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CIA秘密収容所の調査で曲がり角に立つポーランド

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【ワルシャワIPS=クラウディア・シオバヌ】

当局筋によると、ポーランド領内に設置されたとされる米中央情報局(CIA)秘密収容所の存在に関するポーランド当局の調査が、真相解明を求める声が高まっているにもかかわらず、停滞している。

2007年の欧州会議(ディック・マーティー「法と人権に関する調査委員会」委員長)報告や「オープン・ソサエティ」が最近発表した正義イニシアティブ報告書「グローバル化する拷問」など、様々な情報筋が、ポーランドが、2002年末からCIAのによる「テロ容疑者」強制移送プログラムに協力してCIAが運営する秘密収容所を国内にホストしていたと指摘している。 

これは、米国の公的記録からもうかがわれることだ。2004年の CIA監査報告書は、2001~03年にかけてアルカイダと関係があったとみられる容疑者のCIAによる取り扱いについて記述している。その容疑者の一人が、2000年10月にイエメンのアデン港で米艦船「コール」号の乗員17人を殺害したテロ事件の首謀者と疑われたサウジアラビア国籍のアブド・アルラヒム・アルナシリ氏である。

 同報告書によれば、アルナシリ氏は2002年11月までにCIAによって身柄を拘束され、「高度な尋問技術」(EIT)を同年12月4日まで適用された。該当箇所にはかなりの編集が加えられているが、「2002年11月水責めを2度行った…その後、アルナシリは従順になった。しかし…に移送後、再び自白をしなくなったと思われる…」と読み取れる。 

これらの断片的な記述から疑われるのは、アルナシリ氏は12月4日直後に「別の場所」に移送され、改めてEIT(水責めなど)を受けた、ということである。 

そして、この「別の場所」と見られているのがポーランドである。ポーランド国境警備隊が人権擁護団体「ヘルシンキ財団」に示した文書によると、タイ発ドバイ経由の「N63MU」便が2002年12月5日にポーランドのシマーヌィ空港に降り立った。乗客8人・乗員4人だったが、ポーランドを出発したときは乗員4人だけだった。 

英国のNGO「リプリーブ」のクロフトン・ブラック氏は、強制移送を行ったと疑われる200~300のフライト(全てが米国で登録された私有航空機)を調べたが、現時点では「12月5日頃にタイからアルナシリ氏を乗せたと見られるのはこの便だけだった。」と語った。 

こうした公式記録(テロ容疑者として拉致された他の人々にも活用が可能)に加えて、国連、欧州議会、及びジャーナリスト等が行った聞き取り調査に応じたポーランと米国を含む様々な国の政府及び諜報機関の関係者が、口を揃えてCIAの秘密工作にポーランドの秘密収容所が重要な役割を果たしたと指摘している。 

ただし、ポーランドと米国両政府が、この強制移送の実態がどのように機能していたかについて公式なコメントを拒否しているため、関係者は匿名を条件に情報提供を続けている。 

ポーランドでは、2008年になってワルシャワ検察当局が調査に乗り出し、2011年まで2人の検察官が積極的に真相解明にあたった。しかし最近になって事態は暗礁に乗り上げている。 

2011年、日刊紙『Gazeta Wyrbocza』は、1人目の検察官が、外国の政府当局者が拷問を行った施設を領土内に置くことを認めたポーランド政府の決定について専門家に法的な見解を求める段階に至った、と報じた。 

さらに2012年には、2人目の検察官が、2002年~04年まで諜報部門の責任者だったズビグニェフ=シェミョントコフスキ氏に対して、拷問施設を受け入れたことは国際法違反にあたるとして起訴する可能性があることを通告した、と報じている。またシェミョントコフスキ氏も、そのような嫌疑をかけられていることを認めた。しかしこの報道がなされたのちなぜか調査を担当する検察局がワルシャワからクラクフに変更された。 

アルナシリ氏の弁護を担当しているミコラジ・ピエチャック氏は、2010年にアルナシリ氏がポーランド当局から被害者ステータスを認定されたのを受けて、当局から捜査の進捗状況に関する報告を受ける権利を獲得した。ピエチャック氏はIPSの取材に対して、「当時ワルシャワ検察局との協力関係は良好で、2人目の検事は(機密ファイルを含む)全てのファイルへのアクセスを認めてくれました。しかし担当検事局がクラクフに移ってからは、資料の閲覧が困難となり、かなりの圧力をかけて閲覧できても公開資料に限られているのが実情です。」と語った。 

またピエチャック氏は、「1つの案件を3人もの検察官が立て続けに担当するのは、極めて異例なことです。とりわけこの1年間、調査について何の進展もないのは、非常に残念です。」と語った。 

クラクフ検察当局の報道官は、IPSの取材に対して、当初2月に事案を終了させる予定であったが延期となり、しかも今後の予定については公表されていない事実を認めた。 

 ヘルシンキ財団のアダム・ボドナー法務部長は、「(ポーランド当局が)調査期間を引き延ばそうと手を尽くしている現状は、この案件について正式な最終判断を避けたいという思惑の表われである。」と指摘した。 

「これはポーランドの検察当局や政治家にとって厄介な事態です。」「彼らは、ポーランドが国として関与した犯罪を不問にはできないでしょう。そんなことをすれば、激しい抗議を引き起こしかねません。しかしだからといって、今日の国内政治の現状を考えれば、シェミョントコフスキ氏やレシェック・ミレル氏(2001年~04年当時の首相)を告発することは不可能です。」とボドナー氏はIPSに語った。その結果、やむを得ずできるだけ事態の先延ばしを図ろうとしているのです。」とボドナー氏は語った。 

とはいえ、この事案を秘密裏に解決することはほぼ不可能である。というのも、アルナシリ氏がすでにポーランドを訴えて欧州人権裁判所に訴訟を持ちこんでいるからである。CIAが最初に「最重要被収容者」とみなし、アルナシリ氏と同じ便でポーランドに移送されたと見られているアブ・ズバイダフ氏も、同様の提訴を検討している。 

ピエチャック氏とボドナー氏によると、たとえポーランド政府がECHR(欧州人権条約)に対していかなる情報も開示しなかったとしても、同国が自国領内に存在したCIAによる強制移送の被害者に対して保護を申し出ず、さらには米国に移送されれば死刑になるリスクがあることを知っていながら移送を許可した(ジュネーブ条約)違反行為について、事実関係を証明できる十分な証拠を得ているという。 

一時期全ての捜査関連ファイルに目をとおした経験があるピエチャック氏は、「この事案をひっくり返すことは極めて困難だろう。なぜなら、この事案には証拠が多く存在し、当局も検察局に保管している証拠資料について、いまさらあたかも存在しなかったかのように振る舞うことはできないからだ。」と語った。 

またピアチェック氏は、ポーランド当局の調査が何の成果ももたらさなかった場合、被害者を代弁する者として、ポーランドの裁判所に訴訟を提起し、当局からかつて提示された機密情報を証拠として提出することも辞さない、としている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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非人道性の最たる兵器(池田大作創価学会インタナショナル会長)

【IPSコラム=池田大作】 

「核兵器は非人道的である」との考えに、世界のほとんどの人々が賛成するのではないでしょうか。今、核兵器を非人道性に基づいて禁止しようとする動きが芽生えつつあります。 

核不拡散条約(NPT)運用検討会議では、これが明確になりました。「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」との一文が最終文書に盛り込まれたのです。 

本年3月4日—5日にかけて、ノルウェーのオスロで「核兵器使用の人道的影響」をテーマにした政府レベルの国際会議が開かれます。それに先立ち、3月2日—3日には、核兵器を禁止する条約の実現は可能であり喫緊の課題であることを示すために、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)による市民社会フォーラムもオスロで開催されます。

 今や保有国の間でも、核兵器の有用性に対する認識の変化がみられるようになってきています。昨年3月26日、アメリカのバラク・オバマ大統領は韓国で行った講演で「我が政権の核態勢は、冷戦時代から受け継いだ重厚長大な核兵器体系では、核テロを含め今日の脅威に対応できないとの認識にたつ」と述べました。 
 
また昨年5月の北大西洋条約機構(NATO)サミットで採択された文書でも、「核兵器の使用が考慮されねばならないような状況は極めて考えにくい」との見解が示されています。いずれも、核兵器を安全保障の中心に据え続けねばならない必然性が現実的には低下していることを示唆しています。 

このほか、核兵器に対する問題提起は、他の観点からも相次いでいます。 
 
 世界全体で核兵器の関連予算は、年間で1050億ドルにのぼるといいます。その莫大な資金が各国の福祉・教育・保健予算に使われ、他国の開発を支援するODA(政府開発援助)に充当されれば、どれだけ多くの人々の生命と尊厳が守られるか計り知れません。核兵器は、保有と維持だけでも重大な負荷を世界に与え続けているのです 

加えて昨年4月には、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)とPSR(社会的責任を求める医師の会)により、核戦争が及ぼす生態系への影響についての研究結果をまとめた報告書「核の飢餓」が発表されました。 
 
 そこでは、比較的に小規模な核戦力が対峙する地域で核戦争が起きた場合でも、重大な気候上の変動を引き起こす可能性があり、遠く離れた場所にも影響を与える結果、大規模な飢餓が発生して10億人もの人々が苦しむことになると予測されています。 

私は、これらを考慮した上で、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる「持続可能な地球社会」への道を開くために、核兵器の問題に関して三つの提案を行いたい。 

 一つ目は、国連で議論されている「持続可能な開発目標」の主要テーマの一つに軍縮を当て、2030年までに達成すべき目標として「世界全体の軍事費の半減(2010年の軍事費を基準とした比較)」と「核兵器の廃絶と、非人道性などに基づき国際法で禁じられた兵器の全廃」の項目を盛り込むことです。 

二つ目は、国際社会で核兵器の非人道性を中心とした議論を活発化させることで、核兵器禁止条約の交渉プロセスをスタートさせ、2015年を目標に条約案のとりまとめを進めることです。 

三つ目は、広島と長崎への原爆投下から70年となる2015年にG8サミット(主要国首脳会議)を開催する際に、他の核保有国、国連、非核兵器地帯の代表などが一堂に会する「『核兵器のない世界』のための拡大首脳会合」を行うことです。 

オバマ大統領は、韓国での講演で、「米国には、行動する特別な責務がある。それは道徳的な責務であると私は確信する。私は、かつて核兵器を使用した唯一の国家の大統領としてこのことを言っている・・・何にもまして、二人の娘が、自分たちが知り、愛するすべてのものが瞬時に奪い去られることがない世界で成長してゆくことを願う一人の父親として言っているのだ」と述べました。 

ICAN
ICAN

国や立場の違いを超えて一人の人間として発したこの言葉に、あらゆる政治的要素や安全保障上の要請を十二分に踏まえてもなお、かき消すことのできない切実な思いが脈打っている気がしてなりません。私はここに、「国家の安全保障」と「核兵器保有」という長年にわたって固く結びつき、がんじがらめの状態が続いてきた〝ゴルディオスの結び目〟を解く契機があるのではないかと考えるのです。 

核時代に生きる一人の人間として思いをはせる上で、広島や長崎ほどふさわしい場所はありません。 

2008年に広島で行われたG8下院議長サミットに続いて、各国首脳による「拡大首脳会合」を実現させ、「核兵器のない世界」への潮流を決定づけるとともに、2030年に向けて世界的な軍縮の流れを巻き起こす出発点にしようではありませんか。(原文へ) 

IPS Japan 

※池田大作氏は日本の仏教哲学者・平和活動家で、創価学会インタナショナル(SGI)会長。 池田会長による寄稿記事一覧はこちらへ。

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イスラエルとパレスチナ、穏健派の見解

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【エルサレムIPS=ピーター・ヒルシュバーグ】

停戦が何度も破られ、実現されない平和と和解の約束を聞いてきた人々は、最近のイスラエルとパレスチナの停戦協定とイスラエルのオルメルト首相の新たな対話の呼びかけを、心から喜ぶことができない。

 パレスチナ政府の元官僚でファタハ党の幹部であるアブ・ザイダ氏は、イスラエルのテレビに出演してパレスチナの立場を説明する穏健派であり、両国の対等な交渉による解決を信じているが、「真の交渉再開からはかけ離れた状態だ」とIPSの取材に応じて語った。「けれども戦闘を始めるよりは、実らない和平交渉の話をする方がましである」。 

5ヶ月に渡る流血の応酬の後、イスラエルとパレスチナの指導者はそれぞれ、過激派組織によるロケット弾攻撃、ガザ地区での軍事活動を停止することに合意した。 

アブ・ザイダ氏は、停戦の恒久化が必要であり、次のステップはそれぞれの人質と囚人の解放だという。さらにイスラエル側がパレスチナ人の通行を妨害している国境検問所と道路上の防塞を取り除けば、全面的な暴力の停止になる可能性がある。 

停戦はハマスの軍事力回復のための時間稼ぎだとするイスラエルの高官に対し、アブ・ザイダ氏は、ハマスがイスラエルを認めて交渉をするための、そしてハマスが武装組織から政治組織になるための、準備期間だと考えている。 

オルメルト首相はパレスチナ政府が国際社会の声を聞き入れて、暴力を放棄し、イスラエルを認め、パレスチナ難民の帰還権をあきらめれば、独立したパレスチナ国家として認めるとしているが、アブ・ザイダ氏は「これでは真の平和をもたらさない。両者が1967年国境に基づいて、対等な国として交渉すべきだ」という。 

一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長のハマスとの統一政府設立の話し合いは、財務大臣と内務大臣のポストをめぐる不一致から行き詰まっていて、これではハマスが権力についてからの経済制裁を解除できず、停戦の維持も難しい。先行きの見えないイスラエルとパレスチナの情勢について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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パレスチナ人専用バス路線の導入は民族差別政策に他ならない」とUAE紙

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【アブダビWAM】

「イスラエル運輸省は3月4日、アラブ人の乗客は「セキュリティー・リスク」だというユダヤ人入植者の反対を受けて、ヨルダン川西岸地区(ウェストバンク)からイスラエル中心部に通勤するパレスチナ人を対象に、新たに専用バスの運航を開始した。しかしこのようなことが実際にあり得るだろうか?このような措置は、民族毎に人々の往来を隔離する露骨な人種差別政策に他ならない。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。 

「他でもないユダヤ人国家イスラエルが、このような人種隔離政策を施行したとは、歴史の皮肉とでも言う他ない。かつて第二次世界大戦以前の欧州諸国で、ユダヤ人を標的に類似の政策が施行された歴史の教訓を、イスラエル当局関係者は、既に忘れてしまったというのだろうか?」とガルフ・ニュース紙は3月5日付の論説の中で報じた。

 運輸省当局は、今回の措置は「パレスチナ人がイスラエルに入るためのサービスを改善するためのものだ。」と主張した。しかし「パレスチナ労働組合総同盟によると、国際労働機関(ILO)は、このイスラエルの措置を「あからさまな人種差別」だとして強く非難している。しかし、このような措置に対しては、ILOにとどまらず、すべてのまともな考えをもった人々や各国政府が、『(このような政策は)不快で、下品かつ不道徳であり、全く誤ったものである」という主張を堂々と声高に叫び続けるべきである。」と同紙は報じた。 

またガルフ・ニュース紙は、「イスラエルがパレスチナ人の土地を不法に占領し住民を迫害していること自体、既にとんでもないことだが、今やイスラエルは公然とパレスチナ民族を侮辱しているのである。」と報じた。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 

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核兵器と闘う「人道外交」

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【オスロIPS=ジャムシェッド・バルアー】

史上初めて、核兵器禁止の必要性を訴えるために、「人道外交」が展開された。しかし一方で、世界を何回も破壊できる能力をもつ1万9000発にのぼる核兵器の大部分を保有するP5(国連安保理の5常任理事国)は、事前に示し合わせたうえでこの動きに加わらなかった。 

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

  この人道外交にむけた最初のステップは、ノルウェー政府が3月4日から5日にかけてオスロで主催した政府間会合「核兵器の人道的影響に関する国際会議」においてとられた。さらに、メキシコフアン・ホセ・ゴメス・カマチョ国連大使は、今回の会議をフォローアップする会合を「適宜」、「必要な準備の後に」メキシコ政府がホストして開催すると発表した。 

 この会議には、127か国の政府代表、国連諸機関に加え、国際赤十字委員会(ICRC)、国際赤十字赤新月運動、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)をはじめとした市民団体など約550人が参加した。 

またICANは、ノルウェー政府の支援を得て、政府間会合直前の3月2日~3日にかけて「市民社会フォーラム」を開催し、約500人の活動家、科学者、医師、その他の専門家らが出席した。同フォーラムは、すべての核兵器を違法化する世界的な運動にさらなる弾みをつける契機となった。 

ICANの代表らは、各国政府や国際赤十字赤新月社連盟などと協力して、核兵器禁止条約の実現に向けて取り組んでいくと述べた。ICANのプロジェクト・マネージャーであるマグナス・ロボルド氏は、東京に本部を置く在家仏教組織「創価学会インターナショナル」(SGI)の池田大作会長による2013年の平和提言を歓迎した。 

 池田会長は、平和提言の中で、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を発足させ、非人道的であり、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを開始させること提案している。 

SGIの寺崎広嗣平和運動局長は、ICANの市民社会フォーラムもノルウェー政府主催の政府間会合も、核兵器なき世界をもたらす重要な機運を醸成したと語った。 

SGIは、2015年の主要国首脳会議(G8)広島・長崎原爆投下70周年が、核兵器なき世界に向けた拡大首脳会議を開催する重要な節目になることを期待している。 

政府間会合の参加者の多くが、P5(米、ロ、中、英、仏)が特に理由も示さず会議を欠席したことへの失望を表明した。 
 
 一方、政府間会合の議長を務めたノルウェーのエスペン・バート・アイデ外相は、(P5の欠席にもか

Espen Barth Eide
Espen Barth Eide

かわらず)「多くの国が、全世界からの参加を得られるような方法で、核兵器がもたらす人道的影響についてさらに探求していくことに興味を示した。議論を継続し、核兵器の人道的影響に関する議論の幅を広げていくことにも興味を示した。」と政府間会合の成果を総括した。 

アイデ外相は、P5の会議ボイコット決定に対する厳しい批判を避けつつ、「(会議に)これだけの幅広い参加を得たということは、核兵器爆発のもたらす結果が我々すべての人にとって極めて重大な問題であると認識されているのみならず、この問題に対する世界的な懸念が高まっていることを反映しているものであると考える。」と述べた。 

ノルウェーが28か国から成る北大西洋条約機構(NATO)の原加盟国であることを考えると、これらの発言は大きな意味を持ってくる。NATOは2010年11月のリスボン会合で「戦略的概念」を発表したが、ここで、「NATOは核兵器なき世界への条件を作り出すという目標を掲げるが、世界に核兵器がある限り、NATOは核同盟であり続けることを再確認する」としているのである。 

アイデ外相は、IPSの取材に対して、ノルウェーは「核兵器なき世界の条件づくり」に邁進すると強調した。アイデ外相は、圧倒的多数の国家が核不拡散条約(NPT)に署名した1968年以降では、今日ほど、核不拡散への懸念から、すべての核兵器がもたらし続けるリスクに対する認識が高まった時期はないとみている。 

2010年のNPT再検討会議以来、まだ生まれたばかりではあるが、核兵器の違法化を求める運動が大きくなりつつある。 

2010年NPT運用検討会議の最終文書は、「核兵器のいかなる使用も人間に与える壊滅的な結果に対する深い懸念」に留意し、「全ての国家が、国際人道法も含め、適用可能な国際法を常に遵守する必要性」を再確認している。 
 
 これに、2011年11月の国際赤十字赤新月運動の代表者会議における決議が続いた。同決議は、「法的拘束力ある国際取り決めを通じて、核兵器の使用を禁止し、完全に廃絶するための交渉を誠実に追求し、緊急性と決意を持って妥結させること」をすべての国家に対して強く訴えた。 

 その後、2012年5月に開かれた2015年NPT運用検討会議第1回準備委員会において、ノルウェーとスイスを中心とした16か国が、核軍縮の人道的側面に関する共同声明を発した。同声明は、「冷戦の終結した後でも、核による絶滅の脅威が21世紀の安全保障環境の一部であり続けていることに深い懸念を持つ」と述べている。 

また同声明は、「これらの兵器は、いかなる状況においても再び使用されてはならないということが極めて重要である……すべての国家が、核兵器を違法化し核兵器なき世界の実現を図る取り組みを強めなくてはならない。」2012年10月、この声明は、小さな修正を加えて、国連総会第1委員会に35の加盟国とオブザーバー国によって提出された。 

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

こうした広範な意見に沿うように、ICRCのピーター・マウアー総裁は、ノルウェー政府が主導して、「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が開かれたことを歓迎し、「核兵器は、軍事、技術、地政学的な観点からこれまで何十年にも亘って論じられてきたが、今回の会議以前に、核兵器が人間に与える影響を論じるために諸国が集ったことがないというのは驚きだ。」と語った。(原文へ) 

IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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まるで冷戦が終わっていないかのような核の警戒態勢

【ベルリンIDN=ジャムシェッド・バルアー】

国連軍縮研究所(UNIDIR)の最新の報告書が、20年前に終わったはずの冷戦が変わらず続いているかのように、米露両国が核戦力の多くを、数分以内に発射できる高度な警戒態勢下に置きつづけているという憂慮すべき結論を引き出している。 

ハンス・M・クリステンセン(米国科学者連盟[ FAS]核情報プロジェクトディレクター)とマシュー・マッケンジー(天然資源防衛評議会)の共著である報告書『核兵器の警戒レベルを下げる』によると、仏英と合わせると4か国で約2000発の核兵器が短い通告で使用可能な状態にある。これはその他の核兵器国が保有する核弾頭数を全て合わせた数よりも多い。

 「現在の警戒レベルは冷戦期の思考に深く根ざすものだが、現在および予測できる将来の安全保障上の必要を大きく上回っており、核兵器の占める主要な位置や役割を低減しようとの取り組みに反するものである。この警戒レベルは、ロシアの核戦力が警戒態勢下にあるので米国の核戦力も警戒態勢を保ち、そのまた逆も起こるという循環的で(しかし誤った)論理に基づくものである。別の言い方をすれば、核戦力がもし警戒態勢下になければ、核戦力を警戒態勢下に置く必要はなくなるということでもある。」と報告書は指摘している。 

報告書の著者らが指摘するように、国際社会は警戒態勢下に置かれた核弾頭数の削減を望んでおり、多くの退役軍人も、十分な配慮と計画をもってすればそれは可能だと論じている。 

「しかし、核を警戒態勢下に置く4か国の核関連当局は、警戒態勢を解除すればかえって不安定化を招く危険性があり、しかもそれを証明するのは困難かつコストが高すぎると主張している。こうした議論は、核態勢に変化をもたらそうとする力を抑え込むためにこれまでも使われてきた論理である。」と同報告書は指摘している。 

また同報告書によると、「戦略的抑止・グローバル打撃」(作戦計画8010-08)という米国の現在の核戦争計画の名称自体が、米核戦力の2つの任務を表しているという。 

この計画の「戦略的抑止」の部分では、敵国が米国およびその同盟国を攻撃することを抑止するための確実な報復能力を展開することに焦点があてられている。一方、「グローバル打撃」の部分では、抑止が機能しなかった場合も含めて、数多くの戦争シナリオが立てられている。 

この計画の基礎となっている「核兵器運用政策」(ドナルド・ラムズフェルド国防長官が2004年4月19日に署名した「NUWEP-04」)は、「米国の核戦力は、潜在敵の指導層が非常に重きを置き、戦後の世界において自らの目的を達するために頼りとなるような、重要な戦争遂行および戦争支援資産・能力を破壊する能力を持つもの、あるいは持っていると相手に思わせるようなものでなくてはならない」と述べている。 

上記の報告書によれば、核戦力の2つの任務は、オバマ政権が現在進めている「核態勢見直し」(NPR)後の動向にも反映されているという。ある米国防総省(ペンタゴン)高官の言によれば、ここで問題とされているのは、「敵を抑止するために核兵器を運用する指標となる概念は何であるか、そして、すでに始まってしまった核紛争の被害を最小限にして終わらせるための指標となる概念は何か?」ということである。実際のところ、現在の米国の核兵器計画は、抑止と戦争遂行という、互いに関係しているものの異なった目標を基礎としている。 

警戒態勢の解除 

報告書の著者らは、警戒態勢の解除を支持する人々に対して、この2つの目的を明確に区別するよう警告している。そうでないと、人々の懸念に応えるものとならないからだ。「核の警戒態勢を下げることに反対している人々の主張の中核をなしているのが、危機に際して効果的な非核手段を用いて事態のエスカレーションをコントロールする(Crisis Escalation Control)という考え方である。現在設定されている戦略戦争計画には、事態のエスカレーションをコントロールし勝利をおさめるという考え方に基づいて、敵の戦力とインフラに対する一連の限定的な攻撃オプションが埋め込まれている。」著者らによると、核の警戒態勢に競って復帰することがもっとも危険なのは、こうした非核手段による交戦が起こった後のこの段階であるという。なぜなら、警戒態勢によって、核兵器国による核の第一撃が促進されてしまうかもしれないからだ。 

報告書は、仮想的な事例として、ロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)が警戒態勢に復帰した場合を挙げている。これは、米国の核搭載潜水艦を即時に打撃する強いインセンティブをロシアに与えてしまう。両者が警戒態勢に競って復帰することで、敵方の戦略的核兵器の大部分をわずか数発の攻撃によって破壊してしまう危険性が生まれる。 

いかなる危機もエスカレートする危険性があり、警戒態勢下にある核戦力がそれを止められる保証はない。警戒態勢への復帰競争という主張は、空虚な理論にほかならない。第一に、今日の米国とロシアの核態勢は、危機にあって戦力を「生み出す」計画をすでに含んでおり、戦力を増強・分散し、警戒度と弾頭の搭載比率を上げることを想定している。 

完全なる警戒態勢解除の状態からの復帰ではないにせよ、こうした戦略的戦力増強計画は、もし実行されれば、打撃の準備段階と敵方に解釈される可能性が極めて高く、他方の核戦力増強を促してしまう。したがって、警戒態勢を解除された核態勢を再度警戒態勢に戻すことで安定を崩す効果があるとすれば、今日すでに安定は崩されつつあるのである。 

第二に、より望ましくない状況であった過去の事例とは異なって、警戒態勢復帰の競争を防止するように核戦力を構築することは可能である。実際、米国とロシアの戦略的核戦力は、安定的な抑止力となる全体構造が、脆弱で警戒態勢を解除された部分から構成されるように構築することができる。 

一方で、この報告書は、いったん始まった核紛争でもどうにか管理できるという考え方はきわめて疑わしいと指摘している。米露両核大国の間で、もし片方が交戦状態を終わらせるために有利な状況を作り出そうとして核兵器の使用を開始すれば、どちらかが引き下がると想定するのは、誤っているからである。 

また報告書は、「核戦力を警戒態勢下に置いていない小規模の核保有国に対して核の警戒態勢が維持されれば、そうした国をして、警戒態勢を取るか、あるいは、中国のケースに見られるように、警戒態勢下にある敵方の核戦力に対する脆弱性を減じようとしてより移動性の高い核体系の開発に走らせる危険性が十分あり得る。小規模な核兵器国は、こうした対応によって核大国に対して『勝利』することはできないが、限定的な数の核兵器によって相当な損害を相手に与えることは、なお可能だ。」と指摘している。(原文へ

翻訳=IPS Japan 

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核廃絶国際キャンペーン、核兵器禁止への決意あらたに

【オスロIDN=ラメシュ・ジャウラ】

ノルウェーは、28か国から成る北大西洋条約機構(NATO)の加盟国として米国の核の傘の下で保護されている。しかし、そのノルウェーからの大きな支援を得て、核兵器の違法化を目指す世界的な運動が生まれつつある。オスロで2日間の日程で開かれている「 ICAN市民社会フォーラム」でのことだ。 
 
 「核兵器の人道的影響に関する国際会議」に先立って、3月2日~3日にかけて約400人の若者がこのノルウェーの首都に集まった。しかし、5つの「公式の」核兵器国(同時に国連安全保障理事会の五大国[P5])でもある米国、ロシア、中国、フランス、イギリスは、協議の上で会議をボイコットし、各国当局や、ICAN(核廃絶国際キャンペーン)のフォーラムに参加した非政府組織を驚かせた。

ICAN Civil Society Forum
ICAN Civil Society Forum

 ICANのフォーラムは、エジプト、ナイジェリア、南アフリカ、ブラジル、チリ、コスタリカ、ドイツ、スウェーデンから若い活動家を選抜し、「核兵器の禁止」への幅広い世論の支持獲得を誓って、終了した。 

1945年に広島・長崎に投下された原爆の被爆者たちによる胸をえぐられるような証言を聞いて、参加者らの決意はさらに強固なものとなった。また、核兵器の投下が医療、社会、気候に与える影響、いわゆる「核の飢饉」の恐るべき道筋についての報告もなされた。 

アラン・ロボック博士は、インド・パキスタン間でほんの数発の核兵器による交戦があったとしても、大気中に多量の煤煙(ばいえん)が巻き上げられて、もっぱら北半球で太陽光を10年にわたって遮断し、地球上の気温を引き下げて「核の冬」を引き起こし、数十億人が飢餓状態に陥ると指摘した。 
 
 ノーベル賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)のアイラ・ヘルファンド博士は、核兵器がニューヨークに投下された場合の恐るべき帰結について報告した。爆心地から半径3キロ以内では、爆発から100万分の1秒で太陽の表面よりも気温が高くなり、その次の3キロでは生物のすべてが破壊され、さらにその次の3キロではすべての可燃物が瞬時に発火してすべての酸素を費消し、巨大な火の玉が出現するという。その外では被害の程度は軽減されるがそれでもきわめて甚大なものである。しかもこれらは、その後の放射線被害と気候への影響を抜きにした、直後の被害だけの話だ。 
 
「戦争と暴力のない世界」の国際スポークスパーソンであるトニー・ロビンソン氏は、科学者らによるモデルは、彼ら自身も言っているようにあくまでモデルであって、実際にはそれよりも被害は大きくなるであろうと指摘した。地球は「核の冬」を経験し、作物は何年も収穫できず、人類は絶滅の淵に追い込まれるであろう。彼らのモデルは、地球上にある1万9000発の核兵器のうちほんのわずかの部分が爆発したと想定しているにすぎないのだ。 
 
 ICAN運営委員会のメンバーであるトーマス・ナッシュ氏は、フォーラムの閉会にあたってこう述べた。「政府間会合はまだ始まっていないが、すでに我々は多くのことを成し遂げたように感じています。我々皆が言ってきたことは、各国政府は、核兵器がもたらす人道的帰結に焦点を当てるべきであり、130の政府がそのことを問題にするためにこの都市に集まってきている、ということなのです。」 
 
「これを実現したのは私たちです。会議がどんな結果になろうとも、そのことは記憶しておくべきです。P5を追い込んだのも私たちなのです。」 

ICAN英国支部の一部である「第36条」に勤めるナッシュ氏は、クラスター弾禁止に熱心にかかわった活動家でもある。クラスター爆弾禁止条約(CCM)はオスロで2008年に署名された。この条約の準備に尽力したノルウェーの国際的役割を示している。 

CCMは、クラスター弾を無条件に禁止し行動の枠組みを設定することで、クラスター弾によって引き起こされる人間への影響と民間人への容認されざる被害の問題に対処している。記録に残されているクラスター弾被害者のうち、3分の1は子どもだ。被害者のうち6割は、日常の行動の中で被害にあっている。 

市民社会の動員

ナッシュ氏は、ICANフォーラムは「大量破壊兵器を違法化し廃絶するための効果的な市民社会の動員の歴史における最新のステップ」のように感じられた、と語った。市民社会は、化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約によって、大量破壊兵器3種類のうち2つの禁止に成功している。また、核実験もすでに禁止されている。 

「これらの動きでは、こうした兵器が人間や健康に与える影響は容認できないという認識を基にして、市民社会が動員された」とナッシュ氏は付け加えた。彼は、ニュージーランドの高校生だった約20年前、フランスの団体「平和運動」が主催して、フランスが太平洋で行った核実験に抗議するために、活動家の代表団の一員としてフランスに渡航したときのことを振り返った。 

またフォーラムでは、ICANの共同議長で、「アクロニム軍縮外交研究所」の所長でもあるレベッカ・ジョンソン博士が、なぜ核兵器禁止条約が現実的で達成可能、実行可能なのかについて報告した。 

ノルウェーのグライ・ラーセン外務副大臣は、核兵器廃絶は夢物語ではなく、核軍縮は現実に生きる人間の問題だとフォーラムの参加者に対して語った。 

ベテラン俳優で、テレビドラマ「ザ・ホワイト・ハウス」で米大統領役を演じたこともあるマーチン・シーン氏は、もしマハトマ・ガンジーマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が生きていたなら、彼らもICANに加わったであろうとフォーラムで語った。シーン氏は慈善事業に多くの時間と金銭を費やし、人道的な活動によって2つの賞を受けている人物だ。 

「もし核兵器を禁止できないとすれば、それは私たちがそれが可能だと信じられなくなった時だ」というナッシュ氏の言葉は、フォーラム参加者の圧倒的な見解を表しているようにみえた。 

Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun

またナッシュ氏は、「今後数週間、数か月で私たちが一致団結し、尊敬の念を持って包括的な運動を作り上げることができるならば、私たちは、核兵器禁止の交渉プロセスのただ中に自らの姿を見出すことになるでしょう。いったんそのプロセスが始まったら、それを止めるのは非常に難しいでしょう。」と語った。 

ICANの代表らは、新しい核兵器禁止条約に向けて、各国政府や国際赤十字赤新月社連盟などと協働していくことになると述べた。この文脈で、ICANのプロジェクト・マネージャーであるマグナス・ロボルド氏は、東京に本部を置く在家仏教組織「創価学会インターナショナル」(SGI)の池田大作会長による2013年の平和提言を歓迎した。 

池田会長は、平和提言の中で、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を発足させ、非人道的であり、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを年内に開始させること求めている。 

 SGIは、「あなたの大事なすべてのもの―核兵器なき世界に向けて」と題する展示をフォーラムと同時に開催している。この展示は、SGIとICANが共同で制作したもので、IPPNWの第20回世界大会が2012年8月に広島で開かれたのに合わせて開始された。 

12の視点から核兵器に関する40枚のパネルが展示されている(12の視点とは、人道、環境、医療、経済、人権、エネルギー、科学、政治、宗教、ジェンダー、世代、安全保障)。 

SGIの寺崎広嗣平和運動局長は、1957年9月8日に創価学会の戸田城聖第2代会長が発した「原水爆禁止宣言」の55周年を記念するという意味合いもこの展示には含まれている、と語った。(原文へ) 

翻訳=INPS Japan 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|スリランカ|出稼ぎ問題|体に打ち込まれた釘は「幸運にも」24本で済んだ

【コロンボIPS=アマンタ・ペレラ】

スリランカ南部マタラ出身のラハンダプレゲ・アリヤワティさん(52)は、サウジアラビアにおける自分の体験は比較的軽く済んでよかった、と思っている。体に打ち込まれた釘が幸運にもわずか24本だけで済んだからだ。 

彼女は、2011年初めに故郷に家を建てるのを夢見てサウジアラビアに渡航し、家政婦として働いた。しかし5ヵ月後、体のあちこちに生々しい傷を負って帰国することになった。彼女は雇い主から懲罰として熱した鉄釘を皮膚に打ち込まれていたのだ。 

故郷の自宅前で取材に応じたアリヤワティさんは、「あの程度で済んだのは幸運だと思うわ。もっとひどい目にあっていた可能性は十分あるのだから。」と語った。

彼女が「幸運」だと思ったのは、もっとひどい事例もあるからだ。今年1月10日、同じスリランカ出身で、サウジアラビアで家政婦をしていたリザナ・ナフィークさん(25)が、家族やスリランカ当局への事前通知さえないまま、収監されていたサウジアラビアで斬首刑に処せられた。世話をしていた乳児を誤って死なせた罪であった。 

彼女は幼児の扱いについてなんの訓練も受けていなかったが、生後4か月の赤ちゃんの世話をさせられることとなった。そしてその幼児は、ナフィークさんが哺乳瓶でミルクを飲ませている時に誤ってのどを詰まらせ、死亡してしまったのだ。人権活動家によると、ナフィークさんは、適切な裁判や領事館の接見、さらには法的な支援も一切受けることなく有罪となり、2005年から刑務所に収監、2007年からは死刑囚として過ごしていた。 

「私も同じような目に遭っていたかもしれない。」と、未だに体内に6本の金属片が埋まっているというアリヤワティさんは語った。 

ナフィークさんは、17才の時に仕事の斡旋業者が渡した偽造パスポートでサウジアラビアに送られていた。ナフィークさんの家族や彼女の事情を知る人々によると、仕事斡旋業者が貧困に苦しんでいる家庭の事情につけこみ、若い娘たちをサウジアラビアに家政婦として送り出しているという。 

ナフィークさんの故郷スリランカ北東部(トリンコマリー地区)ムトゥール村にいる家族は、娘に起こった不幸を運命として受け入れて、あきらめているようだった。「私たちに何ができるでしょう?これ以上何もできない状況で、私たちは前に進んでいくしかないのです。」と父のアボドゥル・ムハンマド・ナフィークさんはIPSの取材に対して語った。 

研究者によると、こうした家政婦自身や家族が抱いている無力感は、辺鄙な村々を廻ってナフィークさんのような貧困家庭の娘たちを探しに来る仕事斡旋業者らによって、巧みに吹きこまれているという。 

「家政婦として出稼ぎに送り出される少女たちや家族は、娘は何の保護も無い外国にいるのだから、何か起こってもしかたがない、と信じ込まされているのです。」と、スリランカの人権擁護団体「法と社会トラスト」のミユル・グナシンゲ氏は語った。 

一方グナシンゲ氏は、同じサウジアラビアに出稼ぎ労働者を送り出す国でも、サウジアラビア政府と2国間協定を締結して労働者の権利保護を確保している事例を挙げて、スリランカは移住労働者の権利擁護について立ち遅れている点を指摘した。「フィリピンがよい事例です、同国政府はサウジアラビア政府がフィリピン人労働者の権利を保護する2国間協定の締結に同意するまで、一年近く労働者の派遣を差し止めたほどですから。」と語った。 

こうした2国間協定における合意事項は、労働者の最低賃金の保証にとどまらない。労働者の就労時間や生活環境、さらには労働者の諸権利についても規定されている。また、こうした協定は、全ての出稼ぎ労働者が特定の契約内容や受入国の部族法に縛られるのではなく、平等に処遇されることを保障するものである。スリランカ政府は、このような協定をバーレーンとヨルダンとは結んでいるが、サウジアラビアとは未締結のままである。 

ナフィークさんの斬首刑を契機に、スリランカ国内でもサウジアラビアにおける同胞の境遇に関する批判と関心が高まったが、スリランカ政府は、未だにサウジアラビア政府との2国間協定に向けた交渉を開始する意図を明らかにしていない。 

ナフィークさんの死刑執行から2週間後、ディラン・ペレラ海外雇用相からの提案によって、スリランカ政府は、サウジアラビアに送り出すメイドの年齢下限を25歳に引き上げる閣議決定を行った。その他の中東諸国への出稼ぎ年齢下限は、従来どおり23歳である。 

また出稼ぎ労働者らには3週間の合宿研修を受講して政府が発行する家政婦認定書を取得することが義務付けられている。 

しかしグナシンゲ氏は、「この措置にはあまり意味がない」と指摘したうえで、「たとえ25才になっていたとしても、それまでに十分な学校教育を受けておらず、英語も話せず、電気器具等の取り扱い方も分からない状況では、また同じような問題が起きてしまうでしょう。」と語った。 

グナシンゲ氏はそのうえで、スリランカ政府は研修をもっと重視し、職務に十分適応できる有資格労働者を、より高い賃金で送り出すべきだ、と語った。 

前出のアリヤワティさんの場合、出国前に政府が定めた語学を含む3週間の合宿研修を受けていたが、現地では雇い主とのコミュニケーションをうまくとることができず、家庭用電気製品の使い方もよくわからなかったことから、怒った雇い主によって釘を打ち込まれるという暴力を受けたのだった。 

グナシンゲ氏は、「政府は仕事斡旋業者の活動を規制する法律を厳格化するとともに、現状では労働者の海外雇用促進のみが取り扱われている海外雇用庁法を改正して、労働者の権利確保を項目に加えるべきだ。」と主張するとともに、「もしこうした数百万人の出稼ぎ労働者に投票権が与えられていたとしたら、スリランカの国会議員らは、こうした労働者のニーズにもっと注意を払うようになるだろう。」と語り、スリランカ政府の対応の鈍さを嘆いた。 

こうしたスリランカ政府の対応の鈍さの背景には、スキルの低さや低賃金の問題(家政婦の中には月給僅か100ドル程度のものもいる)を抱えながらも、こうした出稼ぎ労働者からの送金が同国で最大の黒字をもたらしている現実がる。今年は、海外からの送金総額が50億ドルにも達するとみられている。 

海外で出稼ぎ労働に従事しているスリランカ人の総数は、約200万人にのぼるとみられている。そのうち、少なくとも80万人が家政婦で、彼女たちの大半が中東湾岸諸国で働いている。サウジアラビアは、依然として最も人気ある出稼ぎ先である。 

しかし、2011年末以降、移住労働者への暴力がメディアを通じてスリランカ社会に知られるところとなり、サウジアラビアへの出稼ぎに躊躇する労働者もでてくるようになった。こうした事態に、サウジアラビアでの就労に同意する家政婦に800ドルのプレミアムを支払う仕事斡旋業者もでてきている。 

ナフィークさんの故郷ムトゥール村では、女性たちが政府に対してサウジアラビアへの家政婦派遣を禁止するよう求める署名活動を行っていた。 

「人々は、ムトゥール村の者たちは処刑されたリザナ・ラフィークさんの件について口を噤んでいると思っています。でも実際は違います。私たちはこの件について、正義がなされたと思っていません。私たちはリザナの死を単なる統計に一部にされてしまうことを決してよしとは思っていません。」と、同村の民生委員モハメド・ジハードさんは語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 

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政治的に悪化する核をめぐる国際環境

【国連IPS=タリフ・ディーン

核をめぐる国際政治環境はますます悪化しつつあり、脅しと非難、国連安保理決議への明白な反抗であふれている。 

長く待ち望まれている、フィンランドが主催予定の中東非核兵器地帯化に関する国際会議の実現は、未だ程遠い状況にある。大量破壊兵器の廃絶を目的とした核兵器禁止条約(NWC)にしても然りである。 

そして2月12日、北朝鮮が国連の警告を公然と無視して3回目の核実験を強行した。一方、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、イスラエルの核戦力が西側世界の暗黙の承認を得ている中東において、イランは核兵器を保有する権利を留保している、との認識を示した。

ハメネイ師は、「核兵器は廃絶されなければならない。我々は、核爆弾の製造を望んでいない。しかし、もし我々がそう考えず、それを持とうと決めたならば、いかなる勢力も我々を止める事は出来ないだろう。」と警告した。 

「核兵器なき世界」という究極の目標が遠ざかる中、東京に本部を置く在家仏教組織のリーダーが先週、2015年に国連や他の核保有国、非核地帯の代表などが一堂に会する「核サミット」の開催を開催を呼びかけた。 

Photo: SGI president Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

創価学会インタナショナル(SGI)池田大作会長は、広島・長崎への原爆投下から70周年にあたる2015年に開催予定のG8サミット(主要国首脳会議)に続いて、「核兵器なき世界」に焦点を当てた「拡大首脳会合」を開催するよう提案している。 

「2015年のG8サミットは、こうした核サミット開催に向けて適切な機会となるでしょう。」と池田会長は述べている。 

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のティム・ライト氏は、IPSの取材に対して、ICANは池田会長らの提案を支持し、核兵器を禁止する条約の締結に向けたプロセスを今年中に開始すると語った。 

「我々は、核同盟の一翼を担う国も含め、すべての国に対して、こうしたプロセスに建設的に関わるよう強く求めます。」とライト氏は語った。 

またライト氏は、このプロセスには市民社会組織の関与が不可欠と指摘したうえで、「核兵器を世界的に禁止することは、可能かつ必要であり、また、緊急の課題なのです。」と語った。 

さらにライト氏は、「このような兵器が存在する限り、偶発的であろうと意図的であろうと使用される可能性は現実に存在します。そしてひとたび使用されれば、それが人間や環境に与える被害は甚大なものになるでしょう。」と主張した。 

池田会長は、1月26日に発表した平和提言「2030年へ 平和と共生の大潮流」の中で、3つの具体的な提案をしている。 

第一に、2015年以後に国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)などのアジェンダの主要テーマの一つに、軍縮を当てることを提案している。 

とくに、世界全体の軍事費を2010年の軍事費を基準として半減させるとともに、核兵器の廃絶と、国際法の下で非人道的とみなされるその他のあらゆる兵器を全廃することを提案している。 

そしてこれらの目標は、2030年までに達成すべき、と池田会長は主張している。 

第二に、核兵器禁止条約(NWC)の交渉プロセスをスタートさせ、2015年を目標に条約案の合意を進めることを提案している。そして、日本は、核による被害を経験した国として、NWC実現に向けて積極的な役割を担うべき、と池田会長は主張している。 

さらに、北東アジアに「非核兵器地帯」を設置するための信頼醸成に努める中で、日本は、グローバルな核廃絶の実現に向けての環境づくりに貢献すべきだとしている。 

「この目的を達成するために、我々は、核兵器の非人道性を柱としつつ、核兵器にまつわる多様な角度からの議論を活発化させながら、国際世論を幅広く喚起していかなければなりません。」 

「例えば、2015年のホスト国であるドイツと交代する形で、2016年の担当国である日本がホスト役を務め、広島や長崎での開催を目指す案もあるのではないか」と池田会長は述べている。 

第3に、2015年のG8サミットに合わせて、国連や他の核保有国、非核兵器地帯の代表などが一堂に会する「『核兵器のない世界』のための拡大首脳会合(核廃絶サミット)」とするよう提案している。 

池田会長は、過去の平和提言においては、核廃絶サミットを実現する手段として、2015年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の広島や長崎での開催を提唱してきた。 

しかし今回の平和提言では、190か国もの代表を集める実務面の問題を考えると、慣例通り、ニューヨークの国連本部でNPT運用検討会議を開くことになるかもしれない、と指摘したうえで、「その場合、NPT運用検討会議の数カ月後に行われるG8サミットの場が、世界の指導者がこの重大な問題に取り組む絶好の機会を提供することになるだろう。」と述べている。 

また池田会長は、SGIが長年に亘って核兵器の問題に取り組んできた理由について、核兵器の存在自体が「生命の尊厳」に対する究極の否定であるという認識に基づいている、と指摘するとともに、その目的について次のように述べている。 

「核兵器の問題というプリズムに、生態系の健全性や、経済開発、人権等さまざまな観点から光を当てることで、『現代の世界で何が蔑にされているのか』を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること―そして、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』を創出することにあります。」(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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|UAE|科学者グループ「蜂蜜が癌細胞の増殖を抑制する」と発表

【アブダビWAM】

アル・アインを拠点とするUAE大学の研究グループが、マヌカ蜂蜜が乳房、皮膚、大腸にできた癌性腫瘍の増殖を効果的に抑制することを発見した。 

研究者らは動物の癌腫瘍を対象にした臨床研究(5年以上行なっている)において、化学療法と並行してマヌカ蜂蜜を静脈投与した結果、概ね被験動物の生存率に改善が見られた。」と2月25日、地元英字日刊紙が報じた。

 蜂蜜には、従来から薬効効果(とりわけ抗菌作用や傷を治癒する作用、様々な肌のトラブルを緩和する作用等)があることが知られている。「マヌカ蜂蜜にはかなり以前から、抗菌作用に加えて抗炎症作用や創傷治癒促進作用があることが知られています。しかし、癌細胞に対する潜在的な効果については、詳細な研究はされてきませんでした。」とUAE大学医療保健学部医微生物学・免疫学科長のバゼル・アル・ハマディ教授は語った。 

 アル・ハマディ教授は、「チームは研究に3種類の異なる癌細胞(乳癌、皮膚癌、大腸癌)使用し、僅かな量のマヌカ蜂蜜(最少で1%程度)を投与するだけで癌細胞の成長を最大70%阻止することができることを立証しました。」と語った。 

同教授によると、研究者らは、この臨床結果を受けて、癌抑制機能に関するマヌカ蜂蜜の分子基盤を解明すべく、様々な実験に着手してきたという。「私たちはこの臨床研究の結果から、マヌカ蜂蜜は癌細胞に直接的に働きかけてアポトーシス(プログラムされた細胞死)を引き起こす決定的な証拠を得ました。」とアル・ハマディ教授は語った。 

アポトーシスとは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のことである。 

「マヌカ蜂蜜がもつ効能は、非常に魅力的な研究分野といえます。私たちはこの研究成果が、特定の種類の癌に対して新たな治療方法を開拓する可能性を感じています。」とアル・ラマディ教授は語った。 

また、この研究からマヌカ蜂蜜には、癌患者に化学療法が適用された際に問題となる副作用を軽減する特性が備わっていることが明らかになっている。 

ラマディ教授率いる研究チームの成果は、最近著名な国際科学雑誌「Plos」に掲載された。チームは、タワン病院腫瘍科及び外科との協力のもと、引き続き研究を進めている。 

タワン病院は、国内で最も包括的な腫瘍治療施設を備えた医療機関で、癌患者の最大8割が登録している。 

マヌカ蜂蜜は、ミツバチがニュージーランドの大部分とオーストラリア南東部に自生するマヌカの木(学名:Leptospermum Scoparium)から採集した花の蜜を巣の中で加工・貯蔵したものである。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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