ホーム ブログ ページ 280

│アルゼンチン│地主による小農への嫌がらせが続く

【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・バレンテ

アルゼンチン北部のサンチアゴ・デルエステロ州で、小農に対する地主の嫌がらせに対抗して、新しい新聞が創刊された。 

サンチアゴ・デルエステロ小農運動(MOCASE)が10月に創刊したこの新聞の題名は『El Ashupulitu』といい、先住民族のケチュア語で「地球に満たされて」を意味する。約4000部発行。MOCASEは約9000世帯の小農の権利擁護のために闘っている。 

新聞では、水不足の問題や、土地からの追い出し、地主が派遣した民間警備業者・ヤクザ者や警察による不当逮捕などが報告されている。 

非番の警官や武装した民間人は、農家に突然やってくる。そして、家人を殴ったり、物を盗んだり、農民たちを拘置所に引っ張っていったりするのである。 

MOCASEのリーダーであるエンジェル・ストラパッソンによると、この数ヶ月間地主からの攻撃が激しく、すでに50人以上の小農が不当逮捕されているという。

しかし、小農運動による抗議活動が功を奏して、逮捕されていた人々はすでに釈放されている。それでもなお、運動関係者150人以上が、起訴されているか、逮捕状を発行されているという。 

この背景にあるのは、大豆の大規模輸出を狙う地主たちの動きである。公的な統計によると、2002年から06年の間に、50万ヘクタール以上の森林が遺伝子組み換え大豆の生産のために農地に変えられた。 

アルゼンチンの法律では、ある農地に20年以上住んでいるか、あるいは営農していた場合に、その土地の権利を主張できることになっている。地元の人権団体「法律・社会問題センター」によると、サンチアゴ・デルエステロ州の小農のうち実に73%が、すでに同じ土地で20年以上営農しているという。 

しかし、小農たちを取り巻く環境は厳しい。3月から7月にかけて、アルゼンチン全土で農民たちがストライキや交通封鎖などを行った。彼らの要求は、大豆輸出にかかる税金の引き下げだ。交通は寸断され、食料危機が引き起こされた。しかし、主要なメディアはこの動きを支持している。MOCASEなどのように、地場での小規模農業を守りたい勢力にとっては逆風だ。 

こうした流れを受けて、9月は地主らによる攻勢が激しい。MOCASEは、新聞が少なくとも地主らによる人権侵害に目を向けてくれれば、と願っている。 

アルゼンチンの小農と地主の闘いについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリ=IPS Japan

|スリランカ|新たな規制に立ち向かう報道機関

【コロンボIPS=フェイザル・サマト】

スリランカのメディアは北部のタミル人反乱勢力との戦いに関して報道規制を受けている。さらに10月27日には発表された新たな法律により、政府はテレビ、ラジオ、マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)の報道内容を規制していく計画である。 

スリランカの自由メディア運動(FMM)のデシャプリヤ広報担当官はメディアに対する「検閲」であるとして、報道機関や市民運動が法律の施行前に最高裁に提訴する計画だという。新たな法律は情報メディア大臣に、報道内容が「国家安全保障上の利益に有害、治安の悪化を扇動、民族的宗教的文化的嫌悪を煽る、道義に反するか低俗、子どもの権利と特権に有害」とされる場合などに、報道機関の免許を取り消す権利を与えている。

 FMMは「民間テレビ局法」が新技術を規制し、外国人による報道機関の運営を妨げるものだと声明を出し、「新法は報道の自由とメディアの独立性への政府による侵害を認めるもので、誤っている」とFMMの代表は述べた。また、野党のウィクラマシンハ党首は記者会見で、「新法はラージャパクサ大統領の一族の会社によるメディア支配を目指したものだ」と訴えた。 

 ヤパ情報メディア相は急成長する電子通信分野に統一性をもたらすために新法が必要であると述べた。これまでテレビとラジオは期限を特定しない暫定的な許可を受けていたが、ここ数年、基準の整備が行われてきた。新法は特にブログなどによるインターネットを通じたニュース配信も規制する。 

現在、タミル反乱勢力のニュースを報じているのは国営テレビだけである。政府軍はタミル勢力を追い詰めているが、激しい抵抗にあっている。ラージャパクサ大統領の2005年11月の就任以来、スリランカでは少なくとも15人のジャーナリストが死亡している。国家機関が関与している事件もある。 

国境なき記者団による最新の世界報道自由ランキングでは、スリランカは民主主義国の中で最下位である。国際ジャーナリスト連盟、国際メディアサポート、国際ニュース安全インスティチュート、国境なき記者団からなる国際的なメディアチームは、10月25~29日に事実調査を行い、メディアを抑圧あるいは検閲する新法に遺憾の意を表明した。

メディアチームは言論の自由の悪化を指摘し、「戦争に関する情報を抑圧するのは、国民の知る権利を侵害するものだ」としている。 

スリランカで厳格化する報道規制について報告する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


関連記事: 
|スリランカ|民間人、国連に対し支援続行を要請

│アフガニスタン│対アフガン新戦略はどうなるか

【カブールIPS=アナンド・ゴパル】

アフガニスタンの治安状況はますます悪化し、イラクより状況が悪いのではないかとみられつつある。軍閥勢力は首都カブール近くで活動し、アフガン政府への支持はきわめて低い。そうした中、米国政府は、対アフガン戦略の練り直しを迫られている。 

米国政府の中には、部族勢力に武器を流して治安維持にあたらせようとの構想がある。アフガン政府の一部もこの戦略を支持している。 

しかし、この戦略が機能するのは、パキスタン国境沿いのホースト、パクティヤー、パクティーカーの各州だけではないかとの意見もある。ここでは、部族の力がいまだ強く、中央政府の権威が及んでいないからだ。部族の一部はすでに、パシュトゥン族の伝統的な自衛組織であるアルバカイを作っている。NATO軍のマクニール司令官も、今年初め、アルバカイが機能しているのはこれらの州だけだとの見方を示している。

 これに対して、アフガン科学アカデミーのハビブラー・ラフェ氏は、こうした打開策は武器の拡散を招くだけだと警告する。 

他方、米軍の敵であるタリバンとの交渉を開始すべきだとの意見もある。10月には、アフガン政府が元タリバンの重鎮をサウジアラビアに招き、タリバンと交渉する余地があるかどうかを探っている。アフガン政府は、タリバンの指導者であるムラー・オマールを含め、あらゆる軍閥と協議するとの立場だ。 

しかし、タリバンが中央政界に復帰してくることへの恐れもある。「アフガン女性ネットワーク」のシエラ・サミミ氏は「タリバンが戻ってくれば、封建制の時代に逆戻りだ」と不信感をあらわにした。 

米国、アフガニスタン両政府による、和平戦略の模索について分析する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩 


関連記事: 
│アフガニスタン│深刻な飢餓が発生

|権利|ブッシュの民主アジェンダ、シリアで躓く


【ワシントンIPS=アリ・ガリブ&ザイナブ・ミネエイア】

国際社会/メディアの関心が米軍のシリア越境攻撃に集中する中、シリア政府は10月29日、密かに民主主義活動家グループに30か月の懲役刑を言い渡した。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)はシリアのバッシャール・アル・アサド大統領に対し有罪判決の即時撤回と2007年後半から2008年初めに行われたダマスカス宣言運動弾圧で逮捕された活動家の釈放を要求する声明を発した。 

ダマスカス宣言フォーラムに参加し逮捕された40人の活動家の内未だ拘束されていた12人に対し、わずか20分の裁判で厳しい刑が下された。


ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東のサラ・リー・ウィトソン部長は、「政府は批判を抑えるため、ただ会議に出席したというだけで民主主義活動家を投獄しようとしている。裁判は、政府の反対派弾圧を覆い隠す手段に過ぎない」と批判している。

 オクラホマ大学のシリア研究家ジョシュア・ランディス教授は、「米国のシリア攻撃ばかりが注目され、誰も12人のことを問題にしていない。シリア政府にとって最高の隠れ蓑は、米国が与えてくれたようなものだ」と語っている。 

2005年に設立されたダマスカス宣言は、野党政党や弁護士、医師、作家、芸術家などを含む独立活動家の連合であった。当時政府は比較的弱い立場にあった。ブッシュ大統領がシリアを悪の枢軸の一部と呼び、枢軸メンバーのイラクは体制転覆を目的とする米国の攻撃に晒されていた。ランディス氏は、その不安定な状況と世界の民主主義運動に刺激されて反対派の統一、組織化が始まったという。 

政治活動家の弾圧で知られるシリアであるが、アサド政権は当初ダマスカス宣言を力でねじ伏せようとはしなかった。しかし、2006年に連合メンバーがレバノンの学識者、活動家と手を組み両国の関係改善を要求するに及んで、シリア当局の弾圧が始まったのだ。 

ランディス氏は、ダマスカス宣言に対する弾圧はアサド大統領が活動家に対する反感を民衆に植えつける能力を身につけた結果だという。2005年には米国主導のイラク侵攻は全面的な暴力、混乱に至っていなかった。占領の不手際でイラクの混乱が拡大した時、独裁政権はただちに西側の利益との衝突、特に西側の関与が民主主義の促進を唱えている場合にどうなるかを知ったのだと同氏は言う。 

ランディス氏は更に、「すべての中東社会は、彼らの政府が崩壊することによって見舞われる混沌と危険を非常に恐れているため、独裁体制を固守しているのだ」と語った。 

シリアの政治活動家弾圧について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 


│パラグアイ│「恐怖のファイル」が発見される

【アスンシオンIPS=ナタリア・ルイス・ディアス

パラグアイの首都アスンシオンで、アルフレード・ストロエスネルによる独裁期(1954-89)に集積された政治囚に関する秘密ファイルが発見された。ファイルは、政治囚個人の情報や写真などを多く含む。 

発見したのは、人権活動家マルチン・アルマダ。発見された場所は、かつて内務省に属していた建物の地下の一室で、ストロエスネル時代に内務省で勤務していた元軍人の内部告発によって、発見されることになった。

 この建物は現在、全国知事会が会議を行う場所として使われている。地下室に最初に踏み込んだのは、アルマダ氏とミシオネス州のビクトル・ペレイラ知事。知事は検察局に通報もした。 

 1992年12月にも、同じくアルマダ氏によってアスンシオン郊外のランバレの警察署から独裁期の秘密ファイルが見つかっており、「恐怖のファイル」と呼ばれている。今回見つかったファイルは、これにちなんで、「恐怖のファイルII」と呼ばれることになった。 

パラグアイの「真実・正義委員会」が8月に提出した報告書によると、独裁による犠牲者は、強制的失踪や超法規処刑も含めて、12万8076人とされている。そのうち、政治囚は1万9682人いた。 

パラグアイの裁判所は、ストロエスネル時代の内務大臣であり、現在はホンジュラスに亡命しているサビーノ・アウグスト・モンタナロの身柄引き渡しをすでに請求している。 

パラグアイで見つかった独裁政権の活動に関する秘密ファイルについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 

関連記事: 
|アルゼンチン|元軍事政権高官に自宅監禁認めず 
|パラグアイ|ストロエスネル独裁政権の弾圧調査を開始

|国連報告書|石油価格高騰、ミレニアム目標に影響か

【バンコクIPS=マルワン・マカン・マルカール】

石油価格値上がりがアジアの途上国に与える影響について新たなメカニズムを用い行われた調査で、暗澹たる結果が出た。同地域の貧困緩和努力に脅威が存在するのは明らかだ。 

最近開発されたOPVI(石油価格脆弱性指数。異なる18の指標を用いる)で、2003年の1バレル約22米ドルからその後80ドルに値上がりした石油価格の高騰により、程度の差こそあれ、調査対象国にその影響が出ていることが判明した。石油価格は、先週1バレル当たり90.07ドルの最高値を記録。100ドルを超えるのではないかとの予測も出ている。

 国連開発計画(UNDP)は、10月25日発表の調査報告書の中で、「最も脆弱な国は、経済力、経済パフォーマンスが低く、石油依存の高い国」と述べている。UNDPは、アジア大陸の貧しい人々が燃料価格高騰にどのように対処しているかのアセスメント確認を行うためOPVIを使用した。 

南アジアで最も影響を受ける国はアフガニスタン、バングラディシュ、モルジブ、ネパール、パキスタン、スリランカ。東南アジアでは、カンボジア、ラオス、フィリピン。太平洋地域では、フィジー、サモア、ソロモン諸島、バヌアツとなっている。 

また、ブータン、インド、ビルマ、タイ、ベトナム、インドネシア、パプア・ニューギニア、モンゴルなどでも中度の影響があるという。「石油価格に対する脆弱性の克服」と題されたUNDP報告書は、これら諸国は、第1グループに比べ石油価格ショックを吸収できる経済力、高あるいは中度の国内総生産/経済成長率を有し、石油依存率も低い、あるいは石油輸出国であるためと述べている。 

同報告書はまた、「しかし、価格の高止まりが続けば、極端な貧困と飢餓の撲滅のため掲げられた国連ミレニアム目標(MDGS)達成への影響は避けられない」としている。 

同報告書の主筆ナンディア・モンギア氏は、IPSに対し「MDGsへの脅威は、石価格上昇の期間による。もし、価格上昇が3~5年続けば、我々は大きな問題に直面することになる」と語った。 

 MDGsは、2000年にニューヨークの国連本部で行われた国連サミットで世界のリーダーが合意した8つの開発目標からなる。第1目標は、2015年までに収入が1日1米ドル以下の人々の数を半減させること。アジア太平洋地域は、貧困率が地域住民の32%から17%に減少したことで称賛された。しかし、2004年には約6億4,100万人が依然極端な貧困生活を送っていた。 

もう1つ、2015年までに全世界の子ども(男女共)の初等教育終了を義務化するというMDGに大きな影響が出るのではないかと懸念される。149ページのUNDP報告書は、「交通費の値上がりで、地方の子供達の良い学校へのアクセスが妨げられるのではないか」と述べている。 

MDGsが具体化した頃は、石油価格の値上がりが目標達成の大きなハードルになるとは思いもよらなかった。モンギア氏は、「7年前には、石油価格高騰の問題がMDGsの障害になるかもしれないなどと誰も議論しなかった。我々は1バレル約25ドルという幸せな世界に住んでいたのだ」と語る。 

しかし、価格高騰が地域の開発に与える影響は大きい。同報告書の発表に際し、国連のハフィズ・パシャ事務次長は、「アジア・太平洋地域は、石油コストとして2003年比で4千億ドルの追加支出を余儀なくされた。これは、同地域に対する年間援助金の20倍に相当する。これにより、地方、都市コミュニティーは、従来のよりダーティーな生活に戻らざるを得ず、燃料アクセスは更に難しくなった。また、貧困撲滅努力も一層困難となった」と語った。 

UNDP調査官が中国、インド、インドネシア、ラオスの地方/都市家庭に対し行った聞き取り調査で、新たな現実が浮かび上がった。同報告によると、これら家庭は、2002~2005年の間に大幅な価格高騰に直面し、必要エネルギー・コストは全体で74%増加したという。調理用燃料は171%、交通燃料は120%、電気は67%、照明用燃料は55%の高騰だ。 

UNDPの表現を借りれば「エネルギーの階段を下ることを余議なくされた」数百万の人々にとって選択肢は殆ど残されておらず、多くの家庭が夜は暗闇の中で過ごしている。都会の貧困層は、燃料になる木やバイオマスといった代替燃料を集めることができないためより厳しい状況に陥る傾向にあるが、地方の貧しい人々も、特に電化されていない村々では、照明用燃料の値上がりに対しより脆弱で、同じく困難な状況に置かれているという。 

ネパールの様な後発途上国では、価格高騰の圧力は生活の質そのものに影響している。同国の国家計画委員会のメンバー、ラジ・パンディ氏は、「貧しい者と富める者の格差が広がった。これはMDGs達成に大きな脅威となっている」と語っている。 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|カンボジア|市場経済を学ぶクメール・ルージュの拠点

【パイリンIPS=アンドリュー・ネット】

タイ国境近くの、かつてクメール・ルージュの拠点だったパイリンに住む元ゲリラたちにとって、この10年間は市場経済の特訓コースだった。22,000人の人口のこの町は、内戦を経て特別市となり、そして今は顧みる者のない地方のへき地になっている。 

パイリンはタイの政情不安とプレアビヘア寺院をめぐるカンボジアとタイの長期的な対立により大きな打撃を受けている。かつて盛んだった国境貿易は廃れ、旅行者も少なくなった。「宝石もなくなり木材もなくなり、商売はほとんどない。客を見つけるのが一仕事だ」とタクシー運転手のコマさんはいう。

 20年に及んだ内戦中、パイリンはクメール・ルージュの主要拠点で、軍資調達のための国境貿易で豊かに潤っていた。中国からの軍事的経済的支援の入り口でもあり、近隣地区は戦闘が繰り返される激戦地だった。深い森に囲まれたこの町は、政府軍の攻撃に対する自然の要塞だった。 

1996年にイエン・サリが3,000人の兵士を引き連れて政府に投降し、内戦は終結に向かった。サリは連立政権内の対立からの中立を約束して、パイリンの宝石と木材の貿易を引き続き掌握した。政府は新たな市民を歓待し、パイリンでは社会基盤の建設が進んだ。90年代後半にパイリンは宝石の取引とカジノで繁栄した。だが事態は変化する。 

今日、バンコクからパイリンまでの道のりは4時間。宝石は少なくなり、町を囲んでいた森は耕作地に切り開かれて木材も失われた。カジノやホテルも廃業し、タイからの燃料と車の密輸が主要な経済活動だと住民はいう。 

パイリンの地方政府には町の経済的展望の話ができるものはいない。今年初めにフンセン首相が訪れた時には、ゴルフ場の開発が提案された。タイのビジネスを招致するための特別区の設立計画もある。戦う能力しかない元兵士には寺院問題は好機でもあり、軍に採用されて紛争地域へ派遣されたものもいた。 

一方、町の人々はクメール・ルージュ裁判の行方を見守っている。裁かれているのは身近な人たちだったからだ。裁かれて当然だという者もいれば、国のために戦った人々だと同情する者もいる。 

クメール・ルージュの拠点だったパイリンについて報告する。(原文へ) 
 
INPS Japan 

関連記事:

|カンボジア|戦前のクメール音楽、復活

|カンボジア|終戦から25年、いまだ貧困にあえぐ戦争未亡人

メディアは十分に役割を果たしているだろうか(2008年度IPS年次会合)

【ハーグIPS=バヘール・カーマル】

メディアには、持続可能な開発と気候変動という、21世紀のふたつの大きな課題に効果的に取り組む上で、果たすべき重要な役割がある。だがメディアはその役割を十分に果たしているだろうか。 

その裁定は様々である。少なくとも23日にオランダのハーグで開かれたセミナーに参加した、研究者、ジャーナリスト、科学者、政府役人、NGOおよび国連機関の代表が表明した見解から判断すると、様々だった。 

「メディアはこのところ金融危機に注目しているが、気候変動の危機、食糧安全保障の危機についてはどうなったのか」と、オックスファム・ノヴィブのファーラー・クリミ代表は疑問を投げかけた。

 気候変動が地球上の誰もが関心を持つ新たな問題になりつつあるときに、「私たちが意欲を新たにし、再び結束して、地球規模で必要な対応策を計画、調整、実施するために、メディアはどのように役立つことができるだろうか」と英国のマンチェスター大学持続可能な消費研究所長のモハン・ムナシンゲ博士は問いかけた。 

このパネルディスカッションは、「地球規模の持続可能な開発の支持基盤を保持拡大する戦略:メディアの役割」というテーマで行われ、オックスファム・ノヴィブ、オランダ国際協力・持続可能な開発委員会(NCDO)、インタープレスサービス(IPS)通信社の共催により開催された。 

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の副議長でもあるムナシンゲ氏は、「地球温暖化は世界がすぐにも受け入れなければならない現実だ」と述べた。 

ムナシンゲ氏によると、近年の政治紛争で数十万人が死亡しているダルフールでは、進行する砂漠化が引き起こす水と土地の不足が、気候変動によってさらに悪化している。そのために農業が衰弱し、乏しい資源を求める貧困層の争いに油を注いでいる。 

また、「地球の裏側では、多くの太平洋の島々やインド洋のモルディブで海抜わずか数センチになることが増え、海面上昇による浸水に脅かされている」とムナシンゲ氏は述べた。 

こうした事柄についてはあまりメディアで取り上げられていないと、オックスファム・ノヴィブのサビー・フォーフト氏はいう。「気候変動に関して報道する際に、メディアは、長引く干ばつ、異常な洪水、突然の寒波にすでに苦しんでいるこうした途上国の人々よりも、棚氷に乗った心細げなシロクマばかりを取り上げがちだ」 

「気候変動は農業と食糧安全保障に大きな影響を及ぼしているが、さらに悪化して、水不足が深刻になり、気候帯は変化し、全動植物の4分の1は死滅することになるだろう」とフォーフト氏は述べ、富裕国そして世界銀行などの機関に、有害な行為をやめ、外的ショックに対して途上国の農民がいっそう抵抗力を持てるよう支援することを要請した。 

会議ではこうしたニュースのメディアによる取り上げられ方が、特に欧米の主流派メディアのいくつかについて検討された。欧米の主流派メディアは今なお、大きな政治的新規展開がなければ、気候変動にはほとんどニュース性がないと考えている。 

持続可能な開発のための世界経済人会議のコミュニケーション・ディレクターであるリネット・トーステンセン氏は、ニュースメディアに情報を売り込むときには「熟達した語り手」にならなければならないという。 

トーステンセン氏は、多くの人々がメディアに関わり、浄水や十分な衛生設備の不足によって発展途上の世界で苦しむ数十億の人々のニュースに関わっているという。 

新聞の中には気候変動を「退屈で、おもしろさがなく、難解だ」とみるものもあるとトーステンセン氏は認めながらも、「ニュースを売り込む方にも、より面白く人間的に表現することが託されている」と述べた。 

一方で「情報は万能薬ではない」とアムステルダム大学の科学者であるシース・ヘイムリンク教授はいう。「人々は多くの情報を得ていて、何が有害かわかっているが、知っていることに基づいて行動を起こさない場合も多い」 

情報よりも必要なのは、対話と人の話に耳を傾けようとする十分な心の用意であるとヘイムリンク氏はいう。トークショーは巷にあふれているが、必要なのは「リスン(耳を傾ける)ショー」である。 

IPSのマリオ・ルベトキン事務総長は、気候変動におけるメディアの役割について、唯一の答えはないと指摘した。「ひとつのプロセスの一部であり、問題は最終的な解決法に向けてどのようにそのプロセスを作り上げていけるかだ」 

ルベトキン事務総長は、今日の気候変動の記事が5年あるいは10年前よりもずっと良いものになったのは間違いないと主張した。 

主流派も、独立系も、この問題に取り組もうとするメディアはますます数を増やしているとルベトキン事務総長はいう。また持続可能な開発に関するニュースにアクセスする読者も今や膨大な数に上っている。 

「同時に今、非政府組織(NGO)と通信社との連携という考え方も広がっている」とルベトキン事務総長は述べた。「5年前にはこうした連携はあり得なかった」(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

関連記事: 
紛争解決、『対話の促進』が鍵を握る(2007年度IPS年次会合)

|エジプト|食糧高騰の影響で庶民の味が復活

【カイロIPS=アヤ・バトロイ】

エジプトの代表的な料理『コシャリ(Kushari)』は、誰もが気軽に食べる一般的な食べ物だ。国民食であるコシャリは、ご飯、パスタ、レンズ豆などを重ね合わせ、上にはホットソース、トマトソース、ガーリック、揚げたタマネギなどを添えたもの。 

エジプトでは近年深刻さを増している低賃金と物価上昇の問題が国民の食生活を大きく変えようとしている。コシャリは低価格であるため、今や食糧価格の高騰に悩まされているエジプト人にとっての主食になった。野菜や肉は今や贅沢品であり、人々はリーズナブルなコシャリを見直し始めている。

Kushari, Kushari served at Kushari Tahrir, /Wikimedia Commons.
Kushari, Kushari served at Kushari Tahrir, /Wikimedia Commons.

 カイロ中心部にあるコシャリ専門店『Kushari Tahrir』のメニューには現在、1つの料理しか載っていない。店のシェフは毎日コシャリを作るために忙殺されている。 

 同国では年々、食糧価格が上昇。この影響は、特に貧困線以下の生活をしている人口のおよそ45%にあたる貧困者をまともに直撃している。「コシャリは国民的料理であり、皆が食べている。昔と違って、今は肉を食べるのに30から40ポンドかかるが、コシャリは3、4ポンドでお腹を十分に満たすことができる」と、コシャリを注文したある客は話した。 

食糧危機に見舞われるエジプトでは、政府が助成金を支給し小麦や穀物の価格の埋め合わせを行っている。小麦の輸入量が世界第一位のエジプトは、世界的な小麦の価格高騰により8億5,000万ドルの追加助成金を出した。このような公的助成のおかげで、多くの国民は何とかパンを購入することもできるのだ。 

さらに、同国では政府の助成金制度の他に国内の支援団体も活躍している。地元の実業家やボランティアから成るEgyptian Food Bankは貧困者への食糧配給を行っている。そして、金銭的支援としてはイスラム系の富裕層らが匿名で食料不足に悩む貧しい人々に対し寄付をしているという。 

食糧問題に直面するエジプトで人気が高まる伝統料理について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

|エジプト|食糧高騰の影響で庶民の味が復活

【カイロIPS=アヤ・バトロイ】

Kushari
Kushari

エジプトの代表的な料理『コシャリ(Kushari)』は、誰もが気軽に食べる一般的な食べ物だ。国民食であるコシャリは、ご飯、パスタ、レンズ豆などを重ね合わせ、上にはホットソース、トマトソース、ガーリック、揚げたタマネギなどを添えたもの。

エジプトでは近年深刻さを増している低賃金と物価上昇の問題が国民の食生活を大きく変えようとしている。コシャリは低価格であるため、今や食糧価格の高騰に悩まされているエジプト人にとっての主食になった。野菜や肉は今や贅沢品であり、人々はリーズナブルなコシャリを見直し始めている。

 
カイロ中心部にあるコシャリ専門店『Kushari Tahrir』のメニューには現在、1つの料理しか載っていない。店のシェフは毎日コシャリを作るために忙殺されている。 

 同国では年々、食糧価格が上昇。この影響は、特に貧困線以下の生活をしている人口のおよそ45%にあたる貧困者をまともに直撃している。「コシャリは国民的料理であり、皆が食べている。昔と違って、今は肉を食べるのに30から40ポンドかかるが、コシャリは3、4ポンドでお腹を十分に満たすことができる」と、コシャリを注文したある客は話した。

食糧危機に見舞われるエジプトでは、政府が助成金を支給し小麦や穀物の価格の埋め合わせを行っている。小麦の輸入量が世界第一位のエジプトは、世界的な小麦の価格高騰により8億5,000万ドルの追加助成金を出した。このような公的助成のおかげで、多くの国民は何とかパンを購入することもできるのだ。

さらに、同国では政府の助成金制度の他に国内の支援団体も活躍している。地元の実業家やボランティアから成るEgyptian Food Bankは貧困者への食糧配給を行っている。そして、金銭的支援としてはイスラム系の富裕層らが匿名で食料不足に悩む貧しい人々に対し寄付をしているという。

食糧問題に直面するエジプトで人気が高まる伝統料理について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩