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安産のカギを握る熟達した助産師


【国連IPS=ジョアン・エラキット】

話はこうだ。たったいま出産を終えたばかりの若い母親が、薄暗い明かりが灯っている部屋に横たわっている。その後1週間、母親は赤ちゃんを注意深く世話し続けるが、数日後に亡くなってしまうことを恐れて、赤ちゃんの名前を付けることを拒む―。

残念ながら、依然として世界の多くの女性が直面している現実はこういうものだ。毎年世界で1億3500万件の出産があるが、そのうち、十分な質のケアが受けられるのはわずか1100万件に過ぎない。これは、貧富の格差というだけではなく、生死の格差でもある。

国際援助団体「セイブ・ザ・チルドレン」は5月7日、『母の日レポート2013―1日目を生き延びる』を発表した。この報告書は、世界176カ国を対象に、母子を取り巻くさまざまな環境の評価結果をランキング形式にまとめたもので、2013年の報告書では、妊娠期、出産時、そして出産後における母親と新生児の健康状態に重点が置かれ、教育と利用可能な医療サービスを充実させることの大切さを強調している。また今回の報告書では初めて、国別の「出生日リスク指標(Birth Day Risk Index)」が算出された。

報告書によると、新生児の誕生から最初の数時間、数日が決定的に重要な意味を持っている。すべての新生児死亡のうち、4分の3(200万人以上)が生後1週間以内、36%(100万人)が出生初日に死亡している。

こうした新生児の死亡原因は様々だが、適切な訓練を受けた助産師や地域の巡回看護婦へのアクセスがない場合が最も一般的である。一方そうでない場合でも、出産のために病院に行くことについて夫も許可を待たざるを得ず、その間に死産してしまう事例も少なくない。

また無事出産しても、新生児が罹りやすい感染症疾患の問題や、出産中、産後における母体の健康問題がある。

「セイブ・ザ・チルドレン」のキャロライン・マイルズ事務局長は、国連における報告書発表会の席で、「子どもにとって最良の存在は、社会的な力と教育を身に付けた母親なのです。」と語った。

報告書は、新生児死亡の3つの主要因として、重度の感染症、未熟児出産、出産時の合併症を挙げている。

問題の根本にあるのは、非常に多くの女性が医師や医療機関、助産師などにアクセスできないという現実である。

「新生児対策に一層取り組むにあたり、十分な質のケアを提供することが重要なポイントとなってきます。なぜなら、私たちは新生児を単に生き長らえさせることにとどまらず、身体障害を負わせないようにすることを目標としているからです。」と、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のジョイ・ローン教授は語った。

このことはつまり、母子保健を、政府当局やコミュニティーの指導者の優先事項にすることであり、夫や父親と出産計画について話し合う環境を整えるということである。

「男性を積極的に巻き込まなければ、母子保健の問題を解決することはできません。」「コミュニティーにおいて、実際に出産計画に関与するよう、夫たちに働きかけなければなりません。つまり妻が、無事出産できるよう病院に行く計画を立て、夫をその計画に関与させるのです。その際、夫には病院までの車代が必要な場合にはその支払いができるようあらかじめお金を取っておくなど、当事者として協力するよう事前に確認しておくことが必要です。男性も実際には当事者に他ならないのです。」

助産師を育てる

出産中の新生児の死亡は、途上国ではありふれた出来事である。一般的に出産とは、時折悲惨な結果を伴う困難な出来事だが、それでも自然の摂理だと理解されている。

「妊婦たちの間には、新生児は早産など様々な要因で死ぬもの、つまり『仕方がないこと』という感覚があります。多くの新生児が出生後一週間以内に死亡することから、母親たちは出産後7日経過しなければ、子どもに名前を付けようとしないのです。」とマイルズ代表はIPSの取材に対して語った。

報告書によると、800人の女性が妊娠中か出産時に死亡している。また8000人におよぶ新生児が、出生後一か月以内に死亡している。こうした母子死亡を引き起こす要因としては、教育と利用可能な医療サービスへのアクセスの問題が考えられる。

また、とりわけ農村部では、助産師や出産に立ち会う人がいる場合でも、出産前、出産後のケアに関する十分な知識や経験を欠いている場合が少なくない。また、たとえわずかな知識を身に付けていたとしても、失敗事例を含むそれまでの出産の現場で見よう見まねで習得したものに過ぎない。

公衆環境衛生の擁護者は、助産師には、出産後にへその緒を消毒するといった基本的な処置や新生児の母親に感染症のリスクについて教えるスキルを習得させるため、適切な訓練が必要と述べている。

またこのことは、妊婦が出産に際して十分なケアを受けられないもう一つの障害要因である医療サービスへのアクセスの問題とも関わっている。農村部へのアクセスは一般に厳しく、コミュニティーワーカーも診療のために移動ができるほどの十分な支払いがされていない。また、母子保健のための財源は一般的に乏しいのが現実である。

「この(アクセスの)問題を一部解決する方策は、より多くのコミュニティーの助産師や医療関係者に対して訓練を実施することです。」と、ナイジェリアのザリアにあるアハマドゥ・ベロ大学病院のキャサリン・オジョ看護長は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|シリア|UAE紙、人道危機が深まる現状について報じる

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【アブダビWAM】

シリアの現状は全ての面で悲惨である。内戦はエスカレートし、凄まじい破壊と信じがたいほどの民間人の死傷者をもたらしている。」と5月7日付UAEの英字日刊紙が報じた。

「このまま内戦が長期化すれば、シリアの社会構造そのものが崩壊する危険性があり、紛争の人道的側面に対する支援が急務である。最近もアル・バイダとバニヤで女性と子供を含む数十人が無残に虐殺された事件が発生している。」とガルフ・ニュースが社説の中で報じた。

国連児童基金(UNICEFは声明の中で、「これらの虐殺事件は、シリア内戦の最大の犠牲者が、無実の市民、とりわけ子ども達であることを改めて示している。」と述べている。このような事例は今回のシリア内戦が最初でも最後でもないだろう。しかし、この内戦において最も高い代償を強いられるのは、数百万人におよぶ無実の民間人であるのは明らかである。

またこの紛争は、諸都市や村々から住民がそっくり流出していくという危険な側面を内包している。既に難を逃れて550万人以上のシリア国民が住み慣れた家を後にしており、ユニセフが「重度のストレス状態にある」とする近隣諸国に、少なくとも140万人が難民として流入している。

また、最近はアサド政権側と反乱勢力双方が、未確認情報ながら化学兵器を使用したとの報告や、拷問を行ったという報告がされており、事態の進展に対する不安が一層高まっている。

シリア国民はこれからどれほどの期間、そしてどこまで紛争の苦しみに耐えなければならないのだろうか?そして国際社会は、どこまでシリア国民の死傷者が出れば、介入が必要だと判断するのだろうか?列強諸国は、シリア全土が戦場と化してはじめて介入に踏み切るのだろうか?

「現在シリアでは、人道上の対応を必要とする深刻な状況が進行しており、国際人道援助機関が、取り組んでいかなければならない(下記の国際人道諸機関の代表による映像資料を参照)。そしてより重要なことは、シリアの社会構造が崩壊してしまう前に、紛争を終結へと導けるような妥当な出口策を、列強諸国が支持し追求することである。」と、ガルフ・ニュース紙は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|中東|「シリアにおけるイスラエルの軍事行動は危険だ」とUAE紙

情報不足で困難に陥る難民支援

ロシアに新しい機会を提供する中東(エリック・ワルバーグ中東・中央アジア・ロシアアナリスト)

「アラブのNPT残留を当然だと思うな」

【カイロIDN=バヘール・カーマル】

エジプト国民が核問題に現実の懸念を抱いているというわけではない。宗教間暴力が激しさを増し、ムハンマド・モルシ政権に対する民衆の不満が高まる中、危険な不安状況が続いている。こうしたなかでエジプト国民は、彼らの現在と直近の将来について深く憂慮している。簡単に言えば、あまりに多くの不満とごまかしがあり、核のことなどは考えられないというのが現状である。

にもかかわらず、一般的にはアラブ諸国政府、とりわけ湾岸地域の諸政府が―米国からの政治的圧力を受けてのものだと言われているが―イランの核計画に対する恐怖感を表明するようになり、近年再び核問題に焦点を当てるようになってきている。

実際、バーレーンのガニム・ビンファドル・アル・ブアイネン外務担当国務大臣(副外務大臣)とハーリド・ビン・アハマド・ビン・ムハンマド・アル・ハリーファ外相はこの3月、「バーレーン政府およびその他の湾岸諸国としては、たとえ平和目的であったとしても、核活動に関する話は聞きたくない」と、マナマで筆者に語った。

彼らの主張は、いかなる性格の民生核活動であったとしても、水汚染や(歴史的に主要な生活資源である)魚類への影響から、原発事故のリスクに至るまで、湾岸諸国の民衆の生命と生活に対する強力なマイナスの影響があるというものだ。

中東の非核兵器地帯化を宣言することをめざす取り組みにおいて重要な役割を常に担ってきたエジプトも、同じような不安を抱えている。実際、エジプト外交は、国内状況にもかかわらず、アラブ諸国の支援を得ながら、この方向での取り組みを続けてきたのである。

この分野でエジプトのトップを走る専門家の一人であるムハンマド・カドリ・サイード元少将(右写真)が、筆者に対してエジプトの観点について解説してくれた。元少将は、アル・アーラム政治・戦略研究センター(カイロ)の軍事・技術アドバイザーで、軍事研究班の班長も務めている。

イランの核計画が西側諸国の注目を集め(制裁に発展する)一方で、イスラエルが中東唯一の核保有国として存在している。中東の核をめぐるこうした現在の行き詰まりを終わらせる大きな突破口が、あらゆる障害の存在にもかかわらず求められている、とカドリ氏は考えている。

エジプトとアラブ諸国は、イスラエルの核も含めて中東を非核兵器地帯化するという米国の約束との交換条件で、1995年に核不拡散条約(NPT)への加盟を催促された。従って、突破口となるこの約束が実現しないということになれば、NPTから脱退することもありうる。

カドリ氏は、「現在、アラブ諸国の中で核計画を『宣言』している国はありません。」と強調したうえで、「中東における唯一の例外がイスラエルです。私は、アラブ諸国の話をしているのであり、イランやパキスタンのことではありません。」と語った。

イスラエルが推定約230発の核爆弾を保有している(これはインド・パキスタンの保有数の合計を超える)ことに関する見解を求められたカドリ氏は、「イスラエルの核弾頭の数についてはさまざまな推定が出されているが、150発というのがよく言及される数字です。」と語った。

100~200発の間だという推定もある。カドリ氏は、「いずれにせよ、100発だろうが200発だろうがあまり変わりません。本当に重要なことは、核の保有そのものが恐ろしい、ということです。」と語った。

以下が、インタビューの抜粋である。

Q:ニューヨークで2010年5月に開かれた、5年毎のNPT運用検討会議において、中東非核兵器地帯化の方法について議論する国際会議の開催に参加国は合意しました。集中的な交渉の後、フィンランド政府が、ヘルシンキで同会議を主催すると昨年発表しました。しかし、会議の開催は、延期されています…。

カドリ:少し背景を説明しましょう。新しい核兵器国が登場することによる恐ろしい帰結と脅威のために、国際社会は、NPT(核不拡散条約)を締結することにしたのです。

当初の考えは、条約にはすべての国家による参加を可能にし、10年ごとに条約再検討あるいは更新の議論プロセスを行い、その後はいかなる国であっても、条約加盟を更新するか脱退するかを決めることができる、というものでした。エジプトとアラブ諸国は、当初は条約に加わらないことにしたのです。

Q:なぜですか?

カドリ:おそらく、どの国でも脱退できるような条約は「無意味」だと考えたのでしょう。この段階で、米国が登場して、エジプトやアラブ諸国、イランに対してNPT加盟への圧力をかけたのです。これらの国々は、2つの約束と引き換えに条約加盟を決めました。ひとつは、条約が10年ごとに更新されるのではなく無期限に延長されること、もうひとつは、中東の非核化に向けた取り組みがなされるということです。もちろん、イスラエルも対象に含まれます。このプロセスは1995年に頂点を迎えることになりました(条約は1968年に署名開放され、1970年に発効。1995年5月11日に無期限延長された。)

Q:まさにその年に、国連安保理が中東を非核兵器地帯化する必要性を謳った決議を採択したのでしたね。その後の大きな進展はありますか?

カドリ:その安保理決議が1995年に採択されたということは、問題のすべてがその年に解決されるだろうということを意味したのでした。それは出発点となるはずでした。

Q:しかし、中東から核兵器を廃絶する方法を探る国際会議(=フィンランド会議)を開催するとの決定が2010年NPT運用検討会議でなされたことを例外とすれば、この18年間、何も起こりませんでした。ならば、なぜアラブ諸国はNPTの枠内にとどまり続けているのですか?

カドリ:実は、アラブ諸国の研究所が、まさにこの点について討議するためにこの数か月間何度も会議を開いてきたのです。これまで、予定されたヘルシンキ会議が今年(2013年)中に開催されないならば、アラブ諸国に対してNPTからの脱退を勧告しようという大まかな合意ができています。

Q:イランが核計画を始動させたのは、現職のマフムード・アフマディネジャド大統領が選出される以前の2003年でした。イラン政府は、20%までのウラン濃縮なら可能だと主張しています。しかし、科学者らによれば、核爆弾製造には95%の濃縮ウランが必要です。イランには核兵器を製造する能力があるとお考えでしょうか?

カドリ:はい。十分あると思います。

Q:イランはすでに核兵器を保有しているということですか?

カドリ:イランには製造の「能力」があると申し上げたはずです……これは非常に複雑なプロセスですから。

Q:中東非核兵器地帯化と延期されたヘルシンキ会議の問題に戻ります。この会議は開催されることになるでしょうか。

カドリ:はい、開催されると思います。

Q:特定の、法的拘束力のある、実行可能な成果が生まれるでしょうか?

カドリ:何らかの成果はあると思います……つまり、第二次世界大戦後に起こったような大きな変化という意味です。

Q:そうした大きな変化とは、イスラエルの核も含めて、中東からすべての核兵器が廃絶されることになるでしょうか?それはどの程度現実的だと思いますか?

カドリ:そう思います。「現実的か」とのお尋ねですが、それではいったい誰が、第二次世界大戦後に欧州で起きたような大きな変化を予想したでしょうか?(原文へ

※バヘール・カーマルは、エジプト生まれのスペイン国籍。ジャーナリストとして約40年の経験を持つ。スペインでHuman Wrongs Watchの編集・出版を行う。

翻訳=IPS Japan

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核兵器の禁止を望む若者たち

【ベルリン/ジュネーブIDN=ラメシュ・ジャウラ】

若者の手にかかれば、世界のすべての核兵器は非人道的なものだと宣告され、核兵器を禁止する包括的な条約が実現するだろう。これは、ジュネーブの国連欧州本部(UNOGで開催された重要な会議の中で発表された、国際意識調査の結論である。

創価学会インタナショナル(SGI)の青年部のメンバーが行ったこの調査では、15歳~45歳の回答者の91.2%が「核兵器は非人道的である」と答え、この大量殺戮兵器を禁止する包括的な国際条約を支持する声は80.6%に上った。

SGIは、世界に1200万人以上の会員を擁し、社会的活動を行う仏教組織である。SGIは、創価学会の戸田城聖第2代会長が1957年9月8日に「原水爆禁止宣言」を発表して以来、核兵器廃絶を求めるキャンペーンを行ってきた。また2007年には、核兵器の全面禁止を支持する世論を活発化するため、「核兵器廃絶のための民衆行動の10年」キャンペーンを立ち上げた。

SGIの池田大作会長は、2010年の「平和提言」の中で、広島・長崎への原爆投下70周年にあたる2015年に両市で核廃絶サミットを開催するという考えを提唱している。池田会長は、2011年の平和提言でもこの考えを繰り返し述べているほか、その翌年には、2015年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議を広島・長崎で行うべきとの提案をしている。

Daisaku Ikeda/ Photo credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo credit: Seikyo Shimbun

池田会長は、2013年の「平和提言」では、さらに一歩踏み込み、核兵器なき世界に向けた拡大首脳会議の開催を提案した。「広島・長崎への原爆投下から70年となる2015年にG8サミット(主要国首脳会議)を開催する際に、国連や他の核保有国、非核兵器地帯の代表などが一堂に会する『核兵器のない世界』のための拡大首脳会合を行うことです。例えば、2015年のホスト国であるドイツと交代する形で、2016年の担当国である日本がホスト役を務め、広島や長崎での開催を目指す案もあるのではないかと思います。」

SGIの青年メンバーが、日本・米国・英国・イタリア・豪州・韓国・ブラジル・マレーシア・メキシコの9か国で2012年12月から今年2月にかけて意識調査を行ったのには、こうした背景があった。9か国には、核兵器国、米国の核の傘の下にある国、非核兵器地帯の下にある国もある。

調査結果の重要性

核兵器なき世界に向けての運動を展開している「グローバル・ゼロ」の調査に照らし合わせると、このSGIの調査結果の重要性が鮮明になる。同団体によると、9つの核兵器国は、2011年に核兵器プログラムに1000億ドルを費やしているという。

この推計自体は控えめなものだが、軍事支出全体の約9%を占めるという。「グローバル・ゼロ」は、このままのペースだと、今後10年間で核兵器とその直接的な支援システムの維持のために少なくとも1兆ドルが世界で費やされることになるとみている。

9か国とは、NPT第6条に規定された公式の核兵器国であるロシア・米国・フランス・英国・中国と、非公式の核兵器国であるイスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮の4か国である。

SGIの青年メンバーによる調査結果は、4月22日から5月3日にかけてジュネーブで開催された2015年NPT運用検討会議第2回準備委員会の議長であるルーマニアのコーネル・フェルタ大使に手渡された。

この調査結果の発表からさかのぼること約2か月、核兵器がもたらす人道的影響について検討するための画期的な政府間会議が、ノルウェー政府主催の下、3月4日~5日にオスロで開催された。

オスロ会議は、2010年のNPT運用検討会議以来高まりを見せている、核兵器が国際人道法に反することを訴える運動を受けて、開かれたものであった。2010年会議の最終文書は、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念」を表明し、「国際人道法を含めて、適用可能な国際法をすべての国家が常に遵守する必要性」を再確認した。

これに続いたのが2011年11月の国際赤十字・赤新月運動の代表者会議による決議である。同決議は、すべての国家に対して、「法的拘束力ある国際合意を通じて、核兵器の使用を禁じ完全に廃絶する交渉を誠実に追求し、緊急性と決意をもって交渉を妥結すること」を訴えた。

その後、2012年5月に開かれた2015年NPT運用検討会議の第1回準備委員会において、ノルウェーとスイスが主導する形で、核軍縮の人道的な側面に関する16か国共同声明が発せられた。同声明は、「冷戦終結後においても、核による大量殺戮の脅威が21世紀の国際安全保障環境の一部を形成していることに重大な懸念を持っている」と述べている。

壊滅的な人道的帰結

識者らは、オスロ会議で焦点が当てられた、核兵器がもたらす壊滅的な人道的帰結について、真剣に検討を開始すべきだという点で一致している。

「いかなる国家あるいは国際機関も、核兵器の爆発が直ちにもたらす人道面における緊急事態に十分対応し、被害者に対して十分な救援活動を行えるとは考えにくい。実際、そのような対応能力を確立すること自体、いかなる試みをもってしても不可能かもしれない。」

「核爆発がもたらす効果は、その原因はともかく、国境によって留められるものではなく、当該地域だけでなく世界的に、各国や民衆に対して重大な影響を及ぼすことになるだろう。」

SGI平和運動局の事務局長である河合公明氏は、2013年4月26日にジュネーブの国連欧州本部で行った発表において、こうした議論、また、人間のミスから同様に悲惨な帰結がもたらされかねないことにより、核兵器なき世界を実現するという取り組みにおいて、世界の市民社会は決定的な役割を果たすことを求められている、と述べた。

人間のミスがもたらす帰結については、「核時代平和財団」の創設者で現所長でもあるデイビッド・クリーガー氏によって次のように指摘されている。「核戦争はありえないと思われていますが、事故や計算違いで、あるいは何者かの意図によって、実際に起こりうるのです。福島第一原子力発電所の事故による大量の放射能拡散が、それが実際に起こるまでは想定外だったように、核戦争の可能性も、抑止が破綻し核戦争が実際に起こるまでは、ありそうにないことだと見られているのです。…人間について我々が知っていることのひとつは、人間は過ちを犯すということです。我々は完ぺきであることはできず、いかに注意深くやろうとしても、ミスをなくすことはできないのです。つまり、人間の可謬性(=人間が誤りを犯しうる存在であること)と核兵器は、きわめて不安定な組み合わせなのです。」

一方、クリーガー氏は絶望を戒めている。彼は国連欧州本部でのプレゼンの中で、「絶望はあきらめを導くものであるが、希望はひとつの選択です。我々は、希望を選び取ることができるのです。」と述べ、核兵器なき世界を視野に入れつつ「大胆さと希望」を持つよう訴えた。

「絶望ではなく希望を」との主張は、SGIの青年メンバーが調査した若者の圧倒的多数の意識を反映するものであった。創価学会青年平和会議議長で、今回の意識調査をとりまとめた浅井伸行氏は、「これだけ多くの若者が核兵器を非人道的なものと認識していることは、非常に勇気づけられることです。これからも、核兵器とそれが及ぼす脅威の大きさについて、世界の若者たちに訴えていきたいと思います。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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|中東|UAE紙、イスラエルによるシリア空爆を非難

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【アブダビWAM】


アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は、5月6日、イスラエルが前日シリア首都圏3か所の軍事施設に対して行った空爆(死者42人、100人が行方不明)について、「イスラエルにシリア情勢に干渉する権利はない」と非難した。

イスラエルは、シリアからレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラにイラン製武器が輸送されるのを阻止するために空爆したとしている。

また同紙は、「イスラエルの攻撃は、シリア内戦の状況を一層悪化させ、地域全体を巻き込む紛争へと発展するリスクを高めたのみだ。」と報じた。

ガルフ・ニュース紙は「イスラエルにシリア情勢に干渉する権利なし」と題した論説の中で、「シリアの内政にあえて干渉する諸外国が存在する限り、シリア内戦が終息する見込みはない。今日、シリアは多くの外的要因が行方を左右する戦場と化している。」

「従って、イスラエルによる最近の直接軍事介入はシリア情勢をさらに悪化させるのみであり、非難されるべきである。」と同紙は付加えた。

ナショナル紙は、「イスラエルの攻撃は、厄介な紛争を泥沼化させる」と題した論説の中で、「3日と5日にシリアの軍事施設を空爆したイスラエルの狙いは、複雑なものではない。イスラエルはこれまでも、自らの国益を追求するために、行動をおこすことを躊躇したことがない。その際、国境の問題など殆ど顧みない。」また、「これらの空爆は、シリアにさらなる苦痛を強いることと引き換えに、イスラエルの目的を果たした。」と報じた。

ドバイに本拠を置くカリージ・タイムスは、「戦争がシリアに暗い影を落とす」と題した論説の中で、「イスラエルは攻勢に出ている。(前回の爆撃から)再び、イスラエルの戦闘機がシリアの領空を侵犯し、今度は首都ダマスカスの郊外を爆撃した。」

「今回の空爆の標的となり破壊されたのは、研究センターを擁するジャムヤラ軍事施設と思われる。空爆の規模は凄まじく、あたかも地震のように爆音が鳴り響き、燃え盛る炎はダマスカスの夜空を赤々と照らした。」

現時点でシリアはまだ報復に出ていないが、イスラエルによる軍事攻撃が既に行われたのは言うまでもなく、シリア危機を一層悪化させ、紛争を地域全体に拡大する危険性を高めることとなった。

「この空爆は、実施されるべきではなかったし、西側諸国、とりわけ米国には、イスラエルの強硬政策を思いとどまらせる義務があった。」と、カリージ・タイムス紙は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|UAE|安倍総理の訪問は2国間関係の新時代を開いた

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【アブダビWAM】


「日本は、アラブ首長国連邦(UAE)との二国間関係を、従来の商業的側面に限定されたものから、各々の長期目標を達成するうえで両国が協力し合える共通戦略を踏まえたものへと発展させようとしている。この点に関して、5月1日と2日に行われた安倍晋三内閣総理大臣によるUAE公式訪問はこのプロセスを大きく後押しする重要な機会となった。」とUAEの英字日刊紙が報じた。

ガルフ・ニュース紙は5月4日付の論説の中で、「安倍総理はUAE首相でドバイ首長のムハンマド・ビン・ラーシド・アール=マクトゥーム殿下と2日に会談し、包括的協力強化を盛り込んだ共同声明を発表した。省エネ、インフラ整備などで協力を強化する他、投資拡大の基盤となる租税条約とともに、日本の原子力発電施設の輸出を可能にする原子力協定(福島原発事故後日本が調印するのは初めて:IPSJ)に調印した。」

「原発施設は長年に亘って稼働させるためこの分野における協力関係は長期的な性格を有するものでなければならない。従って、この商取引が合意されたということは、両国間に深い戦略的な信頼関係があることを物語っている。」

「また安倍総理は、アブダビ首長国皇太子で連邦軍副最高司令官のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下とも会談し、外務・防衛当局間で、安全保障対話を創設することで合意した。これは両国の関係強化を図るうえで有益かつ具体的な措置である。日本とUAEは、一旦共通点を見出せば、互いに相手を強力に支援できる立場にある。」と同紙は報じた。

また同紙は、「湾岸アラブ諸国と日本の間には、これまでほとんど文化交流がなく、相手に対する理解は乏しく、共通の文化的基準もさしてない現状は残念である。このことは両国が地理的に遠くかけ離れており、例えば、日本が懸念を抱く東シナ海の問題にUAEの関心は高くなく、逆に湾岸地域や中東の諸問題について日本がUAEを支援することに積極的な関心を示さないなど、地域的な関心についてあまり共通点がなかったことも起因していると考えられる。」

ガルフニュース紙は、「従って、安倍総理の今回の訪問は、こうした両国間に横たわる政治文化のギャップを埋め、重要な通商パートナーとして、将来にわたって息の長いより戦略的な関係を構築していくうえで重要な機会となった。」と結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|欧州|緊縮財政で立ち行かないDV被害者支援

【ベオグラードIPS=クラウディア・シオバヌ】

欧州評議会によると、欧州の女性の4分の1までもが、人生のいずれかの時点で家庭内暴力(DV)を体験している。しかし、これほどまでに広がりのある現象にもかかわらず、大抵の場合、無視されがちである。こうしたなか、先月セルビアで発表されたある短編ビデオは、この沈黙をなんとか打ち破るものだった。

このビデオクリップには、様々なヘアスタイルとメイクアップをしたある女性の写真スナップが次々と現れ、一見したところYouTubeによくアップされている「フォト・ア・デイ(Photo-a-dayVideo)」の映像のように見える。

しかし、暫くすると、このコマ送り映像は、通常とは異なる変化を見せ始める。女性の表情が次第に悲しげで恐怖を帯びたものになり、顔が徐々にあざと切り傷だらけになっていくのだ。そして、最後のシーンで女性は、助けを求めるサインを掲げる。

この映像に登場する女性の素性や映像の真偽がはっきりしないうちに、世界中での視聴回数はわずか数日間で200万回に達した。実はこの映像は、セルビアの民放テレビ局の系列組織である「B92財団」によって、同国における家庭内暴力に関する意識を喚起するキャンペーンの一部として制作されたものだった。

ベオグラードの「女性の自立センター」によると、2012年初頭から現在までに60人以上の女性が、DVが原因で死亡している。同センターは、女性たちは、言葉による或いは肉体的な虐待に刻々と晒されてきている、と主張している。

「女性を殴ることは普通ではないということを社会全体に理解させ、女性自身に家庭内暴力について当局に訴え出るよう促すためにも、この問題について話していくことが重要なのです。」「団結と、民衆の反応を引き出すこと、そして当局が家庭内暴力の問題に対処するよう圧力をかけていくことが私たちの行動目標です。」と、B92財団のヴェラン・マティッチ理事長は語った。

B92財団はこれまでの6年にわたる活動の中で、家庭内暴力を受けた女性たちを一時的に保護するシェルターを設立した。また今年は新たに2つのシェルターを開設する予定である。

B92財団は、国連開発計画(UNDAP)と協力して、加害者の暴力から女性を保護・支援する法律をより厳格に適用するよう、関係当局に対してロビー活動を展開している。また、系列の人気テレビ局がもつネットワークを生かして、この問題に関する社会ニーズについて情報発信を行っている。

これまで20年に亘って女性に対する暴力の問題について活動してきた「女性の自立センター」のダニエラ・ペシッチ氏も、法律こそが最も系統的に犠牲者を救済できることから、既存の法律がより適切に適用されるよう当局に改善を求めることを最重要視している。

ペシッチ氏は、シェルターはたしかに重要だが、所詮、短期的な緊急対応策でしかなく、家庭内暴力と闘っていくには、その背景にある文化そのものを変革していかなければならい、と考えている。彼女はこの点について、「家庭内暴力の頻度が、都会と農村部の間で開きがなく、加害者が教育・所得レベル全般に跨っていることから、その主な原因は、貧困でも、教育の欠如でも、アルコール依存症でもなく、家父長的な価値観にある。」と指摘したうえで、「男性達は自分たちが暴力的であっても許されるという考えを捨てなければなりません。そしてそれを実現するには、早ければ幼稚園児の段階から、男女の性別役割という認識を変えさせる必要があります。」と語った。

またペシッチ氏は、ここ数年セルビア社会に好ましい変化(女性が社会的な権利を与えられていると感じている)が表れていることを認識しているが、一方で、家庭内暴力の問題に取り組んでいる活動家や団体に対する組織的な支援体制が欠如している現状に、危機感を抱いている。

財政支援はまばらで、あったとしても西側諸国からの単発のプロジェクトベースの寄付であることが少なくない。その結果、例えば家庭内暴力被害者ホットラインのように、運営開始から数年して、ようやく利用されはじめたばかりの段階で、資金不足により閉鎖を余儀なくされるという事態も生じている。

セルビアは未だに欧州連合(EU)への加盟を果たしていない。またバルカン半島の国々の例にもれず、セルビアも男性優位傾向が強い社会として知られている。しかし、家庭内暴力に対する取り組みに関して言えば、セルビアの現状は、多くの欧州諸国が直面している状況(EUの基準に沿った法律はあるが適切な執行ができないでいる、家庭内暴力問題に取り組むNGOへの財政支援が不十分、家父長的価値観が社会に根強く残る)とあまり大差がない。

暴力に反対する欧州女性の会」(WAVE)の2012年の報告書によると、DV被害者に対する無料相談電話を整備すべきとの欧州評議会の勧告を実施している国はわずか3分の1しかなかった。十分な数のシェルターを提供している国は、さらに少なく、同報告書が調査対象とした欧州46か国のうち、わずか5か国しかなかった。また、中欧・東欧諸国の状況は、西欧諸国に比べて全般的に厳しいものだった。

多くの旧共産圏諸国にとって、家庭内暴力の防止策や犠牲者救済策を本格的に取りはじめたのは僅か十数年以内のことである。例えばエストニアの場合、国内に10か所あるシェルターの全てが、政府と非営利団体による財政支援でこの5年以内に開設されたものである。

しかし欧州各地の女性団体からは、こうしたシェルターや犠牲者支援施設の今後の存続を危ぶむ声が上がっている。経済危機によって、既に不安定な財政の持続可能性がますます厳しい状況に追い込まれているからである。

オックスファムと欧州女性ロビーが2010年に発表した報告書「景気後退期の欧州連合における女性の貧困と社会的疎外:見えない危機」は、経済危機が始まって以来、中欧・東欧各国のNGOが、シェルターへの避難を求めてホットラインに連絡してくる女性の数が増加したと報告している状況を伝えている。

この情報は(欧州レベルでの定量化はまだなされていないが)、経済危機によって家庭内暴力の頻度と深刻さが増しているという一般的な見解と一致している。

また同報告書には、シェルターが閉鎖されたルーマニアのケースや、外国からの援助が打ち切られて傷ついたと不満を述べるスロバキアのNGOのケース、さらには地元当局からの十分な支援を得られず長期的な計画が立てられないと主張するエストニアの団体のケース等、欧州各国が経済危機対策として実施した緊縮財政政策がもたらした悪影響についても報告がなされている。

さらにこの悪影響は、従来欧州における女性の権利支援活動に財政援助を行ってきたEUのダフネ基金にも及び始めている。EUは現在7年に一度の予算更新時期に差し掛かっているが、緊縮財政政策の影響で、この基金の予算規模を縮小することが既に、発表されている。

欧州委員会の関係者はIPSの取材に対して、女性の権利とジェンダーの平等を推進するプログラムに対して現行と同程度の予算(7年間で約8億ユーロ)をつけるよう財政当局に提案したと語ったが、今後の予算交渉の中で大幅に削減されるのではないかと危惧する声も上がっている。

「経済危機と緊縮財政政策は、女性に対する暴力の広がりに悪影響を及ぼしている一方で、女性自身が暴力から逃れる能力にも弊害をもたらしています。」と指摘するのは、欧州女性ロビーのピエレット・パペ氏である。

彼女は、「公的サービスが予算削減に直面し、質の高いサービスを提供することが困難になる中、女性の経済的独立性が阻害されている。」と指摘したうえで、「従来NGOが牽引してきた家庭内暴力の被害女性に対する支援活動も、入札の導入やサービスの市場化により脅威に晒されており、その結果、男性による暴力の犠牲になった多くの女性や少女が置き去りにされ孤立している。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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ボリビア移民の企業家が米国でキヌア普及に尽力

【ラパスIPS=フランツ・チャベス】

アナ・チパナさんは子どもの頃、あまりキヌアが好きでなかった。しかし、このアンデス原産の穀物のような農産物のお蔭で、彼女は企業家として成功し、アメリカ航空宇宙局(NASAや国連にも招かれる有名人となった。

チパナさんは12年前に夫のラミロさんと共にボリビアから米国に移住し、フロリダ州南部のタマラックで暮らしている。「夫が深刻な胃腸障害で倒れたとき、家族の食生活を改善することを余儀なくされたのです。」とチパナさんはIPSの取材に対して語った。

その際、彼女は幼いころボリビアで食べていた伝統的な食べ物、とりわけキヌア(アカザ科キヌア)を思い出した。

キヌアは通常の穀物の2倍のタンパク質(23%)を含むほか、炭水化物、8種類の必須アミノ酸、鉄分、カルシウム、マグネシウム、リン、各種ビタミンを含んでいる。また、低脂肪でグルテンを含まず、消化しやすい特徴も兼ね備えている。

「キヌアは栄養価が高く、タンパク質、ミネラル、ビタミン、エネルギー補給にほぼ理想的な食物です。また、痩せた土地でも栽培が可能な作物です。」と国連食糧農業機関(FAOボリビア支部のアインシュタイン・ヘンリー・タハダ報道官はIPSの取材に対して語った。

ジャガイモのように、キヌアも、インカ以前の文化やインカ文明において主食であった。しかし、16世紀のスペイン人による征服後、徐々に忘れ去られ、今日のボリビアではあまり一般的に消費されていない。一方、キヌアは、米国、欧州、中国、日本で着目され、徐々に人気が出てきている。

チパナさんは、夫が回復すると、キヌアの素晴らしい効能を、もっと多くの人々に伝えたいと思い立ち、2010年にタマラックに「ワラ・キヌア・オーガニック・ベーカリー」という小さなか会社を設立した。このベーカリーでは、砂糖やグルテンを含まないキヌア粉で作ったオーガニックパンやケーキ等を販売している。

チパナさんの成功は、彼女の粘り強さとやる気の賜物である。彼女はNASAに3度に亘って自らの健康食品のメリットを訴える手紙を送った。この努力は功を奏し、昨年チパナさんはNASAの招待され、宇宙飛行士と技術者の会合で朝食の給仕を任された。

NASAは既に数十年前からキヌアの栄養価値に着目してきた。NASAには、宇宙食の研究開発(R&D)やパッケージングを担当する栄養士や科学者が勤務する独自の研究施設があり、部外者は雇い入れない規則となっていた。しかしチパナさんのコーヒーケーキやマフィン、クッキーが職員の間で話題となり、彼女には例外が適用されることとなった。

「NASAのシェフや宇宙飛行士は、キヌアが地球上と宇宙空間双方において、彼らの食生活の重要な一部を構成している、と教えてくれました。宇宙飛行士たちは、ケネディ宇宙センターでは、キヌア入りのサラダを食べています。また、宇宙空間に滞在中は、シュリンプカクテルから酢鳥、キヌアを含む穀物でできたハンバーガーなど様々なフリーズドライ食品を食べているのです。」とチパナさんは語った。

チパナさんとスペースシャトルのベテラン搭乗員ジェームズ・レイリー氏が、彼女の(キヌア入り)コーヒーケーキを持って並んで映っている写真は、ソーシャルメディアを通じて故国ボリビアで広く伝わり、期せずして、ボリビア政府が推進しているキヌアの消費拡大キャンペーンのシンボル的存在となった。

エヴォ・モラレス大統領は、キヌアをボリビア国民の主食の一部に取り入れようとしている。

現在ボリビアは世界最大のキヌア生産国で、年間生産量51,000トンの大半を輸出している。米国が最大の輸入国である。ボリビア外国貿易協会によると、2012年、キヌアは1トン当たり3000ドルで取引され、キヌア輸出はボリビアに8000万ドル(2011年実績の26%増)の外貨をもたらした。また、ボリビア国内におけるキヌアの年間消費量はこの4年間で4000トン(一人当たり350グラム)から12000トン(一人当たり1.1キログラム)に拡大した。

ボリビアからの強い要請を受けて、国連は2013年を「キヌア国際年」と宣言した。この宣言がなされた2月20日、国連総会で登壇したモラレス大統領は、「キヌアは、高地の先住民コミュニティーと貧しい都市部で食されていたことから、従来、消費量は低迷していました。しかし、最近海外市場が拡大しつつあります。」と語った。

この国連総会にはチパナさんも招待され、モラレス大統領、潘基文国連事務総長、ジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバFAO事務局長が参加した昼食会にキヌア入り焼菓子を提供した(上の写真)。

チパナさんは、キヌアの知名度は依然として一般的に低く、市場参入は「極めて困難だった」と指摘したうえで、「米国の消費者は、ラテンアメリカの消費者よりもキヌアの栄養価や特性について比較的理解があったため、オーガニック食料品店に限定されますが、なんとか商品を売ることができています。」と語った。

またチパナさんは、「ボリビア政府は、外需に対応した措置を講じるとともに、キヌアに関する農業研究施設を設立し産業化を進めるべきです。」と語った。

FAOのタハダ報道官は、「キヌアは、海抜ゼロ地帯から4000メートルのアンデスの高地まで(気温マイナス8度から摂氏38度まで耐えられる)、どこでも栽培可能な穀物です。干ばつに強く、やせた土壌や塩気の多い土地でも生育します。」と語った。

国家統計によると、人口1000万人のボリビアは、2005年から2011年の間に貧困率を61%から45%に削減したが、FAOボリビア代表のクリスピン・モレイラ氏が指摘しているとおり依然として100万人の国民が、ある程度の飢餓、栄養失調、食料不安を抱えている。しかしこの深刻な現状も2008年の200万人からは大きく下回っている。

「ボリビアにおける飢餓と貧困は、生活手段が乏しい農村地域に主に集中しています。そこでFAOは、生産システムを安定的に向上させ、食料へのアクセスを確保する2本柱からなるアプローチを推奨しています。キヌアは、人類に役立つ天然の栄養素を豊富に提供するのみならず、まさにこの2つの開発条件を満たす天然の恵みにほかなりません。」と、タハダ報道官は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【アブダビWAM】


エチオピアは5月28日、巨大ダム建設のために、青ナイル川の流れを変える作業を始め、セレモニーを行った。しかし、この世界最長の国際河川を一カ国が独占することは許されることではないし、流れが変わればナイル川流域に暮らす多くの住民が直接的に影響を受けることから、流域7カ国政府は、紛争を回避するためにも、一刻も早く集まり、この問題について真剣に協議すべきである。」とアラブ首長国連邦(UAE)の地元英字日刊紙が報じた。

ドバイに拠点を置く「ナショナル」紙は、論説のなかで、「エチオピア政府の一方的な決定により、下流のエジプトとスーダンの経済と社会秩序が寸断される恐れがある。」と報じた。

「アフリカの北東部に位置する両国は広大な乾燥地帯と大きな人口を抱えた隣国である。従って、水はこの地域の最重要資源として、友好的に分かち合わなければならない。さもなければ水を巡る隣国間の紛争へと必然的に発展していくだろう。」

また同紙は、「エチオピアはナイル川を構成する2つの支川のうち同国を源にする青ナイルへのダム建設を計画しており、エジプトとスーダンはその影響を最も受けることとなるだろう。」と報じた。

「エジプト政府は、エチオピアの措置によってナイル川から取水できる量が減れば、農業に悪影響を及ぼし、水不足がさらなる社会不安を増幅する事態を恐れている。」

一方、エチオピアを含むナイル川上流に位置する5カ国(エチオピア、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、タンザニア)は、英国統治時代に定められたナイル川の取水割合の90%を下流のエジプトとスーダンに振り分ける協定は植民地時代の遺物とでも言うべきものだとして、上流諸国への分配量を増やすよう要求を強めている。

「確かに8300万人の人口を抱えるエチオピア(しかも世界最長の川であるナイル川の水量の84%は同国を水源としている:IPSJ)に正当な取水量を認めないままにすべきではないだろう。」

「ザ・グレート・エチオピアン・ルネッサンス・ダム」という豪奢な名称が物語るとおり、この水力発電ダム計画は、エチオピアの地位を再び東北アフリカで秀でたものへと復活させようとする国家計画の一部である。またこのダム建設計画は、アフリカでトップクラスの電力輸出国を目指すエチオピア政府が、国内各地の河川の力を利用しようと進めている大規模な開発計画の第一弾に位置付けられている。」とナショナル紙は報じた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ワシントンIPS=バーバラ・スラビン】

エジプトが、ムバラク独裁体制崩壊後の廃墟の中からより民主的なシステムを作ろうと、四苦八苦している現状は驚くにあたらない。

新たに刊行された中東の政治活動家に関する歴史書には、正義の追求がこの地域に深く根差している一方で、それがしばしば外国勢力の介入によって危機にさらされてきた事実を浮き彫りにしている。

バージニア大学教授で中東の歴史が専門のエリザベス・トンプソン氏は、新著『妨げられた正義:中東における立憲体制を求める闘争』の中で、2011年のアラブの春は「それまでは考えられなかった、しかも現在進行中の出来事」と記している。

タハリール広場に集い、米国が支援するホスニ・ムバラク独裁政権を退陣に追い込んだ若者たちは、1882年に大英帝国軍の軍事介入で革命が頓挫し流刑に処せられたアフマド・オラービー大佐(「エジプト民族主義の父」)の後継者である。しかし一方で、これまでのところ、その「2011年アラブの春」の恩恵に浴しているのは、女性、少数派宗教の信者、世俗派グループの権利抑制を正義と考える「ムスリム同胞団」の創設者ハサン・アル・バンナー氏の後継者たちである。

4月23日、ムハンマド・モルシ大統領自身の法律顧問が、モルシ氏をはじめとするイスラム主義政党の政治家の勢いを挫くためにムバラク大統領(当時)が任命した3000人を超える判事を強制的に引退させる法律に抗議して辞任した。

米国はモルシ新政権による人権侵害を批判しつつも、同政権がイスラエルとの平和条約を維持し続けることをより重視しているようだ。

バラク・オバマ大統領は、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「歴史の弧は正義に向かってしなっている」という言葉を好んで引用するが、だとするならば、中東におけるこの「弧」はきわめて長いものだ。第一次世界大戦後にオスマン帝国が崩壊したことで、立憲体制に向けた運動は頓挫させられ、欧米列強の植民地主義とつながりを持った自由主義は汚された。そして軍事独裁者やナショナリスト、イスラム集団が権力の座を奪った。

トンプソン教授は、19世紀にエジプトの腐敗問題について批評したオスマン帝国の官僚ムスタファ・アリ氏から、グーグル社の幹部で、2011年にフェイスブックによって民主化闘争を組織したワエル・ゴニム氏まで、中東で正義を求めて奮闘した人々の歴史を書き連ねている。ゴニム氏が2010年にエジプト官憲に撲殺された青年を悼んで開設したフェイスブックには30万人がフォローし、そのうちの多くが、後にタハリール広場に集まった。

他には、トルコ共和国のムスタファ・ケマル・アタトゥルク初代大統領による独裁体制に当初は支持したものの後に抵抗した「トルコのジャンヌ・ダルク」として知られるハリデ・エディブ氏や、イラクの近代史上最大の政治的運動を組織したイラク共産党の創立者ユースフ・サルマーン・ユースフ氏、イランイスラム革命時に若者に大きな影響を与えた(しかし彼の理想はその後の聖職者による政権に乗っ取られた)アリー・シャリアティ氏などが取り上げられている。

新著の販売に際して、IPSは、「この書籍は『敗者の歴史』に関するものなのか?」、「一歩進んで二歩後退という悪循環から抜け出し、中東に機能する代議政治をもたらす方法があるのか?」という2つの質問をトムソン教授にぶつけてみた。

するとトンプソン氏は、最近の中東蜂起を、失敗に終わったもののその後の民主運動の重要な先駆となった欧州の1848年の革命(「諸国民の春」)と比較して、「長期的観点から見なければなりません。アラブの春についての楽観的な見方は、これによってアラブの政治文化に、数十年後にはその成果が実を結ぶような抜本的な変化がもたらされたというものです。」と語った。

またトンプソン氏は、「エジプトの現在の状況が好ましいものではない。」と指摘したうえで、「2011年のムバラク大統領追放の象徴であった女性達は、今では暴漢に襲われるのではないかとタハリール広場に集うことに恐怖を感じています。一方、イスラム政党『ムスリム同胞団』出身のモルシ大統領はイスラム法の厳格な適用を求めるサラフィー主義者に気兼ねしている。」と語った。

「しかし、エジプトのメディアはこれまでにない自由を謳歌しており、中東での情報流通は史上最も自由になりました。つまり、ベルリンの壁崩壊のニュースを国営メディアが国民に報じなかった1989年のシリアのような状況とは明らかに異なるのです。」とトンプソン氏は語った。

それでも、過去150年の間、安全保障と外国勢力からの独立を求める願望が、人権という自由主義的な観念に、幾度となく、優先されてきた。

トンプソン氏は新著の中で、外国勢力からの介入について、多くの興味深い「歴史のイフ」を提示している。

もしフランスが、第一次世界大戦後にシリアを占領することなく、ファイサル一世の下での立憲君主制を認めていたらどうだったであろうか?しかし現実には、フランスは誕生間もないシリア・アラブ王国を認めず、軍事力で圧倒し、第二次世界大戦後までフランス委任統治領シリアとして占領下に置いた。

もし、アラブ社会党のアクラム・ハウラーニー党首が1958年にエジプトのガマル・アブデル・ナセル大統領との間に、アラブ連合共和国の樹立(シリアとエジプトの合邦)に合意しなかったらどうなっていたであろうか?ナセル大統領はシリアの諸政党を非合法化し、エジプト人による強権的な支配を進めたため連合は間もなく解消。シリアでは63年にバース党がクーデターをおこし今日に続くアサド政権樹立へと繋がった。

また本書は、ヤーセル・アラファトPLO(パレスチナ解放機構)議長のナンバー2でアブー・イヤードとして知られるサラーフ・ハラフ氏などの重要人物に光をあてている。ハラフ氏は1991年にアブ・ニダル派に暗殺されたが、かつてのテロ活動の首謀者からイスラエルとパレスチナ2国家解決の支持者へと変貌を遂げた人物である。かつてハラフ氏の助言を頼りにしていたアラファト議長は、1988年にPLO司令官のアブ・ジハード氏をイスラエルに暗殺されたのに続いて、ハラフ氏を失っていなければ、晩年の活動をより賢明に導いたかもしれない。

トンプソン氏が言うように、もしアラブの春が「二次の世界大戦と冷戦によって頓挫させられた闘争の反復」であるとしたならば、それは、いまだに勝利したとは言い難い闘争なのである。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩