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|中央アジア|イスラムを通じた近代化

【ワシントンIPS=ジョン・フェファー】

中央アジアの中心にあるフェルガナ盆地は、不安定性、武力紛争、イスラム原理主義でよく知られている。この人口の密集した山岳地域で国境を接している3共和国ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスは、ソ連解体後、近代国家構築に苦心してきた。それはまさに激動のプロセスである。 

タジキスタンでは1990年代、政治勢力間の紛争から内戦が勃発。キルギスでは2005年の「チューリップ革命」で独裁的指導者が失脚。2005年後半には、ウズベキスタンのアンディジャン市で反政府暴動が発生、政府は数百人を殺害してデモを制圧した。その一方で、3国政府はいずれも、ヒズブ・タフリール(解放党)やウズベキスタン・イスラム運動などのイスラム原理主義過激派に対し行動を起こしてきた。最近では、ウズベキスタンのコカンドにおいて新たなグループ「ブラック・ターバン」の組織化が報道されている。

 しかしこうしたフェルガナ盆地のイスラム原理主義に傾倒した暴力的なイメージは不正確だと、ジョン・ホプキンス大学中央アジア・コーカサス研究所所長のS・フレデリック・スター氏は言う。 

「未解決問題山積の地域と見なし、破局が近いように言う傾向がある。それは事実とは異なる」と、スター氏は3月初旬ワシントンにおいて笹川平和財団との共催で開いたフェルガナ盆地に関するセミナーで述べた。「地域は一触即発の状態にはない。3区域いずれにおいても紛争は起きている。1991年以前の紛争は民族紛争の傾向にあった。しかし驚くべきことに、国境に変化はない。独立がもたらしたあらゆる混乱においても、民族間の衝突は比較的限られたものにとどまっている」

3つの要素が緩和効果を発揮していると、スター氏は次のように論じている。「移民労働者が安全弁となっている。土壌は肥沃で、灌漑が十分であれば、農地として最適だ。ものを買うお金がないとしても、人民は食べるに困らない。そして人々はお互いを良く知っている。何百、何千前年も共に暮らしてきたのだから」 

タジキスタン有数の学者であるPulat Shozimov氏も同様に、新たな観点で地域をとらえる。Shozimov氏は、中央アジア・コーカサス研究所の支援の下3カ国から24人の学者の協力を得て8つの異なる社会経済問題について論文を作成する新たな学際研究プロジェクトをまとめる編集者3人のうちの1人である。Shozimov氏は、この研究プロジェクトについて「フェルアナ盆地の新たな可能性を発見するため重要な問題や課題について自由に議論する場としてモデルとなるもの」と述べている。 

研究プロジェクトは「この極めて重要な地域に関してこの半世紀に実施された中であらゆる分野にわたるもっとも包括的な研究となるだろう」とスター氏も言う。「3カ国3人の編集者が成し遂げたことは、地域全域に及ぶ真の協力を生み出すための建設的な環境づくりである」 

 フェルアナ盆地はイスラム教徒が圧倒的に多く、大半がスンニ派である。ソ連崩壊後、地域の共通の要素として挙げられるのは、宗教的な関心が急速に高まっていることである。 

ジョージ・メイソン大学の政治学教授Eric McGlintchey氏も、「明らかにイスラム教の復興が見られる。金曜日の祈祷に行く人の数や人々の服装を見るだけでそれは明らかだ。50年以上実践が禁じられていた宗教上の教えを今は公然と守ることができるようになった。好奇心が起きるのも当然だ」と言う。 

外部のアナリストの中には、フェルアナ盆地における宗教的急進主義の脅威に注目する者もいる。しかしMcGlintchey氏は、イスラム過激派はそれほど受入れられていないと考える。「ヒズブ・タフリールはキルギスではかなり公然と活動しているが、しかしウズベキスタンではそうでもない。彼らは文献や論点は知っているが、しかしイスラム教やそれより広範なことについて少しでも問いつめると、『ウンマ』(イスラム共同体)に関する物事はすぐにも崩れてくる。大半の人は、自らの信仰をヒズブ・タフリールで無駄にする気はない。彼らの地位は誇張されている」と報告している。 

重要ながらもあまり分析されていない点として、イスラム教と経済の近代化の関係性がある。Pulat Shozimov氏によれば、タジキスタン・イスラム復興党(IPRT)が新興中流階級への働きかけを強めている。Shozimov氏は、「現時点で彼らに明確な経済プログラムはないが、しかし独自の経済ネットワークを構築しようとしている」と述べ、IPRTは、イスラム教の価値観と民主的な機構そして世界に連結した近代的な経済との融合を図ろうと、その手本としてトルコの与党に関心を向けていると指摘する。 

McGlintchey氏も同じ意見だ。「トルコを民主的な方向に動かすのにイスラム教政党が政権を握ることが必要だった。タジキスタンでも同様の原動力を見ることができよう」と述べている。 

ウズベキスタンについても、McGlintchey氏は同じ原動力を指摘する。「イスラムの社会資本と経済成長を結びつける好循環が見られる」とし、次のように主張する。「アンディジャンでは、信頼しあい、お互いに誠実だと認めあうビジネスマンが力を合わせている。腐敗が横行し、資金を無理矢理引き出し、信頼を寄せ難い国家当局とは対照的である。こうしたビジネスマンらはグループ内に資本をプールし、さまざまなビジネスを育ててきた。これらの有能なイスラム教徒ビジネスマンを見て、その成功を目の当りにしている人々は『彼らの工場で働きたい、宗教について学びたい』と話すようになっている」 

このように、フェルアナ盆地は、イスラム過激派の拠点とも言われ、散発的に暴力が発生して不安定な地域というイメージの脱却を図っている。イスラム教近代化の新たな経済的・政治的モデルとともに、新たな協力のイニシアティブも生まれている。3国のいささか冷ややかな公的関係がこうした新しいダイナミクスの推進に役立つことはほとんどないだろうが、しかしそれでも下からのチャレンジを受けている。 

スター氏は「3国間には明白な緊張があるものの、3国の国民はお互いを知り尽くしているし、何世紀もの間親密に交流してきた。緊張関係にあっても、彼らは、現実の関係をどのように維持するかは十分承知している」と指摘する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

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HIV/エイズの脅威に晒される移民たち

|パキスタン|ギラーニ新首相、過激派との対話路線を求める

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【イスラマバードIPS=アミル・ミル】

パキスタンの新しい顔になった人民党(PPP)のユスフ・ギラニ首相は、これまでムシャラフ大統領が進めてきた対テロ武力路線を見直すことを示唆している。 

ムシャラフ大統領が行ってきたパキスタンと米国の『対テロ協調』は、2月に行われた総選挙でパキスタン人民党(PPP)およびパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)が第一党に躍進する一因をもたらした。 

しかし、ギラニ首相は国民議会の演説でイスラム過激派が武器を捨てるならいつでも対話をする準備ができているとし、「北西部の部族地域が(国際テロ組織アルカイダなど)過激派の温床となっているのは、教育水準の低さや貧困が原因である」と述べた。

 これに対して、イスラム武装勢力との強硬姿勢を主張してきた米国は、パキスタンの対テロ政策の今後に気を揉んでいる様子だ。しかし、実際パキスタン情勢はここ数年で少しも好転していない。パキスタン軍は部族勢力との和平合意を成立させたにもかかわらず、テロ行為はむしろ拡大しているのである。 

PML-Nのナワズ・シャリフ元首相は、メディアの取材に対して「新政権が求めているのは真の平和であり、パキスタン市民の犠牲ではない」と語り、(米国主導の)対テロ戦争の対応の見直しを強調した。 

クルシド・カスリ前外相はIPSの取材に応じて「パキスタン国内に広がる反米感情を利用することで、テロリストは一層勢力を強めている」と語った。パキスタンでは、テロ行為そのものだけでなく米国によるテロ政策にも反発が出ており、ムシャラフ大統領と米国政府は共に苦しい立場に追い込まれている。 

先日、ニューズウィーク誌の最新号で「パキスタン領内での米国の攻撃で死者が出たことに関して、ムシャラフ政権は黙認した」との記事が掲載された(パキスタン政府は米軍が領土内に入ることを認めていない)。 

対テロ強硬路線を軌道修正するパキスタンの新政権について報告する。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|宗教|大手主要メディアによるテロ

【アブダビWAM】

アブダビに本拠を置くアラブ首長国連邦(UAE)の『カリージ・タイムズ』は、「宗教を悪者扱いする」と題する社説で、暴力行為の扇動に大手主要メディアを利用することを非難した国連人権理事会の最近の決議について次のように論評した。 

「国連人権理事会は、『暴力行為、外国人嫌悪やそれに関連する不寛容、およびイスラム教徒に対する差別を扇動する』ために大手主要メディアを利用することを非難する決議を採択した。これは、時宜を得た行動と言える。ただ採択において、賛成票は理事会47理事国中21カ国にとどまり、14カ国が棄権、10カ国が反対票を投じた」。 

「欧州連合に関しては、議長国スロベニアが反対票を投じた。しかしこれを相殺するものとして、物議を醸しているオランダの国会議員ヘールト・ウイルダース(Geert Wilders)氏の反イスラム教映画について『憎悪を煽る以外の何ものでもない』と厳しく非難したことが特筆されよう」。 

「オランダ政府も、『自由と尊重の両方が成り立つ』環境を提言して、賢明にも、常軌を逸した国会議員の行動と距離を置いている。同国政権は、冒涜的な風刺画が残した余波をおそらくよく覚えているのだろう。あの時には、表現の自由としてその行動を支持した者たちは結局のところ、表現の名を借りて挑発を促すことへの非難の声になんとか反論しようとして、自らの理念と自己矛盾を起こしてしまったのである」。

 「当初のニュース報道から判断して、欧州のイスラム・コミュニティはあらゆる関係者の中でもとりわけ賢明なことに、前回のようには街頭で抗議して怒りをあらわにすることは避けることを決めたようである。だが、欧州以外での反応は大きく異なるようだ。イランとパキスタンでは政府の激しい反応を呼んだ。伝統的な聖職者が有力な地位を占めるイスラム諸国は、当然、怒りをあらわにする意向だ」。 

「ウイルダースの短編映画が公開された今、こうしたイニシアティブを支持する者たちが、そのようなことからは益あることは生まれないこと、その理由を理解できるようになってほしいと願うばかりである。イスラムと西側の分裂の橋渡しをしようという努力にようやくなんとか反応が出てきつつあるこの時期に、映画によって助長されたのは、予想した通り、憎悪だけである。自由を愛する西側のより多くの人々が、ウイルダースのような試みは政略的なものであり、強硬派である自らの野望を遂行するがために敵意を増幅するよう入念に考え抜かれたものであるという事実に気付くまで、事態は好ましい方向には進まないだろう」。

「同様の傾向を帯びた過激主義を自由に放置しておけば、今日の世界を少なからず変えるおそれのある不愉快な事件がさらに増えることになるだろう。したがって、こうした過激主義が勢いを得て阻止し難いものとなる前にそれを抑え込むための大いなる努力が、真に憂慮する人々に求められている。欧州には、間違いなく、果たすべき大きな役割がある。しかし理解しやすい理念を利用して自らの歪んだ目的の達成だけを望んでいるようなウイルダースなどの好ましからぬ人々を放置しているかぎり、欧州はその役割を果たすことはできないだろう」。 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

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|オランダ|反イスラム教映画に対し高まる不安

|パレスチナ|花とイチゴとミサイルと

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【ガザ地区ベイト・ラヒヤIPS=モハメッド・オメール】

ガザは、肥沃な土地と豊かな光・雨により、世界有数のイチゴの産地として知られ、その品質の高さからヨーロッパの一流レストランで使用されてきた。しかし、ハマスの勝利以来、米国の支援を得たイスラエルは、23マイルの国境線および地中海沿岸を封鎖。これにより、ガザで栽培される花々、イチゴは流通の道を閉ざされてしまった。 

国境の町ベイト・ラヒヤは、イスラエルのシデロットから僅か数マイル。イスラエル軍は、侵入して来てはロケット砲が隠されていると思しき場所をブルドーザーで破壊する。破壊した後で、もしロケット砲が発見されなくても、補償金を支払うことはない。

栽培農家のアーメド・フェルフェルさんは、「死んだも同然だ。灌漑システムや温室、機材は、イスラエルの戦車やブルドーザーでめちゃくちゃにされた」と語る。同家の損失は35,000から45,000ドルに達する見込みだ。 

ガザ内6,000戸のイチゴ農家の年間生産は約2,000トン、売上総額は約1千万ドル。通常であれば、その3分の2はイスラエルが50パーセント所有する青果物取引所アグレックスコを通じ出荷される。イスラエルは、昨年11月、花についてはトラック2台、イチゴについては6台の通行を認めたが、再び閉鎖を行った。ガザ農業協同組合のアーメド・アル・シャフィ会長は、昨年12月にはカレム・シャロム通行所での留め置きで、12トンのイチゴが腐ってしまったと語っている。 

ガザには空港も港もあるのだが、イスラエルがその使用を阻止している。また、エジプトに通じるラファ検問所も、米国の圧力を受けたエジプト政府がその使用を禁じている。 

欧州市場は、ガザの商品が入らなければ他の輸入先を探すだろう。ガザにとって、これは長期的被害を意味する。また、優秀農家はエジプトへ逃げだしており、これまで蓄積してきた生産ノウハウを失うことにもなりかねない。 

今年は、保守ユダヤ教徒が、非ユダヤ教徒が生産した食べ物を食する7年に1度の“シミタの年”に当たる。ということは、少なくとも、この国境閉鎖は、イスラエルの伝統にも反することになる。国境閉鎖で壊滅的被害を受けている“ガザのイチゴ”について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

独裁政権を支持するEUに不満の声

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【ブリュッセルIPS=デイビッド・クローニン】

欧州連合(EU)によるチャドへの欧州連合部隊( Eufor )の派遣をめぐり、チャドの独裁政権を支持しているとの非難が高まっている。Euforはダルフール難民および国内避難民の保護を目的に作られたが、その大部分はフランス人が占めている。 

旧フランス植民地であったチャドでは、国民のフランス人に対する感情は決して良いとは言えない。また、「すでにチャド国内で別の軍事行動を展開しているフランス軍との区別ができない」との意見も出ている。

 今年に入ってから首都のヌジャメナでは、反政府勢力と政府軍との戦闘が激化。その間、フランス軍はイドリス・デビ大統領率いる政府軍を支援し、攻撃型ヘリコプターが待機する空港で警備を行った。 

また、2006年の反チャド政府組織『United Front for Democracy』による攻撃の時も、フランス軍はデビ大統領政権の後方支援にあたっている。 

ドイツ人欧州議会議員(MEP)のTobias Pfluger氏は「Euforの派遣は場当たり的なものであり、その目的も明確でない」とEuforの活動停止を訴えた。 

これに対して、チャド・スーダンのEU代表である外交官Torben Brylle氏は、Euforが国連安保理の指示のもと活動している点を強調し「派遣について、チャド国内の多くの指導者からの十分な理解は得られている。我々は治安の確保と人々の保護のために、ここに留まるのである」と説明した。 

ドイツ人保守派MEPのMichael Gahler氏は「チャドの人々は『中立の立場にいる』白人兵士と、『政府軍の側にいる』白人兵士とを見分けることができるのだろうか」と懸念を示した。 

EUはすでに派遣が予定されているEufor要員3,700人のうち、ほぼ半数の派遣を3月中旬までに完了した。残りは6、7月の雨季に入る前に配備する予定になっている。 

チャドへの欧州連合部隊(Eufor)派遣をめぐる諸意見を報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ポーランド|新政権、ミサイル基地建設で米国に具体的見返りを要求

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【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

米国のミサイル基地建設に一度は同意したポーランドであるが、昨年のドナルド・トゥスク政権誕生以来、外交政策の大幅見直しが行われている。 
 
カチンスキー前政権は、ロシアを敵視するだけでなくEUとの関係をも複雑にしていたが、今やポーランド・メディアのほとんどがその対米政策についても甘すぎたと批判している。 
 
カチンスキー氏は、米軍基地の存在はポーランドの益になると考えていたが、基地建設は安全保障上むしろ不利になるとするトゥスク政権は、基地建設に強硬反対していたロシアとの対話を再開し、EUの主要政策にも参加した。また、対米発言も強さを増している。 
 
米国はポーランドとの協力拡大を約束していたが、トゥスク政府は、口約束だけでは不十分だというのだ。 
 
ポーランドは、真っ先に大量の兵士をイラク、アフガニスタンに派遣した。しかし約束された建設/石油ビジネスへの参入は実現していない。基地建設を事実上認めたチェコは、ワシントンとの技術協力拡大で合意したが、ポーランド政府は、基地建設の条件として具体的な見返りを要求しているのだ。その柱は、航空防衛と軍の近代化だ。 
 
ライス国務長官はポーランドに対し、同国の安全はNATOにより完全保証されており、軍事力の更なる強化はロシアの反発を買うだけだと説明した。しかし、ポーランドは、基地が建設されればそれがロシアの攻撃目標になるとして、短距離ミサイル防衛が必要としている。実際、ロシア軍の一部にはこの様な主張もあり、ロシアのラヴロフ外相は、ロシア側の意見にも耳を傾けてもらいたいとして、今回の対話を歓迎している。 
 
ポーランドの方向転換に驚いたのは米国である。彼らの要求を満たすには追加200億ドルの予算が必要となり、これによりポーランドは米国にとって最大の軍事援助国となる。ポーランドは共和党政権が要求を飲み、そのつけを新政権に残すことを期待している。 
 
しかし、もし米国が代替国を探し始めるとすれば、それはロシアの勝利を意味する。ポーランド国民の多くそして米国にとって、それだけは何としても避けたいところである。米国のミサイル基地建設に対するポーランド新政権の対応について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|オランダ|反イスラム教映画に対し高まる不安

【ロッテルダムIPS=イレーヌ・ドゥ・ヴェッテ】

オランダの極右政党党首で国会議員のヘールト・ウイルダース( Geert Wilders )氏の反コーラン映画フィトナ(Fitna)」公開の発表に対し、物議を醸す内容が国内外に不安を生むとし、政治家から公開を自粛するようにとの声が上がっている。 

国民的議論の中心は、映画の予想される内容と言論の自由の制限についてである。国の安全に関する警戒の声も上がっている。だが、映画を観た者はまだ誰もいない。発表通り4月1日にインターネット上で公開されるのかどうかも不明である。

 3月23日、米国のインターネットプロバイダーは、内容について調査中とし、ウイルダース議員のサイトを一時停止した。テレビネットワークと同議員との交渉は、放映前の視聴を認めないとする議員の要求をテレビ局側が納得せず、失敗に終わっている。 

オランダのバルケネンデ首相は2月29日のスピーチで、映画について「重大な懸念」を表明するとともに、言論の自由と宗教の自由の保証を強調した。首相はデンマークでのムハンマド風刺画が引き起こした反発と同様、オランダ市民と経済に対する影響を懸念して、ウイルダース議員に映画の公開取り止めを強く求めた。だが議員は断固として公開すると答えている。 

テロ対策担当調整官は、オランダはテロ攻撃を受けるリスクが高まっていると述べている。北大西洋条約機構(NATO)はアフガニスタン駐留のオランダ軍の安全について懸念している。 

3月13~14日にセネガルのダカールで開かれたイスラム諸国会議機構(OIC)のサミットでも風刺画と映画が中心議題に取り上げられた。エクメレディン・イフサノグル事務局長は、OIC加盟57カ国が「こうしたイスラム嫌悪に対し適切な決定を行うことを期待する」と述べた。 

オランダ公訴局の「National Expert Center on Discrimination(差別に関する国家専門家センター)」(NECD)にはこの数カ月、ウイルダース議員の発言に関して憎悪の流布だとして警察の苦情が殺到している。オランダでは差し迫った脅威や差別などの一定の制約によって言論の自由が制限される。NECDの広報官はIPSの取材に応えてウイルダース議員の発言は「軽蔑的であるが、しかしまだ法律の認める範囲にある」と述べた。 

オランダのイスラム教連盟は、映画がイスラム教徒とイスラム教を攻撃したものでないかどうか独立した専門家の判断を要求している。 

その一方、著名人や市民はウイルダース議員に対する反対行動が組織されている。この数日YouTubeには「Sorry for Fitna」の数百に及ぶクリップが掲載されている。 

オランダ国会議員の反イスラム教映画を巡る動向について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

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|イエメン|風刺画騒動が長い影

|米中関係|国連の理事会で米中が対立

【ジュネーブIPS=グスタボ・カプデビラ】

国連人権理事会の今年の第一会期は3月4日にジュネーブで始まっているが、開会以来、チベットの事件に対して見て見ぬふりをしてきた。だが25日に理事会が1993年のウィーン世界人権会議の決議について取り扱ったのをきっかけに、欧米の外交官と市民活動家はチベット問題を予告なしに取り上げた。 

国際的NGO「脅威を受けている人々のための協会」のカイタ氏は、委員会が最近のチベットでの事件を話し合う特別会議を開くべきだと発言した。カイタ氏はダライ・ラマ事務所の人権専門家でもある。

 もっとも白熱したのは米国のティチノール大使と中国の銭波代表のやりとりだった。ティチノール氏がチベットの首都ラサでの平和的抗議活動にともなった暴力、逮捕、死者について強い懸念を表明すると、銭氏は米国こそイラクなどでの大規模な人権侵害を反省すべきだと反論した。 

人権理事会がチベット問題を話し合う場を提供しないと嘆くアムネスティ・インターナショナルのスカネラ代表の発言は、中国およびその支持国の動議によって中断させられた。スカネラ氏は理事会が中国に圧力をかけてチベット問題に対処すべきだと考えている。 

チベット代表は人権理事会に現地調査団をチベットに派遣するよう要請した。ヒューマン・ライツ・ウォッチのリヴェロ代表は、中国の国内法と国際法に準じた、少数民族の言論、集会、結社の権利の尊重を求めた。 

スイス代表は中国に過度の武力行使を抑えるよう促し、「チベットでは、中国およびその他の世界と同じように、すべての人々が市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利を行使できるべきである」と述べた。 

一方、中国代表はチベットのデモの参加者が申し立てる抑圧は、ダライ・ラマとその追随者の陰謀だと抗議した。「チベット問題は中国の国内問題であり、国連の理事会の議題になるものではない」と銭氏はいう。チベット問題を取り上げることについて紛糾した国連人権理事会について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|セルビア|ロシア人との旧交

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【ベオグラードIPS=ヴェズナ・ペリッチ・ジモニッチ】

コソボ問題でロシアがセルビアを擁護し、2国間の政治的友好関係がクローズアップされている。しかし両国民の交流は90年前にさかのぼる。 

当時セルビアは「セルビア人、クロアチア人、スロヴェニア人の王国(Kingdom of Serbs, Croats and Slovenes )」として徹底した反共産主義であり、1917年のボルシェビキ革命を経たロシアとは一切交流がなかった。そこへ共産主義を逃れたロシア人が多数流入した。

 およそ35,000人のロシア移住者は中流階級の教育を受けた専門家がほとんどで、正教派の宗教、スラブ語系の言語を共有するセルビア社会に適応。現代医学、高級建築、専門技術などで大きく貢献した。1930年代にはベオグラード大学の教授陣の3分の1がロシア人であり、とりわけ医学、農業分野では2分の1を占めた。 

しかし、ロシア人を逆風がおそった。第2次世界大戦後に当地が共産主義化すると多くのロシア人がセルビアを離れた。1948年になり指導者チトーがソ連と袂を分かつと、残ったロシア人はさらに窮地に立たされ、さらに流出が進んだ。 

セルビア人との婚姻関係で同化が進み、ロシア人として残る者は現在500人に満たない。多くのベオグラード市民にとって、ロシア移民を思い起こさせるものはタシュマイダン公園のロシア正教教会だけである。 

セルビア社会に貢献のあったロシア移民の歴史について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ノルウェー|テロリストか自由の戦士か

【オスロIPS=タルジェイ・キッド・オルセン】

2月28日、オスロ警察はテロリスト支援容疑で3人のソマリア人を逮捕。その内1人は依然拘束されている。当局によると、3人は、国連支援のソマリア暫定政府と戦っているテロリスト集団に資金を送っていたという。

ノルウェーには約1万8,000人のソマリア人が暮らしているが、その多くは暫定政府に強硬反対しており、一部には、今回の逮捕はソマリア移民に対するノルウェー・メディアおよび治安当局の偏見/差別によるものとの批判も出ている。

ソマリアでは、1991年以降中央政府が機能していない。2006年にはイスラム法「シャリア」を奉ずるイスラム法廷連合が、モガディシュおよび南部ソマリアを支配したが、エチオピア軍の支援を得た暫定政府は、戦闘の末同年12月にイスラム法廷連合を打ち負かした。

今回逮捕された3人は、このイスラム法廷連合内の一部過激派「アル・シャバブ」に資金を提供していたというのだ。逮捕者の内、2人は尋問に対し、彼らの行動は、ロンドンに亡命しナチス占領に抵抗するため資金を送っていたノルウェー人と同じだと主張したという。

これについて、ノルウェー都市/地方研究所のハンセン上級研究員は、アル・シャバブの性格からしてこの主張は正しくないとしながらも、ノルウェーに住むソマリア人の多くは、アル・シャバブの実態を知らず、単にエチオピアおよび暫定政府に対する反対行動の一部としか理解していないのではないかと語っている。

しかし、エチオピア軍および暫定政府側も、民間人殺傷、略奪、メディア弾圧といった犯罪行為を行っていることが事態をより複雑にしている。(モガディシュでは、そのため市民の60%が避難を余儀なくされたという)

イスラム法廷連合による安定した時代を惜しみ、暫定政府およびその支援国に対するソマリア人の反感は強まるばかりだ。(米国は、東アフリカを対テロ戦争の新たな前線として、エチオピア軍によるソマリア侵攻を支持した)ハンセン氏は、「エチオピア/暫定政府の虐待を見過ごしアル・シャバブのみを非難する国際社会のダブル・スタンダードがソマリア人の怒りをかっている」と語っている。ノルウェーのソマリア移民逮捕について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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