ニュース血と巨利―米・イラン衝突の背後にある戦争ビジネス

血と巨利―米・イラン衝突の背後にある戦争ビジネス

「戦争はペテンである。それはおそらく最も古く、間違いなく最も利益を生み、そして確実に最も残虐な営みである。国際的な規模を持つのはこれだけである。利益はドルで計算され、損失は命で計算される唯一のものなのだ」―スメドレー・バトラー少将

【メルボルンLondpon Post=マジッド・カーン

現代の地政学の核心には、主流メディアの見出しにはほとんど現れない冷厳な損得計算がある。すなわち、武力紛争は限られた勢力に莫大な利益をもたらすという現実である。米国とイランが互いに威嚇を交わし、代理戦争を展開し、あるいは全面戦争寸前まで緊張を高めるたびに、金融市場は動き、契約が結ばれ、使い尽くされた兵器や弾薬の備蓄は公費で補充されていく。

Majid Khan

米国の防衛産業は世界最大であり、防衛支出は近年、一貫して年8000億ドルを超えている。ロッキード・マーティン、レイセオン・テクノロジーズ、ノースロップ・グラマン、ボーイング・ディフェンス、ゼネラル・ダイナミクスといった企業は、合わせて毎年数千億ドル規模の収益を上げている。その相当部分は、中東への展開、湾岸同盟国への武器売却、そして継続中の紛争で費消される弾薬の補充と結びついている。米国とイランの緊張が高まるたび、これら企業の株価は決まって上昇する。これは偶然ではない。戦争への備えと戦争そのものが、景気循環と見分けのつかないものとして組み込まれた体制の下で、市場原理が作動しているのである。

2020年のカセム・ソレイマニ暗殺は、その構図を端的に示した。攻撃から数時間のうちに、防衛関連株は急騰した。無人機攻撃で使用されたヘルファイア・ミサイルを製造するレイセオンの株価は大きく上昇し、暗殺を実行したMQ-9リーパー・ドローンを製造するロッキード・マーティンも同様に値を上げた。これらの企業はワシントンで積極的にロビー活動を展開し、民主・共和両党に多額の政治献金を行い、さらに批判者が「回転ドア」と呼ぶペンタゴンと民間部門の人材循環を通じて、元軍・情報当局者を多数雇用している。その結果、紛争は解決されるよりも維持されやすい構造となる。解決は契約の減少を意味するからである。

Drone credit: Public Domain.
Drone credit: Public Domain.

見出しを飾る大手防衛企業だけでなく、イランとの緊張は民間軍事・警備産業にも巨額の利益をもたらしてきた。基地警備、情報分析、兵站、湾岸同盟国や米軍への訓練支援を担う企業は、地域展開の拡大とともに大きく成長してきた。物議を醸したブラックウォーターの創設者エリック・プリンスは、かつて民間軍事部門の規模を年間1000億ドル超と見積もったことがある。米国の石油・エネルギー企業もまた、イランの弱体化から利益を得る立場にある。対イラン制裁によってイラン産原油の輸出が抑え込まれることで、世界の原油価格は米国のシェール生産業者にとってより有利な水準に保たれるからである。複数の政権の下で維持・強化されてきた制裁体制そのものが、イランを罰しつつ、同時に米国のエネルギー企業を利する一種の経済戦争として機能している。

Map of Middle East
Map of Middle East

米・イラン対立の経済を論じるうえで、湾岸協力会議(GCC)諸国、特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を抜きに語ることはできない。両国は、この地域における米国の武器供給網の主要な仲介役を果たしている。1979年の革命によってイランが米国とサウジアラビア双方の敵対国となって以来、湾岸君主国は米国製兵器システムに巨額の資金を注ぎ込んできた。サウジアラビアは長年にわたり一貫して米国製兵器の最大の購入国であり、過去10年間だけでも1000億ドルを超える米国製兵器を購入している。イランの核開発能力や、イエメンのフーシ派、レバノンのヒズボラ、イラクのシーア派民兵組織などを通じた地域的影響力に対する実存的な恐怖が、湾岸諸国を米国製兵器の有力な顧客にしているのである。

この武器取引は、米国の経済的・地政学的利益を同時に満たしている。米国の防衛関連雇用を支え、ペトロダラーを米国経済へ還流させ、世界貿易におけるドルの役割を強め、さらにこの地域での米国軍事技術の優位を維持する。歴代政権は、人権や地域の安定をどれほど唱えようとも、その経済的・戦略的論理が圧倒的であるがゆえに、湾岸諸国との巨額の武器取引を承認してきた。オバマ政権がイラン核合意を成立させた際でさえ、湾岸諸国の不安はむしろ武器購入を加速させた。彼らは、それをイランに対する米国の外交的軟化への「保険」と受け止めたのである。逆説的ではあるが、平和交渉は直接的な衝突と同じほど武器購入を引き起こし得る。

Photo: Dubai must be one of the most unusual places in the world. It is one of the seven emirates that comprise the United Arab Emirates (UAE). Source: tribuneindia.com
Photo: Dubai must be one of the most unusual places in the world. It is one of the seven emirates that comprise the United Arab Emirates (UAE). Source: tribuneindia.com

UAEは、この戦争経済の中で独自の位置を占めている。金融ハブであるドバイは、長年にわたり、米国の制裁に違反してイランに流入する物資の積み替え拠点として機能してきた。その一方で、UAEは、トランプ政権下で交渉され、その後も長く外交上の争点となったF-35戦闘機取引を含め、米国およびフランスの先進兵器の主要購入国としての地位も築いてきた。UAEは、イランとの水面下の関係を維持しながら、表向きにはワシントンと歩調を合わせるという、米・イラン間の緊張をめぐる巧みな均衡戦略をとっている。この戦略的曖昧さは外交上の不整合ではない。より大きな対立がどのように展開しようとも、自国の影響力と商業的機会を最大化するための、計算された経済・安全保障上の立ち回りなのである。

イスラエルは、米・イラン対立の戦争経済の中で特異な位置を占めている。イランから最も直接的な脅威を受ける敵対国として、イスラエルはイランの核兵器の脅威をてこに、10年間の覚書に基づく年間約38億ドルという巨額の米国軍事援助を確保してきた。エルビット・システムズ、ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ、イスラエル航空宇宙産業などを中核とするイスラエル自身の防衛産業もまた、イランの脅威を前面に押し出すことで、世界的な輸出拡大を実現してきた。イスラエルのドローン技術、ミサイル防衛システム、サイバー能力―その多くはイランの脅威への直接的な対応として開発された―は、欧州、アジア、アフリカで強い需要を集めている。言い換えれば、イランの脅威はイスラエル防衛産業にとって強力な輸出促進要因となってきたのである。

Top: Iran’s Supreme Leader walks alongside senior IRGC commanders during a military parade in Tehran. Bottom: Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu and far-right coalition allies confer inside the Knesset. Theocrats and Securocrats—at the heart of the Iran–Israel conflict. Credt: ATN
Top: Iran’s Supreme Leader walks alongside senior IRGC commanders during a military parade in Tehran. Bottom: Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu and far-right coalition allies confer inside the Knesset. Theocrats and Securocrats—at the heart of the Iran–Israel conflict. Credt: ATN

戦争の利益を得るのは、防衛請負企業や武器商人だけではない。金融部門もまた、その受益者である。エネルギー市場を専門とする商品トレーダーやヘッジファンドは、米・イラン間の緊張が原油価格にもたらす変動から莫大な利益を上げてきた。世界の石油供給のおよそ20%が通過するホルムズ海峡で海上の事件が起きるたびに、原油を買い持ちしているトレーダーに利益をもたらす価格急騰がただちに生じる。2019年にサウジアラビアの石油インフラが攻撃され、広くイランまたはその代理勢力の関与が指摘された際には、史上最大級の1日当たりの原油価格上昇が起きた。適切なポジションを取っていた金融機関にとって、こうした出来事は災厄ではなく利益を得る好機なのである。

サイバーセキュリティもまた、米・イランの敵対関係を背景に拡大してきた産業である。イランは、国家として世界有数のサイバー能力を持つ主体の一つと見なされている。イランの核遠心分離機を標的としたスタックスネット攻撃―その背後には米国とイスラエルの関与が広く指摘されている―への報復の一環として、イランは米国の銀行、重要インフラ、政府システムに対するサイバー作戦を展開してきた。これにより、米国企業や政府機関による防御的サイバーセキュリティ支出は数十億ドル規模で押し上げられた。クラウドストライク、パロアルトネットワークス、さらに多数の小規模サイバー企業は、イランの能力を強調する脅威評価を追い風に、政府契約や民間需要を獲得し、米・イラン対立のサイバー領域から直接利益を得てきた。

そして再建産業は、おそらく最も辛抱強い戦争利得者として、その機会を待っている。米国の軍事介入、あるいはそれに連なる紛争がイラク、シリア、リビアに破壊をもたらすたびに、米国および同盟諸国の建設・インフラ企業は、国際援助機関、多国間銀行、さらには破壊された当事国自身が資金を拠出する復興契約を獲得できる立場を確保してきた。ベクテル、フルアー、そして多くの子会社・提携企業は、第二次世界大戦後のドイツや日本にまでさかのぼる戦後復興の長い実績を持つ。もし米国とイランの直接衝突がイランのインフラを壊滅させ、あるいは軍事行動の後に体制転換が起きるなら、人口9000万人、膨大な石油埋蔵量と強固な産業基盤を持つイランの復興は、21世紀最大級の経済機会の一つとなるだろう。国を壊すビジネスと、それを立て直すビジネスは、結局のところ、同じ手によって進められることが少なくない。(原文へ

INPS Japan/London Post

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