ホーム ブログ ページ 249

核軍縮に関しては、依然として他国に率先措置を求める

【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】

イランの核開発計画を巡る現在進行中の論争は、国連における核軍縮議論の進展に資するだろうか?核拡散について協議する過去の国連会議に出席してきた多くの外交官や専門家にとってその答えは「イエス」である―ただし、その理由は必ずしも想定内におさまるものばかりではないだろう。 

「イランは二重基準に挑戦しているのです。」「国際社会はイランのウラン濃縮の動きに対して異議を唱える一方で、イスラエルの核兵器保有疑惑に関しては完全に沈黙を守るという全く異なる基準を適用しているのです。」と、米国に本拠地のある核時代平和財団のデイビッド・クリーガー所長は語った。

 イスラエルの核兵器は依然として秘密のベールに覆われているが、同国は300発以上の核弾頭を保有していると考えられている。 

「米国のバラク・オバマ政権は現在、イランによるウラン濃縮問題に対しては多国間で連携しながら取り組んでいますが、中東非核地帯設立の呼びかけに関しては沈黙を守り続けています。」とクリーガー氏は指摘した。 

クリーガー氏は、この問題は、核保有国、とりわけ西半球の保有国が核軍縮について曖昧な態度を続ける限り解決しないと確信している。 

イラン政府は、核兵器開発を進めているとする嫌疑を繰り返し否定するとともに、同国は当然の権利としてエネルギー生成を目的とした平和的な核開発事業を推進しているのであり、そのことが核不拡散条約(NPT)違反には当たらないと主張している。 

NPTには、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を除く全ての国連加盟国が締結している。1968年に調印されたNPTは、加盟国が平和目的に核エネルギーを生成、使用する権利を認める一方、核保有国に対して自国の核兵器の解体・削減に向けた措置をとるよう義務付けている。 

イラン政府は、同国が核開発計画を軍事目的に利用しているとする西側諸国の告発に対して精力的に反駁するとともに、米国とその他の核保有国がNPTの規定に従って自国の核兵器を解体する措置をとるよう要求している。 

国際安全保障・軍縮問題を協議する国連総会第一委員会では、主な核保有大国には核廃絶に向けた計画に沿って行動する意思が欠如しているのではないかと疑問を呈する意見が大多数の国からあがっている。 

「我々は新たな核兵器保有を正当化する(非核保有国の)いかなる試みも、(核保有国の)無期限保有も認めません。」と今月上旬に開催された国連総会においてブラジルから参加した新アジェンダ連合(NAC)のルイス・フィリペ・デ・マセド・ソアレス会長は語った。 

1998年に設立されたNACは、NPTの規定を順守するために自らの核開発計画を放棄したスウェーデン、アイルランド、ブラジル、メキシコ、ニュージーランド、エジプト、南アフリカの7カ国で構成している。 

「核軍縮と核不拡散は本質的に相互に関連し合いながら強化していくプロセスなのです。」とソアレス会長は語った。「従って、双方のプロセスには継続的かつ不可逆な前進が求められるのです。」 

NACにとって、核兵器の使用と拡散防止を保障する唯一の方法は、完全かつ検証可能な方法で核廃絶を達成することである。 

「多くの国々が核兵器を保有することが安全保障上必要と考えている限り、新たに核兵器の獲得を目指す国が出現してもおかしくありません。そして、核兵器が非国家主体(国際テロリストグループ等)の手にわたるリスクは存在し続けるのです。)とソアレス氏は語った。 

NACは、「如何なる国も新たに核兵器を入手したり無期限に保有し続けたりすることを認めません。」と、ソアレス氏は語った。同氏は、核兵器の保有が「国際平和と安全保障に決して寄与しない」と強く確信している。 

国連では5月にNPT運用検討会議を開催することになっている。潘基文国連事務総長は最近の声明の中で、核保有国が核軍縮に向けた具体的な措置をとることを望むと発言している。 

潘事務総長は、15カ国で構成される国連安全保障理事会に対して、核軍縮首脳会議の開催を要請するとともに、全てのNPT非加盟国に対して核兵器能力を現状で凍結するよう呼びかけた。「核軍縮は安全保障を強化するものでなければなりません。」と潘事務総長は最近の声明の中で語った。 

この潘事務総長の呼び掛けは、核軍縮支持の姿勢等が評価されて最近ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領が、包括的核実験禁止条約(CTBT)への批准及び兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)への支持を通じて、米国の核兵器削減に向けた具体的な措置をとる意向を示したのを受けてなされたものである。 

しかし米国では野党共和党が、この問題について妥協しない姿勢を強めている。また10月29日には、タカ派でジョージ・W・ブッシュ前大統領の腹心であるジョン・ボルトン前国連大使が、「ConUNdrum(謎の意味:国連をかけたもの)」と題した著書を発表し、その中で、「国連は軍縮会議を廃止すべきだ。」と提言している。 

にもかかわらず、米国の独立系政策アナリストの一部は、楽観論を表明することに慎重なものの、核不拡散及び核軍縮の目標を達成する見通しについて、徐々に明るくなってきているとみている。 

「オバマ政権は具体的な措置をとると確信しています。」「そのような措置は、米国が核兵器の先制使用を明確に拒否するという行動となって表れると思います。」とNAPFのクリーガー会長はIPSの取材に応じて語った。 

「そうすることでオバマ大統領は、米国の安全保障戦略における核兵器の役割を打ち消すという姿勢を国際社会に対して示すことができるのです。」とクリーガー氏は語った。 

今月の「アトランティック誌」に報じられた通り、オバマ氏は従来から国防総省が新たな新型核弾頭の設計を求めている来年発表予定の核政策基本文書「核態勢見直し(NPR)」の作成に関して直接関与する意向を表明している。 

オバマ氏は核兵器のない世界を支持しているが、一方で、「米国は他国が核武装している限り、抑止目的のために自国の核兵器を保持しなければならない。」とも述べている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


関連記事: 
軍縮|核兵器なきドイツは実現なるか?

|Q&A|「これ以上、地球温暖化を進行させる訳にはいかない」(レスター・ブラウン、アースポリシー研究所創立者インタビュー)

【アクスブリッジ(カナダ)IPS】

レスター・ブラウン氏は、「自分の見解は時々極端に聞こえるかもしれない。それは主流メディアが、破滅的な気候変動を避ける緊急性やそのための様々な難題について、ほとんど理解していないからです。」と言う。 

ワシントンDCに本拠を置くアースポリシー研究所の設立者であり所長も務めるブラウン氏は、世界で最も影響力のある思想家の一人と考えられている。 

「私が極端論者のように見えるのは、主流メディアが今日の世界の状況を正確に報じていないからです。」とブラウン氏は言う。 

ブラウン氏はニュージャージー州の農家出身で、ラトガーズ大学、ハーバード大学で農学・行政学を修めた後、1960年代に農務省に入省、国際農業開発局長を務めた。1974年にワールドウォッチ研究所を設立した。

ブラウン氏は、その後多くの賞、名誉学位を獲得して、著作は50冊に及ぶ。2001年、環境的に持続可能な経済を達成するためのロードマップを提供する目的でアースポリシー研究所を設立した。 

ブラウン氏の最新刊『プランB4.0:人類文明を救うために』(プランBシリーズの第4版でおそらく最も緊急の対応を訴えている版)はアースポリシー研究所のウェブサイトからダウンロードできる。ブラウン氏はこのプランB4.0の中で、2020年までに炭素排出量を80パーセント削減するよう呼びかけている。 

ブラウン氏はその理由を、「これ以上、地球温暖化を進行させるわけにはいきません。」と端的に語った。 

IPS環境問題特派員スティーブン・リーヒが、最新刊の出版に際してブラウン氏に取材を行った。 

IPS:あなたは2020年までに炭素排出量を80パーセント削減するよう訴えていますが、この数値はどこの政府による削減目標よりも遥かに高いものですが。 

レスター・ブラウン:各国の政治家は、どの程度の排出量削減が政治的に実行可能性があるかを見ています。一方、アースポリシー研究所では、気候変動がもたらす最も危険な影響を回避するためにどの程度の排出量削減が必要かを見ているのです。 

既に巨大なグリーンランドや南極西部の氷の海が急激な勢いで溶け出しています。もしこれらの氷塊が完全に溶けると地球上の海面は12メートル上昇するでしょう。また、世界の山々を覆っている氷河は縮小を続け、消滅の危機に瀕しています。その中には、山頂から溶け出した水が乾期に下流の広大な地域を潤してきたアジアの多くの大河が含まれています。 

気候を安定させ将来における地球温暖化を最小限に抑えるには、私たちは空気中の二酸化炭素ガスを400ppmレベルに保たなければなりません。 

IPS:そのような地球規模の排出量削減は可能でしょうか? 

レスター・ブラウン:そのためには、世界規模の動員が戦時体制のようなスピードでなされなければなりません。まず最初に、エネルギー効率を高めることに投資することで、世界的なエネルギー需要を抑えることが可能となります。照明装置をLEDに変換し、人感センサー(人などの動きを感知するセンサー)などを使用することで、照明に要する電気消費量を90パーセント削減することができます。 

そして、発電及び熱生産に要する石化燃料を再生可能なエネルギー資源に変換することによって、私たちは炭素排出量を3分の1削減することができます。米国のテキサス州では、数年後には、風力発電による発電量が現在の4倍にあたる8000メガワットになる予定です。またテキサス州は同地の風力発電量を40000メガワットに拡大する予定であり、これは石炭を燃料とする火力発電所50基分の発電能力に相当します。このように代替エネルギー活用に向けた変化の流れには息をのむものがあります。 

さらに14パーセントの排出量削減は、運輸システムの見直しと、産業界における石炭と石油使用を削減することで実現が可能です。また世界的な森林伐採を停止することで、さらに16パーセントの二酸化炭素排出の削減ができます。そして最後に、植林と炭素を封じ込める土壌改良によって現在の排出量の17パーセントを吸収することが可能です。 

これらのイニシャチブはいずれも新たな技術を必要とするものではありません。私たちは2020年までに二酸化炭素排出量の80パーセントを削減するために何がなされなければならないのか分かっているのです。今日、あと必要なのは、これを実行に移すリーダーシップなのです。 

IPS:世界の指導者を含めてほとんどの人々は、気候変動がもたらす危険や緊急性について、全く危機意識を持っていないように思えます。どのようにすれば、こうした戦時体制のような動員に人々の関心を向けることができるでしょうか? 

 レスター・ブラウン:変化は既に起こっていますし、しかも加速度的に広がりをみせています。今年に入って、米国の二酸化炭素排出量は9パーセント下がりましたが、これは経済不況による影響だけではありません。今年だけでも22基にのぼる石炭火力発電所が閉鎖或いは他の施設への転換がなされており、米国において将来新たな石炭火力発電所が建設されることはおそらくないでしょう。世界の海面上昇がより顕著になれば、人々は行動に移ると思います。 

地球温暖化の問題は、1989年のベルリンの壁崩壊に少し似ているかもしれません。当時は壁崩壊に先立つ何年も前から現地の人々の間で根深い不満が幅広く蔓延していました。そしてあたかも一夜のうちに政治的な革命が勃発し全てが変わりました。私たちは現在、このような転換点に向かっているのだと思います。 

IPS:私達がそのような転換点に向かっていることを示すその他の兆候はあるでしょうか? 

レスター・ブラウン:私達の社会生活における行動様式に変化が表れています。かつて運転免許証を取得することや車を所有することが若い世代に人々にとって社会と関わっていく上で重要な要素と考えられたものです。しかし今やこの考え方は変わってきています。例えば日本では、社会との関与はインターネットを通じても可能となり、新車の売り上げは下落傾向にあります。米国でさえも、所有自動車総数が下落し、代わって自転車の利用が増えています。 

また、新たな価値観を模索する動きが活発になっています。例えば車や通勤ライフスタイルが健康に及ぼす影響とは何か?車道に加えて歩道と自転車道を備え、かつ全てに人々にとって安全な通りはどのようにしたら作れるか?といった議論です。また、経済不況が人々のものの考え方を転換させてきた側面があります。私は、これからの人類はより物質に依存しない社会を再生させるのではないかと考えています。 

IPS:世界経済を再構築するにはそうした価値観の転換で十分でしょうか? 

それは分かりません。つまり、文明を救うことができるかどうかは、こうした政治・社会の転換が、自然の包容力が限界点に達するまでに成し遂げられるか否かにかかっているのです。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

|軍縮|核兵器なきドイツは実現なるか?

0

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

新たに誕生したドイツの中道右派連立政府は、20年前のベルリンの壁崩壊に続く冷戦の終焉とドイツ統一後も、依然として国内に配備されたままとなっている全ての核兵器を、米国に引き上げてもらいたいと考えている。 

この核兵器撤収目標について、アンゲラ・メルケル首相とギド・ヴェスターヴェレ外相(当時就任予定者)は10月24日と25日に行った声明の中で、この問題を米国のオバマ政権との交渉の中で取り上げる旨を発表した。 

評論家は、そのような機会はメルケル首相が11月3日に米議会上下両院合同会議で演説するためにワシントンDCに赴く際に訪れるかもしれないと語った。ドイツ首相が米議会で演説するのは、1957年に上下両院でそれぞれ演説を行った旧西ドイツのコンラート・アデナウアー首相以来、メルケル首相で2人目となる。

 新連立政権の向こう4年間の活動を規定する連立合意には、来年5月の核不拡散条約(NPT)運用検討会議という文脈の中で、「北大西洋条約機構(NATO)の新たな戦略的概念を準備するプロセスにおいて、我々はドイツに残っている核兵器の撤去に向けて同盟国アメリカと協力していく。」と記されている。 

連立合意は10月26日にドイツ最大政党で保守のキリスト教民主党(CDU)とバイエルン州の姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)及び中道自由主義政党のドイツ自由民主党(FDP)の3党首(メルケル氏、ホルスト・ゼーホーファー氏、ヴェスターヴェレ氏)の間で署名された。 

ヴェスターヴェレ氏は、10月25日にベルリンで開催した党大会で講演した際、ドイツから核兵器を撤去する決意を改めて明確に表明した。同氏は、「新ドイツ政府は、米国のバラク・オバマ大統領が唱える核兵器なき世界というヴィジョンを支持します。」と語った。 

またヴェスターヴェレ氏は、「我々はオバマ大統領の発言をそのまま受止め、冷戦の遺物とも言うべき未だにドイツに留まっている最後の核兵器を撤去できるよう、同盟諸国との協議を行っていきます。」と語った。 

9月の総選挙後に政権を継続するメルケル首相は、ヴェスターヴェレ氏と見解を共有しているが、一方的な核弾頭の撤去は行わない旨を強調している。10月24日にベルリンで開かれた記者会見でメルケル首相は、「私達はこの問題(核兵器撤去)についていかなる一方的な措置も考えていない。」と述べた。 

第二次世界大戦(1939年~1945年)に続いた冷戦期、米国は欧州の様々な国々に膨大な数の核兵器を配備した。未だにドイツに配備されている核兵器の数は、1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会(IPPNW)のドイツ支部によると20発と見積もられている。 

IPPNWドイツ支部の報告書によると、「ドイツに配備されている核弾頭の配備場所についての情報は公開されていないが、一部の核ミサイルがドイツ西部のラインラント=プファルツ州ブエッヘル軍事基地に保管されている。」と報告されている。 

IPPNWドイツ支部(約50団体、約8000名の会員を擁す同国最大の平和団体)は、この政府の意向を歓迎した。「私達は、(ドイツ国内に残る)核兵器の撤去を政府が3年以内に支持する姿勢をとるように働きかけていくという目標を従来設定していました。」従って、「このことは(新政権の連立合意)、私達のナショナルキャンペーン『核兵器のない私達の未来』が重要な一里塚に到達したことを意味します。」と同団体の核軍縮専門家であるザンテ・ホール氏は語った。 

ホール氏は、「一部のメディア関係者が『あまり重要でない』と見なしていること(ドイツの核兵器撤去を求める政策)が、実は核兵器なき世界に向けた大変重要な貢献となるのです。」と指摘した。IPPNWは、このような動きはイランや北朝鮮との交渉においても有効と考えている。「私たち自身が核武装解除することで初めて核兵器が安全保障上必要なものでないことを諸外国に示し、それらの国々の核武装解除を求めることができるのです。」とホール氏は語った。 

IPPNWの活動家たちは、2007年以来、核武装解除を支持するよう国会議員に働きかけてきた。そして議員への働きかけは9月総選挙の準備段階でさらに活発化していった。ドイツ自由民主党(FDP)、90年同盟/緑の党(緑の党)、ドイツ左翼党はいずれも、近年、「アイフェル地方に配備している」核兵器の撤去問題について、強く支持する立場をとっており、連邦議会に繰り返し動議を提出している。 

しかし、CDU/CSUとドイツ社会民主党(SPD)による前連立政権は、これらの動議を一貫して却下してきた。中道左派のSPDは、自党の活動方針にドイツからの核兵器撤去を謳っていたが、保守のCDU/CSU両党との連立合意があるため、核兵器撤去に賛成する投票行動を起こすことが出来なかった。 

「当初から、次の政権担当諸政党による連立合意が最大の障害になることは明らかでした。そこで選挙中からあえて各候補者に対して政権担当政党になった暁には連立交渉の中で核兵器撤退を支持すると明言するようロビー活動を展開したのです。」とホール氏は続けた。 

そして選挙後、IPPNWキャンペーン評議会は、各党の政権合意交渉担当者に対して手紙を送った。一方、平和市長会議の10名の保守派市長がメルケル首相に手紙を送り、軍縮問題を最優先事項に位置づけ、「核兵器共有政策」に終止符を打つよう要請した。平和市長会議のドイツメンバーは、IPPNWのナショナルキャンペーン『核兵器のない私達の未来』を支持している。 

世界市長会議は、1982年の荒木武・広島市長による提案に対して公式に支持を表明した世界の諸都市で構成されている。広島・長崎両市は1945年8月、米国による核攻撃を受け、数分の内に数十万人の市民とともに灰燼に帰した。 

1982年に国連本部で開催された第2回国連軍縮特別総会において荒木広島市長は「核兵器廃絶に向けた都市連帯推進新計画」を提唱した。この提案は、世界の諸都市が、国境の違いを乗り越えて、全ての核兵器を廃絶するために協働していく方策を示したものであった。 

その後、広島・長崎の両市長が世界の市長に対して、この計画への支持を要請した。世界市長会議は、現在では107カ国の554都市・地域が加盟しており、国連経済社会理事会よりカテゴリーII(現在は「特殊協議資格」と改称)NGO資格を認定されている。 

平和市長会議は、都市連帯推進計画に賛同するすべての都市相互の連帯を構築し、相互協力を促進することを目的としている。また同会議は、人類の共存を脅かす飢餓・貧困、難民・福祉問題、人権問題の解決及び環境保護のために努力し、もって世界恒久平和の実現に寄与することを目的としている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.



関連記事:
|ドイツ|核兵器は持たず共有するだけ

|アフガニスタン|韓国軍、任務に備える

【ソウルWAM】

大韓民国の金泰栄国防相は10月23日に国会議員に対して、「韓国軍は、アフガニスタンへの適切な貢献をすべく、準備をすすめている。」と語った。 

現在韓国政府が検討中のアフガニスタン支援策は、財政支援、アフガン各地で軍民一体となって展開されている「地方復興チーム」(PRT)の増強、PRT民間メンバーを保護する軍の専門要員の追加派遣である。韓国軍の再派兵問題は政治的にデリケートな問題だけに、金国防相は、米国政府は韓国に対してアフガニスタンへの再派兵を直接要請してはいないと強調した。 

金国防相は、韓国政府はアフガニスタンへの将来に亘る貢献策を総合的に検討中であり、その中に財政支援とPRTの拡大、及びPRT要員保護のための軍専門要員派遣が含まれていると語った。「政府は、貢献内容を決定するに当たっては、韓国の国益、国民世論、そして国際情勢の動向を注意深く検討している。」と同国防相は語った。

 韓国は2007年に約200人規模の韓国軍医療・工兵部隊をアフガニスタンから撤退させた。それ以来、米軍の保護下で軍医ら軍人5人を含む24人がPRT要員としてアフガンで活動している。韓国政府は、今年末までにPRT要員を約90名に増員し、米国軍基地内に大規模な病院と職業訓練センターを建設する予定である。 
 
翻訳=IPS Japan戸田千鶴 

*アフガニスタンでは2007年、タリバンが韓国のキリスト教系ボランティアメンバー2名を拉致して殺害、韓国軍の撤退を要求した。韓国国内では、このため韓国軍のアフガニスタン再派兵に対する懸念の声が強い。


関連記事: 
アフガン増派に疑問を投げかける戦略家 
アフガン増派計画、交錯する期待と不安

|アフリカ|規制で土地収奪の恐怖を緩和できるか

【ストックホルムIPS=ブサニ・バファナ】

アフリカ大陸全土に亘って横行している国際投資家による「Land Grabs=土地の掴みどり」から、農地を失い飢えに困窮する小規模農家を保護する国際的な規制がなされるべきだ。 

「欧州開発デー」に開催された国際会議に参加した農業団体、市民社会組織、研究者の代表は、広大な土地が外国政府や企業に対して販売・貸し出されていることに伴う悪影響について懸念を表明した。 

彼らは、このような土地収得がアフリカの小規模農家の生産性と、ひいてはアフリカ全体の食糧自給能力を阻害するのではないかと恐れている。

 東アフリカ農業者連盟 (EAFF)は、「このような土地取引は地元農民を除外しており、その結果彼らの生活が脅かされている。」と主張している。 

「私たちはアフリカで大規模土地収得の実態を見てきました。この傾向は最近の食糧、エネルギー危機を背景に益々加速されています。」と、フィリップ・キリロEAFF会長は語った。 

「土地収得の犠牲者たちは農業で生計を立てている人々ですので、どのような取引がされているか心配なのです。誰が当事者かといえば、政府対政府か民間企業対政府という構図で、そこには現地の人々や地元の民間セクターが介在していません。私たちは、土地管理について地元住民と十分に向き合った政策が確保されるよう政府に働きかけています。」 

キリロ会長は、国際連合食糧農業機関(FAO)による2008年報告書の統計を引用し、「アフリカ大陸には推定8億ヘクタールを超える耕作可能地があるにも関わらず、わずか1億9700万ヘクタールの土地しか耕作されていません。」と語った。 

「土地収得の標的となっている土地は、主に政府の管理下にあるそのような未耕作地ですので、土地取得に関わる人々は、そもそも地元の人間が耕作できないに土地を扱っているという意識を持っています。しかし実際の状況は異なっています。もし基本的な設備と技術さえ取得できれば、地元農民はそうした未耕作地を喜んで耕作したいのです。」とキリロ会長は語った。 

キリロ会長は、「土地収得に関しても、地元小農民が生計を失うことを防止するため、抑制と均衡の原理を働かせることが極めて重要です。例えばケニアのタナデルタでは4万ヘクタールに及ぶ土地が1人のカタール人投資家に貸与された結果、地元農民達が自らの土地を追われる事態が起こっています。」と語った。 

今年発表された調査報告書「土地の掴みどりかそれとも開発の機会か?」によると、世界的な物価高を背景に、新たな農地獲得に対する関心が高まっており、過去18カ月の間に、国際投資家達は食物及びバイオ燃料を輸出するための穀物生産を目的に、広大な土地の借地契約を進めている。 

FAO、国際農業開発基金(IFAD)、国際環境開発研究所(IIED)の3機関の共同制作によるこの調査報告書は、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリの4カ国に於いて、2004年から2009年の間に行われた1000ヘクタール規模以上の土地取引について分析を行っている。 

同報告書によると、4カ国合計で約200万ヘクタールの土地が外国権益に貸与されており、その中にはマリにおける1万ヘクタールのプロジェクトやマダガスカルでは実に45万ヘクタールに及ぶ土地を使用したバイオ燃料プランテーションが含まれている。カミラ・トゥールミンIIED所長は、「外国投資家に割り当てられている土地には農地として高い価値のものも少なくありません。」と語った。 

 また、アフリカ・アジア・ラテンアメリカの主要途上諸国に支部を持つ農業ロビー団体GRAINのヘンク・ホベリンク氏は、「いくつか憂慮している点があります。例えば、農業分野に今まで携わったことがない会社や企業が、今や世界各地で大規模な土地獲得に乗り出してきている状況です。」と語った。 

GRAINでは最近、土地・水・天然資源を新たな財を生み出す新商品として投機の対象としている金融部門の120社のリストをまとめた。 

「確かに農業部門への投資は必要です。しかしそれは世界の農民達が土地に留まれる(=耕作できる)ような投資であって、彼らを土地から追い出すものではありません。もし、各国政府・企業が、少なくともアフリカに関して、大規模なモノカルチャー(単作栽培)によるプランテーションを志向しているとすれば、それは大きな誤りです。」とホベリンク氏は語った。 

「私たちは、世界の食糧生産と農業の未来を、銀行が大半を占める民間企業の手に、本当に託していいのだろうか?」 

アフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)のアキン・アデシナ副理事長は、「アフリカにおける土地売買・貸与取引は、透明性を確保したルールのもとで行われるべきだ。」と語った。AGRAは、ロックフェラー財団及びゲイツ財団の支援を得てアフリカの小規模農家の生産性と生計向上を支援する活動を行っている。 

「『Land Grabs=土地の掴みどり』問題の先には、アフリカの農地がラテンアメリカに見られるような大規模な機械化農業へと向かうリスクがあります。アフリカで私達が目指している緑の革命は、現地の一つ一つの農家に注目し、環境との両立を図りながら彼らの農業生産力を向上させていくことに主眼を置いています。アフリカで大規模な機械化農業を目指すのは間違っていると思います。」 

円卓会議の参加者達は、この問題の解決策として、地元農家を土地収得交渉の当初から参加させる手法を提案した。またこの会議では、土地収得を規制する国際的な行動規範を定義して実施するよう呼び掛けがなされた。 

「行動規範を検討する余地は十分にあります。」と南アフリカ農業組合連盟のCEOイシュマエル・スンガ氏は語った。「しかし、『土地の掴みどり』のための行動規範を設定しても意味がありません。行動規範はむしろ、アフリカ大陸内外を含む外国人投資家を対象としたものであるべきです。それは、土地収得に伴う被害という面では、アフリカ人投資家によるものにも(大陸外の)外国人投資家によるものに匹敵するほどの問題プロジェクトが含まれるからです。」(原文へ) 

翻訳=IPS Japan戸田千鶴 

クリントン長官、IAEAの権限強化を訴える

0

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

米国のヒラリー・クリントン国務長官は、10月21日、核関連と疑われる施設の査察を行う国際原子力機関(IAEA)の権限強化を提案すると同時に、非核化に向けた「検証可能で不可逆的な」措置を北朝鮮が採らない限り、同国への制裁を終了させるつもりはないと明らかにした。 

クリントン長官はまた、その政策演説において、イランに対して、保有する低濃縮ウラン(LEU)の大部分を再処理のためにロシアに移送し、テヘランの原子炉において医療用アイソトープを生産する計画を実行するために「迅速に行動」するよう求めた。 

イラン外交当局は、同日、米国など主要国とウィーンで行った協議において、この計画に暫定的に合意したと伝えられている。

 クリントン長官は「北朝鮮とイランの核保有を阻止することは、核不拡散体制の強化のために緊要である」と述べた。 

また、オバマ大統領は包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を米上院に求めていく意図であること、米露間のSTART(戦略兵器削減条約)が12月に失効した後の後継条約をロシアと締結するつもりであることを長官はあらためて明らかにした。米露両国で世界全体の核兵器の96%を保有している。 

クリントン長官は、政府系シンクタンク「米国平和研究所」で行ったこの演説において、こうも述べている。「新STARTを結んだからといってイランや北朝鮮が違法な核活動をやめるとは思っていません。しかし、米国が核軍縮に向けて核不拡散条約(NPT)上の義務を果たしている事実を証明することにはなるでしょう。そのことによって、核不拡散体制を強化することの重要性を国際社会全体に認識させ、核を拡散させないとの約束を破る国への圧力を強めることになるのです。」 

オバマ大統領が4月のプラハ演説で「核兵器なき世界」へのビジョンを披露して以来、米国政府は、核不拡散と核軍縮が外交政策上の再重要課題のひとつであることを鮮明にしてきた。 
それを裏書きするように、オバマ大統領は、歴代の米大統領として初めて国連安保理の議長席に座り、9月24日に核不拡散と核軍縮に関する決議を成立させた。 

オバマ大統領はまた、来年4月にワシントンで核セキュリティに関する世界サミットを主催することも明らかにしている。その翌月には、世界中の外交官がニューヨークに集って、NPT運用検討会議が開かれることになっている。 

クリントン長官はこれらの会議についてはあらためてコメントしなかったが、既存の核不拡散体制、とりわけIAEAの権限を強化することが、米外交の優先課題のひとつであると述べている。 

 「国際原子力機関は、その任務を適切に進めるための道具や権限を持っていません。そのために、イランが秘密裏に進めたウラン濃縮やシリアの原子炉計画をIAEAが察知することができなかったのです。IAEA追加議定書の批准を行っていない重要な国々を説得して、その普遍性を高めるべきだ。」と長官は述べた。IAEA追加議定書によって、日常的に監視している核サイトを、より積極的かつより短期の通告で査察できるようになる。 

IAEAは、「特別査察などの既存の検証権限を十分利用するだけではなく、たとえ核物質が存在していなかったにしても、核兵器関連活動が疑われる施設を調査する新しい権限を与えられるべきだ。」とクリントン長官は主張した。 

さらに、クリントン氏は、「IAEAのルール遵守に関する近年の国際社会の実績は芳しいものではない」としたうえで、「IAEA保障措置協定違反への罰則の自動的発動、たとえば、規則遵守が確認されるまですべての国際協力あるいはIAEAによる技術協力を停止するといったことが考えられてもいいのではないか。」と提案した。 

2003年にNPTを脱退し、その後、2006年と今年5月の2回にわたって核実験を行った北朝鮮に関しては、「完全な非核化に向けた、検証可能で不可逆的な措置を北朝鮮が採るまで、現在の制裁を緩めてはならない。」と述べた。これらの措置は、経済的・政治的見返りと引き換えに行うことを2005年に北朝鮮が約束したものだ。 

前提として、米国・中国・韓国・日本・ロシアに北朝鮮を加えた6か国協議の存在がある。クリントン長官は、6か国協議の枠組み内で北朝鮮と二国間協議を行う用意があると述べたが、「たんに交渉のテーブルに北朝鮮が復帰するだけでは十分でない」と釘をさしている。「北朝鮮指導層は、核を保有する北朝鮮と制裁なしの通常交渉を米国が行うつもりはないことを肝に銘じておかねばなりません。」とクリントン長官は付け加えた。 

NPTを脱退していないイランについては、「イランと米国を長い間に渡って引き裂いてきたあらゆる問題について多国間・二国間の枠組みを通じて協議し続けるでしょう」と述べた。 

ただし、クリントン長官は、「関与するといっても、いつまでも続くわけではありません。」と強調した。イラン政府と安保理五大国にドイツを加えた「P5+1」との間でウィーンのIAEA本部で今週行われた協議のテーマとなった合意を履行するべく、イランが「迅速な行動」をとるべきだと呼びかけている。イランの代表は、イラン政府は23日までに最終決定を行うと述べたと報じられている。 

イランの低濃縮ウランの大半を国外へ送り兵器用に転用が難しい形へと再処理することによって、合意に向けた交渉の時間稼ぎをすることができる、というのが大方の見方だ。その合意とは、クリントン長官が「普遍的なものでなければならない」と主張している厳格な検証・査察条項にイランを従わせ、イランのウラン濃縮計画をNPTの枠内に収めさせることを内容とするものである。 

しかし、クリントン長官のポイントは不拡散体制の強化だけではない。既存の核兵器国もまた、究極的核軍縮にコミットするとの意思を非核保有国に対して示すための措置を採らねばならないのである。 

クリントン長官は、「冷戦思考をまた取り出してきて、それに頼るわけにはいきません。核兵器のない、安全で平和な世界を追求するために、私たちも真摯に行動します。」と語った。 

しかし、長官はこうも発言している。「最後の核兵器が廃棄されるそのときまで、核実験を行わずに安全かつ効果的な核抑止力を維持するためのインフラを保持し続けるとの米国の国内的コンセンサスを強化する必要があるでしょう」。 

ビル・クリントン大統領は1999年にCTBTの批准を求めたが、わずかの差で米上院が否決している。今回、上院の批准を得るためには、少なくとも7人の共和党議員を説得しなくてはならない。現在の核弾頭に変わる新型弾頭を開発することに現政権が合意したときにのみ、そのような支持が得られるのではないか、とみられている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧千鶴

中国のアフリカ進出―慈善か覇権か

【北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ】

中国の対アフリカ投資によって現地の貴重な天然資源が奪われているとの批判に応えて、中国政府は、アフリカの貧困撲滅や気候変動対策に貢献していると反論している。 

11月9日、中国政府は、エジプトで開かれている中国・アフリカ協力フォーラムにおいて、農業支援やインフラ整備のために今後3年間で100億ドルの融資を行うと発表した。 

Zhai Jun外務次官は、記者会見において、中国はアフリカでの覇権を目指しているのではないとの釈明に追われた。 

中国の『人民日報』の発行するタブロイド版『グローバル・タイムズ』紙は、「西側諸国は中国がアフリカに関与するのがうらやましいのだ」とした社説を掲載している。

 今年初め、中国の全人代において、張家口農業科学院のZhao Zhihai研究員が、中国はアフリカに最大100万人の労働者を送り込むことができるとの提案を行った。Zhao氏は、エチオピアとギニアを訪れて農業協力の可能性を探った結果、100万人という数字をはじき出したという。 

Zhao氏の提案は中国指導層の受け入れるところとはならなかったが、これがインターネット上にも出回り、多くのネチズンからの支持を受けるところとなった。 

10月には、中国国際基金という企業が、石油・鉱物採掘権をめぐる70億ドル規模の取引をギニアと成立させた。同国は軍政をしいており、最近、民主活動家ら150人を虐殺したという事実がある。しかし、中国政府は、アフリカ諸国の内政には干渉しないとの態度だ。 

「アフリカへの覇権拡大」という批判に応えて、中国政府はアフリカへの援助を増やしている。今回中国が発表した援助額は、3年前に出した50億ドルからすると2倍伸びている。 

しかし、米国国際援助庁(USAID)に7年務めたブライアン・アトウッド氏によると、中国のアフリカに対する援助は透明性が低く、実際どの程度の額が流されているのかよくわからないという。 

中国のアフリカ進出について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 

|パキスタン|「タリバン、パキスタン軍を翻弄する。」とUAE紙

0

【アブダビWAM】

「最近勃発したパキスタン軍司令部に対する襲撃は、パキスタン軍が南ワジリスタン(アフガン―パキスタン)国境地帯のアルカイダ及びタリバン軍事拠点への新たな攻勢をまさに仕掛けようとする矢先に実行に移されたものであり、結果的に同軍当局を翻弄する結果となった。」と、アラブ首長国(UAE)の有力氏は10月12日付の論説の中で報じた。 

ドバイに本部を置く『ガルフ・ニュース(Gulf News)』紙は、「パキスタンで最も力がある国軍の中核に対してこのような大胆な攻撃が行われたということは、これらの反政府武装勢力が、アフガニスタンとパキスタン両国における彼らの支配地域に対して何カ月にもわたって掃討作戦を実施してきたにも関わらず、依然として周到な計画の下に大胆な軍事作戦を実施す能力を有していることを証明した。」と報じた。

 同紙はまた、「パキスタン国軍本部司令部襲撃に続いてアフガニスタン、パキスタン両国の様々な施設に対して武装勢力による一連の軍事作戦が実施され、その結果、カブールでは標的となったインド大使館で職員17名が死亡、イスラマバードでは国連事務所が襲われ5名の職員が犠牲となった。また16日にはペシャワールで自爆テロと思われる事件で49名が殺害されている。」と報じた。 

このような武装勢力を打ち破るための統一された対処法は未だ存在しない。 

「有効な対処法の一部として、昨年のスワット渓谷や今後数週間に亘って展開予定のワジリスタン地域といった明らかな反政府勢力拠点に対する軍事掃討作戦が挙げられる。そして同様の観点から2点目として諜報網を活用した武装民兵の補足と逮捕、そして3点目かつ重要な対処法として、武装勢力と支援者を分断し、反政府武装活動を大規模かつ民衆に支持されたものから小規模のテロリスト集団へと勢力を削減していくことが挙げられる。」と、同紙は付け加えた。 

同紙は、「アフガニスタンのNATO軍とパキスタンの国軍は、軍事掃討作戦と武装勢力補足を目的とした諜報作戦のみをあまりに重視した結果、アルカイダとタリバンの過激派をパシュトゥーン人民衆から分断することに失敗してしまった。それどころか稚拙な軍事作戦で地元民衆の支持を失い、かえって反政府武装勢力に対する支持を増やしてしまった。」と締めくくった。 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|メディア|米国の調査報道の歴史を振り返る

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

調査報道といえばまず思い浮かべるのが、カール・バーンスタインと、ボブ・ウッドワードだろう(二人はまとめて「ウッドスタイン」と呼ばれる)。彼らは、ウォーターゲート事件を報道したことで一躍有名になった『ワシントン・ポスト』の記者である。しかしそれよりも以前に、調査報道を行う優秀な記者がいたのである。 

アプトン・シンクレア(1878-1968)は、米食肉包装業界の非人間的・非衛生的な職場実態を暴露した。レイ・スタナード・ベイカー(1870-1946)は、人種的分断の状況を初めて伝えた。ジョセフ・リンカーン・ステファンス(1866-1936)は政府の腐敗問題に取り組んだ。イダ・ターベル(1857-1944)はスタンダード・オイル社の市場独占問題を調査した。I.F.ストーン(1907-1989)は、1964年当時、トンキン湾事件[訳者注:同年8月、北ベトナム沖のトンキン湾にて、米艦船がベトナムの魚雷艦から攻撃されたとされる事件。のちに、米政府による意図的なでっち上げ事件であることが発覚した]に関するリンドン・ジョンソン大統領の説明に疑問を呈した唯一の米国人ジャーナリストであった。最後に、ジョージ・セルデス(1890-1995)は、1950年代初頭、「共産主義者」とのレッテルに対抗して戦った人物である。

 現在でも、イラクのアブ・グレイブ刑務所の実態を暴露したセイモア・ハーシュのように、優れた調査ジャーナリストは存在するが、以前に比べると、調査報道というジャンルは弱くなってきたように見える。報道を行うための技術は以前にもまして発展しているこの時代に、そうしようとする動機が以前より弱まっているのは実に皮肉である。ここでは、米国の調査報道の歴史を振り返る。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


関連記事: 
自由にとどまらず

今こそ「核のない世界」に近づく時(池田大作SGI会長インタビュー)

【ベルリンIPS=ラメシュ・ジャウラ

グローバルな民衆の連帯こそ不可能を可能にする原動力

具体的な行動に踏み出す努力を

IPS:2009年4月にオバマ大統領がプラハで、「核兵器のない世界」に向けたビジョンを提示しました。その一方、同じ演説の中で、「核兵器のない世界」が自分たちの生きているうちに達成できるかどうかについての疑念を表明しています。この点について、どのように思われますか?
 池田会長は提言で、世界の民衆が「核兵器の非合法化」を求める意思を明確に表明していくこと、その声を結集して2015年までに「核兵器禁止条約」の基礎となる国際規範を確立することを呼びかけていますね。

池田:核兵器廃絶に向けて方向転換を行い、本格的に前進できるかどうかという岐路に、私たち人類が立たされている今、問われるべきことは何か──。
 それは、核廃絶が実現可能かどうかといった次元ではなく、私たちが生きるこの時代に「核兵器のない世界」を実現するには具体的にどのような手立てが必要となるかを考えていく点にあります。
 私が今回の提言を通し、広く国際社会、特に保有国をはじめ、核兵器に安全保障を依存する国々の指導者に問いかけたのは、次の一点でした。
 すなわち、核兵器をめぐる現在の状況と、未来の危険性を考慮した上で、核時代に終止符を打つために戦うべき相手は、核兵器でも保有国でも核開発国でもない。真に対決し克服すべきは、自己の欲望のためには相手の殲滅も辞さない「核兵器を容認する思想」だということです。
 私の師である創価学会の戸田城聖第2代会長が、52年前に訴えた「原水爆禁止宣言」の核心の一つも、そこにありました。
 ご指摘の通り、「核兵器のない世界」への挑戦の先頭に立つと表明したオバマ大統領が、その半面で、“自分の生きているうちに、その実現は難しいかもしれない”との留保を示したわけですが、保有国はもとより、すべての国の指導者たちが責任を共有して具体的な行動を起こすこと、そして何より、グローバルな民衆の連帯が指導者たちの行動をどこまでも後押ししていくことで、「不可能は不可能でなくなる」と私は確信しています。
 その意味でも、2015年までの5年間、特にNPT(核拡散防止条約)の再検討会議が行われる2010年5月までの間が、正念場となるでしょう。「核兵器のない世界」への橋頭堡を築くために、人類共闘の輪を広げることが今、強く求められているのです。

核兵器の禁止へ民衆の包囲網を

IPS: 今回の提言の中で、「核兵器禁止条約」採択に至るまでの道のりは、軍事安全保障に関する既成概念が障害となって、決して容易なものではないと指摘されています。その上でもなお、人道的な理想が、軍事や利益追求の論理に対して優勢に立つ可能性があると予見しておられるのでしょうか?

池田:近年、人道的な理想が、軍事上の論理や国益を乗り越える形で、二つの画期的な軍縮条約を生み出しました。一つは、99年3月に発効した「対人地雷禁止条約」であり、もう一つは2008年12月に締結された「クラスター爆弾禁止条約」です。いずれも、NGO(非政府組織)が連合体を形成して国際キャンペーンを行い、軍縮に積極的な国々と協力し、条約成立に大きな役割を果たしたものでした。
 提言で、“非人道的兵器の最たる存在”である核兵器を禁止する条約の基礎となる国際規範の確立を呼びかけましたが、それが一筋縄ではいかないことは承知しています。しかし私は、次の二つの理由から、それは「決して不可能ではない」と強調したいのです。
 第1に、提言でも指摘した通り、「核兵器のない世界」の必要性を訴える声が、核兵器の脅威が拡散し、高まる中での現実主義的な判断として、核保有国の元政府高官の間からも数多くあがっていることです。 私は、こうした現実主義的なアプローチと、従来の平和的・人道的なアプローチという、二つの潮流を協働させることによって、「核兵器のない世界」への突破口を開くチャンスを、必ずや生み出すことができると信じているのです。
 第2に、広島と長崎への原爆投下以来、64年にわたって、どの国も、どの指導者も、核兵器を実際に使用することができなかったように──仮に抑止論的な文脈における威嚇の意味合いは残されていたとしても──軍事的には核兵器は「いくら保有しても、ほぼ使用することができない兵器」としての位置付けが半ば固定化しつつある点です。
 こうした認識は、多かれ少なかれ、保有国の指導者の間で持たれているものではないでしょうか。
 ゆえに、核兵器禁止を現実のものとしていくためには、対人地雷やクラスター爆弾の禁止を実現させた時の取り組みを、はるかに上回る形で国際世論を高め、市民社会の意思を結集し、“核兵器禁止のための民衆の包囲網″を築いていくことが肝要なのです。

「人間の安全保障」の確立へ大幅な軍縮の推進が不可欠

核保有5力国は責任ある行動を

IPS: 今回の核廃絶提言では、核保有5力国に対し、「核兵器のない世界」のビジョンの共有を宣言するように呼びかけておられます。そのビジョンは、どのようなものになると期待されますか?
 また来年5月のNPT(核拡散防止条約)の再検討会議について、どんな結論が導き出されることを期待されますか?

池田:ビジョンは、行動を喚起する力になります。ゆえに、核兵器廃絶というビジョンが核保有国であるアメリカによって提示されたことは、画期的なことでした。その上で重要となるのは、アメリカが示したビジョンについて、まずすべての核保有国が真剣に討議し、共有していくことです。ビジョンが共有されてこそ、次なる行動へ具体的なステップに踏み出すための共通の基盤ができるからです。
 このビジョンの共有に関しては、良い兆しが見られるようになっています。9月24日には、国連安保理の核不拡散と核軍縮に関する首脳級会合で、「核兵器のない世界」の実現を目指す決意を表明する決議が採択されました。安保理の決議は、保有5力国のすべてが常任理事国として加わった合意であり、法的拘束力もあり、その意義はきわめて大きいといえます。
 今回の決議を機に、共同作業の一歩を具体的に踏み出すことができれば、核保有5力国は、「核兵器のない世界」の構築という希望ある目標に向かって、世界をリードする役割を果たすことができるでしょう。
 こうしたリーダーシツプを発揮することは、保有5力国のNPTにおける厳粛な義務であり、NPTの枠外にある国々に対しても核軍縮を促し、全面廃棄を促す唯一の方途であることは明白です。
 そして、この責任ある行動から生まれた連帯感は、貧困や気候変動といった、他の地球的問題群に対する取り組みへの勢いをも加速させることにつながるはずです。
 何にもまして、そうした役割が核保有国に求められるのは、核兵器を使用したテロの脅威というものが、現実的な可能性の範疇に入ってきているからです。いうまでもなく、核兵器を用いたテロの脅威に対し、抑止論で対処することは不可能であり、その前提に立った議論は意味をなしません。この新たな脅威に対する最大の防禦は、核兵器を厳正な検証体制のもとで廃絶する以外になく、今、最も憂慮すべきことの一つは、核兵器の入手や技術の漏洩の可能性なのです。
 私は提言で、来年のNPT再検討会議で核保有5力国が合意すべき取り組みとして、以下の3点を提起しました。①核兵器開発のモラトリアム宣言②核能力の透明性の増大③核廃絶にいたる道程で最低限の保有可能数について話し合うフォーラムの設置、です。
 もちろん、これらの措置は、NPT再検討会議よりも前に合意されるのが、より望ましいことは言うまでもありません。とくに、最初の「核兵器開発のモラトリアム宣言」について、保有国が誓約することができれば、核廃絶への重要なステツプになります。地球を何十回も破壊できる能力を維持し、技術開発を通してさらにその能力を精鋭化し増大させるというのは、民衆の目線から見て、決して許されるものではありません。さらにこれが合意されれば、必然的に「包括的核実験禁止条約」や「カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)」の議論にも大きな影響を与えていくに違いないでしょう。

市民社会つなぐ連帯の結び目に

IPS: 提言の中で、国連に「核廃絶のための有識者パネル」を創設し、核軍縮プロセスにおける市民社会との協働体制を確保するよう呼びかけられています。池田会長は、核軍縮の分野における現在の国連と市民社会の関係を、どう評価されていますか?
 また「核兵器のない世界」を実現していく上で、市民社会が果たす役割──なかでも、SGI(創価学会インタナショナル)が果たすべき役割について、どのような考えをお持ちですか?

池田:世界の情勢は、国連が設立された当時からは大きく変化しており、最近は、民衆の声をいかに汲み取っていくかが時代の要請となっています。
 これまで国家の専権事項とされてきた軍縮の分野においても、市民社会が持っている専門知識やコミュニケーション能力が本格的に活用されるようになっていけば、必ずや大きな進展がみられるはずです。
 先日もメキシコで国連広報局NGO年次会議が開催されましたが、62回目となる今回、初めて「軍縮」がテーマとして取り上げられたのは、こうした趨勢を象徴するものにほかならず、誠に歓迎すべきことです。
 また近年、「人間の安全保障」の重要性が叫ばれるようになっていることも見逃せません。従来の「国家の安全保障」からは欠落してしまっていた視点、つまり、“政治的判断が人々の生活にどのように影響を及ぼすのか”という視点が、市民社会の側から明快に提供されるようになっています。国家の側も、新たな安全保障のあり方を探り、実現していくパートナーとして、市民社会を受け入れようとする兆しがあり、国連でも同様の動きがみられます。
 私はこれまで、「核兵器廃絶を求める規範の確立」とともに、「民衆の力強い意思の結集」が必要であると訴えてきました。それは、国益が複雑に絡み合い、国家主導では解決が困難といえる課題への挑戦には、市民社会の側に果たすべき大きな役割があると考えているからです。
 ゆえに市民社会の側でも、「自分たちが主体者として時代を変革させる」との強い自覚を持てるような教育や意識啓発の機会を提供していくことが大切になります。さらには、同じ志を持つ人々やNGOがそれぞれ個別に活動を進めるのではなく、連携し合い、市民社会の連帯をより強固なものにしていく必要があるのです。
 私どもには、50年にわたる核廃絶への取り組みの経験があります。これを生かし、これまで以上に市民社会における「エンパワーメント(能力開花)」のための着実な運動を展開しつつ、世界各地で真剣に活動を推進している人々やNGOと協働関係を深めていきたい。
 そして、さまざまな運動のネットワーク化を目指し、その一つの結び目としての役割を果たしたいと決意しています。(原文へDaisaku Ikedaウェブサイト

IPS Japan

※池田大作氏は日本の仏教哲学者・平和活動家で、創価学会インタナショナル(SGI)会長。池田会長による寄稿記事一覧はこちらへ。

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

|軍縮|核兵器のない世界という新たな約束

青年の力で国連の改革を(英文)(PDF版