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地域|視点|NPT自体は永続するとして、その意義は保たれ続けるか?(セルジオ・ドゥアルテ科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議議長、元国連軍縮問題上級代表)

|視点|NPT自体は永続するとして、その意義は保たれ続けるか?(セルジオ・ドゥアルテ科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議議長、元国連軍縮問題上級代表)

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ

核不拡散条約(NPT)は2020年で50周年を迎えた。この記念の年に第10回再検討会議が開催される予定だったが、残念ながら新型コロナウィルスの感染拡大のために延期になった。議長に指名されたグスタボ・スラウビネン氏は、会議を成功に導くために、この遅れを利用して締約国と協議を深めようとしている。

最終文書の採択は通常、会議の「成功」を示すものと見られている。しかし、NPTはその50年の歴史の中で見解の対立とコンセンサスの不在に悩まされてきた。2015年の前回の再検討会議以来、見解の相違を埋めることができず、新たな問題も発生してきた。そうした問題を抱えているにもかかわらず、NPTがしばらくの間はなくなることはないだろう。とはいえ、軍縮に関して全体としては貧相な実績しか残せていないことから、その永続性に疑問が付される可能性もある。

NPT採択以前の数十年に国連総会でなされた決定の歴史を見てみれば、興味深い事実が浮かび上がってくる。そのときの総会決議の多くがすでに、核不拡散関連の条項とともに、核軍縮の効果的措置の必要性を強調していたのである。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

1946年1月に採択された国連総会決議第1号は「核エネルギーの発見によってもたらされた問題に対処する」委員会を創設し、その組織に対して「原子兵器の廃絶」に向けた特定の提案を行うことを特に課した。しかし、2つの超大国の間の角逐と不信のために進展はもたらされなかった。

核兵器保有国の数の増加に対する懸念が高まり、アイルランドが主導した決議1665の採択に至った。同決議は1961年に無投票で採択されたもので、すでに核を保有している国を超えて保有国が増えることを予防するための協議を呼びかけていたが、軍縮には言及していなかった。

1965年、国連総会は決議2028(XX)を賛成93で採択した。核保有国であるフランスを含む5カ国が棄権した。その当時のその他全ての核保有国は賛成し、反対票はなかった。決議は、「18カ国軍縮委員会」(ENDC)に対して、核兵器の拡散を予防する条約を緊急に協議し、その条約が基盤とする原則を提示するよう求めた。

そこで提示された主要な原則は、核兵器国も非核兵器国も、直接的にも間接的に核兵器を拡散させてはならないこと、核兵器国と非核兵器国との間で容認できる責任と義務のバランスを打ち立てること、一般的かつ完全な軍縮、とくに核軍縮に向けた措置を採るべきことであった。

ENDCの2人の共同議長が別々に草案を出し、のちに共同草案となった。1968年3月、共同議長は、委員会の作業を通じて出された提案を盛り込んだ新たな条約草案を提示した。しかし、その草案はコンセンサスを得られなかった。

ENDCを構成した一部の非核兵器国が、草案は核兵器国と非核兵器国との間の適切な権利と義務のバランスに欠いており、より強力で法的拘束力のある軍縮義務を盛り込む必要があると考えた。

それに対応して、共同議長はのちにNPT第6条となる条文を提案した。一部のメンバー国はまた、原子力の平和利用を追求しようとの自らの取り組みを著しく損なうその他の条項があることを問題視し、いくつかの修正案が提示された。しかし、それ以上の変更は草案には加えられず、共同議長は「委員会に代わって」草案を国連総会に送り、コンセンサスを得ていない報告書を付帯することとした。

予想通り、総会でも草案に対するコンセンサスは得られなかった。結局、賛成95によって決議2373(XXIII)が採択された。相当数の国が棄権(21カ国)あるいは反対(4カ国)した。この結果は、国際条約を通じて核拡散を予防する必要性に対してはかなりの支持があるにもかかわらず、提案されたNPTの一部の重要な側面に関しては意見の対立が深かったことを示している。

しかし、徐々に、国際社会の圧倒的多数が、欠陥があったとしても条約を批准することの方が利益になると考えるようになった。NPTが現在の加盟国数に達するまでに30年かかった。全世界の国の加入まであと4カ国である。その4つの非加盟国のすべてが核能力を開発し、自らの核戦力を取得している。現在の9つの核保有国は、法的拘束力があり、独立機関による検証を受け、時限を定めた軍縮の義務を引き受ける意志を持っていないようだ。

核不拡散条約は、今日までのところ、軍備管理分野において最も加盟国の多い条約である。しかし、より強力で信頼に足る軍縮の公約がない限り、NPTの信頼性に対する疑問が投げかけられ、不満がはっきりと示される原因ともなる。

締約国の中の非核兵器国は、条約の欠陥を指摘し、より強力で、法的拘束力があり、時限を設けた軍縮の公約を求めてきた。条約第9条3項で「核兵器国」と認められた5カ国は、自国の核戦力を維持し近代化することが安全保障のために必要であると主張しつづけ、自らが望む限り核兵器を保持し自由に使用する権利を与えたものとしてNPTを見ているかのようだ。

現在の9つの核保有国は、核軍縮の要求に首尾一貫して抵抗してきた。NPT成立から50年、その軍縮の公約は果たされないままだ。

核兵器の使用がもたらす人道的側面への懸念は、2013年から14年にかけて開催された政府関係者と専門家による3回の会議につながった。これらの会議での知見に、多国間の審議・交渉機関におけるゆきづまりへの不満が合わさって、「軍縮協議を前進させる」作業部会の創設につながり、2017年には国連で核兵器禁止条約(TPNW)が採択された。TPNWは2021年1月22日に発効し、2022年3月にはウィーンで第1回締約国会合が開かれることになっている。

TPNW

TPNWに対しては核兵器国から激しい反対があった。にもかかわらず、来たるNPT再検討会議においては、核軍縮に向けた進展がそもそもあるのか、それがどの程度かといった議論を避けることは不可能だろう。一部の反対国による極端な立場は別としても、TPNWは、「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置について誠実に交渉を行う」との締約国の責務を規定したNPT第6条と分かちがたく結びついている。122の非核保有国が2017年、核兵器を禁止する条約を交渉する会議を招集するための国連総会決議71/258に賛成することによって、そのことを成したのである。したがって、TPNWをNPTから切り離そうとしても、無益なことだ。すべてのNPT加盟国が、2つの条約が収斂していることをよく認識し、着目することだろう。

最終文書へのコンセンサスが得られないことは、NPT再検討会議ではよくあることだ。これまでの9回の会議のうち5回で最終文書の合意ができず、一部の会議では単に異なった見解を記録するだけの文書であったこともあった。1995年、2000年、2010年に重要な概念的成果があったことも事実だ。しかし、1995年に、(条約の無期限延長と引き換えに)中東に関して、そして再検討プロセスについてなされた重大な公約は、まだ目に見える成果を生んでいない。2000年に合意された「13項目の措置」にしても同様である。また、2010年再検討会議の最終文書に盛り込まれた勧告の長いリストについても同じだ。核兵器廃絶のための具体的措置につながるすべての努力が、実際のところ危機に瀕している。

来たるNPT再検討会議では多くの厳しい問題を扱うことになる。その中には、NPTの成立以前から存在した問題もある。その他の問題は、最近の変化や、世界の様々な地域における安全保障環境での緊張の再燃を背景としている。それらの問題の全てが、今回の会議が開かれる岐路を形作ることになる。

非核兵器国の間に不満がたまり堪忍袋の緒が切れかかっているにも関わらず、NPTが50年間も存続してきたことは注目に値する。拡散の抑制の点では完全に成功してきたとは言えない(核戦力は増強され、4つの核保有国が増えた)が、NPTは核兵器のさらなる拡散を予防する上で重要な役割を担ってきた。

しかし、この半世紀のNPTの残してきたものを冷静に判断してみるならば、その最大の失敗は、核軍縮の効果的な措置を実現できず、締約国の圧倒的多数の正当な期待に応えられなかった点にあろう。

Sergio duarte
Sergio duarte

米ロの核戦力の削減、あるいは、両国間の対話の再開のような、この線に沿ったいくつかの望ましい兆候が出てきているが、既存の核戦力を「近代化」しようとする熱心な動きによって台無しになっている。安全保障環境に関する高まる不安を打ち消すのにも、まったく十分ではない。人類はかつてないほど核の大惨事に近づいているかのようだ。

NPT加盟国は、NPTの軸は核軍縮の約束と引き換えに核保有オプションを放棄する点にあったことをあらためて思い起こすべきだ。この基本的な約束が果たされない限り、NPTの信頼性と永続性には疑問符が付されることになろう。第10回締約国会議は、NPTへの信頼性が強化されるのか、それともさらに損なわれることになるのかを物語るものになるだろう。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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