【東京INPS=砂田智映】
核兵器使用の可能性が、戦後最も高まっているとも言われるなか、本年5月、先進7カ国首脳会議(G7サミット) が広島で開催された。歴史上初めて核兵器が使用された広島の地でG7サミットが開催されG7に初めて核軍縮ワーキンググループ(WG)が設けられるなど、市民社会の間でも核軍縮に対し何らかの前進があるのではないかという期待が高まった。
私共もトロント大学G7研究センターを中心とするG7研究グループとともに、G7政策提言国際会議を開催し、政策提言として、「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」とのG20バリ首脳宣言を強固なものとすること、核兵器の先制不使用の原則について誓約すること、核兵器禁止条約と核兵器不拡散条約の相互補完性を認識し、両者の間に討議の場を設け、核関連の被害者支援、環境修復、および効果的な検証システムの構築に協力することなどをまとめ、日本政府およびG7各国政府にも提出した。しかしながら、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンや首脳宣言に反映されなかったことについては、他の市民社会グループと同様に残念に思っている。
一方で、G7の主要な議題として核軍縮がとりあげられたこと、G7のリーダーが広島平和記念資料館で被爆の実相にふれ、そしてなにより被爆者から直接、話を聞いたことは象徴的な意味があったと思う。各国の評論家は、各国首脳が広島平和記念資料館を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花することが国内世論に与える潜在的な影響を指摘している。
また核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が主催した広島G7ユースサミットは、私どもも共催として参加した。G7各国や核実験被害国をはじめ世界各地から集った青年達が、核廃絶のために何ができるのかを真剣に議論する様子に、私は励まされるような思いがした。結局のところ、G7広島サミットの永続的な意義は、核軍縮の可能性について、特に日本だけでなく全世界の若者の間で認識を新たにしたことにあるのではないだろうか。
今年に入り2月、ロシアは新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止を発表し、米国は戦略核兵器に関するデータ提供を停止した。この最後の二国間核軍備管理条約が効力を失う可能性が出てきたことで、新たな核軍拡競争への懸念が高まっている。
池田大作創価学会インタナショナル(SGI)会長はG7広島サミットへの提言「危機を打開する“希望への処方箋”を」の中で、核保有国に対し、核兵器を先制使用しないことを誓約するよう呼びかけた。そして最後に提言では「核兵器の先制不使用」について合意できれば、各国が安全保障を巡る“厳しい現実”から同時に脱するための土台にすることができる、また、先制不使用の誓約が「核兵器のない世界」を実現するための両輪ともいうべき核兵器不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)をつなぎ、力強く回転させる“車軸”となりうるものだからです」と述べた。
7月末には第11回NPT再検討会議第1回準備委員会、11月末にはTPNWの第2回締約国会議が予定されている。先制不使用の誓約およびTPNWへの署名、批准が進むよう私どもとしても尽力していきたいと考えている。INPSとのメディアプロジェクトによる意識啓発を追い風とし、多くの市民社会とも力を合わせ、「核兵器のない世界」「戦争のない世界」への道を開いて参りたい。(原文へ)
この文はIDN/INPSが2009年来、創価学会インタナショナルと進めているメディアプロジェクトの2023年報告書「核なき世界に向けて」に寄せた寄稿文である。
INPS Japan
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