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|パレスチナ|独立を巡る国連採決に合わせて大規模抗議行動を計画

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【ベイト・ウマールIPS=メル・フライクバーグ】

ヨルダン川西岸地区(ウエストバンク)のパレスチナ人民委員会の主要メンバーが、国連でパレスチナを国家として承認するかどうかの決議採択が行われる9月に、イスラエル占領当局に対する大規模なデモ・不服従行動をおこす計画を進めている。

「私たちは大挙して街に繰り出し、イスラエルの違法な入植地につながる道をすべて封鎖し、入植地でデモを行う予定です。しかし、これらは全て非暴力的な抗議行動として取り組む予定です。」とベイト・ウマール(Beit Ummar:ウエストバンク南部ヘブロンから11キロ北の街)の人民委員会の主要メンバーであるムサ・アブマリア氏は語った。

「私たちはイスラエルによる占領について、国際社会や世界のメディアの注目を徐々に集めるよう創意工夫を凝らした戦略を練ってきました。パレスチナ問題をとりまく形勢が有利に展開している今日、欧米の支援者と連携しながら、パレスチナ人の苦境に対する国際社会の理解を一層広めていく活動を行っていきます。」とアブマリア氏は付加えた。

イスラエル政府、諜報機関、治安機関当局は、国連総会は圧倒的多数の加盟国がパレスチナの独立を支持すると予想しており、9月の採決に合わせてパレスチナ人が起こすであろう抗議行動に備えて、着々と準備を進めている。

 イスラエル政府は、パレスチナ人との大規模衝突に備えて治安部隊の軍事訓練を実施する一方、大急ぎで欧州各国を歴訪し、イスラエル政府の言う「欧州の一流諸国」からパレスチナの独立動議に反対票を投じるよう協力を引き出す外交工作を進めている。

イスラエル政府は、国連加盟国のうち約140カ国を占める「途上国或いは第三世界の国々」はパレスチナの独立に賛成すると見られることから、政治・経済的により強力な立場の加盟国がイスラエル側に賛同することを期待している。

パレスチナ暫定自治政府(PA)による9月の国連総会に向けた動きに懸念を深めたイスラエル政府は、決議が通るようなことがあれば1993年のオスロ合意の破棄を含め、一連の政治的対抗策をとる用意があるとの脅しをかけている。

しかしパレスチナ側は9月に向けて着々を準備を進めている。

先週、ベイト・ウマールに、パレスチナ諸派から横断的に1000人以上の活動家や指導者が集まり、3日間にわたってイスラエルの占領に終止符を打つための戦略作りを話し合った。これはパレスチナ自治政府やハマス指導部とは独立した動きであり、政治的に画期的な出来事であった。会議は3つの村で開催され会期中の金曜日には、イスラエルの違法入植地政策に対する大規模な抗議デモがおこなわれた。

この会議の中で、ハマスファタハパレスチナ解放人民戦線(PFLP)、パレスチナ解放民主戦線(DFLP)などの代表が、9月にウエストバンク全域で、大規模な市民的不服従運動(civil disobedience campaigns)を行うことで合意した。

「私は諸派の指導者たちにこう言ったのです。もしあなた方が、パレスチナの解放よりも党派の利益を優先するのならば、この会議に参加する必要はありません。しかしあなた方がもし、パレスチナの解放と、ウエストバンクガザ地区の政治的・地理的統一に向かって運動する決意でしたら、私たちは全面的に支援しますと。」とアブマリア氏はIPSの取材に応じて語った。

ファタハの主要メンバーでウエストバンク人民委員会指導部のユニス・アラール氏は、「今回の会合で、全てパレスチナ諸派の指導者から支持の確認を取ることができました。これにより、今のような散発的な抗議行動とは異なり、各指導者の合図で、数千人単位の大規模な抗議行動がパレスチナ全土で展開されることになります。」と語った。

またアラール氏は、「イスラエルは非暴力的な市民蜂起を何よりも恐れています。彼らは、パレスチナ人が暴力に訴えることを望んでいるのです。そうすれば、これまでもそうだったように、優勢な軍事力で弾圧することができるからです。しかし私たちは、非武装の抵抗を貫徹していくつもりです。」と語った。そして、「イスラエル当局は、いままで通常そうしてきたように、高速催涙ガス弾を直接パレスチナ人の頭部に投げつけたり、実弾による射撃を行って少なくとも数人の死者をだすように挑発してくるでしょう。」と語った。

ウエストバンクで計画されている抗議行動の中には、政治的なテーマを掲げた自転車ラリーやその他のデモ行進がある。ウエストバンクのナビサレー村では、村人がエジプト革命時のスタイルにあやかって、隣接するユダヤ人入植地ハマミシュによる継続的な土地収奪に抗議するテント村を設置している。

人民委員会は、大規模行進や抗議活動の他にも、並行してイスラエル製品のボイコット運動や抗議行進を計画している欧州の草の根諸団体との連携を進めている。

アブマリア氏は、「もし現在のパレスチナ指導部が近い将来、人々を積極的に引っ張っていかない事態が起こったとしても、私たち自身が自力で革命を組織するだろう。」と語った。事実、過去においても1987年に勃発した第一次インティファーダの際には、亡命中のパレスチナ解放機構(PLO)が、パレスチナ各地で推移した現地の展開に追従せざるを得なかった先例がある。

「私は15歳の時から政治活動に関わり同年に初めてイスラエル当局によって投獄されました。私には多くのコンタクトがありますし、現在起こっていること、パレスチナ人が考えていることが理解できるのです。私はパレスチナの独立が実現し民族の自由を獲得するまで決して活動をやめません。」とアブマリア氏は語った。(原文へ

翻訳=山口響/IPS Japa戸田千鶴


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パキスタン、核分裂性物質生産禁止条約に強硬に反対

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【トロントIDN=J.C.スレッシュ】

兵器用核分裂性物質の生産を禁止する世界的な条約(カットオフ条約:FMCT)を支持すべきとの国際的な圧力が高まる中、パキスタンがまるで高波の中の岩のように強硬に抵抗している。パキスタンは、米国が後押しするこの条約交渉について、唯一の多国間軍縮交渉機関で、行き詰まりを見せているジュネーブ軍縮会議(CD)以外のところですすめられるいかなるプロセスにも参加を拒否すると警告し続け、かたくなな反対姿勢を貫いている。

敵対国であるインドと原子力協力協定と締結しながら、パキスタンと同種の協定に入ることを拒否した米国の決定に衝撃を受けたパキスタンは、欧米核保有国の政策を「差別的である」と批判しており、ジュネーブ軍縮会議の長年にわたる行き詰まりを打開しようとしている国連の潘基文事務総長の意見にも耳を貸そうとする気配はない。

 潘事務総長は、ニューヨークでの国連総会において、行き詰まりを見せているジュネーブ軍縮会議を打開するための方策として、有識者パネルや総会アドホック委員会の創設、国連会議の開催を提案した。

日本の長野県松本市で「第23回国連軍縮会議in 松本」が開催されていた7月27日、潘事務総長は国連総会で演説し、「私たちは、信頼の危機が高まる中こうして集まりました」と語った。

この国連総会は、2010年9月に国連本部で開催された国連事務総長主催軍縮会議(CD)ハイレベル会合のフォローアップとして開催されたものである。「長きにわたって、国連の多国間軍縮機関、とりわけジュネーブ軍縮会議は失敗に終わってきた。」と潘事務総長は語った。

1979年に国際社会にとっての、唯一の多国間軍縮交渉機構として設置されたジュネーブ軍縮会議は、主に核軍拡競争の終結と核軍縮の促進、核戦争の防止、宇宙における軍備競争防止に取り組んできた。

「もし(ジュネーブ軍縮会議において)意見の相違が埋まらないならば、すでに述べてきたように、有識者パネルの任命を検討することになるかもしれません。あるいは、国連総会のアドホック委員会、または国連の会議において国家間の交渉を行ってもよいかもしれません。」と潘事務総長は語った。

潘事務総長は、国際社会は多国間主義を決して放棄してはならないと主張し、軍縮問題に取り組むためには、少数国の利益を図ることではなく、全体の利益を促進することが目標に置かれるべきだと語った。

「もしジュネーブ軍縮会議の行き詰まりが今後も打開できないならば、国連総会にはこれに介入する義務があります。ジュネーブ軍縮会議をいつまでも1・2カ国による人質状態においておくことはできません。懸念があれば交渉を通じて解消すべきです。世界は(FMCTの制定と採択に向けた交渉が)前進することを望んでいます。もう先送りはやめ、この長い停滞のサイクルにピリオドを打とうではありませんか。」と、潘事務総長は語った。

米国は国連事務総長を支持
 
米国はこの国連事務総長の方針を支持している。ローズ・ゴットモーラー米国務長官補佐官は、7月27日の国務省での報道発表において、「今日、軍備管理と軍縮の他の領域で大きな前進が見られているだけに、たった1カ国の反対によって、ジュネーブ軍縮会議が再び機能不全に陥り、長く待ち望まれた目標(核分裂性物質生産禁止条約:FMCTの制定と採択)に向かって交渉を開始することさえできないでいるのは、一層遺憾なことです。」と語った。
またゴットモーラー補佐官は、「米国政府は、できればFMCTをジュネーブ軍縮会議の場において交渉することを望んでいます。我々は、今年のジュネーブ軍縮会議に合わせる形で、FMCTに関する技術的議論を進めていこうとする日豪両政府の動きを歓迎しています。この活動は、生産的、実質的かつ教育的でありました。しかし、このことをもって、ジュネーブ軍縮会議が行き詰まっており、2年前より全く進展がないという事実が曖昧にされることがあってはなりません。」と付け加えた。

またゴットモーラー補佐官は、「国連安保理常任理事5か国とその他の関連パートナー国が、国連総会が9月に招集される前にさらなる協議を行う計画です。」と指摘した。

さらにゴットモーラー補佐官は、「有識者パネルやジュネーブ軍縮会議それ自体、あるいはその他の交渉舞台において、ジュネーブ軍縮会議改革の可能性を評価し、国連軍縮委員会の改編について示唆するところがあるかもしれません。」と語った。

ゴットモーラー補佐官は、考えうる検討内容として「ジュネーブ軍縮会議において合意された作業内容に年を越えてどう継続性を持たせるか、たとえば、合意された作業計画を自動的に次年も継続審議にすること」、「全会一致ルールの乱用を防ぎつつどうやって国家安全保障を守るか」、「ジュネーブ軍縮会議の拡大がジュネーブ軍縮会議の効率性を増すことになるのかどうか、普遍的な軍縮目標の実効性を守り、国家の安全保障上の懸念を尊重し守る一方で、どうやってその目標を審議し交渉を進める機構の中に乗せていくのか」といったことを挙げた。

「警告書」

国連事務総長と米国のこうした動きに反応して、パキスタンのラザ・バシール・タラール国連次席代表は、65カ国からなるジュネーブ軍縮会議の外部においてFMCT交渉に入ることへの「警告書」を発表し、「パキスタンは、そのようなプロセスに加わることもないし、そうしたプロセスの結果として出てきた条約への加盟を検討することもない。」と語った。

タラール次席代表は、パキスタンのこれまで2年間の方針を踏襲する声明の中で、「これらの政策は、権力と利益によって国際的な不拡散という目標を犠牲にすることで、我々の地域(南アジア)における核分裂性物質備蓄の非対称性をさらに強めるものです。」と主張した。

またタラール次席代表は、「残念なことに、こうした政策は、原子力供給国グループ(NSG)の反対にあうこともなく継続されてきています。NSG加盟国の中には、核不拡散条約(NPT)を最も熱心に支持している国々や、『ジュネーブ軍縮会議において進展がないこと』を最も厳しく批判している国々が含まれるにも関わらずです。」と語った。

さらにタラール次席代表は、「列強は、ジュネーブ軍縮会議の改革、さらには機能不全に陥ったこの機構を廃止するというオプションまで検討し、すべての国家に事実上の拒否権を与えて前進を妨げる全会一致方式の意思決定ルールを非難していますが、ジュネーブ軍縮会議が機能不全に陥っている真の理由は、核兵器保有国の中に公正かつバランスの取れた形での交渉に入る政治的意思を持たない国が存在する点にあるのです。」と語った。

「ジュネーブ軍縮会議が直面している問題は、組織上、あるいは手続き上のものではありません。むしろ、最も強力な国の利益に奉仕する形でのみ交渉が進むという明確なパターンがあるのです。」とタラール氏は語った。

この点について、タラール氏は、「ジュネーブ軍縮会議では、すでに機は熟していると思われることについても交渉に入ることができないのです。すなわち、列強の安全保障上の利益を脅かしたり損なったりしないような合意内容についてしか交渉できないという明確なパターンが存在するのです。」と指摘し、具体的な例として、生物・化学兵器禁止条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)を挙げた。

タラール氏はさらに続けて、「同じことがFMCTについても言えます。大量の核兵器、それに(すぐに核兵器に転用可能な)核分裂性物質を備蓄した列強にとって、これ以上核分裂性物質は必要ないわけですから、将来の核分裂性物質生産のみを禁止する条約を締結する準備が整っているということです。つまり、このアプローチは列強にとって『ノーコスト』であり、自国の安全保障を脅かしたり損なったりしないパターンを踏襲しているのです。」と語った。

これらの理由により、パキスタンは、核問題で選択的かつ差別的な取り扱いを受けることに「強固に反対」しているのである。「他の関連諸国にとってノーコストな取り決めのために、自国の基本的な安全保障上の利益を損なう用意のある国はありません。」とタラール次席代表は指摘したうえで、軍縮機構を活性化するための「誠実かつ客観的なアプローチ」を作り出すために採られるべきステップについて言及した。

例えば、核軍縮を最重要課題として、公正かつバランスの取れた形でジュネーブ軍縮会議において主要議題を検討すること、また、非核兵器保有国に対する消極的安全保障(=核兵器の使用禁止措置)に関する法的拘束力ある取り決めを作り上げること等を挙げた。

FMCTはもし採択されれば、兵器級の核分裂性物質に課せられた既存の制約に、法的拘束力ある国際取り決めを加えることで、核不拡散規範を強化することになるだろう。この条約は、核兵器あるいは他の核爆発装置用核分裂性物質の生産を禁止する一方、非爆発目的のプルトニウムや高濃縮ウランには適用されない。また、トリチウムのような非核分裂性物質にも適用されない。さらに、既存の核分裂性物質の備蓄分も禁止の対象とならない見込みである。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

|エチオピア|世界遺産地域の開発で諸部族が危機に

【ナイロビIDN=ジェローム・ムワンダ】

東部アフリカが過去60年で最悪といわれる旱魃にみまわれ、数百万人が苦しむ中、エチオピア政府が同国内でもっとも豊かな土地を地元の部族から奪い、外国の企業に譲り渡そうとしている。

世界中の部族の人びとの権利を擁護する団体「サバイバル・インターナショナル(サバイバル・インターナショナル: SI)」の調査によると、エチオピア南西部オモ川沿いの肥沃な土地が、イタリア・マレーシア・韓国の企業に貸与され、輸出用作物の栽培が進められている。また、貸与用の土地を少なくとも24万5000ヘクタールまで拡大し、広大な輸出用砂糖黍プランテーションにする計画もある。SIによると、エチオピア政府は諸部族を「遅れた」人々と見なしており、彼らの自給自足の農耕、遊牧、狩猟というライフスタイルを改めさせ、プランテーションの労働者に変換する「近代化」政策を推進する意向である。

 しかし、「下オモ谷」(Lower Omo Valley)には約90,000人の諸部族(ボディ族、ダサネッチ族、カロ族、クェッグ族、ムルシ族、ニャンガトム族)が、長年に亘る伝統・慣習を守りながら土地がもたらす恵みに依存して生活している。ここには草地、火山帯など手付かずの美しい土地が広がっており、数千年前にはさまざまな文化や民族集団が出会う場所であったと考えられている。

オモ川の定期的な氾濫は地域の生物多様性をより豊かにする。雨量の少ないこの地域で諸部族の人びとが食料を確保するには、この氾濫こそが必要なのである。

この地域に普段は居住していない部族(ハマー族、チャイ族、トゥルカナ族)も、他の諸部族との取り決めによって、とりわけ食糧不足の時期には平原に入って食料を確保することができる。

しかしながら、SIによると、政府が多くの土地を部族から奪うにつれ、部族間の資源争いが近年激しくなってきた。さらに火器の導入で部族紛争はより苛烈なものになった。
 
さらにエチオピア政府は、オモ川沿いにアフリカ大陸最大規模となるギベ第3ダム(Gibe III)を含む一連のダム建設と、数百キロにわたる灌漑用水路の建設を計画している。SIは、この計画が進められれば、オモ側の水系が変化し諸部族が生活の基盤としてきた地域の生態系を変えてしまう、と警告している。つまり、ダムが川の氾濫を減らし、土地の肥沃さがなくなってしまうのである。

2006年7月、エチオピア政府は、イタリアの企業「サリーニ建設」とダム建設の契約を結んだ。しかし、業者の選定に際しては同国の法律の規定にも関わらず競争入札はなされなかった。また、この建設承認当初には環境アセスメントが終了しておらず、事後的にアセスメントが承認されたのは2008年7月のことであった。しかもアセスメントを実施したイタリアの会社CESIにはエチオピア電力公社のみならず「サリーニ建設」も支払いを行っていることから報告書(環境や諸部族への影響は殆どなく、むしろポジティブと結論)の中立性が疑われている。一方、独立専門家によるアセスメントによると、水量の激減により下流の生態系が大きな影響を受け、河川の枯渇と河川沿いの森林が消滅する危険性が指摘されている。「このことは、従来の自然洪水がもたらす肥沃な土が失われることを意味し、少なくとも下流に住む100,000人の諸部族が食糧難に直面することになる。」とSIは警告している。こうした事情を背景に、国際人権団体のグループが2008年、人権問題の見地からダム建設に反対するオンラインキャンペーンを開始した。

2011年8月現在、建設は3分の1まで進行しているが費用は当初予算の14億ユーロから大きく膨れ上がっている。

一方エチオピア政府は、開発に反対する勢力との対話の道を断ち、弾圧を強めている。部族民が反対意見を口にしたり、外部の人間やジャーナリストに訴えないよう、違法な投獄、拷問、女性に対するレイプなどの手段を駆使している。その結果、部族民達は政府に対する恐怖の中で日々を生きねばならない状況にある。

しかし、下オモ谷は、考古学的・地理的重要性を有しているということでユネスコの世界遺産に指定されている地域である。エチオピア政府は、このような土地の開発を許そうとしている。

「サバイバル・インターナショナル」のスティーブン・コーリー代表は、「オモ谷の部族の人びとは『遅れた』人びとでもないし、『近代化』を必要としてもいません。彼らは、土地を取り上げようとしている多国籍企業と同じく、21世紀の一部なのです。悲劇なのは、彼らを肉体労働者に変えてしまえば、他の多くのエチオピア人がそうであるように、ほぼ確実に彼らの生活の質を低下させ、彼らを飢餓と窮乏の淵に追いやってしまうことになるのです。」と語った。

エチオピアにおける世界遺産地域の開発問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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|中国|「緊張関係にある地域における軍備拡張には慎重さが必要」とUAE紙

【アブダビWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の日刊紙が、独自のスピードで軍備の規模や役割の拡大を図っている中国に対して自制を呼びかけた。

ガルフ・ニュース紙は、「中国の軍備拡大を追跡」と題した8月12日付論説の中で、「中国が自らの影響力拡大と国益の保護を図ろうとする中、成長を続ける同国の経済に軍事力が追従しようとするのは避けられないことである」と報じた。

中国は軍事費を大幅に増大させ軍備の質的向上につとめてきている。そして今では同国初となる航空母艦の建設にも着手した。

 「(国産)航空母艦が実戦配備されるにはなお何年もの歳月を要するが、建設に着手したということは、中国がハイテクの民間及び軍事プロジェクトを独自に開始する能力を獲得しつつあることを意味している。」と同紙は報じた。

この点についてガルフ・ニュース紙は「中国は2003年には宇宙への有人飛行に成功し(米ソに続いて世界で3番目)、高速鉄道ネットワークの拡大に着手してきた。」と具体的事例を挙げた。

「しかし中国はあまりにも急速に技術導入と開発を推し進めてきたため、7月23日に浙江省温州市で起きた高速鉄道事故で見られたような様々な事故を引き起こしてきた。中国は自国の軍事力の規模と役割についても急速に増強を図っているが、慎重を期するべきである。」と同紙は注意を促した。

「中国も国際社会も緊張関係が高まっている地域(南シナ海)で軍事衝突事故をおこす余裕はない。」とガルフ・ニュース紙は強調した。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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|国連-北朝鮮|支援食糧がようやく飢えた国民のもとへ

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

「北朝鮮ではたとえ10万人が餓死したとしても、国内で働く外国人はそれを目の当たりにすることはないでしょう。」とこの貧困に喘ぐ共産主義国家で3年にわたって人道援助活動に携わったある人物が語った。

「北朝鮮国内で活動する外国の諸機関は、どこに行くにも政府に対して7日前に通知をしなければなりません。それだけあれば、証拠を隠ぺいするには十分な期間があるということです。」とIPSの取材に応じたその人物は匿名を条件に語った。

 慢性的な食糧不足が続いている今日の北朝鮮の現状は、かつて50万人から100万人の死者を出したと報じられた1990年代半ばの飢饉を想起させるものである。

その結果、この秘密主義の北朝鮮で活動を許される数少ない国際援助スタッフに対して従来設けられていた様々な制約・条件が緩和されてきている。

こうした背景から、人道支援に携わる人々は、4か月前に国連世界食糧計画(WFP)と北朝鮮政府の間で合意された、飢餓にあえぐ北朝鮮国内の350万人の人々(その大半が母子並びに高齢者)に対する食糧支援計画について説明するにあたり、あえて「前例のない」或いは「革新的」という言葉を使っているのである。

北朝鮮政府は、4月初頭のWPFとの合意に基づいて、WFP職員が食糧援助の状況をモニタリングするため208郡の内、107郡に立ち入ることを許可している。「現場視察」への事前通知も(1週間前ではなく)24時間前に緩和しており、援助車輛のモニタリングに必要なインターネット接続や、食糧支援に携わる韓国語を話すスタッフへの査証発給についても「国籍を問わない」としている。

「私たちは北朝鮮における過去15年の支援経験の中で、最も厳格な条件を政府に認めさせることができました。農村地帯の地元市場を訪問し現地の食糧事情を把握するのは私たちにとっても新たな経験です。」と、バンコクに拠点を置くWFP東アジア事務所のマーカス・プライヤー報道官は語った。

北朝鮮は1948年の建国以来独裁体制を敷いており国内で活動を許されている国連機関もWFPを入れて僅か4機関に過ぎない。しかしWPFは、今回北朝鮮政府から譲歩を引き出したことで、南浦に陸揚げした援助食糧物資を援助対象者のところまで確実に届けられるようになった。

「WPF職員は、食糧援助物資の配達・運搬過程の全て-港湾、倉庫、トラック、さらに最終目的地の学校、病院、孤児院における健康診断-にアクセスできるようになっています。」とプライヤー報道官は語った。

5月以来のWFPの支援活動は、大半が北朝鮮の険しい山間部に在住している「緊急支援を要する350万人の食糧ニーズ」に対応するための緊急措置の一環である。

国連は今年3月、人口2400万人の北朝鮮で危機に直面している600万人を超える人々の食糧問題に対処するためには約430,000トンの食糧援助が必要と見積もった。

「今回北朝鮮政府がWFPに食糧支援活動のモニタリングを許可したことは歓迎すべきことです。これは国連が従来から主張してきたノーアクセス、ノーフード(モニタリングの受け入れ態勢のない所に食物は与えない)の原則に合致したものです。」と北朝鮮の人権状況調査を担当したビティット・ムンタボーン前特別報告官は語った。

「人道援助は無条件で実施されるべきで、食糧が被災者の元に確実に届くよう透明性を確保することが重要です。北朝鮮は、以前にも定期的に規制を緩和したことがあります。」と6年に亘る国連特別報告官時代に北朝鮮への入国を拒否された経験をもつムンタボーン教授(法学)は語った。

北朝鮮の食糧危機は、今年1月に同国政府がWFPに対して食糧備蓄が枯渇している旨を報告したことにより明らかとなった。今年の食糧不足の主要原因は、韓国による食糧援助削減というよりも天候不順によるものである。

国連諸機関が実施した北朝鮮の食糧事情に関する特別報告によると、昨年の夏に農耕可能な平野の2割を襲った豪雨が原因で、同国で人気があるキムチを作るための野菜を含む季節の農産物が深刻な被害を受けた。

「さらに厳しい冬がそれに続いたため、大麦・小麦畑が凍りつき、冬季に保管していた種イモも被害を受けた。」と同報告書は記している。

この事態に対して、2008年から北朝鮮に対する年間400,000トンの米支援を停止している韓国は、動きを見せなかった。韓国の李明博政権は、北朝鮮が核兵器開発を引き続き継続していく意思を表明している事態を受けて、同国に対する強硬姿勢を崩していない。

さらに昨年には北朝鮮側からの2度にわたる攻撃(天安沈没事件延坪島砲撃事件)により50名の韓国人が死亡する事件が勃発し、両国間の関係は一層悪化した。

李明博政権は、対北朝鮮支援に殆ど条件を付けない「太陽政策」を推進した先の2つの政権とは異なり、対北朝鮮援助を同国の核軍縮と関連付ける方針をとっている。

あるアジアの外交筋によると、北朝鮮にとって最大の同盟国である中国でさえ、金正日総書記が昨年8月に北京を訪問した際に要請した50万トンの穀物支援に積極的に応じていない。

「金総書記はこの1年で3度中国を訪問しているが、中国政府は、韓国が穀物支援を停止した結果生じた北朝鮮の食糧不足分を埋める手助けを行っていない。」とその外交官は語った。

「もし米国と韓国政府が今回のWPFによるモニタリングを伴う食糧支援が機能していると判断すれば、さらに多くの食糧支援が北朝鮮に対して行われることでしょう。」とその外交官は付加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|ソマリア|「私は息子が生きていると思って一日中運んでいたのです」

【モガデイシュIPS=アブドゥルラーマン・ワルサメ】

国連世界食糧計画(UNWFP)による支援食糧の第一便が7月27日にモガディシュに空輸されてきたが、カディジャ・アリさんの2歳の息子ファラちゃんにとっては手遅れの支援となった。

アリさんは、ファラちゃんと8人の子どもたちとソマリア南部シャベリ川下流のWanlaweyn 地区を発ち、16日間にわたる長旅を経てやっとモガディシュにたどり着いたが、ファラちゃんはアリさんの腕の中で既に死亡していた。

「私はこの子が既に亡くなっているのに気付かず、ただ寝ているものだとばかり思い込んでいて、一日中抱いたまま歩き続けてきました。私たちにはこの3日間、水も食糧もなく、この子にもなにも与えてやることができませんでした。」と首都モガディシュの郊外にあるバドバド難民キャンプでIPSの取材に応じたアリさんは泣きながら語った。

アリさんの家族は、既に2年に及ぶソマリア南部を襲った今回の旱魃が始まる前には50頭の牛、20頭の山羊、5頭のラクダを所有していた。牧畜が農村経済の主流を占めるこの地域では多くの家畜を所有することは富の象徴で、アリさん一家は地元でも裕福な家庭であった。
 
「旱魃は最初3期連続で降雨量が不足するところから始まりました。それから全く雨が降らなくなったのです。牧草は枯れ、井戸や川は干上がりました。そして家畜が飢えて次々と死んでいったのです。」と、アリさんはかろうじて生き残った3人の幼い息子の内の一人を抱きながら語った。

バオバオ(ソマリ語で:救済)キャンプは、ソマリア南部における旱魃による難民を収容する最大の施設である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、現在約5000家族、28,000人が収容されている。

しかしアリさんは一家揃って難民キャンプに辿りついた訳ではない。アリさんの夫は、家族の残りの財産を守るために村に残る選択をした。その後、夫がどうなったかアリさんにはわからない。アリさんは他の数百家族とともに、厳しい旱魃と飢餓から逃れ助けを求めて厳しい旅に出た。

しかしせっかくの援助も、命を救うには遅すぎたケースが少なくない。

難民キャンプに到着した子ども達の中には、栄養失調で衰弱しきっているため医師も手の施しようがないものも少なくない。そうした子供達の中には何日にも亘って水も食糧も一切摂取していないものもいる。

大半の子ども達は、例えば、3歳児でも体格は1歳程度のままであるなど、飢餓による明らかな発育不良の兆候をしめしている。

「彼らは空腹と疲労から弱り果ててここに到着しています。モガディシュでは毎週2~3名の子どもや大人が亡くなっています。しかし難民キャンプは街中に点在しており、難民全体の正確な人数は把握できていません。」とバオバオキャンプで看護婦として従事しているムナ・イゲーさんは、キャンプで栄養失調の子どもの体重を量りながら語った。

7人の子どもの父であるダーヒル・バボウさんは、モガディシュに到着直後、2人の子どもが深刻な栄養失調で倒れるのをただ見ているしかなかった。

「モガディシュの主要医療センターであるバナディール病院の医師と看護婦は最善を尽くしてくれましたが、2番目の子どもにあたる娘は助かりませんでした。」とバボウさんは語った。

バボウさんは家族とともに旱魃をやり過ごそうと努力したが、今回は耐え切れず助けを求めて家を出るしかなかったという。

「私たちは今までしてきたように今回の旱魃も雨の到来を待ってやり過ごそうと努力しました。しかし再び雨が降る前に私たちの家畜が全滅してしまったのです。近隣住民の多くも同様の状況で全ての家畜を失った後、村を去っていきました。だから私たちも諦めて家を去る時が来たと判断したのです。」とガボウさんは栄養失調で亡くなった娘の葬儀の準備をしながら語った。

「私たちは21日間歩きました。道中、見つけられるものを飲み食いし日が落ちれば睡眠をとりました。今回の旱魃は父から聞かされていたものとも、私がこれまで経験したものとも異なる(大変厳しい)ものです。今は試練の最中にあり、私たちは忍耐力をもって自分を強く待たなければなりません。」とガボウさんは語った。

国際連合児童基金(UNICEF)の東南アフリカ地域事務所長のエリハジ・アス・シ氏は、今回の飢餓を「子どもの生存が危ぶまれる危機」と呼んだ。

ソマリアは、人道支援を必要とする被災者が1100万人にものぼるとみられる「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部諸国で猛威を振るっている深刻な旱魃の影響を最も受けている国である。隣接するケニアエチオピアジブチも過去60年で最悪といわれる危機に直面している。7月20日、国連はソマリア南部のバクールとシャベリ川下流地域の2つの地方で飢饉が起きている、と宣言した。

ユニセフは、ソマリア、ケニア、エチオピアにおいて合計で223万人の子どもが深刻な栄養失調状況に陥っていると見積もっている。国連は、66,000人を超える栄養失調児童を治療する糧食を含む1,300トンの緊急食糧支援をソマリア南部に対して行ったと発表している。

一方、ソマリア南部では各地の村からの住民流出が続いている。国連によると、これまでに100,000人近い難民がモガディシュに流入しており、その内40,000人近くが先月到着した人々である。
 
 「UNHCRの統計によるとこの一か月間に旱魃と飢餓により、食糧、水、住居、その他の支援を求めてモガディシュに集まってきた難民の数は40,000人近くに上っています。」とUNHCRのヴィヴィアン・タン広報官は7月28日に発表した声明の中で語った。

国連は、難民の数は増え続けており、7月には一日平均1,000人が新たにモガディシュに到着していたとみている。

地元の非政府組織も大いに必要とされている人道支援を行っているが、難民キャンプの収容者によると、援助物資は限られたものであり、ソマリア政府も緊急支援を増加するよう求めている。

UNWFPは7月27日、モガディシュへの最初の食糧空輸を開始した。この支援はイスラム過激派組織アル・シャバブが、(ソマリア南部の)支配地域における国際援助機関の活動を禁止して以来、最初のものとなった。

UNWPFはモガディシュの難民キャンプに収容されている栄養失調に陥っている子供たちのために14トンの栄養強化食品を空輸した。

UNWPFのデイヴィッド・オア広報官はモガディシュ国際空港で記者団に対して、もっと多くの緊急支援物資がこれから数日にわたって空輸されます、と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

サウジアラビアの対イラン軍備増強を後押しするドイツ

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【ベルリンIPS=ジュリオ・ゴドイ】

ドイツ政府によるサウジアラビアへの最新鋭戦車売却は、国内、周辺国における民衆蜂起を抑圧するためのものではなく、イランとの有事に備えて同国の国防能力を増強することを意図したものである、と外交・軍事専門家は語っている。

サウジアラビアに最新鋭主力戦車(レオパルト2)200輛を売却するとのドイツ政府の決定(取引総額は推定18億ユーロ)に対して、ドイツ国内では、野党、評論家、教会、人権団体等各方面から批判の声が高まっている。

こうした批判にも関わらず、ドイツ政府は、サウジアラビアの政体は専制君主制とはいえ中東地域における「安定の柱」であるとして、今回の決定を擁護した。

またドイツ政府は、米国とイスラエルからの反対がないこともサウジアラビアとの武器取引を正当化する根拠としている。

 野党指導者、評論家、人権団体から表明されている懸念に反して、外交・軍事専門家は、サウジアラビア当局はドイツ製戦車を民主化を要求する国内反対勢力の鎮圧に使用するのではなく、イランとの有事に使用するものを確信している。

この点について、週刊誌Die Zeitの編集者ヨセフ・ヨフェ氏は、「サウジアラビア政府は、2000輌の兵員輸送装甲車等、国内の敵を鎮圧する目的ならば、(戦車より)より適した装備を投入できる。」と語った。
 
 ヨッフェ氏は、ドイツメディア界において、米国と西欧諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の存在意義を最も熱心に擁護している人物の一人である。またヨッフェ氏は、米国及びイスラエル政府とのつながりをもつ人物である。

またヨッフェ氏は、サウジアラビアにレオパルト2戦車を売却することで、「ドイツは、米国、イスラエルとともに、中東地域、とりわけイランに対して『ここにさらなる(軍事)抑止力があるぞ。このことは軽視されるべきではない。』とのメッセージを送っているのです。」と付け加えた。

ヨッフェ氏は、「2009年には、ドイツ政府はカタールにレオパルト2戦車を36輛売却しています。」と語り、ドイツが最近他のアラブ諸国に類似の軍事装備を売却した点を指摘した。

またドイツ連邦軍も、アラブ首長国連邦(UAE)において、レオパルト2戦車の砂漠における戦闘能力を検証するための軍事訓練を実施した事実を認めている。その検証テストの結果は明らかに満足のいくものだった。

他の西側政府、とりわけ米国、英国、フランスは過去数十年に亘ってサウジアラビアの軍備強化を支援してきた。

元駐ベルリンイスラエル大使で現在イスラエル外交協会会長をつとめるアヴィ・プリモール氏は、「サウジアラビア政府は、国内の民衆蜂起を抑える際には、より適した軍事装備を使用します。」「最近サウジアラビアがバーレーンで勃発したアルハリーファ家支配に対する民衆蜂起の鎮圧に介入した際、サウジアラビア政府はより重装備の米国製のM1A2エイブラムス戦車ではなく、AMX軽戦車を使用しました。レオパルト2戦車のサウジアラビア導入は、明確にイランに対抗するためのものです。」と語り、ヨッフェ氏と同様の見解を示した。

またプリモール氏は、サウジアラビアとイスラエルは公式には今も戦争状態にある点を指摘した上で、「しかしイスラエルとサウジアラビアにはイランという共通の敵がいます。サウジアラビアはイランを同国にとって最大の脅威と見做しているのです。」「イスラエルは、サウジアラビアをイランの脅威に対する砦として、また、今日の不安定なアラブ世界における安定勢力として、緊急にサウジアラビアの軍事力を増強したいという国益上の思惑があります。」と語った。

プリモール氏はその一方で、「サウジアラビアの政権は旧態依然とした」ものであり、人権団体が、同国に対する武器売却を批判するのは「理解できる」と語った。

このような議論にも関わらず、戦車輸出を巡る批判の声は暫く止みそうにない。昨年までドイツ連邦軍の議会監督官をつとめたラインホールト・ロッベ氏は、サウジアラビアは「明らかに西側民主主義国家が考える民主主義と人権の基準を満たしている国ではありません。軍事援助を含むドイツの外交政策は、こうした民主主義・人権基準をガイドラインとして進められるべきです。」と語った。

またカトリック教会も、今回の武器売却を批判した。「ドイツ政府は軍事的な危機を孕んでいる地域や人権を抑圧している政権に対して武器を売却すべきではありません。」と『Justitia et Pax』委員長のステファン・アッカーマン司教は語った。

ヒューマンライツウォッチ(HRW)は、サウジアラビアにおける人権状況を「恐るべき状況にある」と評価しており、今年初頭から中東全域を席巻している民衆蜂起に直面してからの人権状況の改革を表明しなかった数少ない政府の一つである点を強調した。

HRWサウジアラビア上席研究員のクリストフ・ウィルケ氏は、「サウジアラビア軍の戦車がバーレーン領に侵入する光景が、バーレーン政府による、平和的な民衆化抗議活動に対する弾圧の狼煙となりました。ドイツ政府がこのタイミングでサウジアラビア政府に戦車を売却すると行為は、ドイツが抑圧的な政権を支持していると、同国の改革支持者に解釈される恐れがあります。」と語った。

しかしドイツ政府は、このような批判に耳を傾ける気配はない。それどころか、ドイツ政府はサウジアラビアと類似した人権実績を持つ他の国々に対しても軍事装備の売り込みを行っている。

アンゲラ・メルケル首相は、7月中旬にアフリカ南西部のアンゴラを訪問した際、ジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス大統領に対して哨戒艇その他のドイツ製武器の売却を持ちかけている。

「哨戒艇が実際にアンゴラに売却されるか否かは今の段階では明らかではありませんが、ドイツ国内の評論家たちは、メルケル首相がサウジアラビアへのレオパルト2戦車売却に対して高まった批判を無視したうえに、(アンゴラで)「軍事産業の販売マネージャー」として振る舞ったことに衝撃を受けています。」と野党「緑の党」のクラウディア・ロス党首は語った。

ドイツの日刊紙「Die Sueddeutsche Zeitung」の外交アナリストであるトールステン・デンクラー氏は、「アンゴラは、憲法さえも一党独裁制を追認するような、世界でも有数の腐敗した政権であり、メルケル首相の感覚を疑わざるを得ない。」と語った。

またデンクラー氏は、アムネスティ・インターナショナルがアンゴラにおける人権抑圧を繰り返し非難している点を指摘した。

デンクラー氏は、メルケル首相が訴えている軍事輸出に関する「現実的かつ政治的な理解」というものには、外交政策を実施するにあたって踏まえるべき基本的な倫理的前提条件が蔑になれていると嘆いた。「私はドイツが武器を輸出してはならないと言っているのではありません。もし輸出するとすれば、民主主義と法の統治が保障されている国々に限定すべきだと言っているのです。」とデンクラー氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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福島原発危機にあたって、広島を想起する(ラメシュ・ジャウラ国際協力評議会会長)

【IDNベルリン/広島=ラメシュ・ジャウラ

前代未聞のマグニチュード9.0の地震と津波に続いて起こった福島原発事故の映像は、2008年5月の私の初めての広島訪問と、2010年9月の2回目の訪問の記憶を呼び起こさずにはいられなかった。

広島平和記念公園に穏やかにたたずむ像は、広島・長崎の悲劇を二度と起こしてはならないという人類の強い願いを象徴する多くの千羽鶴によって飾られていた。米国がはじめて核兵器を投下した両市では、約25万人が死亡した。皮肉ではないにしても婉曲的な言い回しで、米国はそれぞれの核兵器を「リトルボーイ」「ファットマン」と名づけた。

原爆の子の像」と銘打たれたその像は、65年前、原爆投下とそれに伴う無辜の若い身体を貫通した放射線の犠牲となった、佐々木禎子をはじめとする多くの子どもたちを記憶に留めるものだ。

 禎子は、1945年8月6日に広島上空で原爆が爆発したとき、2才であった。その3日後、2発目の原爆が長崎で炸裂した。禎子の物語は、有無を言わさず原爆に巻き込まれてしまった老若男女の痛ましい物語のひとつではあるが、深く私の胸に突き刺さった。

私は、原爆を運ぶパラシュートを見つめていて目が溶けてしまった幼い女の子の話や、巨大な黒い水ぶくれを顔に作った男・女・子どもの話、爪からだらりと皮膚をぶらさげたままむなしく助けを求めていた人々の話、家屋が炎に包まれ、家族全員が生きたまま丸焼けにされたという話、人間の目玉や内臓が体から飛び出したという話、そして、なんとか生き残った人間は、死者を羨んだという広島の地獄の惨状を聞いた。

平和のための原子力

平和のための原子力」の理念を体現し、豊かな生活に必要な経済・産業発展を支えるものとして作られた福島の原子炉とは違い、広島に投下された「リトルボーイ」と長崎を壊滅させた「ファットマン」は、はじめから破壊の道具とされ、人間の生命などまったく顧みずにただ目標を殲滅するために作られたものであった。

振り返ってみると、大惨事に見舞われた福島の原子炉から解き放たれた放射能は、その危険性において、禎子を死に追いやったものと大差はない。「平和のための原子力」は、実際には悪意と殲滅のための道具と化してしまうのか。それとも、最高の善意として用いるために十分なことがなされたのか、そうではなかったのか。それは、歴史が証明するだろう。

いずれにせよ、禎子の物語は、広島・長崎で亡くなった何十万もの人々への敬意として、核兵器のない世界に向かって行動し運動を起こしていく緊急の必要性を強く訴えるものである。

まるで奇跡のように、禎子とその母は核のホロコーストを無傷で生き延びた。禎子は、1955年、風邪をひき首に痛みを感じるまでは、小学校を一日も休むことのない、健康で元気な子どもだった。彼女は歌と運動が大好きで、実際、クラスで一番足が速かった。

禎子の風邪は間もなくして治ったが、首は痛いままだった。

その数日後、彼女の顔は膨らんでしまった。様々な検査の後、医者は禎子が白血病であることを父親に告げた。「余命は長くて1年です」との告知だった。

禎子は広島赤十字病院に入院した。平和記念資料館の記録によると、禎子は、入院してから5ヵ月後、同じ病院で白血病が原因で亡くなった5才の女の子の話を聞いたという。自分自身も白血病だと知った禎子は、自分も生き続けることができるのだろうか、と思い悩んだ。

それから数ヶ月が経過した8月のある日、希望を与える出来事があった。名古屋の高校生が広島赤十字病院の患者に千羽の折鶴を送ってくれたのである。禎子の部屋も、色鮮やかな折鶴で彩られた。

もし「千羽の鶴を折ったら、願いがかなう」という話を聞いた禎子は、熱心に鶴を折り始めた。彼女は生きたかったのだ。彼女は一羽一羽の折鶴に「よくなりますように」と願いを込めながら折っていった。

しかし、彼女の病状は回復することなく、1955年10月25日の朝、禎子は息を引き取った。12才だった。

福島原発事故の結果、こうした物語がこれからの数年の内にくり返されることになるのかどうかは、時が経ってみないとわからない。しかし、今必要なことは、座していることではなく、行動と相互連帯への関心を高めるという決意を実践に移すことである。それは核兵器に関してもいえる。

Photo: SGI president Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

池田大作創価学会インタナショナル(SGI)会長は2009年9月の提言「核兵器廃絶へ 民衆の大連帯を」の中で、「世界を分断し、破壊する象徴が核兵器であるならば、それに打ち勝つものは、希望を歴史創造の力へと鍛え上げる民衆の連帯しかない」と述べている。

核兵器なき世界は、原子力発電をも不必要とするのか、それとも、人類に利益をもたらすように原子力を制御する研究開発(R&D)へと導くのか。

研究開発

2010年9月の私の広島訪問は、日本の若者は「新しい時代を創る」能力と気概を持った人々であると信じさせるに十分であった。SGI会長にちなんで名づけられた広島池田平和記念会館での出会いは、きわめて勇気付けられるものであった。

私の心に残ったのは、久保泰郎創価学会副会長・総広島長との出会いだった。私が会館を訪れたのは暑い午後のことだったが、彼は、人懐っこい笑顔で私を迎え、ともに講演会場に向かう前のひと時を、思い出に残るお土産と、記念会館についての貴重な話、そして茶菓でもてなしてくれた。

会場では100人を超える聴衆が待っていてくれた。中年層もいたが聴衆の大半は若者たちだった。インドに生まれ、ドイツ在住38年のジャーナリストである私は、この講演で、池田SGI会長が長年発表してきた平和提言と、核兵器なき世界に向けたたゆまぬ努力について所見を述べさせて頂いた。彼らは、熱心に耳を傾けてくれた。

核兵器なき世界という目標へ大きく貢献してきた、これまで世界からの識者を招いて開催してきた一連の講演会は、広島池田平和記念会館の平和と軍縮問題に対する強い関心の表れである。

2010年だけでも、創価学会広島青年部のメンバーは、11月12日から14日まで広島平和記念公園で開催された「第11回ノーベル平和賞受賞者世界サミット」と合わせて、「広島学講座」を開催した。

その際招かれた講演者には、南アフリカのフレデリック・W・デクラーク元大統領、「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」のジャヤンタ・ダナパラ会長、北アイルランドの草の根の運動組織「ピース・ピープル」の共同創設者のマイレッド・コリガン・マグワイア氏がいる。

デクラーク元大統領は、南アフリカのアパルトヘイトの歴史や、同国の核兵器計画を率先して解体した自らの経験、そして世界から核兵器をなくす必要性について話した。彼は、これを実現するには、しばしば暴力につながることもある「脅威への感覚」が、対話による「信頼の感覚」に取って代わられる必要があると語った。アパルトヘイト廃止に重要な役割を果たしたデクラーク氏は、伝説的なネルソン・マンデラ氏とともに1993年にノーベル平和賞を受賞した。

1995年にノーベル平和賞を受賞した「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」のダナパラ会長は、広島・長崎への原爆投下を人道への罪だと主張した。彼は、市民社会には変革を創り出し政府に影響を与える大きな力がある、と述べ、核兵器廃絶にむけて努力を続ける創価学会に賛辞を送った。

妹の3人の子どもが北アイルランドの宗派抗争のために命を落としたマグワイア氏は、北アイルランドでの紛争を終わらせるために非暴力に訴えた経験をもとに、一対一の対話が持つ大きな力を強調した。彼女は、広島の若者に対して、「唯一の被爆国に生まれた皆さんは、核兵器廃絶を世界に訴える説得力をもっているのです。」と語りかけた。また、戦争放棄をうたった日本国憲法第9条の重要性にも言及した。

Betty Williams/ Wikimedia Commons
Betty Williams/ Wikimedia Commons

マグワイア氏の講演の重要性は、ベティ・ウィリアムズ氏らとともに暴力なき未来というビジョンを推進する「ピース・ピープル」と呼ばれる草の根組織を立ち上げた事実によって、裏うちされている。ウィリアムズ氏もまた、1976年のノーベル平和賞受賞者である。

福島での大惨事に対する反応が示しているように、創価学会の若者たちは、核兵器なき世界、あらゆる形態の暴力なき世界のためにのみ努力しているのではなく、日本の三重の惨事の犠牲者を支援する活動も行っている。彼らは、SGI会長の次の言葉に導かれて、被災者支援活動にも従事している。

「変毒為薬、宿命転換の仏法である。断じて乗り越えられぬ苦難などない。打ち破れぬ闇などない。今こそ無量広大な仏力・法力を現す時である。大変であればあるほど、まず、強盛なる祈りから一歩を踏み出すことだ。」(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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世界政治フォーラムを取材

ムバラク裁判の映像は中東全域に衝撃をもたらした

【アブダビWAM】

「元大統領が一般法廷で裁かれ在任中の業績について一般市民が判定を下すことを許されるというのは中東アラブ諸国では前代未聞のことである。」とアラブ首長首長国連邦(UAE)の日刊紙が報じた。

ガルフ・ニュースは「ムバラク氏の公開審問は開放的な経験である」と題した論説の中で、「30年にわたってエジプトを圧政的に支配してきた人物が法の裁きを受けるために出廷するのを目撃することは開放的な極めて痛快である。」と報じた。

 「世界各地のアラブ人にとって、カイロの法廷に出廷したホスニ・ムバラク前大統領が格子越しに映し出される映像はショッキングであるとともに気分を高揚させる出来事であった。ムバラク前大統領は中東の権力構造の中枢に君臨してきた人物だけに、彼がかつて捏造の嫌疑をかけて政敵を裁いていったと同じ檻に覆われた被告席に出廷を余儀なくさせられる光景はトラウマにも似た複雑な印象を想起させるものであった。」と同紙は報じた。

「ムバラク前大統領と2人の息子は、かつて彼の政敵たちがそうしたように、自らにかけられた嫌疑を全て否定した。しかし少なくとも彼らは法廷に出廷させられ、一般民衆は彼らに対してかけられた嫌疑に関する様々な証拠について裁判での議論を目の当たりにしていくことになるのである。」と同紙は付加えた。

ムバラク裁判は現代アラブの指導者が完全な形で法定の裁きを受けた最初の事例である。ちなみにこれに最も近いケースがサダム・フセインの裁判だが、この場合フセインは2003年に米軍に捕えられ、裁判は米国が実効支配する当時のイラク政権との密接な相談の下に開設されたものであった。チュニジアのザイン・アル=アービディーン・ベンアリ前大統領も今年になって裁判にかけられ有罪を宣告されたが、同紙はサウジアラビアに亡命しているため事実上欠席裁判であった。

ガルフ・ニュースは、8月3日のカイロ法定からの映像は全アラブ世界に強烈なメッセージを発することとなったと強調した。

「そして今回の出来事はアラブ世界をより良きものとした。」と同紙は締めくくった。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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国際原子力機関が核の「ならず者国家」を批判

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国際原子力機関(IAEA)は、7月27日、国連加盟国であるイラン・北朝鮮・シリアの3カ国について、核不拡散条約(NPT)の下での国際的義務に従うことを拒絶し続ける核の「ならず者国家」として名指した。

IAEAの天野之弥事務局長は、3か国を直接名指しして、2009年12月の就任以来、核の検証に関する自身のアプローチは「きわめてわかりやすいもの」であったと語った。

 天野事務局長は、長野県松本市で27日から3日間にわたって開催された「第23回国連軍縮問題会議 in松本」において、「加盟国とIAEAとの間で結ばれた全ての保障措置協定、及び国連安保理決議のようなその他の関連する義務は、完全に履行されねばなりません。」と語った。

現在核兵器保有国には、NPTで公式に認定されている5カ国(米国、英国、ロシア、フランス、中国)と、非公式の核兵器保有3か国(インド、パキスタン、イスラエル)がある。

非公式の核兵器保有3か国は、いずれもNPTの署名を拒否し、IAEAの監視からも逃れている。他方で、公式の核兵器保有5カ国はNPT加盟国である。

北朝鮮は、核兵器を保有していると広く信じられている。イランは核兵器開発計画を積極的に進めていると疑われているが、自身は強く否定している。シリアは、失敗に終わったものの核兵器開発を進めようとしていたことについて非難されている。

イラン・シリア両国はNPTの加盟国である。一方北朝鮮は、2003年1月にNPTを脱退していることから、条約上の義務はないと主張している。

しかし、北朝鮮は、国連加盟国として、IAEAと国連安保理の決議には従う義務がある。

天野事務局長は、「ご承知のように、2009年4月以来、IAEAは北朝鮮においていかなる保障措置も実施できていない」と指摘し、北朝鮮の核計画は「重大な懸念の対象」であると語った。

昨年、北朝鮮が新しいウラン濃縮施設と軽水炉を建設中であると報じられた。

これらの報道が事実ならば「きわめて深刻な事態になる」と天野氏は語った。

天野事務局長は北朝鮮に対し、同国を強く非難し制裁をかけたIAEA総会の決議や国連安保理決議を完全に履行するよう強く求めた。

同じく非難されているイランは、自国の核開発は「平和目的」のみのものであると明確に主張している。

しかし、国連安保理もIAEAもこうした見方を採っていない。
 
天野氏は、「イランは、未申告の核物質や核活動が存在しないとの信憑性のある保証をIAEAが与え、したがってイラン国内のすべての核物質は平和目的であると結論づけるために必要な協力を怠っている」と指摘した上で、イランに対して、「核計画が完全に平和目的のものであるという国際的信頼を勝ち取るために、すべての関連する義務を果たすよう」求めた。

なおシリアについてIAEAは、2007年にデイル・エッゾール(Dair Alzour)で(おそらくイスラエルの空爆によって)破壊された施設は、IAEAに対して申告義務があった原子炉であった可能性が極めて高いとの結論を出している。しかし、実際には申告されなかった。

IAEA理事会は、6月9日、シリアが「保障措置協定上の義務を果たしていない」ことを非難する決議を採択した。

他方でIAEAは、既存の非核兵器地帯の有効性と、中東への非核兵器地帯設置を検討する国際会議を招集する可能性について加盟国と協議している。

しかし、当面は2012年に予定されている『中東非核兵器地帯の設立に関する会議』は、アラブ諸国を席巻している政治的動乱と、それが自国の安全保障に及ぼす悪影響についてイスラエルが懸念しているため、開催が危ぶまれている。

長く待ち望まれたこの会議は、2010年5月に国連本部で開催されたNPT運用検討会議において189の加盟国が承認したものである。

イスラエル政府は、NPT運用検討会議の成果文書を批判する一方で、2012年の会議への参加については、態度を明らかにしていない。


しかし、イスラエルを取り巻く政治環境は、アラブ世界を席巻している民衆蜂起と政治変革の波を受けて、親イスラエル的であったエジプトのホスニ・ムバラク大統領が追放されるなど、ますます敵対的なものとなっている。イスラエルはこうした情勢の変化を受けて、とりわけ自国の安全保障に関する懸念を強めている。

イスラエルは、非公式の場では、核兵器こそが最もよく自国の安全を保証するものであるとの見解を示している。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.