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マラリア対策で網を広げるパプアニューギニア

【ポートモレスビーIPS=キャサリーン・ウィルソン】

パプアニューギニアでは、人口の90%がマラリアに罹患する危険性があり、毎年190万件が報告されている。しかし、殺虫効果を施した蚊帳を吊ることで、マラリアを劇的に減らすことができる。

世界保健機構(WHO)によれば、世界の人口の半分が、蚊によって媒介されるマラリアに罹患する危険性がある。2010年には世界で2億1600万件のマラリアが報告され、うち65万5000人が死亡している。

パプアニューギニアでは、地球温暖化の影響によって蚊の活動が活発化し、マラリア患者数が20万人増えると政府は予想している。

殺虫蚊帳は1986年に世界で初めて導入され、パプアニューギニアでは1989年に全国的な配布が始められた。2004年には、「エイズ・結核・マラリアに対抗するグローバル基金」の資金を獲得することに成功した。それ以前から全国配布に尽力している「マラリアに対抗するロータリーの会」と政府の協力の下、全人口の80%への配布を終えている。

 その結果、マラリアの罹患率は、2009年の12%から2011年の8%へと、かなり低下している。

しかし、課題がないわけではない。蚊による耐性の獲得と資金の継続性という2つの問題だ。

パプアニューギニアでは、殺虫剤として現在使われているデルタメトリンという物質への耐性を蚊が得たという結果はまだ出ていないが、通常は夜に活動する蚊の活動時間が少し早まってきたという報告がなされている。

他方、資金面については、グローバル基金からの資金が2014年に切れるが、その後の資金をどう確保するかが大きな問題となっている。

パプアニューギニアにおけるマラリアとの闘いについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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「リビア政治は歴史的に重要な分岐点にある」とUAE紙

【アブダビWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は18日付の論説の中で、7日に実施されたリビア制憲(定数200)議会選挙結果について「リビアは歴史的に決定的な瞬間を迎えている。」と報じた。

「カダフィ前政権崩壊後にリビアが経験してきた紆余曲折を考えれば、今回の選挙を経てリビア議会が成立する見通しが立ったことは重要な一歩である。(新生議会は、議会発足と同時に解散する暫定統治機構「国民評議会」に代わって新首相を選任する予定:IPSJ).
政治プロセスが動き始めた今、焦点は国家再建と開発プロセスに向けられるべきである。」とガルフ・ニュース紙が報じた。

また同紙は、マフムード・ジブリール前暫定首相率いるリベラル派の「国民勢力連合(NFA)」が、政党に割り当てられた80議席中39議席を獲得し筆頭勢力になった点について、「NFAは、リビアが長年抱えてきた諸問題の解決を訴えてきた諸派の連合体である。今回の選挙結果を見る限り、『アラブの春』を経験した他の国々(エジプト、チュニジア)とは異なり、リビア国民は、イスラム原理主義勢力によるリーダーシップや同勢力が率いる連立政権を選択したのではないことは明らかだ。」と報じた。なお、イスラム原理主義組織ムスリム同胞団の「正義建設党」の獲得議席は17議席にとどまった。

 また同紙は、「新政権誕生までには、(議席数が全体の2割に留まっている)NFAをはじめとする様々な政党が、過半数勢力を目指して、定数の6割を占める無所属議員の囲い込みや連携を模索する動きが活発化するだろう」と指摘し、「リビアが、リベラル派勢力が優位を占める国になるかどうかは、議会内の勢力図の行方によって決まるだろう。」と報じた。

また同紙は、「女性候補は議会に30議席を獲得するなど健闘した。この結果、リビア議会200議席のうち16.5%を女性が占めることとなる。」と報じ、今回の選挙で女性候補が大きく躍進した点を伝えている。

「リビアの人々が成し遂げようとしていることにとって、次の一連の政治ステップが重要な役割を果たすことになるだろう。リビア国民は、これから国のインフラと未来を構築していく過程で、心を一つにして団結していく必要がある。」とガルフ・ニュースは結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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シリア政府、アレッポ争奪戦にさらに軍を投入

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【ドーハAJ=特派員】

活動家によると、シリア第2の都市アレッポ(首都ダマスカスから北に355キロ)で政府軍と反政府軍間の戦闘が報じられて6日目となる中、政府は新たに数千人規模の増強部隊をアレッポに派遣した。

25日には、政権党バアス党地方本部から近いアル=ジャマイヤ地区中心部で戦闘が報じられた。また、人権擁護団体「シリア人権監視団」は、アレッポ市南部のカラセー地区では、反乱軍が警察署に放火した、と報じた。

バシャール・アサド大統領打倒を目指す反政府蜂起は、既に16か月目に突入しているが、この数週間の間に、内戦の様相も、かつての首都から遠く離れた地方における蜂起から、アサド政権の主な支持基盤である2大主要都市アレッポと首都ダマスカスの支配を巡る戦いへと変貌してきている。

 シリア自由軍のアブデル・ジャバール・アル=オカイキ報道官は、AFPの取材に対して、「シリア北西部イドリブに配置されていた数千人規模の政府軍部隊が、政権にとって(イドリブよりも)より戦略的に重要なアレッポに再配置された。」と語った。

また活動家らによると、25日朝の段階で、アレッポ市南部のスカッリ地区から多くの民衆が逃れていた。

隣国レバノンのベイルートからシリア情勢を報じているアルジャジーラのルーラ・アミン記者は、アレッポを巡る戦いは、アサド政権及び反政府勢力双方にとって極めて重要なものとなっている、と語った。

「反政府勢力にとって、この革命を成就ためには、商業の中枢であるこの大都市を是が非でも手中に納めなければなりません。だからこそ、政府にとってもアレッポを巡る戦いは、今後の命運を分ける決定的なものとなるため、あらゆる武器を投入して全力で反乱軍の鎮圧にあたっているのです。」と、アミン記者は語った。

ダマスカスにおける政府軍の攻勢

シリア人権監視団
は、7月25日にはシリア全土で30人以上が暴力で落命し、またその前日には158人の殺害が報じられていた、と語った。

また英国に拠点を置く同監視団は、ダマスカスにおける反乱軍の最後の拠点の一つアル・ハジャルル・アスワド地区で、政府軍との衝突があったと報告した。同地区で蜂起が始まって10日目のことであった。

政府軍は追い詰められた同市南部地区の攻撃に、攻撃ヘリコプターと重機関銃を使用した、と同監視団は報告した。

また活動家や住民らは、政府軍はダマスカス北部郊外の反乱軍の支配地域アル=タル地区への制圧を試みた際に重砲やロケット砲で攻撃を加えたため、住民の間にパニックが起こり、数百の家族が街からの逃れた、と語った。

「今や軍用ヘリコプターが街の上空に飛来し、住民は爆発の音で目を醒まし、逃げ惑っています。」「既にこの地区の電気と電話は寸断されています。」と、活動家のラフェ・アラムさんはアル=タル地区を見下ろせる丘から、電話で語った。

シリア自由軍のアル=オクアイディ報道官は、政府が増援部隊をアレッポに投入している理由について、「市街戦が熾烈を極めており、23日にはいくつかの地区が反乱軍の手によって『解放された』ため。」と語った。

「アレッポでは激戦が続いていますが、多くの政府軍兵士は逃亡したり、その場で投降するものも少なくありません。政府軍の士気は極めて低いといえます。」とアル=オクアイディ報道官は語った。

アル=オクアイディ報道官は、先般、「(アサド大統領支持派に言及して)血まみれのアサド一味の手からのアレッポ解放を目指す作戦が始まった。」と発表していた。

商業の中枢で250万の人口を擁するアレッポは、1年以上に亘って暴力的な状況から免れてきていたが、最近になって反政府蜂起の新たな最前線と化した。

無差別砲撃

またアレッポ県各地の住民は、口々に政府軍がアル=ジンナーの街に対して無差別な攻撃をしかけていると非難した。

ロイター通信が入手したアマチュアビデオには、住民によると車が迫撃砲の攻撃を受け3名が死亡、1名が負傷したとされる戦闘直後と思われる映像が収録されていた。

反政府活動家らは、政府軍と反乱軍はこの地域で激戦を繰り広げた、と語った。

「このように砲弾が撃ち込まれるなんて、この村に何の落ち度があったというのでしょう。この村には武装グループの痕跡すらないのに、毎日10発もの砲弾を撃ち込まれています。」「村が標的にされた唯一の理由は、私たちが自由を要求したからとしか考えられません。」とある住民は語った。

また25日には、囚人が反乱を起こし建物の一部を占拠しているホムス中央刑務所において、治安部隊と囚人間の戦いが引き続き繰り広げられた。

シリア人権監視団は、刑務官に加えて正規軍が作戦に投入された結果、数名の「死傷者がでた」と報じた。

ホムスの中央刑務所における囚人の反乱は先週勃発し、その後アレッポの中央刑務所においても、類似の反乱が発生している。

シリア人権監視団は、「ホムスでは、反乱軍の兵士がアル=カラビ地区で政府軍の狙撃兵に射殺された。」と報じるとともに、当時政府軍は「15分毎に平均3発の砲弾」を打ち込んでいたことを明らかにした。

翻訳=IPS Japan

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|タイ|HIV/AIDS蔓延防止に向けた仏教界の試み

【IPS HIV/AIDS研究事業現地取材からの抜粋】

本プロジェクトは、深刻化するHIV/AIDS問題に関して、仏教界として地域コミュニティーに貢献することを目指して僧侶達自身によって始められたもので、僧侶がHIV/AIDS感染者と一般コミュニティーの仲立ちをしながら、仏教の教えに基づいて共生していける環境作りを目指している。 

タイ社会では伝統的に僧侶は「仏の智恵を説く教師」として敬われており、村人たちも僧侶の発言には謹んで耳を傾ける習慣がある。本プロジェクトは、僧侶の「教師」としての役割を重視しており、僧侶や尼僧は、僧院でHIV/AIDSに関する知識と、その知識を仏教の教えに基づいて効果的に村人達に伝達する技術(participatory Life Skills Development approach)を身につけた後、地域コミュニティーの中に入り込んで活動を展開している。

 僧侶達は、HIV/AIDSに対する感染者と一般民衆双方の無知と無関心がHIV/AIDS感染拡大の根底にあるとの理解から、村人に対するHIV/AIDSに関する正しい知識の普及、特に感染予防及び感染拡大抑制の方法を伝えることを重視している。一方、HIV/AIDS感染者に対しては自ら患者の托鉢を受付けて食すと共に患者のもとを訪問して精神的なカウンセリングを行ったり、エイズ孤児を引き受けるなど、率先した行動を通して、コミュニティーに対して患者を受け入れ支援するよう説いている。 

HIV/AIDS感染者と一般民衆の共生は十分可能: 

「私たちは、村人の有志と共にHIV/AIDS感染者のためのサポートグループを組織している。村人は伝統的に僧侶に心を許して自身の抱える諸問題を相談するので、僧侶達は、HIV/AIDS感染者を特定次第、サポートグループや政府の支援プログラムと繋げている。感染者で働けるものは、僧侶とサポートグループが仲立ちとなって様々なコミュニティー活動に参加させる一方、支援が必要な家庭に対しては僧侶が托鉢や寺への寄付を感染者家庭に分け与え、共に生きていく希望を持つようカウンセリングを行っている。 

また、地域の病院と提携して、HIV/AIDS患者のための伝統薬草の栽培、配布も行っている。一方、主に若い僧侶は地域の大学や集会所に若者を集めて、HIV/AIDS感染に関する正しい知識とそれに基づく性行動の是正を呼びかけている。 

また、人身売買の犠牲者やエイズ孤児を積極的に僧院に受け入れている(人身売買の犠牲者の大半は女性で、Sangha Metta Projectでは彼女達を尼僧院において受け入れ、トラウマのケアや自立に向けた支援を行っている。また、少女達の出稼ぎを防止する目的で、収入創出事業も手掛けている)。 

このように、地域コミュニティーの崩壊に繋がるHIV/AIDSの深刻な脅威に直面して地域の僧院とコミュニティーが一体となって活動できたことは、双方の信頼感とコミュニティーの結束に対する自信へとつながり、この草の根レベルにおける自助努力・相互扶助の輪は、国境を越えてビルマのシャン州へも広がった。現在では、タイに在住するシャン族の青少年並びにシャン州から招いたビルマ人の僧侶を対象に、HIV/AIDS講習をはじめ、本プロジェクトのスキームとノウハウを伝えている」。(Laurie Maund, manager of the Sangha Metta Project) 

青少年の行動変容を引き起こすには重要情報の反復と木目細かなフォローが不可欠 

「ここタイ北部では、HIV/AIDSの感染経路や予防方法に関する青少年の理解度はかなり高いと思う。しかし、同時に多くの誤った風説に惑わされているのも事実である。例えば、蚊がHIV/AIDSウィルスを媒介するといった風評を信じている青少年は少なくない。様々なNGOがHIV/AIDS啓蒙活動と称して各地でワークショップを展開するが、一過性のものが大半で、地域の青少年の性に関する疑問に必ずしも十分に答えないまま、去っていくものが少なくない。 

特に、HIV/AIDS感染の将来を左右する青少年の行動変容を実現しようとするならば、啓蒙活動は地元に根付いた形で重要情報を繰り返し反復し、地道に木目細やかなフォローアップをしていくことが重要である。残念なのは、タイにおけるエイズ対策が『成功した』と評価されるが故に、国際社会からのエイズ教育への資金が先細りになってきていることである。 

HIV/AIDS問題はコミュニティーの問題であり、現地のリソースが最大限に動員され、地元住民がこの問題に自主的に取り組める技術・ノウハウが伝達されてはじめて長期的な効果を期待することが可能となる。しかしながら、政府や多くのNGOによる啓発事業をみると、地元住民の意識向上や技術移転に繋がるような活動をしているとはいえないものが少なくない。予算を機械的に執行することに終始するのではなく、それをどのようにインパクトあるものに改善していくか、もっと工夫をする必要がある。」(Laurie Maund, manager of the Sangha Metta Project) 

IPS HIV/AIDS研究事業現地取材からの抜粋 
(現地取材班:IPS Japan浅霧勝浩、マルワーン・マカン・マルカール) 

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|ボスニア・ヘルツェゴヴィナ|トルコの視線に苛立つバルカンの人々

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【ベオグラードIPS=ベスナ・ペリッチ・ジモニッチ

1990年代に旧ユーゴスラヴィア連邦が解体して以来、外国の政治家による発言が、この地域の人々の間に、白熱した激論を引き起こすというということはほとんどなかった。

2001年以来、かつてユーゴスラヴィアを構成した独立諸国の関心は、長きに亘った紛争で荒廃した自国の経済立て直しに専ら向けられており、地政学的な議論は、主に隣接諸国との遅々として進んでいない和解プロセスの分野に限られてきた。

こうした中、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が先週、「ボスニア・ヘルツェゴヴィナは今や彼の国(=トルコ)に委ねられている」と発言したことから、バルカン諸国(アルバニア、ボスニア、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、モンテネグロ、セルビア)に激しい議論が巻き起こっている。

 エルドアン首相は、先週アンカラで開催された自身が率いる与党公正発展党(AKP)の全国代表者会合において、「ボスニア・ヘルツェゴヴィナは私たちに託されたのです。」と語った。

エルドアン首相は、2003年に死の床にあったボスニア・ヘルツェゴヴィナのアリヤ・イゼトベゴヴィッチ初代大統領を訪ねた際に同大統領が述べた言葉を思い起こし、「彼(イゼトベゴヴィッチ氏)は私の耳元で次の言葉を囁きました。『ボスニア(とヘルツェゴヴィナ)の今後を君(トルコ)に委ねたい。これらの土地は、元はオスマン帝国の一部だったのだから。』」と語った。

イゼトベゴヴィッチ氏は、1992年に始まったボスニア・ヘルツェゴヴィナ独立戦争を指導し、同国の初代大統領になった人物で、2003年、心臓病で死去した。

どんな国であったとしても、国の将来が勝手に外国に「委託された」という話は、国民の激しい反発を招くのに十分である。とりわけボスニアの場合、イスラム教徒のボシュニャク人、カトリック教徒のボスニア系クロアチア人、正教徒のセルビア人を含む多様な民族・宗教コミュニティーから構成されるモザイク国家であることから、エルドアン首相の発言は、一層深刻な反発と論争を引き起こすこととなった。
 
現在のボスニアでは、クロアチア系市民とセルビア系市民が全人口(約400万人)の半数以上を占めており、彼らにとって第一次世界大戦まで500年に亘ったオスマン帝国支配は、ほぼ例外なく「過酷な圧政の時代」として記憶されている。
 
ボスニアのセルビア系政治家からは、すかさずトルコ首相の発言に対する怒りの声が上がった。

スルプスカ共和国(ボスニア・ヘルツェゴヴィナの連邦を構成するボスニア系セルビア人を主体とする国家)議会のイゴール・ラドイチッチ議長は、「ボスニア・ヘルツェゴヴィナは、(他国に)相続される土地ではありません。」と強調した。一方、ボスニア系クロアチア人の指導者ドラガン・コヴィッチ氏も現地メデイァによるインタビューの中で、「故イゼトベゴヴィッチ氏が、祖国を自分の判断で他国に託せると確信するほど強大な権力を持っていたかは疑わしい。」と、疑問を投げかけている。

またこの論争はインターネットを通じて瞬く間に広がり、地域のウェブサイトはあたかも異なる民族間の言葉の応酬が繰り広げられる戦場と化した呈がある。

反イスラムで団結した(セルビア、クロアチア系等の)非イスラム教徒の市民は、エルドアン発言への怒りと露わにするとともに、ボスニアにおけるイスラム教の影響に対する恐れを公然と語るようになった。

「ボスニアは90年代の紛争以前は世俗国家でしたから、イスラム教徒でない人々にとって、ここサラエボで今日多くの女性がスカーフやアバヤといった伝統的なイスラム風の衣装を身にまとっている光景は、どちらかというと奇異に映るのです。」と、ボスニアの首都サラエボでツアーガイドを営むジアド・ジュスフォヴィッチ(47歳)氏はIPSの取材に応じて語った。

「また一方で(大半の国民の)目にはまだはっきりと見えていないものの、新たな兆候が表れています。例えば、失業者でも定期的にモスクに礼拝に訪れるようになれば資金援助を得られるとか、戦争未亡人が、子どもとともに敬虔なイスラム教徒になれば、最高600ドルの支援を得られる、といった動きです。こうしたイスラム教徒に対する援助は、1990年代にサウジアラビア、インドネシア、マレーシアが始めたものです。」とジュスフォヴィッチ氏は付加えた。

実利的な外交政策

ベオグラードの歴史家スラヴェンコ・テルジッチ氏はセルビアの主要日刊紙「ポリティカ」に、エルドアン首相がおこなった宣言は、「バルカン諸国にとって危険な発言だ。」と述べている。

またテルジッチ氏の同僚セドミール・アンティッチ氏は、トルコの動きを「前代未聞の挑発行為」であり、「ボスニア、クロアチア、セルビア政府は正式に非難声明を出すべきだ。」と語った。

しかしアナリストや専門家から見れば、トルコ首相によるこのような発言は、驚くにあたらないという。

「(エルドアン首相の)発言は、トルコが野心に満ちた外交政策においてバルカン半島との関わりを重視しているという政治的現実を反映したものです。」とベオグラード大学のダルコ・タナスコビッチ助教授(東洋学)はIPSの取材に応じて語った。

トルコ問題を長年取材してきたジャーナリストのヴォジャ・ラリッチ氏は、エルドアン首相の発言は「偶然発せられてものでも、予期されない内容でもない。」と見ている。

「エルドアン首相率いる公正発展党(AKP)は、トルコを、旧オスマン帝国領土だった地域に影響力を及ぼす地域勢力に押し上げたいと努めてきました。従って、トルコ政府が目を向けているのは、ここバルカン半島だけではなく、中東地域やイスラム的背景を持つ旧ソ連構成国も含まれるのです。」と、ラリッチ氏は語った。

タナスコビッチ助教授は、エルドアン首相の発言が、ボスニアにおいてトルコ政府の拡張主義的なものの見方に対する恐れと警戒感を引き起こした点を指摘して、「あの『遺産』発言は、やや逆効果だったと思います。」と語った。

またラリッチ氏は、「トルコの外交政策は、歴史家やアナリストが『新オスマン主義』と呼ぶ高度な実利主義に裏打ちされたものです。」と付加えた。タナスコヴィッチ助教授は、ここの『新オスマン主義』について、イスラム主義とトルコナショナリズム、さらにオスマン帝国主義とも言える「オスマン帝国時代を懐かしむ」外交戦略が融合したもの、と説明した。

ラリッチ氏は、「トルコ外交を特徴づけるものは、この実利主義と言えます。トルコ人は昔から優れた貿易商人として知られていますが、彼らはその才能をいつでも、どこでもいかんなく発揮しているのです。」と付加えた。

サラエボ在住のボリヴォイ・シミッチ氏は、最近寄稿したコラムの記事の中で、「国や人種、民族の違いに関わらず、利益のみに関心を示す民間資本は、未だボスニアには到来していない。これまでのところ、ボスニアはトルコを含む多くの国々が積極的に『政治的な関心』を示してきたのとは対照的に、投資対象としては、まだ十分安定した国とは見られていないのだ。」と述べている。

しかしバルカン半島におけるトルコの経済的プレゼンスを見れば、こうした状況にも今や変化が生まれていることが分かるだろう。トルコ経済省によると、トルコとバルカン諸国間の貿易額は2000年の29億ドルから2011年には184億ドルに拡大している。

同時に、トルコからバルカン諸国への直接投資額は、2002年の3000万ドル規模から2011年には1億8900万ドル規模まで拡大している。

トルコ政府関係者によると、「2011年にトルコが行った海外投資のうち、7%がバルカン諸国向け」で、投資分野は通信、銀行業、建設、鉱業、小売業など多岐に及んでいる。

また、文化面においても、バルカン諸国におけるトルコの存在感はこのところ急速に拡大してきている。

「トルコのメロドラマは、南アメリカの番組よりも人気を博するようになっています。」とタナスコヴィッチ助教授は、IPSの取材に対して述べている。

タナスコヴィッチ助教授は、バルカン諸国を席巻している多くのトルコテレビ番組に言及して、「トルコについて肯定的なイメージを作り上げているのは、まさに(いわゆるソフトパワーと言われる)この戦略なのです。」と語った。

今年2月から6月にかけて「スレイマン大帝」を描いた大河ドラマの最初の55話がバルカン地域で放映されると、数百万人の人々がテレビ画面にくぎ付けになった。

この大河ドラマはあまりにも人気を博したので、様々な社会学者らが、この社会現象の分析に乗り出したほどだった。

「トルコ的な東洋要素とは、この地域の数百万の人々にとって、共通の文化的アイデンティティーや、何百年にもわたって伝えられてきた言葉が持つ共通の要素を思い起こさせる、懐かしい雰囲気を象徴するものなのです。」とラリッチ氏は語った。

またトルコは、ボスニアに2つの大学―サラエボ国際大学(IUS)と国際ブルチ大学(IBU)―を設立している。後者は、トルコのイスラム聖職者イマーム・フェトフッラー・ギュレン師を含む個人有志の支援で設立された学校である。

またラリッチ氏は、「トルコの海岸リゾート地が次第に人気を博してきているのも、トルコとの関係が深まっている表われです。」と付加えた。

従来セルビア人の間で人気の休暇旅行先といえばモンテネグロギリシャであったが、今ではトルコの地中海沿岸リゾート地が3番目の人気旅行先になっており、今年前半期だけでも14万のセルビア人が空路訪れている。そしてこの先数か月に亘って現地を訪れるセルビア人観光客はさらに増加する見込みである。

「トルコは本当に楽しい所だわ。」とイヴァナ・ジュラスコヴィッチさん(40歳)は語った。彼女は今年トルコのリゾート地ボドルムを再訪する予定だ。

「sanduk (箱), kapija (門), hajde (さあ来なさい), taman (十分), carsav (リネン), secer (砂糖), kackavalj (チーズ) 或いは kralj (王)という『トルコ語』は、セルビア語とも共通しているので、(トルコで)こうした言葉を耳にすると、心が落ち着くのよ。」とジュラスコヴィッチさんは付加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|UAE|ドバイ首長、ラマダン月を迎えて554人の囚人に恩赦を与える

【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の副大統領でドバイ首長のムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム殿下は、ドバイ各地の刑務所から554人の囚人(内、93人がUAE国籍)を釈放するよう命じた。

この情け深い措置は、慈悲と赦しの月であるラマダン(今年は7月20日~)の到来に合わせて実施されたものである。

ドバイ首長国のイサム・イーサ・アル・フマイダン司法長官は、「恩赦は、ムハンマド首長が、釈放された囚人たちに、今一度社会生活に復帰する機会を与えることで、過去の過ちを正し、社会の高潔な一員として家族やコミュニティーに善意を尽くす新たな人生を歩んでもらいたいとの気持ちを反映したものです。」と語った。

 「この寛大な措置は、囚人たちにとって、まともな人生を再出発させるまたとない機会であり、まさに聖なるラマダン月を迎えて、彼らの家族にも幸せをもたらすものとなるでしょう。」とフマイダン長官は付加えた。

ドバイ検察庁は、既にムハンマド首長の布告を実施に移す準備に着手している。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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│フランス│緊縮財政で核軍縮は進むか?

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

変化する国際政治秩序と国内の劇的な予算情勢により、フランスは、1950年代末以来保持してきた極端に高価な核戦力の放棄を検討せざるを得なくなってきた。

フランスの政治家や識者の一部は、この火急の必要に対応することが意義あることであるかに見せかけるため、核不拡散条約(NPT)を強化し、世界の核戦力を削減する国際的取り組みに向けた一歩とこの動きを位置づけようとしている。

しかし、深刻な予算危機に直面したフランス政府が、ポール・キレ元国防相が言うように「そもそも発射することが想定されていない」コストのかかる兵器を維持することができなくなった、というのが実情である。

6月半ばにこの論争を意図せず起こしたのは、与党社会党のミシェル・ロカール元首相であった。ロカール氏は、パリの放送局BFMのインタビューにおいて、核兵器をあきらめれば「フランスは年間160億ユーロを節約し、まったく無用な兵器を放棄することができる」と語った。

 
ロカール氏は後にこの発言は「冗談だった」と述べ、核軍縮を論じることは「非常に重大なことなので、もしそれに疑問を呈そうとするならば、慎重にやらねばならないし、時間をかけて準備し、真剣な議論に耳を傾けねばならない」と語った。

冗談かどうかは別として、ロカール氏の発言は雪崩のような論争を引き起こした。そしてまだ明確な結論はでていない。

他方、社会党のフランソワ・オランド大統領は、予見しうる将来において政権が核兵器を放棄するつもりはないとしている。

オランド大統領の立場は、核兵器を保有することで、たとえ見せかけのものとはいえ、フランスに比類なき政治的地位が与えられ、他の4つの国連安保理常任理事国である英国、中国、ロシア、米国と対等になれるという古い議論を下敷きとしている。

核兵器を持たないフランスは、その現実的な地政学的役割に戻ることになるだろう。つまりは、平凡な経済と動乱の国内情勢に打ちひしがれた中堅国家に回帰するということだ。

国際戦略研究所(パリ)のパスカル・ボニファス代表は、「冷戦の終了と、現在起きている国際情勢の地殻変動に直面して、(フランスは)自らの世界政治戦略と国家安全保障政策における核兵器の役割を再考せざるを得なくなっているのです。」とIPSの取材に対して語った。

しかし、ボニファス氏は、「もしフランスが核兵器を放棄するのならば、その国際的な大国としての信頼性は失われ、戦略面においてフランスの地位は格下げになるだろう。」と警告している。
 
「(1950年代末に)シャルル・ドゴール大統領(当時)が核武装を決定したとき、その目的は、米国やソビエト連邦と並ぶ世界大国としてのフランスの地位を保つことにあったのです。」とボニファス氏は指摘した。

つまり、ドゴール氏のフランスにとって、核兵器とは軍事的必要から保有されたものというより、地政学的な象徴であったことになる。ドゴール大統領は、目に付かない形で、冷戦真っ盛りの1961年12月に出された公式声明でこのように認めている。

「これから10年後には、我々は8000万のロシア市民を殺害しなくてはならないかもしれない。ソ連がたとえ8億のフランス人を殺すことができるとしても、8000万人のロシア人を殺害する能力を備えた国を攻撃しようとは思わないだろう。」

フランスが直面している経済的苦境

それから50年後、冷戦の記憶が悪夢の領域に消え去って行く中、8000万のロシア市民を殺さなくてはならない可能性は、以前にもまして考えづらくなっている。フランスにとっての新たな国家的悪夢とは、公的な債務危機であり、国際的に見た経済パフォーマンスの悪化という事態である。

6月中旬に発足したオランド政権は、すでに予測されている国民総生産(GNP)4.4%分の赤字に加えて、予測されていなかった100億ユーロにものぼる予算不足に直面している。

フランス会計検査院は、7月2日に発表した報告書の中で、オランド政権の前のニコラ・サルコジ政権が予測した4.4%という高水準の赤字を解消するために、増税し支出を削減しなくてはならないと警告している。

欧州委員会の数値によると、フランスは、2013年の赤字を3%に抑えるためには、増税あるいは歳出削減で240億ユーロを捻出しなくてはならない。

さらに追い打ちをかけるように、自動車メーカー「プジョー」のような大企業が、大量のレイオフ(一時解雇)と海外への大規模工場移転の意向を明らかにしている。

オランド大統領は、現在の経済不況に耐えるために国家財政を救いフランス産業を支援すると同時に、より競争的な将来に向けて準備を進めるという、途方もない政治的課題に直面している。

多くの識者や政治家によれば、不必要な支出、とりわけ純粋に象徴的な地位しか持たない核戦力を減らし、それをより合理的な使途に振り向ける誘因がかつてなく大きくなっているという。

国会国防委員会の元委員長であるキレ氏は、IPSの取材に対して「核兵器は高価な愚策です。」と指摘した。またキレ氏は、核兵器がフランスにとっての「生命保険」であるという従来からの議論を真っ向から否定し、「(生命保険)というよりもむしろ死亡保険と言った方が相応しい。」と語った。

キレ氏は、今後数年のうちには核兵器関連予算が増加するのは間違いないという。それは、核兵器体系を更新し、潜水艦のような高価な関連装備を調達する必要があるからである。

1986年から92年まで首相官邸で軍事顧問務めたベルナール・ノーラン退役将軍もまた、核軍縮を呼びかけている一人である。
 
「核兵器が必要だという議論は冷戦期には説得力があったかもしれないが、世界の戦略環境は1990年以来大きく変化しました。1980年代と同じような議論をしていても仕方がないのです。」とノーラン氏は語った。

核兵器なき世界を提唱している国際的プロジェクト「グローバル・ゼロ」の一員であるノーラン氏は、不必要な資産を維持する圧力にオランド大統領が屈しているように見えることに遺憾の意を示した。

「この件に関するオランド氏の発言は、きわめて同調主義的なものです。」とノーラン氏は指摘した。

しかし、匿名で答えたその他の軍事専門家らは、フランスのいかなる元首も、核兵器国としてのフランスの地位を自発的に消し去ってしまった人物として歴史に名を残したくないと考えるだろう、と述べている。(原文へ

IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|UAE|ホルムズ海峡を迂回するハブシャン-フジャイラ石油パイプラインが開通

【フジャイラWAM】

モハメド・ビン・ダーン・アル・ハムリ石油相は15日、「ハブシャン-フジャイラ石油パイプライ」の開通式に出席した。これは、UAEの首都アブダビのハブシャン油田とオマーン湾に面する同国東部フジャイラ港の約370キロを結ぶ陸上パイプラインである。

「本日は、パキスタンの製油所向けの50万バレルの原油が、アブダビとフジャイラを結ぶ新たなパイプラインを通じて運ばれた。」とパイプラインプロジェクトを運営している国際石油投資社(International Petroleum Investment Company, IPIC)のカデム・アルクバイシ常務は語った。

 ハブシャン-フジャイラ石油パイプラインは、最大で日量180万バレルの原油を輸送可能な(UAEの原油生産量は日量約250万バレル)ほか、原油積み出し港のフジャイラには、100万バレルを保管できるタンク8か所、多目的輸送ターミナル9か所、沖合原油積込み設備3か所が備えられている。

アルクバイシ常務は、「アブダビ首長国は、このパイプラインが完成したことによって、原油輸出に要する時間、手間、費用を大幅に圧縮できるとともに、(世界の海上輸送原油の4割が通過する)ホルムズ海峡を迂回して直接オマーン湾に原油を輸送することが可能となった。ハブシャン-フジャイラ石油パイプラインプロジェクトは、この種のプロジェクトとしては、アブダビ首長国がこれまで手掛けた事業の中で最も重要なものだ。」と指摘した。

フジャイラ首長府のサイード・アル・ダンハニ長官は、「フジャイラをUAE産原油の輸出港とする新たなパイプラインの開通は、観光ブームに沸くUAEの経済開発を一層促進させるものになるだろう。(イランによるホルムズ海峡封鎖の脅しに直面して)国際社会が安定した原油入手ルートの確保に熱い視線を送る中、原油輸出港としてのフジャイラの戦略的な価値は、中東地域のみならず国際的にも極めて重要なものになっている。」と語った。

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

|東京会議2012|ISAF以降のアフガニスタンに注目が集まる

【東京IDN=浅霧勝浩】

日本は米国に続いて世界第2位のアフガニスタン支援国である。2002年1月に「東京会議」が開催されてから2011年末までに、日本はアフガニスタン支援のために33億ドルを投じてきた。援助分野は、民主化に向けた政治プロセスから、インフラ整備、農業・産業育成、ベーシックヒューマンニーズ、さらには30年余りに及ぶ内戦で深刻なダメージを受けてきたアフガン文化の復興支援まで多岐にわたっている。

アフガニスタンに駐留している10万人規模の国際治安支援部隊(ISAF)が2014年末までに撤退するのを前にその後のアフガン支援を協議するために開かれた「アフガニスタンに関する東京会合」(東京会議2012)では、日本の玄葉光一郎外相が、2012年からの5年間で経済社会開発や安全保障能力向上に最大30億ドル(開発支援22億ドル、治安支援8億ドル)を支援すると表明した。

 玄葉外相は、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領ら80の国と国際機関の代表を前に、日本はアフガニスタンの開発戦略を踏まえ、3つの柱を重視して経済社会開発分野の支援を行うと語った。

それらの柱とは、アフガニスタンの人口の約8割が従事する農業分野への支援、インフラ整備、人づくりである。玄葉外相は、こうした分野への支援を通じ、日本政府は2017年以降も引き続きアフガニスタン主導の国造りに相応の貢献を行っていく意向を表明した。

また、アフガニスタンと周辺諸国との地域協力を更に強固なものとするために、周辺諸国(中央アジア、パキスタン)に対し、総額約10億ドル規模の事業を行うとともに、これら事業を通じて、中央アジアからパキスタンのカラチまで至る、アフガニスタンを縦断する回廊の整備を支援する意向を表明した。
 国際社会が今から2015年までの5年間にアフガニスタンの経済開発支援に総額160億ドル(1兆2800億円)ものコミットをした意義は、極めて大きい。この支援は、アフガン政府が従来から開発努力の妨げとなってきた腐敗・汚職などのガバナンス問題に取り組み、国際社会はその進捗状況をモニターするという新たな条件に同意したことを受けて、正式にコミットされたものである(「相互責任に関する東京フレームワーク」)。

世界銀行は、アフガニスタンの移行期間の最初の3年間において、現在の国民総生産(GDP)170億ドルの減少を防ぐために、非安全保障部門で33~39億ドルの予算が必要だとみている。

この開発支援は、今年5月にシカゴで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、アフガニスタン国軍に(ISAF撤退後の)2015年から17年までで41億ドルを提供することが発表されたことに続くものである。

国連食糧農業機関(FAO)が指摘しているとおり、30年に亘る戦争、社会不安に加えて、度重なる自然災害に見舞われてきたアフガニスタンは、膨大な復興ニーズを抱えている。近年ある程度の成長・前進が見られるものの、依然として、数百万人ものアフガニスタン人が朽ちかけたインフラや環境被害に晒されている厳しい状況下で、極貧の生活を余儀なくされている。この岩だらけの陸封国は、未だに全人口の半数以上が最低生活線(貧困ライン)を下回る、世界最貧国の一つなのである。

「2007-08国家リスク脆弱性評価(NRVA)」によれば、アフガン人口のおよそ3分の1にあたる740万人が日々の食事にすら困り、全人口の37%にあたる850万人が必要な食料確保の境界線上にあるという。さらに、毎年40万人が、干ばつや洪水、地震などの度重なる自然災害による甚大な被害に晒されている。

安全・安定に向けた支援

こうした状況を背景に、国連の潘基文事務総長は、「私たちは全員、アフガニスタンの人々と力を合わせて、安全、安定、そして繁栄を求め続けなければなりません。アフガニスタンが国内の平穏を取り戻せば、自分自身、そして子どもたちの生活を改善するという国民の希望にきっと応えられることでしょう。」と述べ、国際社会に対して引き続きアフガニスタンへの関与と支援を継続するよう呼びかけた。

また潘事務総長は、「そして、アフガニスタンが遠くも近くも、近隣諸国との友好関係を保てれば、地域、そして国際の平和と安全に大きく貢献することでしょう。」と、会議参加に語りかけた。「東京会議2012」は、この3カ月の間に開催されたアフガニスタンに関する一連の国際会合(シカゴ会合、カブール会合に続く)の3つ目となるものである。

さらに潘事務総長は、「私たちはアフガニスタンの歴史上、極めて重要な時期を迎えています。アフガニスタンの様々な制度や機構の確立を可能にした援助への依存から脱却し、機能する主権国家として国民や国際的パートナーとの関係を正常化するための移行期にあるからです。」と語った。

「しかし、はっきりさせておく必要があります。移行は単に短期的な対応を意味するものではありません。アフガニスタンの人々に、よりよい未来が訪れるという長期的見通しを与え、アフガニスタンが見放されるのではないかという不安を和らげるべきです。」

「国際社会は、アフガニスタンが約束したガバナンスの遂行と責任に関し、深刻な懸念を持っています。この問題には、アフガン国民の利益となるように、また、ドナーの信頼を維持できるような形で取り組まなければなりません。また、アフガニスタンの制度や機構が生まれて間もないことも十分に認識せねばなりません。」と潘事務総長は語った。

潘事務総長は、国際ドナーとアフガニスタンのパートナーシップ原則について定めた「相互責任に関する東京フレームワーク」によって、アフガニスタンと国際ドナーが相互に行った約束がモニタリングされ、実行されるという信頼感が生まれる仕組みが作られたことを歓迎した。

「ドナーは、アフガニスタン国内の当事者意識と能力を実質的に高めるような形で、予測可能な援助を提供するという約束を果たすべきです。その一方で、ボン、カブール、そしてロンドンでの誓約に沿い、国民によりよく奉仕するという義務を果たす主たる責任が、アフガニスタン自身にあることは言うまでもありません。」と潘事務総長は語った。

また潘事務総長は、「今後に向けて、国連が達成できること、そして達成できないことにつき、相応な期待を持とうではありませんか。」と述べ、国連として引き続き長期的な観点からアフガニスタンへの関与を続けていく意向を表明した。

「移行が進むにつれて生じかねない空白をアフガニスタンが埋めるための支援を提供すべく、国連は主な関係者との密接な協力により、そして私たちの限られた資源が許す範囲内で、全力を尽くしていきます。そのためには『変革の10年(2015年~25年)』全体を通じ、アフガニスタンの経済・社会開発、その制度的能力育成、基本的なサービスと社会的保護、そして雇用、司法、法の支配に対する強力な援助を提供しなければなりません。」と潘事務総長は語った。

約束

アナリストによると、「東京会議2012」で出された「東京宣言」において、アフガニスタン政府は重要な公約を掲げている。同宣言は、16項目からなり、策定にあたった外交官は、カルザイ大統領が残り任期の2年の間に取り組むべき「相互のコミットメント」を記載している。

たとえば、2014年に大統領選、2015年に議会選を行うこと、金融市場への規制を強化すること、蔓延る汚職に対処することなどである。中には、女性への暴力を違法化する法律を実施する時期や、2013年上旬までの次期選挙実施に向けたタイムフレームの設定など、特定の期限を設けている項目もある。

東京宣言の記載内容は多くの点で曖昧なままであるが、策定にあたった外交官は、アフガニスタン政府による公約の順守状況を定期的に外部からモニタリングする仕組みを組み込むことに成功している。この仕組みによると、少なくとも年に1回支援国の代表(高級事務レベル会合と閣僚級会合を交互に開催:IPSJ)が集まり、アフガニスタン政府による取り組みの進捗状況を吟味することになっている。また、第1回閣僚級フォローアップ会合をアフガニスタン政府と英国が2014年のアフガニスタン大統領選挙以降に共催し、資金援助のあり方に関する評価を行うことになっている。国際ドナーは、このように具体的な期限を設けることで、アフガニスタン政府が公約を遵守していくことを期待している。

一方、会議に出席したドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相は、アフガニスタンの汚職と腐敗の現状に言及して、「私たちは欧州の基準についてではなく、(欧州とは異なるアフガニスタンの)状況を僅かながらでも良くするために話し合っているのです。」と述べ、アフガニスタン支援の今後に過度な期待を抱くのは禁物との警鐘をならした。

しかし状況を僅かながらよくするという試みでさえ、骨が折れる取り組みということになるかもしれない。アフガニスタンが直面している深刻な現状は、7月14日に発生した、アフガニスタンの著名な政治家の娘のための結婚披露宴が自爆テロの標的となり、少なくとも22人の死者と40名を超える負傷者がでた事件にもよく表れている。

アフガニスタンでは国内情勢改善への道のりは依然として遠い。「東京会議2012」からわずか1週間後、国連のジェンダー平等担当部門(UNウィメン)のミシェル・バチェレ事務局長は、アフガニスタンでの女性に対する「激しい虐待と陰惨な暴行」を非難するコメントを出している。バチェレ事務局長が言及した事件には、アフガニスタンの地方警官に性的暴行と拷問を受けた少女ラル・ビビの事件と、公開処刑された少女ナジバの事件が含まれている。

「アフガニスタン政府が(ISAF撤退後の)移行期に向けて歩みを進め、国際社会がアフガニスタンにおける役割を再定義しようとしている中で、こうした事件は、同国における女性や少女の人権が、緊急かつ継続的に保護される必要があることを、改めて国際社会に着目させるものです。」とバチェレ事務局長は語った。

米国のヒラリー・クリントン国務長官は、国際社会とアフガニスタンが連携して取り組んでいく必要性を強調して、「アフガニスタンはこれまで国際社会の支援を得て、実質的な成長・前進を遂げてきました…しかし今日、私たちはこの変革の10年を通じて成果を挙げられるよう、4者間(何よりもまずアフガン政府と国民、国際社会、アフガニスタン近隣諸国、民間セクター)の確固たる協力関係を確保しなければなりません。この協力関係は、説明責任に裏打ちされたものでなければなりません。全ての当事者が各々の責任を果たしていくことが重要なのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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武力による威嚇があってもイラン核問題協議は継続すべき、とアナリストが指摘

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【ワシントンIPS=ジャスミン・ラムジー】

イランとP5+1(安保理任理事国〈米・英・仏・中・露〉にドイツを加えたグループ)が、イスタンブールで開催された「技術的会合」で到達したひとつの合意は、今後も協議を続けるという決定であった。

しかし、イラン問題の専門家らは、米国とイランが非難の応酬を演じていても、協議を継続することは外交プロセスを前進させる第一歩だと評価している。

核不拡散問題に取り組んできた米国のシンクタンク「軍備管理協会」のダリル・キンボール事務局長は、「外交はツイッターのようなスピードでは進みません。」「これらの協議の後で、核問題に関する特定の提案をようやく両者が行うになりました。欧州連合(EU)のキャサリン・アシュトン外務・安全保障政策上級代表が言うように、両者の主張には依然として大きな相違がありますが、重なっている部分も少なくないのです。」とIPSの取材に対して語った。

 さらにキンボール事務局長は、交渉を前進させるために両者が取り組むべきポイントとして、「提案内容をさらに詳細なものにすること、実行手順に関する問題を解決すること、両者がこれまでよりもより創造的であらねばならないこと」の3点を挙げた。

イランによる20%濃縮ウラン生産という論争的な問題について初期段階の信頼醸成措置が取られたことには「大きな可能性」がある、とキンボール氏はみている。なぜなら、イラン側はこの問題を追求しつづける意図を何度も明らかにしているからだ。
 
キンボール事務局長は、「未来永劫というわけにはいかないが、まだ外交的解決を図る時間はあります。」と述べるとともに、「協議の実際の内容について報道陣に漏らす際には、双方とも戦略的に対応していることを忘れてはなりません。」と指摘した。

イスタンブール、バグダッド、モスクワでの3回にわたる高官級協議を受けて準備され、7月3日から4日早朝にかけて行われた今回の低レベル協議は、長年敵対関係にあるイランと米国による軍事的緊張関係が高まる中で開催された。

EUによる追加制裁としてイラン産原油の全面禁輸措置が正式に発動した翌日の7月2日には、イランが「偉大なる予言者7」と称する3日間にわたる軍事訓練(革命防衛隊宇宙航空部隊による地対地ミサイルの軍事演習:IPSJ)を行い、米軍基地とイスラエルを攻撃する能力があるとされる中距離弾道ミサイルを見せつけた。

さらに7月3日には、イランのメア通信社が、同国の国会議員220人がEUによるイラン産原油の全面禁輸措置は「敵対的行為」であると非難する声明を発した、と報じた。

自国の核事業は兵器関連のものではないと主張しているイランは、核不拡散条約にしたがって、イランには「平和的核技術への不可侵の権利」が存在し、「大国の覇権的な政策には屈服しない」、と繰り返し述べている。

また7月3日、イラン国営のIRNA通信は、EUによるイラン産原油の全面禁輸措置に対抗してホルムズ海峡での重要な石油供給ルートを閉鎖することを求める署名に120人のイラン国会議員が署名したと伝えた。

米国務省のヴィクトリア・ヌーランド報道官は、ホルムズ海峡の通過を妨害しようとするいかなるイランの試みも「国際法に違反しており、米国は容認しない」と記者会見において述べたが、米国が具体的にどう対処するのか、イランの声明を異常なものと見るかどうかについては、踏み込んだ見解は示さなかった。

「イランはこうした脅しを過去に何回も行っており、我々はいつも同じ声明で対抗してきた。」と同報道官は語った。

7月3日の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ペルシア湾での最近の米軍集結は「純粋に防衛的なもの」であると書く一方で、ホルムズ海峡を閉鎖しようとの試みはやめるべきであるとの「メッセージ」をイランに送るものでもあると評した。

匿名の国務省高官は同紙に対して、イランがこの死活的に重要な供給ルートを閉鎖しようとしたり米海軍に対抗したりしようとすれば、イランの船舶は「湾の底に沈められることになるだろう」と語った。

イランの元外務副大臣であり、マサチューセッツ工科大学でエネルギー政策関連の研究員を務めるアッバス・マレキ氏によると、米国とイランによる応酬は外交プロセスへ影響を及ぼし、武力紛争につながりかねないという。マレキ氏は、「米国がイランに対して強硬な手段に出れば出るほど、イランはそれに抵抗し、しかるべき反応をすることになる。」とIPSの取材に対して語った。

イラン・イラク戦争終結の交渉にも関わったことのあるマレキ氏は、「双方が、自分で事態をコントロールできる範囲に留まる努力をすべきだ。」と語った。

しかし、ワシントンのタカ派的なアナリスト達は、これまでに明確な成果が挙がっていないのを理由に、交渉継続の正当性に疑問を投げかけている。7月2日、ジェイミー・フライ、リー・スミス、ウィリアム・クリストルの3氏は、米国の3つの要求をイランが飲まないならば、外交努力を止めて制裁と軍事オプションの検討に進むべきだと大統領に勧告する44人の米上院議員の超党派書簡を称賛した。3氏はまた、「イランに対する武力行使の承認を真剣に追求する」よう議会に求めた。

しかし、前出のキンボール事務局長は、「交渉を打ち切ってしまえば、それによってイランが20%のウラン濃縮を進め、ウラン濃縮能力をさらに強化する措置をとる道を開いてしまう」として、現在の交渉プロセスを既に失敗と呼ぶ者は「きわめて無責任かつ単純である。」と批判している。

「外交交渉を通じてイランとの妥結を模索することによって我々が失うものは何もないのです。」とキンボール事務局長は語った。

また「国際危機グループ」のアリ・バエズ氏も、『アル・モニター』紙に掲載された論評の中で、外交プロセスを失敗と呼ぶのは時期尚早だと述べている。「イラン核危機の肝にある問題は、政治的なものであり物理的なものではない」と同氏は述べ、物理的な領域だと捉えればほとんど逃げ道はなくなってしまうが、「技術的領域においては妙策を凝らす余地がある」としている。

マレキ氏は、次回の協議では「ボールはP5+1側のコートにある」と述べている。イラン側は、ウラン濃縮の完全停止を要求すれば協議は破談すると繰り返し主張しているが、「5%を超える濃縮の停止、包括的査察の受け入れなど、妥協を行う意思も示している。」

「しかし、イラン側でのそうした妥協に見合うもの、たとえば制裁の緩和をP5+1側でも出さねばなりません。」とマレキ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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