採鉱地帯の周辺では高濃度の鉄分、マンガン、フッ素が地下水に混入して土壌汚染を引き起こしている。これらの物質はいずれも、土地に依存して生活している農民にとっては大敵である。

調査によれば、鉄鉱石の採掘ブームによって6万8234ヘクタールの森林のうち9.93%が失われ、鉄鉱石の採掘・発破・分類作業の中で出てくる粉塵のために、粒子状物質が厚く堆積して周辺地帯の植物を覆い、光合成を阻害しているという。

最高裁は2011年、(違法採掘活動が)環境・経済・社会に及ぼす影響に関する詳細な報告書の提出を受けて、すべての未登録採掘活動を停止するよう命令を出した。しかし、富裕な実業家たちは法を無視しつづけている。

それでもなお、公的な禁止が出たことで取り締まりが容易になった面はある。今日、違法な採掘活動とヒンドゥー寺院公認の性的人権侵害という2つの崩壊しつつある仕組みの灰燼の中から、インドで最も貧しい女性たちが持続可能な未来に向けた道筋を示しつつある。

奴隷状態から自立へ

彼女たちがまず最優先で取り組むべきことは、自身と子どもたちを教育すること、別の生計手段を確保すること、そして基本的な公衆衛生の問題に対処することだ。現在、ベラリー県では、90人あたり1つのトイレしかない。

南インドのダリット社会における識字率は、ある地域では僅か10%にとどまっているが、マディガの女性達はこの流れを変えていこうと大変な努力をしている。「サキ・トラスト」の支援によって、2011年までに、学校教育を受ける機会のなかった600人のダリットの少女が入学することができた。

今日、ダナプラ村出身のラクシュミ・デビ・ハリジャナさんが大学で教鞭をとる初めてのマディガ女性となった。また、同村出身の25人の女性が大学の学位を取得している。

Dalit women and their children, including young boys, are working together to end the system of ‘temple slavery’ in the Southwest Indian state of Karnataka. Credit: Stella Paul/IPS

彼女たちにとって、このような変化はまさに画期的なものだった。

知的なキャリアを歩んでいくことを選んだ者もいれば、縫い物や畜産のような素朴な技術にあらためて目を向ける者もいる。

何年にもわたって違法鉱山で働かされていた元寺院奴隷のバギャ・アンマさん(上の写真の女性)は今日、100ドルで購入したヤギを2頭飼っている。

アンマさんはIPSの取材に対して、「子羊を解体し、家族や近所の人や、貧しい人たちとそれを共有する祭り「イード・アル=アドハー(=犠牲祭)」の期間中に、ヤギを一頭につき190ドルで売るつもりです。」と語った。

それはわずかな利益かもしれないが、彼女にとって自分の基本的なニーズを満たすには十分だという。

政府は、違法採掘の被害を補償するための生活再建プログラムのために約300億ルピー(約4億7500万ドル)をベラリー県の女性に提供すると約束したが、実際の財政は火の車だ。

当局からの支援をただ待ち続けていても埒があかないと考えたダリットの女性たちは、女性と子どもたちが性的に被害に遭わないように、コミュニティー内で出資しあい、各家庭が持ち回りで小さなトイレ(建設費用は1万5000ルピー〈約230ドル〉)を作っていく計画を進めている。

マンジュラさんは、「私たちは経済的に持続可能な小さなモデルを作りたいと考えています。相手が個人であれ、たとえ政府であっても、私たちは誰にも依存したくないのです。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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|軍縮|核実験の包括的禁止は核兵器なき世界への一里塚(ラッシーナ・ゼルボCTBTO準備委員会事務局長インタビュー)

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【国連IPS=カニャ・ダルメイダ】

4週間にわたる核不拡散条約(NPT)運用検討会議が国連で開かれている最中であるが、人類への最大の脅威に関する拘束力のあるこの政治協定がきわどい状況にある中、希望と不満が同じように交錯している。

5つの核保有大国(米国・英国・フランス・ロシア・中国)の間の権力闘争に報道はもっぱら焦点を当てているが、地政学的な対立に巻き込まれることを拒否する多くの組織が、より安全な世界を創出するという難題に挑んでいる。

Lassina Zerbo/ CTBTO
Lassina Zerbo/ CTBTO

こうした組織の一つが、ウィーンを本拠とする包括的核兵器禁止条約機構準備委員会(CTBTO)である。包括的核実験禁止条約(CTBT)の履行状況を独立の立場から監視する機関として、CTBTが締結された1996年に創設された。

183の署名国と164の批准国を持つ同条約は、核実験禁止に向けた国際的取り組みの一里塚となっている。

しかし、CTBTが法的拘束力のあるものとなるためには、44か国から成る発効要件国(いわゆる「付属書2諸国」)の批准を必要とする。そのうち、中国、エジプト、イラン、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮、米国の8か国が条約批准を拒否している。

これらの未加盟国の存在により、核廃絶プロセスのもっとも基本的な目標に向けた動きでさえ阻害されてきた。

それでもなお、CTBTOは、完全批准に向けた環境を整えるために、この20年間、相当の努力を積み重ねてきた。

地震、水中音波、微気圧振動及び放射性核種の観測所が世界中に網の目のように張り巡らされ、諸国が条約に違反する行為を行うことはほぼ不可能になっている。また、CTBTOの多くの施設から集められた豊富なデータは、世界中で広範囲にわたる科学的な取組みに貢献している。

CTBTO事務局長のラッシーナ・ゼルボ博士は、IPSとのインタビューで、同機関の2015年NPT運用検討会議に対する期待と、核兵器なき世界への途上に立ちはだかる主な障害について考えを語った。

以下は、インタビューの抜粋である。

Q:CTBTOはNPT運用検討会議でどのような役割を果たすことになりますか?

A:軍縮と不拡散に関してよい結果がこの4週間の交渉で得られることを切に希望していますが、CTBTはその中で重要な役割を果たすと考えています。CTBTは、NPTの無期限延長を成立させた主要因の一つであり、すべての加盟国をまとめる要素にもなっています。それは比較的到達しやすい成果(=残り8か国の条約批准をとりつければ発効する)の一つであり、この運用検討会議でいかなる成果を得ようとするにせよ、CTBTの発効をその一里塚として機能させるようにしなくてはなりません。

例えば、核不拡散に関してまず取り組まねばならないと考える国々と、より迅速にとまでは言わないまでも、核不拡散と同等に核軍縮についても取り組まねばならないと考える国々との間に、妥協点を見つける必要があります。

また、核保有国がより近代的な兵器を開発することが許されているのに、その他の国々に関しては核兵器取得に繋がりかねない基本的な技術さえ開発を禁止されていることに疑問を持つ国々の懸念に対して、私たちは応える必要があります。

CTBTはすべての国家が同意できるようなものを表しているのです。それは、その他の、より難しい問題に関するコンセンサスの基盤として機能します。これこそが、私がこの会議で伝えたいメッセージです。

Q:CTBTOの最大の成果は何でしょうか? 将来に向けてゼルボ事務局長がもっとも火急の問題と考えることは何でしょうか?

A:CTBTOは、すべての水中・地下・空中の核爆発実験を禁止しています。私たちはこれまでに、放射性物質の放出を追跡するものを含め、核実験を探知するために約300の観測所ネットワークを構築してきました。

私たちの国際監視システムは水平的拡散(核兵器保有国の拡大)だけではなく、垂直的拡散(現有兵器庫の拡大及び精密化)も防止してきました。

CTBT批准に二の足を踏んでいる国がいるのはそのためです。自国の核兵器体系を維持ないしは近代化するには核実験が必要だと考えているからなのです。

今日の核兵器開発は、20年から25年前に実施された実験のデータを基礎としています。北朝鮮以外のどの国も、21世紀に入って1回も核実験を行っていません。

Q:北朝鮮のような国にどのように対処しますか?

A:北朝鮮と公的に接触があるわけではありません。世界の指導者から伝えられていることを基にして、判断するしかありません。(ロシアの外相である)セルゲイ・ラブロフ氏が北朝鮮をCTBTの議論に巻き込もうとし、北朝鮮は核実験モラトリアムを検討する意思があるかどうか尋ねたことがあります。昨日私は、北朝鮮と国交のあるカザフスタンのイェルツァン・アシバエフ副外相と面会しましたが、同国は北朝鮮に対してCTBT署名を検討するよう緊急に要請しているところです。

(北朝鮮と)二国間関係にあるこうした国によって、私たちは助けられています。

そうは言っても、もしCTBTOが北朝鮮に招かれ、北朝鮮がCTBTやその組織的枠組み、私たちが構築してきたインフラについて理解するための議論に関与する基盤となりうるような会談を持てるとしたら、どうでしょうか? もちろん、断る理由はありません。喜んで参ります。

私たちはまた、中東のような地域でCTBTに署名することでリーダーシップを取りうるイスラエルのような国とも接触しています。つい最近イスラエルを訪問した際、次のような問いかけをしてみました。「(イスラエルは)核実験をやるつもりですか?そうではありませんね。核実験が必要ですか? そうではありませんね。ならば、非核兵器地帯、あるいは非大量破壊兵器(WMD)地帯のさらなる批准・検討につながりうるような、(中東)地域における信頼醸成のために必要な枠組みを開くために、リーダーシップを発揮されてみてはいかがでしょう?」

イスラエルは今や、CTBT批准は「可能性」(if)の問題ではなく、「時期」(when)の問題であると述べています。その「時期」がそう遠くないことを望みます。

Q:核軍縮と核廃絶を求める数多くのデモが行われ、署名が提出されても、核保有大国は聞く耳を持っていません。運動の最前線にいる人々にとっては、きわめて残念な傾向です。世界の市民社会に対するメッセージは何かありますか?

A:あなたの国の政治指導者にプレッシャーをかけ続けてください。この問題を前進させるための政治のリーダーシップを私たちは必要としているのです。現在、世界の9割の国々が、核実験反対の意思を示しています。にもかかわらず、私たちは、(CTBTに批准していない)一部の国々によって人質に取られた状態になっているのです。

市民社会だけが、諸政府に対して、「あなたがたが依然として保有し、依然としてこだわっているもの(=核兵器)に対して、世界の大多数が『ノー』を突き付けているのだから、あなたがたには行動を起こす義務がある」と語りかけることができます。CTBTは、「核兵器なき世界」という、できれば私たちが生きている間に実現したい目標を達成するための重要な要素なのです。(原文へ

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|バングラデシュ|コミュニティーラジオが切り開くジェンダー平等

人口1億5700万人のバングラデシュは、その49%が女性である。あるメディアの調べによると、女性たちは、その声が「聞かれる」よりも新聞のイラスト入りの記事で「見られる」ことの方が多いという。女性の多くはテレビを持たず、新聞を読むこともできないが、コミュニティーラジオがこの状況を変えようとしている。バングラデシュ北西部チャパイ・ナワバンジ県出身の学生のモメナ・フェルドゥシさん(24)は、有望なラジオ専門家の一人である。声なき人々、貧しい人々、読み書きができない女性たちに声を与え、彼女たちの関心を世界と共有するための第一歩にしたいと決意を固めている。

【ダッカIPS=ナイムル・ハク

どれだけ新聞の見出しを飾ったかという基準から言えば、バングラデシュの女性は国の中で主要な役割を果たしていないと考えたくもなる。

非政府組織「バングラデシュ・ナリ・プロガティ・サンガ」(BNPS)によるメディア調査によると、2か月間の3361本の報道のうち、「女性をテーマとしているか、女性にインタビューしたもの」は新聞記事の16%の新聞記事、テレビニュースの14%、ラジオニュースの20%に過ぎなかったという。

すべての項目のうち、女性を中心的に取り扱ったのは8%弱であった。テレビに登場する数少ない女性のうち、97%がニュースの読み手であり、わずか3%だけが「記者」であった。

署名入りニュースのうち、女性の署名入りのものはわずか0.03%だけだった。

調査では、写真の場合は男性よりも女性が多く登場するのに、女性ははるかに少ない回数しか言及されない、としている。人口1億5700万人のバングラデシュには、女性は「聞かれるよりも見られるもの」ということわざがあるが、それが証明されているようなものだ。

こうした調査結果を見ると気落ちしてしまうが、座視して状況が変わるのを待ってはいられないと決意した女性たちが、自らの手で事態を切り開こうとしている。彼女たちは、ラジオを利用して、女性の声を伝え地域の問題に焦点をあてる道具にしようとしている。

女性はバングラデシュの人口の49%を占めている。同国の人口の大部分と同じく、女性たちも農村部に固まっている。農村部には、人口の72%にあたる1億1120万人が住んでいる。

政策決定にあずかる都市中心部から離れていることは、女性をますます「見えにくい」存在にしている。BNPSの調査から得られたデータによると、農村部あるいは遠隔地に焦点をあてたニュースは、新聞記事の12%、テレビニュースの7%、ラジオニュースの5%だけだという。しかし都市部は、バングラデシュの面積のわずか8%、人口の28%を占めるにすぎないのである。

女性と女性問題がメディアに不在であることは、国連開発計画(UNDP)のジェンダー不平等指標(GII)で187か国中142位であり、アジア太平洋地域でももっとも状況が悪い国のひとつであるバングラデシュの危険な傾向である。

しかし、このこと自体もメディアでは触れられない。BNPSの調査では、調査されたニュース3000本のうちジェンダー平等に触れたのは1%以下であり、一般的なジェンダーのステレオタイプを問題視したの記事はわずか11本だけであったことが判明している。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によれば、世界の平均識字率84.3%に比較するとバングラデシュのそれは59%ときわめて低い。こうした国では、ラジオの重要性は過小評価できない。

貧困線以下で暮らしている人びとが24%にも上るバングラデシュにおいても、ラジオは外の世界とつながれる比較的手軽な手段として、人口の大部分を占める農村部の人々の間で人気を博している。

農村女性の声を広める

バングラデシュ北西部チャパイ・ナワバンジ県出身の学生モメナ・フェルドゥシさん(24歳)は、有望なラジオ専門家の一人である。2011年に立ち上げられたコミュニティーラジオ局「ラジオ・マハナンダ」のシニアプロデューサーを務めている。このラジオ局の主な目的は、7780平方キロ(=ほぼ静岡県の大きさ)のバリンド地域の一部を成すこの農村地帯の農家に奉仕することだ。

フェルドゥシさんはIPSの取材に対して「私や将来への希望を持った多くの女性ラジオ局スタッフが『ラジオ・通信のためのバングラデシュNGOネットワーク』(BNNRC)から受けた支援と訓練がなければ、今の自分はなかったと思います。」と語った。

More and more women in Bangladesh are turning to community radio as a means of spreading awareness on women’s issues. Credit: Naimul Haq/IPS

BNNRCの行っている奨学生・能力開発プログラムによって、バングラデシュ全土にある14のコミュニティーラジオでプロデューサーや番組司会、キャスター、記者、局の管理者などのポストを数多くの女性が占めることになった。

フェルドゥシさんは、「雇われるまでの道のりは険しいものだった」と振り返りながら、「でも、BNNRCは、私や他の女性ジャーナリストたちに可能性を見いだしてくれました。私たちも、情報に対する女性の権利が立ち遅れている状況に対処することで、かなりの変化を起こせたと考えています。」と語った。

さて、別の場所では、シャルミン・スルターナさんの自信に満ちた声が「ラジオ・ポリコント」で響いていた。このコミュニティーラジオ局は、モウルビバザールの北東部で放送され、半径17kmの約40万人に聴取されている。

ラジオ・ポリコントは、主に農村女性の抱える問題に焦点を当てた毎日5時間の番組で、この地域における大きな格差を埋めてきた。

スルターナさんは、「番組を作って、ゲストと直接生放送話をし、健康や女性の権利、社会的不正、教育、農業といった問題でラジオを聞いてくれている人々のリクエストに応えるのは、本当に楽しいです。」と語った。

「私たちが始めた時には、女性問題についての番組はひとつしかありませんでした。しかし今では、女性だけの問題を扱った番組を週に5本も放送しています。」

「私たちの番組を聞いてくれている人々のほとんどが貧困層の女性です。テレビもなければ、新聞も読めません。粗末な携帯電話でも聞くことができるFMラジオは非常に人気があり、双方向的なライブ放送を求める声は日増しに強まっています。」とスルターナさんは語った。

バングラデシュで女性が直面している問題はきわめて多い。

公的部門で雇用されている女性は1680万人に過ぎない。大多数の女性は、農場での仕事に加えて、賃金の発生しない家内労働に従事している。

経済的に自立を果たしていないということは、家庭内暴力に対してきわめて脆弱になるということでもある。バングラデシュ統計局(BBS)副局長が最近行った調査によると、現在結婚している女性の87%が夫からの暴力を受けた経験があり、98%の女性が結婚している間のいずれかの時点において配偶者から性的に「虐待された」と語っている。

またこの調査では、すべての婚姻女性のうち3分の1が「経済的な人権侵害」を受けていることも明らかになった。つまり、暴力をふるう夫が妻を自分に経済的に従属させ続ける目的で、その女性の資産を強制的に取り上げるのだ。

2011年には、330人の女性がダウリー(婚姻に伴う持参金)関連の暴力によって殺害されている。

児童婚のようなその他の問題も、女性向けコミュニティーラジオにとっての喫緊の課題となっている。国連のデータによると、バングラデシュの少女の66%が18歳の誕生日を迎える前に結婚するという。

状況は依然として厳しいものだが、専門家らは、女性が教育を受け自分の権利を自覚するようになるにつれ、流れは不可避的に良い方に向かうであろうとみている。

Radio Mahananda, a local station, helps farming communities in Bangladesh to share research and best practices on crop production. Credit: Naimul Haq/IPS

バングラデシュ全土にコミュニティーラジオ放送を広める取り組みを主導してきたBNNRCのA・H・M・バズルール・ラーマン事務局長は、IPSの取材に対して、「政策立案者らは、予算の分配、適切な衛生政策の欠如、女性への暴力、汚職との闘い、女児教育といった問題を(しばしば)無視する傾向にあります。しかし、女性に発言権を与えることができるならば、こうした問題は徐々に消えてなくなるだろう。」と語った。

今後より多くの女性の声がコミュニティーラジオで取り上げられることで、はたしてエンパワーメントを必要としているバングラデシュ国民の半数の人々(=女性)の地位を引き上げられることにつながるかどうかは未知数だ。しかし、女性の声がラジオ番組で生き生きと発せられるたびに、また別の女性がその話に耳を傾け、自分の権利について学び、平等へとまた一歩近づくことになるのだ。(原文へ

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核実験の後遺症に悩まされる太平洋島嶼諸国

【スバ(フィジー)IDN=シャイレンドラ・シン】

太平洋島嶼諸国の著名な反核活動家らは、「核保有主義」(nuclearism)と闘う国際的な取り組みを支援するかつては強力だった運動の再興を目指している。彼らの呼びかけは、4月27日から5月22日までニューヨークの国連本部で開催中の2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議という大きな国際会議と時期を同じくしている。

NPTは、核兵器と兵器技術の拡散を防ぐ一方で核エネルギーの平和利用協力を促進する重要な国際条約である。

しかし、2015年運用検討会議に向けて毎年開かれてきた準備委員会会合のどれか一つでも参加していたNPT加盟国148か国の中に、パラオ以外の太平洋島嶼諸国の姿はなかった。

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)によれば、かつて太平洋地域の国々は核軍縮運動に大きな貢献を成したにもかかわらず、このような状況になっている。米ソの軍拡競争が厳しかった時代、「南太平洋フォーラム」の加盟国南太平洋非核地帯条約(SPNFZ)に署名・批准した。さらに、太平洋島嶼諸国は、国連やさまざまな国際的軍縮会合の場で、核兵器を禁じる国際条約を求める決議に賛成票を投じてきた。

今回のNPT運用検討会議は、NPTの規範を強化し軍縮教育を促進するうえでどのように市民社会との関与を深めていけばよいかについて検討することになるだろう。しかし、太平洋島嶼諸国からの市民団体の参加はきわめて少ない。

太平洋島嶼協会(PIANGO)のエミール・ドゥイトゥトゥラガ事務局長によると、同協会の全国規模の連絡団体は2015年運用検討会議にどこも参加しないという。また、太平洋島嶼地域を代表するような他のNGOが参加することも把握していない。

NPT運用検討会議のような重要会議に太平洋島嶼地域からNGOの参加がないことは、同地域における反核運動が全般的に勢いを失ってきている現状を浮き彫りにするものであり、対策を必要とする憂慮すべき傾向だという意見もある。

かつてフィジーを基盤に活動していた地域圧力団体「太平洋問題資料センター」のスタンリー・シンプソン元副代表はIDNの取材に対して、「『核保有主義』は、一見衰退したように見えても、依然として脅威でありつづけています。」と語った。

「危険は去っていません。」「私たちは依然として、核実験・核活動の後遺症とともに生きているのです。」とシンプソン氏は語った。太平洋島嶼地域では、1946年から1996年の間に、かつての植民地宗主国である米国・英国・フランスがあわせて315回の核爆発実験を行っている。

しかしこうした国々が今日に至っても核実験が及ぼした被害に対する責任を認めず、被害者への補償を行っていないことから、太平洋島嶼地域の人々は不公平感を募らせている。

今年2月、フィジー政府は、1950年代末に英国が核実験をクリスマス島(現在のキリバス)で行った際に現地にいた24人のフィジー人元兵士に対する金銭的な支援を表明した。フィジーのフランク・バイニマラマ首相は「私たちには、英国の政治家や官僚からの支援を待つのではなく、今こそ彼らに救いの手を差し伸べる責任があります。私たちは自らの歴史に刺さったままの棘を取り除かねばなりません。」と述べた。

Christopher Loeak/ Wikimedia Commons

マーシャル諸島のクリストファー・ロヤック大統領は最近の文章で、米国が同国をいかに冷淡に取り扱ってきたかについて書いている。これは、ICANが2014年に発行した『核兵器を禁止する―太平洋の見方』に掲載されている文章だ。ロヤック大統領は、広島型原爆の1000倍強力だった「ブラボー」実験以外にも、マーシャル諸島で計17回のメガトン級実験が行われたと指摘している。マーシャル諸島で行われた核実験の爆発力の合計は、米国による大気圏核爆発実験の爆発力全体の8割にも及んでいた。

フランス領ポリネシアの人々もまた、ムルロアファンガタウファ両環礁で193回もの大気圏・地下核実験を行ったフランスによって同じような取り扱いを受けてきた。ICANの本は、1966年9月に行われた核実験の後でムルロア環礁の核実験場で作業していた地元のマオヒ人(ポリネシア)労働者のことについて紹介している。この労働者は、道路に散乱している瓦礫を全て片付けるよう指示された作業員の一人だ。「大丈夫。(爆心地に)行っても問題ない。」と上の人間から言われたという。

ニュージーランド・オークランドにあるAUT大学のデイビッド・ロビー教授(ジャーナリズム)は、太平洋島嶼地域における反核運動は、「自らの『裏庭』で核実験を行うことを好まない英国・フランス・米国が核実験を実施するために弱い立場の太平洋島嶼の領域をまるで将棋の『歩』のように利用したことへの怒りから生まれてきたものです。」と語った。

Eyes of Fire

独立のジャーナリストとして反核問題を取材してきたロビー氏は1986年、その前年にフランスの国家諜報機関が引き起こした[環境NGOグリーンピースの核実験抗議船]「虹の戦士(レインボウ・ウォーリア―)号」爆破事件に関する著作『炎に燃える眼』(Eyes of Fire)を上梓している。「『北(=先進国)』の傲慢さは太平洋地域の多くの人々を当惑させました。」「バヌアツのような新興国家は、故ウォルター・リニ首相や、(ファア近郊のパペーテ市長だった)オスカー・テマル氏のような政治指導者に率いられて、独立の意思を表明するために『非核』宣言を行ったのです。」と、ロビー氏はIDNの取材に対して語った。

太平洋島嶼地域一帯に広がった抗議活動が1996年のフランスによる核実験を停止に追い込んだ後、反核運動の中心にいた市民団体は縮小するか、活動停止にいたった。なかには地球温暖化問題のような、喫緊の課題だと考えられる問題に焦点を移していった団体もあった。

Catherine Wilson/IPS

ロビー氏は、「たしかにフランスは太平洋で核実験を行いましたが、大国による鬼畜のような所業は他にもあります。」と語った。これらの核実験が終了すると、太平洋島嶼国の関心は他の問題に目が向けられるようになった。「1980年代のキーワードは『核の難民』でしたが、いまやそれは『地球温暖化難民』にとって替わられました。」とロビー氏は語った。

80年代には反核運動の最前線にいた「フィジー反核グループ」(FANG)は、今では活動を停止している。同団体は、タヒチにおけるフランスによる核実験と、原子力艦船や核兵器搭載艦船がフィジーに入港することを認めたフィジー政府の方針に反対していた。「非核独立太平洋」(NFIP)運動の事務局として機能した「太平洋問題資料センター」(PCRC、スバ)も、活動を停止している。

PIANGOのドゥイトゥトゥラガ事務局長は、PCRCの閉鎖とともに核問題は「人々の注目から外れていった。」と語る。「それでは太平洋島嶼地域では核の危機は去ったのか?」という問いに対して、ドゥイトゥトゥラガ氏は、「もちろん、そんなことはありません。核兵器は、私たちが直接それに巻き込まれているかどうかは別として、全ての人々にとって破壊的なものです。」と語った。

David Robie/ Wikimeida Commons

ロビー氏もまた、太平洋島嶼諸国は依然として核の危険に晒されていると考えている。特定の脅威とは、例えば、核実験由来の放射性残留物質による汚染、福島第一原発事故によるあらたな放射性降下物、米中間の対立、とりわけ核紛争の可能性を高める、台湾に対する中国の最終計画に関する推測などである。

シンプソン氏によれば、「太平洋島嶼諸国は、当然ながら核軍縮運動の一部でなければならなりません。」と指摘したうえで、その理由として、「核実験は太平洋の島々に住まう人々にとって、感情を揺り動かす問題です。太平洋地域の民衆は反核運動の核心部分を強化することができるのです。」と語った。

残念なことに、太平洋島嶼国の存在感は、核軍縮や保障措置の促進・強化といった重要問題を議論することになる2015年NPT運用検討会議では示せそうもない。(原文へ

※シャイレンドラ・シンは、南太平洋大学(フィジー・スバ)芸術・法・教育学部言語・芸術・メディア校のコーディネーターで上級講師(ジャーナリズム)。

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【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ

5年に一度の核不拡散条約(NPT)運用検討会議が4週間にわたって間もなく開催されるが、大量破壊兵器(WMD)その運搬手段を中東地域から廃絶するという目標は、依然として遠い夢のままだ。そして、2012年12月にヘルシンキで招集される予定だった「中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する会議」(中東会議)もまた然りである。

G7(カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、米国)外相会合もまた、この中東会議構想の行く末に一条の光を見出すことはできなかった。G7外相会合は、6月7日・8日にドイツ南部のエルマウで開催されるG7首脳会会議に先立って開かれたものである。

G7外相らは、4月15日に発表した共同声明のなかで「G7は、ファシリテーター及び1995年中東決議の共同提案国(ロシア、英国、米国)によって現在行われている努力、特に地域国の間で5回も開催された協議を歓迎する。」としたうえで、「これらの努力に関わらず、中東会議がこれまで開催されていない事を遺憾に思う」と述べている。

ドイツ北部の港町リューベックで開催されたG7外相会合で出された共同声明は、さらに、「地域の関係国は、可及的速やかに中東会議開催の日付及びアジェンダについてコンセンサスに至るよう相互に活発に取り組まなければならない。私たちは、すべての参加国の利害が考慮された場合にのみ,本会議は意味あるプロセスに通ずることを強調する。」と述べている。

NPT運用検討会議で採択された1995年の中東決議は、「大量破壊兵器、すなわち、核兵器、化学兵器、生物兵器、並びに、それらの運搬手段を効果的に検証可能な形で中東から廃絶した地帯を創設すること」を呼びかけている。

NPTは1970年に発効し、190か国が加盟している。

中東における非大量破壊兵器地帯(WMDFZ)は、1990年にエジプトが初めて提案した。それは、中東非核兵器地帯(NWFZ)を創設すべきとの長年に及ぶ提案を基礎としたものである。並行して追求されることを意図したこれら2つの構想には広範な国際的支持が集まったが、実際の進展をどう評価するかは難しい。

実際、[2012年]11月23日、米国は同年12月が期限であった中東会議を延期するとの声明を発している。会議の日程は改めて設定されていない。会議の共同招集者らは、いつ会議を開くべきか、遅延の理由は何かといった点について、意見が食い違っている。

先の米国による声明は、延期の理由として「中東の政治状況」と、「中東会議に関して容認可能な条件について参加国間の合意がないこと」を挙げている。

一方ロシアは、2012年11月24日の声明で、会議に向けた準備は既に「かなりの段階」に達しており、(米国による)延期理由は、「『中東の全ての国家が会議参加を了承したわけではない』というものにすぎない」として、2013年4月よりも前に会議を開催すべきだと呼びかけた。

この発表の時点で、フィンランドの外交官で会議のファシリテーターであるヤッコ・ラーヤバ氏は、イスラエルの参加確約を取り付けていなかった。イランは[12年]11月7日に参加を発表したが、会議でイスラエルと関わり合いになるつもりはないとも述べていた。イランは、中東会議が12年12月には開催されないであろうことを見越して会議参加を発表したのではないかという識者もいた。

こうしたなか、エジプトは長らく待ち望まれていた中東会議の延期に抗議して、13年4月29日、ジュネーブで開かれていたNPT運用検討会議準備委員会会合をボイコットし、中東会議の日程をできるだけ早く決めることを要求した。

米国の「軍備管理協会」がファクトシートで指摘しているように、NPT条約加盟国は2010年のNPT運用検討会議で初めて、1995年運用検討会議中東決議の履行に向けた進展をもたらすための5つの実際的措置に合意することに成功した。

具体的には、①NPTの寄託国でかつ中東決議の提案者である米国・ロシア・英国が、潘基文国連事務総長と協力して、「中東非核兵器地帯の創設について議論する国際会議」を2012年に開催すること、②「中東非核兵器地帯を創設するための国際会議」のファシリテーターを任命すること、③同国際会議の主催国となる政府を選定すること等が合意された。NPT加盟国は、来る2015年運用検討会議でこれらの合意事項に関する履行状況について取り上げることになるだろう。しかし、G7外相会合共同声明が示唆するように、中東会議の開催日程が改めて見直される可能性は低い。

にもかかわらず、国連安保理常任理事国のメンバーでもあるフランス・英国・米国を含むG7の外相らは、「我々は、国際社会の安定を推進する形で、すべての人にとってより安全な世界を追求し、核兵器のない世界に向けた環境を醸成することにコミットしており、この目的を達成するために、不拡散が極めて重要であることを強調する。」と述べている。

さらに共同声明は、「大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は、それが国際社会の平和と安全に対する主要な脅威を与えるものであることから、最優先課題であり続けている。制御されていない通常兵器の拡散が世界のいくつかの地域の安定を弱体化させている事実は、G7 がこの分野においても行動を取るための強い理由である。」と述べている。

NPT発効から45年、そして広島・長崎への原爆投下と第二次世界大戦終結から70年となる2015年に開催される第9回NPT運用検討会議に関してG7は、「核軍縮」「不拡散」「原子力の平和利用」という「相互に補強し合うNPTの三本柱への無条件の支持」を「再確認」した。

G7の外相らはこう指摘する。「NPTは核不拡散体制の礎石であり、第6条に従った核軍縮と、原子力の平和利用を追求するうえでの根本的な土台である。NPTは、世界をより安全な場所にするための死活的で永続的な貢献をなしている。NPTは加盟国の人々に日々利益を与えている。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核を「持つ者」と「持たざる者」の分断に国連が警告

【国連IPS=タリフ・ディーン

3年の任期を経てまもなく職を離れるアンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表が、「(この3年間は)軍縮にとって最良の時期とはいえませんでした。」と述べ、紛争に満ちた近年の世界情勢について暗い見方を示した。

こうした警告の背景には、核紛争のリスクを伴う新たな冷戦状況の登場や、シリアやイラク、リビアイエメンなど、政治的に不安定な中東地域で軍事紛争が拡大している現状がある。

「さらなる核兵器削減が実現する見通しは暗く、この25年でようやく勝ち取った軍縮の成果さえ後退局面にあるのかもしれません。」とケイン上級代表は今月6日に開催した国連軍縮委員会において語った。

まもなく国連事務次長の職を辞すケイン上級代表は、国連における最後の演説の一つのなかで、「核軍縮の規模とペースに関して、核を『持つ者』と『持たざる者』の間でこれほどの分断がある状況を私は見たことがありません。」と語った。

ケイン上級代表の警告は、核軍縮を巡る現状の行き詰まりを現実的に評価したものである。反核活動家らによれば、米ロ二国間の核兵器削減も事実上停滞状態にあるという。

たとえば、長い歴史のある米ロ間の中距離核戦力全廃条約のような、すでに得られている成果についてすら、反転の兆しがある。

一方で核戦力の削減・廃棄に関する多国間交渉の見通しはたっておらず、今後数十年にわたり、すべての核保有国が核戦力の近代化計画を推し進めている。

また、2010年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議での約束に違反して、中東非大量破壊兵器(WMD)地帯に関する国際会議は、依然として開催されていない。

「核政策法律家委員会」(LNCP)のジョン・バローズ事務局長はIPSの取材に対して、「国際社会は(まもなく5年ぶりに)NPT運用検討会議(4月27日~5月22日)に臨みますが、核軍縮は失敗する運命にある、あるいは少なくとも無期限に一時停止することになるでしょうか?」と問いかけたうえで、「私は必ずしもそうなるとは思っていません。」と語った。

国際反核法律家協会(IALANA)国連事務所の所長でもあるバローズ氏は、「ウクライナ危機から起こった核紛争の可能性も孕んだ緊張は、現在の傾向を冷静に見直してみるきっかけを与えるものになるかもしれません。」としたうえで、「(過去においても核戦争寸前まで達した)1962年のキューバミサイル危機が、その後の様々な軍縮合意、つまり、1963年の部分的核実験禁止条約、1967年の宇宙条約、1967年のラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)、1968年の核不拡散条約、1972年の米ロ間の戦略兵器削減合意と弾道弾迎撃ミサイル制限条約等につながりました。」と指摘した。

ジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長(軍縮問題担当)は、「2000年NPT運用検討会議で合意された「(NPT第6条「核軍縮義務」履行のための)13の実効的措置」や、2010年NPT運用検討会議で合意された64項目の行動計画と中東非WMD地帯化提案に関する合意、さらには、核兵器問題を人道的な影響の側面から捉えるという発想の転換が幅広く支持されるようになったことは、NPTの再検討プロセスを強化する良い兆候となりました。」と語った。

「しかしながら、実際の成果について市民社会が詳細に行っている評価によれば、米ロ間において冷戦思考が復活し、全ての核保有国が軍縮への取り組みを停滞させるなか、核兵器なき世界という目標が幻影と化しつつあります。」

「来たるNPT運用検討会議において、国際社会がこうした不吉な傾向を断ち切ることができなければ、2015年NPT運用検討会議は失敗に終わるでしょう。そうなればNPTの将来が危機に晒されることとなります。」とダナパラ氏は警告した。

「私たちに必要なのは、状況(核軍縮の推移)を冷静に把握することです。」とダナパラ氏は語った。

「1995年当時、(NPTによって核保有が認められていた)公式核保有国が5ヵ国、NPT未加盟の核保有国が1カ国(=イスラエル)でした。ところが今日では、核保有国は9か国となり、その内の4か国(=インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル)はNPTに加盟していません。」

「NPTが発効した1970年当時、世界における核弾頭の数は合計で3万8153発でした。それから40年以上経過した今日、核弾頭の総数は当時よりも2万1853発少ない1万6300発に減り、その内4000発以上が配備されています。そして世界の(核弾頭の9割以上を保有する)米国とロシアは、第四次戦略兵器削減条約(新START)発効から7年以内に配備核を3割削減して各自1550発までとすることを約束しています。」

また、NPT上のもう一つの核保有国である英国は、潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」を更新しようとしています。」とダナパラ氏は指摘した。

ケイン上級代表は次に通常兵器の問題を取り上げて、「私たちの周りには、地球を苦しめる残虐で共倒れ的な地域紛争のイメージが日々溢れています。これらの紛争は、野放図で違法な武器の流れによって悪化しているのです。」と語った。

毎年武力紛争で、74万人を超える男や女や子どもが命を落としていると推定されている。

「しかし、このような厚い暗雲の中にあっても、私はこの(国連軍縮担当)上級代表としての任期の間に、真の光明も見てきました。」とケイン上級代表は語った。

シリアの悲惨な内戦は、潘基文国連事務総長の言葉を借りれば、包括的でシリア人主導の政治プロセスなしに終わらせることはできないでしょう。しかし、ロシアと米国が「シリア化学兵器廃棄に向けた枠組み」に合意し、シリア政府を説得して化学兵器禁止条約に加盟させたことは、この血塗られた内戦にあって、一つの素晴らしい成果でした。」とケイン上級代表は付け加えた。

「シリアの加盟により、同国内の全ての申告された化学兵器は完全に除去され、さらに化学兵器生産施設の破壊プロセスが始まっています。」

「いわゆる『軍縮の停滞』から生まれ出てきた、人道主義を基盤とした核軍縮へのアプローチは、ニュージーランドが昨年国連第一委員会で発表した声明に155か国が賛同したことにも表れているように、圧倒的多数の国家によって支持されており、勢いを増しています。」とケイン上級代表は各国代表に語りかけた。

「このような人道的なアプローチは、核軍縮のいわゆる『現実主義的』な政治からの逸脱を意味するものではありません。むしろ、人道主義を基盤としたアプローチは、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的影響を強調し、それを国際人道法の中に位置づけようとするものです。」

「この動きは約8割の国連加盟国によって支持されています。(核保有国も)この数を無視することはできないでしょう。」

さらにケイン上級代表は、「昨年軍縮に関して、国際社会で得られた主要な成果の一つは、武器貿易条約が交渉開始からわずか1年半で発効に至ったことでした。」と指摘したうえで、「この真に歴史的な条約は、武器貿易に関わるすべての主体に責任を持たせ、国際的に合意された基準の遵守を義務付けるという、極めて重要な役割を果たすことになります。」と語った。

「このことは、武器輸出が武器禁輸に違反したり紛争を悪化させたりすることがないよう徹底するとともに、無許可のユーザーへの武器の流出や再移転を予防するために、武器・弾薬の輸入に一層厳しい規制をかけることで、実現が可能です。」

「私の考えでは、これらの成果は、もっとも厳しい国際環境下においても、軍縮・不拡散分野で私たちは依然として大きな前進を得られる可能性があることを示しています。」とケイン上級代表は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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イラン核合意に中東からさまざまな反応

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【ラマラIDN=メル・フリクバーグ】

イラン核計画に関する4月2日の枠組み合意に対する中東地域での反応は、イスラエルでも近隣のアラブ諸国でも複雑なものであった。こうした反応の背景には、地政学的野望や経済的競争、宗教的イデオロギー、個人的な政治野心、戦略的連携などの様々な利害関係が作用していた。

「P5+1」(国連安保理の五大国である中・仏・露・英・米にドイツを加えた6か国)とイランとの間のいかなる合意にも反対してきたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の反応は予想されたものであった。イスラエルに対して批判的な人びとは、ネタニヤフ首相の反応を「ヒステリック」だとか「右派反動」などと論じている。

枠組み合意がなされる数日前、ネタニヤフ首相は、イランはイスラエルに対する生存上の脅威であり、ホロコースト否認問題まで同時に持ち出して、いかなる合意も結ばないように米国政府に圧力をかけ続けていた。

しかしひとたび合意がまとまると、ネタニヤフ政権の閣僚のほとんどが、結ばれた合意の中心的問題がまるでイスラエルであったかのように、米国のバラク・オバマ大統領がイスラエルを裏切ったという見解で一致した。

高邁な使命を担っていると確信しているネタニヤフ首相は、いかなる合意を結ぶにしても、イスラエルの存在する権利がその前提条件であることをイランに認めさせるようオバマ大統領に要求していたが、成功しなかった。

イスラエルの評論家アレックス・フィッシュマン氏は、イスラエルの右派ウェブサイト「Ynet News」において、次のように多くのイスラエル国民の感情を代弁した。

「我々のワシントンの友人は、僅かな成果のために、中東の他の同盟国とともに我々を売ったのだ。」―フィッシュマン氏はイラン核合意をこのように評した。

フィッシュマン氏は、暫定合意はイランが軍事的な核計画に持たせている戦略的重要性の証左となるものだと論じた。

しかし、すべてのイスラエル国民が政府の見方に同調しているわけではない。

イスラエルのベングリオン大学中東研究学部長でイラン専門家であるハガイ・ラム教授は、「イランが生存上の脅威だという主張はイスラエルの(パレスチナ)占領の実態を覆い隠すためのものに過ぎません。」「イスラエル政府は長年にわたって、アラブとの和平は不可能であると主張してきました、その主張に無理があることがわかると、次はイランというあらたな対象を見出したのです。」と語り、ネタニヤフ首相の見方に異議を唱えた。

ラム教授はまた、左派紙『ハアレツ』の取材に対して、次のように語った。「イスラエルは、1996年以来毎年のように『イランは1年以内に核武装化する』と主張してきました。」

「仮にイランがその目的に向かっていると想定してみましょう。はたしてイランはイスラエルを攻撃するためにその核能力を使う意図を持っているでしょうか?」

「私の見方では、答えは間違いなく、どうみても『ノー』です。1979年以降イラン・イスラム共和国を研究してきた歴史家らの大半は、イランの政策は、救世主的、あるいは宗教的な考慮ではなく、国益を基盤としたもっと実利的なものに動かされているとみています。」

「イランがイスラエルにとっての生存上の脅威だという主張は、ごまかしだとまでは言えないとしても、間違ったものです。イスラエルにはより大きくより危険な敵がいます。イランは、イスラエルの運命に真の危険をもたらす、すなわち、イスラエル・パレスチナ紛争を覆い隠すための手段となっているのです。」

しかし、イランの地域的な政治野心に懸念を示している中東の国々はイスラエル政府だけではない。

奇妙な仲間

実際イスラエルは、対イラン合意に対して疑念を示しているアラブ諸国という「奇妙な仲間」を見出している。

調査・リスクアドバイス企業「中東ブリーフィング」(MEB)のサミール・アルタキ氏とエサム・アジズ氏は、アラブ諸国にはイランの動機を疑うに足る理由があると考えている。両氏は、「イラン核合意後、アラブに期待できること」という記事の中で「中東の指導者らは、原則的に対イラン核合意を拒絶しているわけではありません。しかし彼らは、イランの核計画全体を、米国政府とは異なる観点からみているのです。」と指摘したうえで、「彼らは、ある国が核兵器の保有を目指す場合、その意図は次の2つのいずれかを意味すると見なしている。つまり一つは、軍事的に決定的な報復打撃能力を手に入れようとすることであり、もう一つは、核の脅しを通じて国境を越えた影響力を拡大しようとすることである。」と述べている。

記事はさらに、イランが(イスラム教シーア派の)フーシを支援して分裂に追いこまれたイエメンを例に挙げて、地域の分断について指摘している。イラク、アフガン、レバノン、シリア、バーレーンもまた、イランによる介入のさらなる例として挙げられている。

「ここでの問題は、核兵器を持ってはいないが、制裁を解除され、弾道ミサイル能力への重大な制限も解かれたイランが、中東地域では依然としてより攻撃的な国になるということだ。」と両氏は指摘している。

イエメンでフーシと戦闘状態にあるスンニ派のサウジアラビアもまた、敵対するシーア派勢力と対イラン合意に警戒感を示すとともに、イランが中央政府の弱体化と宗派対立がもたらす政情不安利用して影響力を拡大しようとしているとみている。

サウジアラビア政府は、対イラン合意に関して宥和的な声明を発しているが、同時にまた、「善隣、アラブ諸国内政への不干渉と主権尊重の原則」を呼び掛けてもいる。もっとも、サウジアラビアもイランも、シリアやイラク、イエメンにおいてそれぞれが対立する勢力に支援を行なっている。

アラブ首長国連邦(UAE)の研究者ナセル・アフメド・ビンガイブ氏は「アルジャジーラ」の取材に対して、「経済的な苦境に立たされているペルシャ湾岸諸国は、西側諸国がイランを容認した場合、同国の安価な石油がすでに飽和状態の国際石油市場に流れ込み、価格を更に押し下げる可能性があるため、経済競争の点で懸念を持っています。」と指摘した。

しかし、湾岸諸国では対イラン合意に対して複雑な反応がある。

この点についてビンガイブ氏は、「合意支持派は、今後包括合意が実現すれば全ての人々にとってマイナスになる破壊的な核軍拡競争に中東が陥る可能性を回避できると論じている。しかし一方で、イランとの包括合意は、中東に多くの悪影響をもたらすだろうとの意見もあります。」と語った。

エジプトの政治評論家アフメド・アブド=ラボ氏は同国の日刊紙『アル・アフラム』の取材に対して、「スンニ派とシーア派の対立が深まれば中東で宗派対立が強まるというのが、もっとも可能性の高いシナリオです。」「シーア派のリーダーであるイランと西側諸国との間で枠組み合意がまとまったことで、サウジアラビアが主導するスンニ派の間では不安が高まっています。」と指摘した。

トルコ国内の意見もイラン問題に関して割れている。イスタンブールのカディル・ハス大学のアキン・ウンベル准教授(国際関係)は、トルコの対イラン政策は「アラブの春」以降変わってきていると語る。

トルコは、2011年にはイランの地域的野望を警戒して、北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛計画に与した。

「しかしトルコは一方で、イラン核計画が国際社会の注目を浴びる陰で、欧州連合の南部ガス回廊構想に関して、最終的にはイランからの協力を取り付けるという戦略を進めています。最初はナブッコ・パイプライン計画の形で、それが頓挫すると、次にアナトリア横断天然ガスパイプライン(TANAP)の形で貢献させようとしているのです。」とウンベル氏は語った。

従って、対イラン協議の間、外交的に外されてしまったことは、トルコにとって痛手ではあったが、イランが南部ガス回廊に接続することができれば、依然としてイランから利益を引き出すことができる立場にある。

ほとんどのイラン国民は、現在のイラン指導部が米国という「大悪魔」と手を結んだと考える一部の強硬派の人々を除けば、イランが再び尊重される一員として国際社会に迎え入れられる可能性を歓迎している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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政治的な美辞麗句を超えてエスカレートする核の脅威

【国連IPS=タリフ・ディーン】

米ロの新たな冷戦状況が生まれるなか、核の脅威が(恐らくは政治的な美辞麗句を超えて)エスカレートし始めている。

元国連軍縮局上級政務官のランディ・ライデル博士は、核を巡る現状に関する現実的な評価として、「一般大衆は、気の毒に思います。なぜなら、大衆は核に関して、2つの全く異なる説を聞かされているからです。」と語った。

つまり一方の説は、「誰もが急いで核兵器の取得に向っている、或いは、それら(=保有核兵器)の(近代化措置を通じて)完全なものにしようとしている。」というものである。

Randy Rydell/ Abolition 2000

「そしてもう一つの説は、核兵器の非人道性に焦点をあてた核軍縮を目指す動きが勢いを増すなか、核軍縮が大幅に進展するだろうというものです。」と、「大量破壊兵器(WMD)委員会」の元主任顧問で、報告書執筆の責任者でもあるライデル博士は語った。

またライデル博士は、「皮肉なのは、もし後者の説が間違っているとすれば、前者の説がこの論争に勝ち、その結果我々人類すべてが敗者になるということです。」と述べ、核兵器が使用される恐ろしいシナリオを予見した。

ロンドンに本拠を置く『エコノミスト』誌は最近、「冷戦終結から四半世紀を経た今、世界が直面する核戦争の脅威は拡大しつつある。」という非常に悲観的なトップ記事を掲載した。

ソビエト連邦崩壊から25年が経ち、世界は今、新たな核の時代に突入しつつある。」「核戦略は、ならず者国家や地域の敵対勢力が当初の5つの核大国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)と争う闘技場となっている。さらに、核大国自身が取り決めた協定も、疑念と対抗心に冒されている。」と記事は述べている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)軍備管理・軍縮・不拡散プログラムのシャノン・カイル上席研究員はIPSの取材に対して、「世界が『新たな核の時代』に突入しつつあるかもしれないとする『エコノミスト』誌の論評に同意します。」と語った。

「しかし私は、『新たな核の時代』の意味合いについて、核保有国による核兵器への新たな支出という狭い観点から定義するのではなく、むしろ、冷戦期の二極秩序に替わるような多極の核世界が登場したというより広い観点から定義されるべきだと思います。」とカイル氏は付け加えた。

Shannon Kyle/ SIPRI

カイル氏はまた、「核兵器が東アジアや南アジア、中東の国々における防衛・国家安全保障政策の中心的要素になりつつある。」と指摘したうえで、「こうした国々では、核兵器が地域の安定や抑止に関する計算を複雑にし、予測不能なものにしているのです。」と語った。

そのために、地域の敵対構造が、核クラブが小さかった頃にはあり得なかった、核拡散や、軍事衝突にさえも、つながるリスクが高まっている。

他方、不吉な前触れもある。イランの核武装を防ぐための交渉は、依然として包括的な合意に至っていない(枠組み合意に達したものの、引き続き6月末までの最終合意を目指している:IPSJ)。

サウジアラビアは、「平和目的のため」だとして、韓国と新たな核協力協定を結んだ。一方、北朝鮮は核戦力を誇示しようとしている。

先週、北朝鮮の玄鶴峰駐英大使が、米国の核攻撃に対して北朝鮮は自らの核兵器を使用すると発言したと「スカイニュース」が報じた。

玄大使は「米国のみが核兵器攻撃というオプションを独占しているわけではない。」と指摘したうえで、「もし米国が我々(=北朝鮮)に攻撃を加えれば、我々は反撃するだろう。我々は、通常戦争に対しては通常戦争で、核戦争に対しては核戦争で応じる用意ができている。我々は戦争を望まないが、戦争を恐れてはいない。」と語った。

『エコノミスト』誌はまた、すべての核保有国が「その核戦力の近代化をはかるために多額の」支出を行っている、と指摘している。

ロシアの国防予算は2007年以降で5割以上も増加している。このうち3分の1が核兵器向けだが、この割合はフランスのそれの2倍である。

中国は潜水艦や移動ミサイル部隊に投資し、米国は核戦力の近代化予算として3500億ドルの支出を議会に認めさせようとしている。

カイル氏は、「『新たな核の時代』の副次的な側面はより技術的な性格を持っており、核戦力と通常戦力との間の作戦上の壁が低くなりつつあることと関係しています。」と指摘した。

「とりわけ、技術的進歩が著しい衛星を利用した偵察・監視システムと組み合わせた、新型かつ先進的な長距離・精密誘導ミサイルシステムの開発は、従来核兵器に割り当てられていた役割と任務が、通常兵器に対して与えられつつあることを意味します。」とカイル氏は語った。

「この傾向は特に米国において顕著だが、南アジアの文脈においても見ることができます。インドは、新たな限定戦争ドクトリンの一環として、パキスタンの核戦力を標的とした通常戦力による攻撃システムを採用しています。」

カイル氏はまた、「多くの専門家らが、こうした技術的な傾向から、危機の際に不安定性が増し、核兵器使用のリスクを拡大しかねないドクトリン上の変化が生じている、と指摘しています。」と語った。

「こうした現状が示すものは、(ベルリンの壁が1989年11月に崩壊して)冷戦が終結して以来、世界の核弾頭の数は大幅に減少しているものの、核兵器によって生起するリスクと危険の幅は実際には拡大しているということです。」

Image: The United States conducted the first in a series of high-yield thermonuclear weapon design tests, the Castle Bravo test, at Bikini Atoll, Marshall Islands, as part of Operation Castle on 1 March 1954. Credit: U.S. Department of Energy. Credit: U.S. Department of Energy
Image: The United States conducted the first in a series of high-yield thermonuclear weapon design tests, the Castle Bravo test, at Bikini Atoll, Marshall Islands, as part of Operation Castle on 1 March 1954. Credit: U.S. Department of Energy. Credit: U.S. Department of Energy

「その特異な破壊力から核兵器が極めて危険な兵器でありつづけているとすれば、核兵器が危険なものとみなされ、最終的には禁止されるような世界に到達するための集団的な取組みを強化しなくてはならないということに反対する者は誰もいないでしょう。」とカイル氏は語った。(原文へ

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